真・恋姫†無双 外史 〜天の御遣い伝説(side呂布軍)〜 第四十回 第三章A:臥竜鳳雛捜索編C・急転!援軍要請
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張遼「ねね、南蛮族が暴れてるってホンマかいな!?」

 

厳顔「詳しい話を聞かせよ!」

 

 

 

兵士の伝言を聞いた厳顔と張遼は、急いで陳宮の執務室へと駆けつけた。

 

部屋の中にはすでに呂布が駆けつけている。

 

 

 

陳宮「益州南部の国境警備兵が、建寧で大軍勢を作っている南蛮族を確認。そのまま近隣の村になだれ込んで狼藉を働く恐れがあるため、

 

至急援軍をよこしてくれと言ってきたのです」

 

 

 

陳宮は机に地図を広げ、益州と南蛮の国境辺りを指し示しながら口早に説明した。

 

 

 

厳顔「それは兵から聞いた!そうではなく、南蛮族の特徴を聞いておるのだ!獣は連れておったか!?藤甲を身にまとった部隊は!?」

 

 

 

厳顔の質問する様子は、普段の彼女からはあまり想像できないような、どこか鬼気迫ったものがあった。

 

 

 

陳宮「・・・?それはいったいどういうことですか?」

 

 

 

そして、なぜ厳顔がそのように焦っているのかを、陳宮をはじめ、厳顔以外のものは理解できないでいた。

 

 

 

厳顔「ふむ、そういえば、お主達にとって南蛮族との諍いは今回が初めてだったか・・・。よいか、南蛮族とは、孟獲を族長に据えた、

 

虎のような装束を身にまとった異民族のことだが、特に実りの少ない冬になると、蓄えが無い年は食糧を求め、国境を越えて益州の村々

 

で狼藉を働くようになるのだ」

 

 

呂布「・・・トラ・・・・・・」

 

 

 

呂布は厳顔の言った「トラのような装束」に反応したようだが、今はそのことについてツッコんでいられる余裕は誰にもなかった。

 

 

 

陳宮「つまり、去年や一昨年の冬は南蛮での食糧難が起きてなかったということですな?」

 

厳顔「そういうことだ。だが、どうやら今年は食糧難のようだな」

 

張遼「んで、その獣やトーコー?っちゅーのは何なんや?」

 

 

厳顔「獣は南蛮族が誇る猛獣部隊が扱う虎や蛇などの獣、藤甲は身に着けても水中に沈む事がない鎧のことだ。猛獣部隊、藤甲部隊共に

 

孟獲配下の幹部トラ、ミケがそれぞれ率いる主力部隊で、そやつらがもし出張っておったら、国を挙げて対応せねばコチラは容易く踏み

 

潰されてしまうほどの実力を持つ強敵だ」

 

 

張遼「国を挙げてやって・・・!?そんなにヤバいやつらなんか南蛮族っちゅーのは!?」

 

 

 

一部族の一部隊が、一国の力と同等などと聞かされ、ようやく張遼らは事の深刻さを理解したようであった。

 

 

 

呂布「・・・ねね?」

 

 

 

呂布は自然と陳宮に詳細を話すよう促した。

 

 

 

陳宮「確か、獣を連れているという情報は聞いてないですが、鎧を着たまま船にも乗らず平気で川を泳いで移動している、という情報が

 

ありましたぞ」

 

 

 

答えた陳宮は、事の深刻さから、若干顔が青くなっていた。

 

 

 

厳顔「間違いない、藤甲部隊が出て来ておるな・・・」

 

 

 

藤甲部隊がいる可能性が高いと悟った厳顔は、下唇を噛んで唸った。

 

 

 

張遼「どないするんや!?」

 

 

厳顔「ねねよ、わしはすぐに動けるものたちをかき集めて国境へ向かう!ミケが来ているかいないかでかなり状況は異なるが、それでも

 

今夜中くらいは耐えて見せよう!だがら、明日すぐに城に最低限の兵だけ残して、他の者をすぐに国境に送ってくれ!」

 

 

