Need For Speed Most Wanted TOHO 第15話 休息 後編 |
時計の針がちょうど真上を向いたころ。
「うぅ・・・」
「ぐ・・・」
私と勇義はそれぞれアリスとパルスィに肩を借りながら海の家に入る。
「無茶し過ぎよ・・・」
「少しは自分のキャパシティ考えなさいよ・・・」
『面目次第もありません・・・』
私と勇義は声を揃えて言う。そもそも何でこんな事になってるかと言うと、前編の最後の競泳の勝敗がつかず引き分け続きになり、結果15往復という長期戦になってしまい、体力が底をついた私たちは砂浜でバタンキュー。アリスとパルスィに引きずられてパラソルに戻る結果に。少し休んだもののまだ足が言う事を聞かず、二人に手を借りている。
「とりあえず席についてなんか頼もうよ。お腹空いちゃったよ」
先頭だって萃香が適当な席を見つけ、私たちを手招きしてさっさと座る。
「さてと・・・」
席に着くなり私は持参したデータベースを開き、次のランカーの情報を確認する。
「こら魔理沙、せっかくのオフなんだから、今日くらいはそっちの事は忘れなさいよ」
「分かってるぜ、ちょっとだけだ」
アリスはこう言うものの、私にとっては一番の懸案事項だ。忘れる事なんて出来やしない。
次のランカーはナンバー9。名前は東風谷早苗というらしく、周りからは「ワンダー(奇跡)」と呼ばれてる。腰辺りまで伸びてる緑色のストレートヘアに、蛙と蛇の髪飾りが特徴的な女性だ。化粧を知らない童顔を見ると、まるで女子高校生にも見える。
ヤマメが撮ったという動画を見る限り、ヘタというわけではないが、特に際立った走りをしているようには見えず、そこまで実力があるようには見えないのだが・・・。
「そいつの変な強運に巻き込まれないようにしたいね」
「ああ」
そう、こいつは特に際立った実力を持ってるわけではないのだが、変に運が強く、相手のマシントラブルやクラッシュなどでタナボタ勝ちしている変わった奴なのだ。初めはミスのような姑息な手を使っているんだろうと疑っていたが、クランクシャフトのピン折れ、コンロッド粉砕、オーバーレブによる自滅など、手を出すには無理があるようなトラブルばかりで、その疑いもすぐに晴れてしまった。
クルマはランボルギーニ・ガヤルド(M/C前 初期モデル)。このガヤルドも持ち前の運で勝ち取ったものらしい。グリーンのボディカラーに稲妻調のエッジの効いた青いバイナルがひときわ目を引く。
「運も実力とはよく言うけど、こいつのそれはちょっと異質だよねぇ。ま、バトル前に一度ウチに預けて、一通りの粗は探しとくよ」
「ああ、頼むぜ」
これ以上深く話し込むとアリスが怒ってしまうだろうから、私たちはこれくらいでブラックリストの話題を切った。
「にしても、ここはホント人多いなー。久しぶりだよ、こんな人ごみの中にいるのなんて」
世界でも有数のリゾート地とは言うものの、この日の込み具合はちょっと異常なほどだった。
「ん・・・、もしかしてこれが原因なんじゃない?」
そういってパチュリーが指差した先にあったのは壁に貼られた一枚のポスター。
「あん・・・?へぇ、プリバ楽団(プリズムリバー音楽団)が来てるんだ、そりゃ納得」
プリズムリバー音楽団と言えば、音楽業界ではかなり有名なユニットで、TVの音楽番組にはほとんど出演しているほどの大御所だ。
「プリバ楽団だけじゃないね。なんて読むんだいこれ・・・、とりけものぎらく・・・?」
「鳥獣伎楽(ちょうじゅうぎがく)だね。最近話題になってるユニットだよ。よくライブハウスなんかで名前は聞くね」
私もその名前には聞き覚えがあった。趣味柄音楽を聞くことが多く、私はこういった音楽事情の最新情報には割と敏感だったりする。鳥獣伎楽というユニットの曲も、何曲かベンツに載せてあるCDの中に入ってたりする。
「全く・・・、何故こういう日に限ってこう混雑するのかしら・・・」
「まぁ、良いのではないでしょうか?人を隠すには人の中。こうして正体のバレる不安を無くしたまま休暇を味わえるのですから・・・」
その時、妙に耳障りな、しかし聞き覚えのある声が近くから聞こえた。
「この声・・・」
私は知っている、この声の主を。その姿を見て拳を振り上げなかったのは、周りに友人が多いのと、この混雑でロクな身動きが出来ないせいだろう。
