クロスリンク・プロブレム ミクの試練! 第2話 ルカの悩み |
<クロスリンク・プロブレム ミクの試練! 第2話 ルカの悩み>
(亜須田商事・総務課)
ギューーーーン! スタッ!
ハク:はい、到着です
ミク:OLやってるっていうのは間違いないわけね
ミク達が到着したのは、亜須田商事が入っている、とあるビルの3Fフロア、総務課の部屋だった。10名ほどの社員が慌ただしく仕事をしていた。
その部屋の中の一角で、パソコンを使って書類を作っている女性がいた。
女性:はぁ〜〜〜ぁ
ミク:ありゃ! ルカ姉さんだ! オフィス服も似合うなぁ、スタイルいいし。でも、なんでため息なんてついてるんだろ?
同僚:ルカ、元気ないね。どうしたの?
ルカ:はぁ〜・・あ! ごめん。いや〜、あいつ、今日もまた来るのかなぁ、と思うと憂鬱で・・・
同僚:あー、あいつね。全く、このご時世、“セクハラまがい“で訴えられても、言い訳できないよね
ルカ:でもね、あいつ、ここの社長の息子なんだよね〜。ストレートに断ると、ここクビになっちゃうんだよね〜
同僚:え!? じゃあ、ルカ、もうあいつに・・・
ルカ:バカねぇ、“ストレート”だと角が立つから、毎回やんわりと回避しているのよ。だから“ストレートなセクハラ”はさせてないわよ。私、こんなスタイルだから、高校でも大学でも、言い寄られることが多くて、なんか自然に身に付いちゃったのよ、回避方法
同僚:そうよね〜、ルカ、ナイスバディだもんね。でも、あいつ、女性社員なら、見境ないみたいだし。実際、被害者もいるみたいだし・・・
ルカ:ったく・・・
ネル:ありゃ、どうやらルカさんの悩みって、上司のセクハラみたいだね。しかも社長の息子って事で、相当に札付きの
ハク:女性の敵です!
テト:ヽ(`Д´)ノ
ミク:そっか。確かこの世界って、私たちの世界とクロスリンクしているんだよね。って事は、ルカ姉さん、大学でもセクハラ受けているんだ・・・。可哀想・・・
ネル:ということだから、最初の問題はこのセクハラをどうにかする事みたいだね
ミク:え!? でも、私、この世界の人間と意志疎通出来ないんだよね? どうするの?
ネル:様子次第だけど、テトの力で、原因を引っぱり出せるはずだから
ハク:その“原因”と闘えるのが、ミクさんなんです
ネル:僕たちは、そのサポートをします
ミク:わかった。でも、まだこの時点では、その“あいつ”が来てないから、現場を押さえられないよね。様子を見ようか
そんなミク達の会話が終わった頃、その“あいつ”が部屋のドアをくぐってやってきた。
亜須田:ど〜よ、みんな元気〜?
さわり
女性社員:キャア!
亜須田:う〜ん、元気みたいだね〜。でも今日は、“マイハニー”、に用事があるんだよぉ〜。君の相手はまた今度ね〜
同僚:(来たな、セクハラバカ・・・)
亜須田は一直線にルカの側にやってきた。どうも毎回“やんわりと断られている”ためか、ルカには慎重になっていて、今のところ、先ほどの様な行動には出ていなかった。
ルカ:・・・ご用件はなんでしょうか? 私、今、勤務中なんですが
亜須田:つれないなぁ。でも、そこがいい! あ、でも、今日はちゃんと仕事の用事で来たんだよ。ここではナンだから、会議室まで来てくれないか?
ルカ:職務なら仕方ないですね。わかりました
ルカは部屋を出ていく亜須田の後ろをついていった。
同僚:ルカ、何かあったら、大声を出してね! 私たち、助けに行くから
ルカ:うん、わかった
こうして二人は総務課の部屋を後にして、近くの会議室に向かった。
ミク:絶対、やばい展開になるわね
ネル:僕もそう思います。でも“職務”って看板をつけられたら断れないのが、社会人の悲しさだよね
ハク:とにかく私たちも会議室に移動しましょう
こうして4人も会議室に向かった。
(会議室)
亜須田とルカは、会議室に入って、ホワイトボードの前で向かい合った。
ルカ:で、ご用件は?