陳宮「・・・そうですな、一刀殿が不在ですが、事が事だけにねね達だけで判断するしかありませんな。桔梗殿は南蛮族の対応に慣れて

 

いるようですし、頼みましたぞ!」

 

 

 

陳宮はこの中で一番南蛮族について詳しい厳顔の意見をそのまま聞き入れた。

 

 

 

厳顔「応さ!」

 

 

 

厳顔は答えるとすぐさま部屋を出ていった。

 

 

 

陳宮「あと追加の兵ですが―――」

 

呂布「・・・恋が行く」

 

 

 

呂布の名乗りは早かった。

 

しかしその瞳は、なぜか少し期待に満ちた色を帯びていないこともなかったが、そのことについては誰も触れなかった。

 

 

 

陳宮「・・・分かりましたです。では、追加の援軍は恋殿に、城には霞の部隊を残すことにしますぞ!」

 

呂布「・・・わかった」

 

張遼「了解や!」

 

 

 

北郷らが不在の中、成都では慌ただしい眠れない夜が幕を開けようとしていた。

 

 

 

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【荊州、隆中、諸葛亮の庵】

 

 

 

諸葛亮「ふぅ・・・」

 

 

 

諸葛亮はお茶菓子などを片付けながら小さく息をついた。

 

 

 

諸葛亮「びっくりしたなぁ。まさか天の御遣い様から仕官のお誘いを受けるなんて・・・はわわ〜、やっぱり悪いことしちゃったかな、

 

せっかく成都から遥々こんな山奥まで来てもらったのに、もう少し気の利いた断り方はなかったのかな」

 

 

 

すると、諸葛亮は茶器を洗っているときに、ふと思い出したかのようにつぶやいた。

 

 

 

諸葛亮「そういえば、雛里ちゃん、今頃どうしてるかな」

 

 

 

諸葛亮は以前鳳統から仕官先について尋ねた時のことを思い出していた。

 

 

 

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<朱里ちゃん、今朝劉備さんがまた朱里ちゃんの庵を訪ねてたよ?>

 

<はわわ!?また留守にしちゃった。迷わずさっさと買って帰ったら会えたかな。悪いことしたなぁ>

 

<じゃあ、いい資料が見つかったんだね?水鏡先生の最終試験、出来そう?>

 

 

<うーん、でもなんかこう、しっくりこないというか、むしろ雛里ちゃんや元直ちゃんがすんなりと出来すぎなんだよ。やっぱりもっと

 

なんか工夫というか、逆転の発想というか、確かにわざわざ男体化なんて回りくどいことしなくても、男の人を題材にっていうのが普通

 

かもしれないけど、そこをあえて男体化の手法を使って項羽と劉邦を―――ってそんなことよりも雛里ちゃん!!!今度仕官するために

 

襄陽を出ていくって本当なの!!??>

 

 

<あわわ!?・・・うん、まだ言ってなかったっけ?>

 

<聞いてないよー!さっき元直ちゃんから聞いたんだからー!>

 

<あぅ・・・、ごめんね。うっかりしてたみたい>

 

<んーん、別に気にしてないよ。けど、いつも一人で街の外に買い物に行くのも嫌がってたのに、よく一人で行こうって思ったね>

 

 

<うん、やっぱり少し怖いけど、ずっとここに閉じこもっていても私も世の中も何も変わらないし、いつまでも臆病な私のままでいたく

 

なかったから・・・>

 

 

<偉いね!それで、誰のところに仕官しに行くの?出ていくってことは地元の劉表様の所じゃないよね?やっぱり今一番天下統一に近い

 

袁紹さんか曹操さんのところ?それとも勢いのある孫策さんや天の御遣い様?あっ、もしかして劉備さんのところ?>

 

 

<えーとね・・・今は内緒>

 

<えー!?意地悪言わないで教えてよ雛里ちゃん!>

 

 

<ごめんね、でもまだ仕官できるか分からないし、もし仕官できなくて朱里ちゃんをガッカリさせたくないから、ちゃんと仕官が正式に

 

決まったら知らせるね>

 

 

 