「・・・あら」
私たちの一番の目の敵、ミスことレミリアの姿があった。
「お前・・・!」
「奇遇ね、こんなところで。今日はバトルはいいのかしら?」
「く・・・!」
これは確信犯だ。私がコイツのせいで思うように動けてないのを知らないはずがない。
「随分と順位を上げてきているようね」
「おかげ様でな」
「まぁ、狙いが私であることは分かってはいるけど、一つだけ忠告しておくわ。貴方に敗けた連中、貴女を潰すためなら何だって仕掛けて来るわよ。そう、何だってね。覚悟しておいた方がいいわよ」
「そりゃどうも」
お前が振り撒いた種だろうが、と言わんばかりに勇義たちもレミリアとサクヤに睨みを利かす。
「これ以上は時間の無駄ね。私たちはこれで失礼するわ」
そういってレミリアは踵を返そうとして目が止まった。視線の先には、勇義の姿。
「・・・なんだよ?」
「いえ、別に」
レミリアはすぐに視線を戻したが、私とアリスは彼女の視線が、勇義の身体に向けられたのを見逃さなかった。
「・・・貧相」
ボソッとアリスが呟いた。
「・・・何か言ったかしら?」
ビキリ、とレミリアの額に青筋が立った。
「いーえ、別に」
わざとらしくアリスは手を後ろで組んで胸を反らす。勇義ほどではないが、アリスもそれなりに豊かな身体つきをしているので、曲線豊かな身体のラインが強調される。
「私が貧相とか言わなかったかしら?」
「言ったかもね。別に『何が』貧相かは言ってないけど」
「ぐ・・・!」
アリスの挑発に、レミリアが言葉を詰まらせ、歯を食いしばった。・・・こいつ、意外とメンタル弱い?
「何よ!貴方たち二人なんて私の咲夜なら・・・!」
そういってレミリアが咲夜の手を引く。しかし・・・、
「・・・・・・」
事の本人は死んだ魚のような目で呆然自失。さっきの萃香のように目のハイライトも消えている。
☆よく分かる身長・スリーサイズ早見表 U☆(※あくまでこの二次創作内)
レミリア 153p B72(A) W52 H73
咲夜 170p B81(C) W54 H82
「ふっふーん」
ここぞと言わんばかりにアリスと勇義が飛び切りのドヤ顔で胸を張る。
「っ!?・・・・・っ」
それを見たサクヤが更なるダメージを受けたか、ついに膝を折った。
「咲夜!?ちょっとしっかりしなさいよ!?ああ、もうっ!いい事!?この先、今までの様に上手く行くと思ったら大間違いなのよっ!?覚えておくことねっ!!」
捨て台詞にも似たような台詞を吐いて、レミリアは咲夜を引きずって人混みの中へと消えた。
「ふふん、言われっぱなしは癪だからね。ここで一つ見返してやれたな」
「ええ、そうね。クルマ関係ないけど、なんかすっごくスカッとしたわ」
レミリアに一矢報いて大満足といった様子で、二人は腰に手を当てて高らかに笑う。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「うおっ!?」
再度私の横でどす黒いオーラを感じたと思ったら、萃香とパルスィが親指の爪をかじりながらぶつぶつと何か呟いていた・・・。
「・・・はぁ」
せっかくの休暇なのに、ため息を何度ついたか考えるのも面倒になってきた。
「大丈夫、私は貴女の味方よ・・・」
「ああ、ありがとう・・・」
パチュリー、お前だけが唯一の良心だ・・・。
説明 | ||
萃「あれ?今日は何もないのかい?」 魔「主が投稿までにネタ思いつかなかったってさ」 15話です。前回の続き。ただカリスマブレイクが書きたかっただけです、スマソ。 次回からは本編に戻ります。 本作品は上海アリス劇団様・東方projectとエレクトロニック・アーツ様・Need For Speed Most Wantedの二次創作作品です。 原作ブレイク、キャラ崩壊、独自解釈設定を多く含みます。物語そのものや、二次設定の使用、キャラクターの人選等不快感を覚える方は閲覧をお控えください。 また、この物語はフィクションです。劇中のカーアクション等は非常に危険です。実際のクルマを運転するときは法規上の交通ルール・モラル面の交通マナーを守り、安全運転を心がけましょう。 |
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