亜須田:実は我が社の関連会社で、今度、このお菓子・・・というかブレスケア食品を売ることになったんだ。で、それを食べた感想を、君に聞きたいと思って、ここに来て貰ったんだ
ルカ:そういう用件なら、総務課の部屋でも良かったのではないでしょうか?
亜須田:あそこは女性が沢山いるだろ? こういうお菓子の感想を一人に聞くと、他の全員が意見を言いたがるんだ。そこまで数もないから、とりあえず君の意見を最初に聞きたいんだよ
ルカ:わかりました。そういう事情があって、職務なら仕方ないです
亜須田:では、これね。新型で“一粒で十分効果がある”そうだから
そういうと亜須田は、しっかりした商品パッケージに入っていた“錠剤”を1つ取り出して、ルカに手渡した。
ルカ:では食べます
パクッ
亜須田:・・・感想はどう? 口の中がスッキリした? 美味しかった?
ルカ:・・・!!!!!(しゃ・・・喋れない!)
亜須田:・・・喋れない、当然だよね、それ、闇ルートで入手した“黙り薬”だからね。当分の間、君は喋れない、大声も出せない
ルカは大急ぎで会議室のドアへ駆け込み、開けようとした。しかし・・・
亜須田:無駄だよ。ここの全てのドアや窓は封印したから。細工しておいたのさ。薬も含めて、さすが悪魔の力、君のような難攻不落の壁を越えるには、ちょうど良かったよ
亜須田はジリジリとルカに近寄ってきた。ルカはドアをガタガタさせながら、必死に出ようとした。
亜須田:無駄無駄無駄! これでようやく君をクリアー出来そうだ
ミク:お姉ちゃん!!! ちょっとやばいよ! もうコレ犯罪だよ!
ネル:ご安心を。テトが準備を始めたよ
テト:(-_-)
ミク:ちょ! そんなことやっている場合じゃ
テト:ストップ!
ピタッ!
ミク達4人以外の全ての物が静止してしまった。空間も凍てついている。
ネル:テトの能力。それは、現場を押さえ、“ヤツら”を引っぱり出すために、時間と空間を静止させる事なんだ。だからいつもは黙っているんだ
そして、4人以外に動ける存在が現れた。その“ヤツ”だった。ヤツは亜須田の体から魂のように、すぅ〜っと抜けだし、ミク達と同じ世界に現れ、そして、“実体化”、した。
大きめの蛇に跨った、中性の性別で、仮面を被り槍を持って角を生やした、人間型の生き物だった。
ヤツ:ちっ、もう少しで目的が果たせたものを。邪魔が入ったか
ネル:よし! 悪魔の抽出成功! こいつが亜須田の悪魔だよ
ミク:お・・・おまえは・・・誰だ!!
アスタロート:ああん? 人間ふぜいがタメ口とは。まぁ、いい。私は恥辱の堕天使“アスタロート”。とある理由で天界から堕とされた、元大天使だ
ハク:こいつが、一人目のターゲットです! あなたの家族だった人たちは、こういう悪魔に取り憑かれた存在と接触してしまうことで、悩みを抱えているんです
ネル:そ。ルカさんの悩み、“セクハラ”は、亜須田に力を与えていた、こいつの仕業だったって事だよ
アスタロート:全く、今日は厄日か。目的手前で引っぱり出され、あげくに土塊(つちくれ)共にタメ口され・・・。というか、何でお前ら、我らと会話できるのだ?
ミク:知らないわよ! とにかく、私の家族の問題を解決するため! そして、私が元の世界に帰るため! 貴方を倒します!
アスタロート:・・・ぷっ・・・・ふ・・ふはは・・・はーーーーはっはっはっ!!!! 土塊にしてはなかなか面白いギャグだったぞ!