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諸葛亮「最初一人で出ていくって聞いた時はびっくりしたけど、本当に大丈夫かな。あれからまだ連絡はないけど、ちゃんと目的地まで

 

たどり着けてるかな。迷子になってたり、山賊や暴漢に襲われてなければいいけど・・・」

 

 

 

そのような不安を吐露しながら、諸葛亮は何気なくぼんやりと東の空を見上げた。

 

 

 

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【荊州、襄陽】

 

 

 

翌日、北郷たちは午前中の内に鳳統の情報を掴むべく悪あがきをしていたが、

 

結局有力な情報を得ること叶わず、夕方前にはひとまず成都に帰還しようとしていた。

 

 

 

魏延「だが、本当にこれからどうするんだ?結局七日間も遠征しておきなが諸葛亮は引き込めなかったのだし、代わりの人材すら一人も

 

引き込めていないんだぞ?」

 

 

北郷「諸葛亮のことは残念だったけど、もう仕官しちゃっているのなら仕方がない。だけど、鳳統がちゃんと実在してるって聞けたのは

 

大きいよ。今度は鳳統に望みを託そう」

 

 

高順「どこか、当てがおありなのですか?」

 

 

 

北郷の表情がある程度余裕のあるものであったため、高順はそのように尋ねた。

 

 

 

北郷「オレの世界では、鳳統といえば劉備に仕官しているのが有名なんだけど、確か劉備に仕官する前は劉表、一時は孫権のところにも

 

紹介されてた時もあったはずなんだ。この世界は色々オレの知ってる世界と違うところがあるけど、とりあえず探すとしたらまずはその

 

三人のいる場所だな」

 

 

高順「それなら、劉表なら襄陽。孫堅・・・孫権?いや、今なら孫策でしょうか・・・とにかく、孫家なら江東方面。劉備なら・・・?

 

そういえば、劉備は今どこにいるのでしょう?」

 

 

魏延「ワタシに聞くな。徐州を曹操に奪われたのだろう?在野じゃないのか?」

 

 

 

魏延は半ば投げやり気味に答えた。

 

 

 

北郷「うーん、オレもちょっと曖昧なんだけど、確かこの時期は、袁紹のところだったっけ・・・まぁ、その辺りはねねに聞くのが確実

 

だろうな」

 

 

魏延「ならばさっさと成都に帰るぞ。ぐずぐずしていては今日中に成都に帰れなくなる。ただでさえ文官を一人も確保できなかったんだ。

 

これ以上遠征が長引けば、ねねのやつにぐちぐち小言を言われるぞ?」

 

 

高順「まぁ、小言で済めばいいんですけどね・・・」

 

北郷「オレは息子さえ守られれば―――いや、こっちの話だよ・・・」

 

 

 

三者三様に成都帰還が遅れたときに降りかかるであろう不幸を思い浮かべつつ、三人はすぐに成都に帰還すべく、馬に跨ろうとした。

 

 

 

―――しかしその時、一行を呼び止める声がした。

 

 

 

??「かーーーずとーーーーーーッッッ!!!」

 

 

 

その聞き覚えのある独特のイントネーションに、元気のいい張りのある大きな声は、北郷たちのよく知る人物であった。

 

紫の髪を後ろで上げてまとめ、緑色の瞳は常に自信の色が見える。

 

出で立ちはさらしに紺の羽織袴、そして、肩に担いでいるのは巨大な偃月刀、その名も飛龍偃月刀。

 

 

 

高順「あれ、霞じゃないですか?」

 

北郷「本当だ。でもどうしたんだろう?あんなに急いで・・・」

 

魏延「まさか、ねねがついにブチ切れて強制的に連れ戻しに来たんじゃないだろうな・・・」

 

 

 

しかし、どうも様子が変である。

 

よく見ると、張遼の後ろには紺碧の張旗を持った何人かの騎兵がついて来ていた。

 

 

 

張遼「ぜぇ・・・ぜぇ・・・やーっと見つけたで・・・」

 

北郷「どうしたんだよ霞、そんなに息切らしてまで急いで。(・・・も、もしかして、ねねの奴、相当怒ってるのか?)」

 

 

 

最後は無駄にやや小声になっている北郷であったが、どうやら陳宮とは関係が無いようである。

 

 

 

張遼「ええかみんな。落ち着いてよー聞いてーや」

 

 

 

そして、張遼の口から出てきた話は、北郷たちの想像をはるかに超えるものであった。

 

 

 

張遼「曹操軍から援軍要請や!!」

 

北郷「何だって!?」

 

高順「―――ッ!?」

 

魏延「曹操だと!?いったいどういうことなんだ!?」

 

 

 

三人とも、張遼から聞かされたことについて理解するのに頭が追いつかないでいた。

 

 

 

張遼「まぁ落ち着きや!今から順追って説明するさかい!」

 

 

 

高順から水を受け取ってようやく息を整えた張遼は、事の成り行きを説明し始めた。

 

 

 

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【益州、成都城・陳宮執務室】

 

 

 

厳顔が約5千もの兵を連れて南蛮族が集まる建寧へ向かった翌日、陳宮は早朝から成都中の兵士たちに招集をかけ、

 

呂布はお昼過ぎには合計約1万5千にも及ぶ兵を引き連れて、厳顔の援軍に出立した。

 

そしてその日の夕方、張遼は陳宮の執務室を訪れ、北郷を呼び戻しに行くべく直談判しに行っていた。

 

 

 

張遼「せやから、今は緊急事態なんやし、いくら明日が予定の最終日やからって、そんなん関係なしに文官探しなんて中止させてすぐに

 

帰ってこさせるべきやって!」

 

 

陳宮「それは分かっているですが、少なくとも霞には絶対行かせませんぞ!?最近の益州は戦いとは縁遠いですが、今は戦乱の世の中、

 

このような平和な日々がいつ崩れるかわからないのですぞ!?異民族だって南蛮族以外にも西や北に羌族や?族といったのもいますし、

 

万一に備えて、今霞を国外に出すわけにはいかないのです!」

 

 

 

しかし、ぎゃーぎゃーと二人が問答を繰り返していると、突然、執務室の扉が開け放たれ、兵士が息を切らしながら駆け込んできた。

 

 

 

兵士「申し上げます!たった今、お館様宛に曹操軍の楽進の使者を名乗る者から急ぎの書簡を受け取りました!」

 

陳宮「な―――ッ!?楽進の使者ですと!?」

 

 

 

曹操軍とは下?での一件以来一切関わりがなかっただけに、陳宮はこの突然の書簡に驚きを隠せない。

 

 

 

張遼「どないするんや!?一刀は今おらんで!?」

 

 

陳宮「むむむ〜、本来これは一刀殿が受け取るべきなのでしょうが、急ぎならば仕方がないです。ここはねね達が代わりに受け取るしか

 

ありませんな・・・」

 

 

 

本来、君主宛ての書状を本人の許可なく他人が見るなど死罪物の大暴挙であるが、

 

陳宮は「曹操軍からの急ぎ」という不穏なキーワードにただならぬ事態を予測し、北郷の許可なく書簡の内容を確かめることにした。

 

 

 

陳宮「楽進の使者には、書簡は一刀殿に確かに渡したと伝えるです。くれぐれも、一刀殿が不在と悟られないようにするです」

 

兵士「はっ」

 

 

 

兵士は一礼すると、部屋に入って来た時と同様駆け足で出ていった。

 

 

 

張遼「で、何て書いてあるんや!?」

 

陳宮「ええと―――――――――――――――ぇ――――――――――――――――――――――――――な、なんですと・・・!?」

 

 

 

張遼の問いかけに、しかし陳宮は答えず、顔面蒼白になって絶句している。

 

 

 

張遼「ねね!!」

 

 

陳宮「・・・掻い摘んで説明すれば、今現在、曹操軍は袁紹軍と官渡の地で対峙しているそうなのですが、曹操軍の主力の大半が官渡に

 

向かっている隙をついて、揚州の合肥城を、孫策軍に狙われたそうなのです。そこで、合肥城を守る楽進が、一刀殿に援軍を求めてきた

 

ということのようですな・・・」

 

 

 

張遼の声に我に返った陳宮は、書簡の内容の要点を伝えたが、絶句した陳宮とは対照的に、張遼は声を荒げて怒りをあらわにした。

 

 

 

張遼「はァ!?揚州に援軍よこせやって!?いやいやそらおかしいやろ!?ここから揚州までどん―――ッだけあると思ってんねん!!