ミク:なっ!! 失礼な! 私は本気です!
アスタロート:なら、尚更面白い! よーし、せっかくだ、“現実”を見せてやろう!
そういうと、アスタロートは槍の先を会議室の窓に向けた。
アスタロート:ダークボルト!
その声に反応したかのように、槍の先から稲妻が発射され、窓に命中した途端、窓枠毎、粉々に吹き飛ばしてしまった!
ゴゴゴゴーーーン!!
ミク:あ・・・あぅ・・・・
アスタロート:土塊よ、これが“現実”だ。なにやら人間の世界には、“異能の女学生が悪魔を倒す”などというフィクションが流行っているそうだが、現実は、力の差が有りすぎて、戦いにもならんのだよ
ミク:こ・・・こわい・・・
アスタロート:そう、恐怖の感情を抱いたまま、地獄の業火で葬ってやる
ネル:・・・ふっ
アスタロート:なんだ? 小妖精ふぜいが、カッコつけるな!
ネル:さっきお前は“異能の女学生が悪魔を倒す”と言ったよな
アスタロート:ああ、そうだ。我らと会話できる時点で“異能”なのではないか?
ネル:いーや、まだ、この子は“異能”ではないよ
アスタロート:何?
ネル:異能。つまり“特殊能力”は、これから身につけるんだからね!
カチッ!
ネルは持っていた六亡星のパネルに付いているクリスタルの1つ、“紫のクリスタル”、を輝かせて、その光をミクに当てた!
ネル:ミク! こいつに君の力を見せてやろう!
ミク:え?・・・え?・・・え?
ネル:能力召還! 剣神・神威!
ピカーーーー!!!!
ネルが当てた光がミクの体をたどった軌跡の通りに、白地に紫のラインの服、紫の髪、中央部の緑のプレート、日本刀等、侍と思われる衣装、備品が次々と現れ、ミクを包んでいった。そして光がクリスタルから閉じたとき、ミクは、白と紫の侍の姿に変わっていた。
ミク:これって・・・
ネル:ミク、これで君は、太古に刀で悪魔を討ち滅ぼした“剣神”の「神威がくぽ」の力を身につけたんだよ。経験的刀剣術も感性的刀剣術も、達人級だ
ハク:あとは“勇気”とか、貴方の基本的なステータスさえしっかりすれば、あいつにだって互角に戦えるわ
ミク:私が・・・刀剣の達人・・・
アスタロート:ええぃ! グダグダうるさい連中だ! そんな茄子侍など知らんわ! 一気に攻めて滅ぼしてくれるわ!
ぐぉおおお!!
アスタロートは、余裕のある姿勢から、怒りにまかせた構えに変えて、ミクに襲いかかった!
ミク:う・・うわ!!!
ミクは素早い動きで刀を持ったままアスタロートの突進での槍攻撃を回避した。
アスタロート:な・・なに? 我の攻撃を・・・回避しただと!?
ミク:こ・・・怖かったけど・・・かわせた・・・
ネル:ミク! あの攻撃をかわせたんだよ! 君は前のキミじゃないんだ! その刀を・・・・もう、めちゃくちゃに振り回してみなよ! 神威の力でなんとかなると思う!
ミク:わ、解った! ええぃ! こんにゃろ!!! こんにゃろ!!!
ブンブンブンブン!!!
ミクは、もう、とても初心者にしか見えないような太刀筋で、刀をブンブン振り回した。
アスタロート:はん! まさにド素人! そんな攻撃、なんとm
シュン! スパ! シュン! スパ!
アスタロート:!? 何? 太刀筋から“かまいたち”が!? 何故“回避できん”のだ?
スパ!スパ!スパ!スパ!スパ!
アスタロート:ぐぉおお! 何故だ! 何故回避できん!!!!!!!
ズバズバズバズバズバ!!!!!!!!
アスタロート:ごぅぉおおおおおおおおお!!!!!!!!