 

っちゅーか曹操軍やったら、ウチら以外にも援軍頼める奴いくらでもおるやろ!?」

 

 

 

揚州から益州は、かつて、北郷たちが徒歩とはいえ約一か月もかかった距離である。

 

とても、すぐに援軍に行ける距離ではない。

 

 

 

張遼「もちろん断るんやろ!?ただでさえ今は南蛮族との問題で成都には人がおらん、まして、一刀もおらんし!」

 

陳宮「・・・いや、それがそういう訳にもいきそうにないようなのです・・・」

 

 

 

しかし、陳宮は声をやや震わせながら張遼の言葉を否定した。

 

 

 

張遼「どういうことや!?」

 

 

陳宮「まず、この書簡には、かつて下?で恋殿やねね達の命を助けた曹操の恩義に今こそ報いるべきとの旨が書かれているです。つまり、

 

今この援軍要請を無視することは、こちらが曹操の恩義など知らぬと返事するも同じ。結果曹操軍に眼を付けられるのは必然、曹操軍を

 

敵に回す口実になるです。現在大陸二大勢力の一角を担う曹操軍を今敵に回せば、ねね達などひとたまりもありませんぞ」

 

 

 

あるいは、一刀殿や恋殿を潰すため、こちらが援軍要請を断ることを最初から想定しての書簡か、と陳宮は頭の片隅に思い浮かべていた。

 

 

 

張遼「なんちゅー奴や。そんなん絶対援軍に行かなアカンやん・・・」

 

 

 

張遼がわなわな震える中、さらに陳宮は続ける。

 

 

 

陳宮「しかも、問題は他にもあるです・・・というよりも、こちらが一番の問題ですが・・・」

 

張遼「まだ何かあるんかいな!?」

 

 

陳宮「この書簡には援軍要請の補足として、天の御遣いが直接合肥にて力を振るうことを望む旨が書かれているのです。つまり、援軍に

 

一刀殿を同行させよ、ということです・・・」

 

 

 

陳宮が顔面蒼白な理由は、援軍要請よりもむしろこっちの北郷同行の要求が原因であると思われた。

 

曹操軍からの前代未聞の理不尽な要求に、張遼はついに堪えきれず机をバンッと叩いて憤慨した。

 

 

 

張遼「はァッ!?一刀は今や益州牧にして成都領主やで!?ふざけんのも大概に―――まさかこれも無視したら・・・!」

 

陳宮「・・・そういうことです・・・」

 

 

 

下?で曹操に見逃され、それ以来曹操とは何もなかったため、油断していた矢先のこの要求である。

 

曹操に作った大きな借りはあまりに大きく、ここにきて北郷たちに重くのしかかり、事実上拒否権を奪われる形となってしまっていた。

 

 

 

張遼「・・・・・・わかったわ、ウチが援軍に向かったる。こっから揚州に向かうんやったら襄陽突っ切んのが早いやろ。そこで一刀ら

 

拾ってそのまま揚州向かうわ。今ウチらに残ってる兵が約1万や。そこから益州の各地に駐在させる兵と成都に残す兵を考えて、800

 

ほど連れて行くけど、構わへんか?」

 

 

 

先ほどまで怒りを前面に出していた張遼であったが、一変、落ち着きを取り戻して

 

(正確には怒りを一時的に腹の内に閉じ込めたというのが正しいか)自身の考えを述べた。

 

 

 

陳宮「それは構いませ―――って霞はここを離れてはいけないと何度も言ってるです!ここは張任や孟達らに行ってもらうのが最善――」

 

 

 

しかし、陳宮の意見に張遼は食い下がった。

 

 

 