バラバラバラバラバラ・・・・・・・・ボトボトボト・・・・・
アスタロートはでたらめな太刀筋から現れる“無数のかまいたち”によって切り刻まれ、バラバラに寸断されて、その場に破片が落ちて、機能を停止した。
ミク:はぁ・・・はぁ・・・
ぺたん
ミクはあまりの怖さにペタンとその場に腰を落としてしまった。
ネル:凄いよ!
ハク:凄いです!
テト:ヾ(≧▽≦)ノ
シューーーーーン
ミクの姿が元の学生服の姿に戻り、紫のクリスタルの輝きが落ち着いた。どうやらクリスタルが、神威の力を開放していなくてもいいと判断したのだろう。
ミク:こ・・・怖かった・・・
ネル:大丈夫か?
ハク:まぁ、いきなりで初めての実戦だったわけだし、仕方ないわよね
ネル:ミクはちょっと落ち着かせておくとして、さて、アスタロートのヤツはどうなったんだ?
サーーーーー
アスタロートだった破片は、姿が消えていき、その場から無くなってしまった。そして、2つ目の“黄緑色のクリスタル”が光り出した。
ネル:お! 新しい力が宿ったみたいだね。えっと・・・ふんふん、なるほど、「女神・イシュタルを宿している“めぐみ”」への変身が可能になったんだ。残りの灰色のクリスタルは、あと4つか
ふら〜
ミクはなんとか立ち上がる事が出来た。だがフラフラだった。
ネル:本当に大丈夫?
ミク:なんとか・・落ち着いたわ。次があるんでしょ?
ハク:申し訳ないけど、次の対象が映ったみたい
ミク:次は・・誰?
ミクは3つ目の灰色のクリスタルをのぞき込んだ。そこには、リンとレンの姿が映っていた。しかし、学生服姿ではなかった。
ミク:リンとレン?・・・ってか、この姿、“漫才師”・・・の姿じゃないの! ラメ入りで“でかい蝶ネクタイ”した、思いっきりお笑いの!
ネル:えっと、名前は“鏡音リンと鏡音レン”ですね。コンビでやっている漫才師のようです
ミク:“鏡音“・・・やっぱり名字が違うのね
ハク:では、“舗装劇場”までワープします!
ビューーーーーン!!!!
ハクの声と共に、前と同じように4人の姿は消えていった。
そして消えたと同時に、時間停止が解けて、止まっていた物が動き出した。1つを除いては。
ルカ:きゃああ!!!
ガラッ
固定されていたはずの会議室のドアがガラッと開き、廊下側から、初老のおじさんが入ってきた。
社長の亜須田さん:? 総務課のルカさん・・でしたっけ? どうしました?
ルカ:しゃ・・・社長の・・・
社長の亜須田さん:私の・・なんですか?
ルカ:・・・あれ? なんでしたっけ
そう。その部屋の破壊された所は元に戻され、そして、あの亜須田の姿は完全に消滅していたのだった。物理的にも、存在的にも。
社長の亜須田さん:とにかく、そろそろ昼休みです。ひと休みしましょう
ルカ:はい! すみませんでした(あれ? 私、なんでこんな所にいたんだろ? それに、なんかスッキリしてるし・・・)
悪魔の消滅が意味する事、それは、その悪魔に魂を売り渡した存在の消滅をも意味するのだった。
(続く)
CAST
ミク:初音ミク
ルカ & 巡音ルカ:巡音ルカ
妖精ネル:亞北ネル
妖精ハク:弱音ハク
妖精テト:重音テト
その他:エキストラの皆さん
説明 | ||
☆4ヶ月以上もあけてしまって恐縮です。色々あったもので…。またローペースですが、投稿していこうと思います。 ○ボーカロイド小説シリーズ第13作目の” クロスリンク・プロブレム ミクの試練!“シリーズの第2話です。 ○ちょっと現実にありそうな問題と、それとリンクするファンタジーの世界、それらをクロスリンクさせたお話です。 ○ちとオカルトも入りますが、そこら辺は今の流行って事で…。 ☆戦闘編です。 ☆ちょっとリアルなシチュエーションがあったので、出来るだけぼかして表現しました。 |
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