張遼「ちゃう、逆や。張任や孟達らに成都を任せるんや。あいつらやって十分すぎるほどの力は持っとる」

 

陳宮「しかし―――!」

 

張遼「ええか、ねね。ウチは貸しを盾にウチらを揺さぶる曹操軍のやり方が気に入らん。一言言ってやらんと気が済まんのや!」

 

 

 

張遼の瞳は爛々としていた。それは今回の件以外の、曹操軍との因縁をも内包しているかのようであった。

 

 

 

陳宮「そんな挑発をしては、それこそ曹操軍を敵に回す口実になりかねませんぞ!」

 

 

張遼「もちろん本気で言うつもりはないけどや、もし援軍に行ってそれでも曹操軍が敗けたら、それをウチらのせいにして攻めてくるん

 

ちゃうか?」

 

 

陳宮「そ、それは・・・」

 

 

張遼「そういう意味でも、ここで戦力の出し惜しみは得策やない。けどもちろん成都にも人は残さなアカン。せやからウチが少数精鋭を

 

引き連れていくんや」

 

 

 

張遼の意見は一応筋が通っていた。

 

確かに、ここで十分な援軍を送らず、結局曹操軍が敗れたら、

 

それを口実に成都に攻め込まれるきっかけを与えることに繋がりかねなかった。

 

そうならいためにも、ここは張遼の言うとおり少数精鋭を送り込むのが妥当な判断であった。

 

そして、自分のことを精鋭というだけの実力を張遼が備えているのもまた事実である。

 

陳宮はしばらく目を閉じ他の案を模索していたようだが、やがて目をゆっくりと開けた。

 

 

 

陳宮「・・・・・・分かりましたです。成都には張任と孟達を呼び戻すとして、他の地域の配置も、ねねがなんとかやりくりしとくです。

 

ですので霞はすぐに襄陽に向かって一刀殿たちと合流してくださいです。800人もの兵を引き連れていれば劉表に眼を付けられるのは

 

間違いないですが、恐らく基本中立の立場をとっている劉表の性格上、曹操といざこざは起こしたくないはずですから、問題なく通れる

 

はずです」

 

 

 

劉表は曹操と袁紹が官渡で対峙していても、孫策のように隙のある揚州攻めを行わず、傍観を決め込んでいた。

 

それは、劉表は反董卓連合での自軍の大損失以来、荊州の治安を至上目的とし、

 

大陸統一という野心を放棄していたことに起因すると思われるが、

 

そのため、曹操軍との間に問題を起こし、それによって荊州を危険にさらすことを忌避することが予想された。

 

 

 

張遼「すまんなねね、成都のこと、頼んだで・・・!」

 

陳宮「霞も、大丈夫だとは思いますが、くれぐれも無茶だけはしないで下さいです」

 

 

 

張遼の爛々とした瞳から、少々不安を覚えた陳宮であったが、その不安を何とか飲み込み、

 

分かってると思いますが一刀殿のこともよろしくです、と最後に付け加え、

 

張遼を送り出し、翌朝のまだ暗いうちに張遼は成都を発った。

 

 

 

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【荊州、襄陽】

 

 

 

張遼の話を聞き終えた三人はしばし驚きのあまり言葉を失っていた。

 

 

 

高順「楽進・・・成廉と曹性を討ち取った将ですね・・・」

 

 

 

高順は下唇を噛みながら険しい表情でそうつぶやいた。

 

かつて、張遼が第一位を務めた呂布軍配下の八人の猛将たる八健将のうち、

 

第五位の成廉は兌州濮陽で、第四位の曹性は徐州下?で、それぞれ楽進に討ち取られていた。

 

 

 

魏延「だが、なぜ曹操はこのような無理な事を・・・!益州から揚州までどれだけあると思っているんだ!」

 

 

高順「・・・ねねの言う通り、私たちが援軍を拒否することを理由に、或いは、霞の言う通り救援が遅れたことを理由に、最近力をつけ

 

つつある一刀様を潰そうということでしょうね・・・」

 

 

北郷「それか、もしちゃんと援軍に応じて間に合ったとしても、長距離を移動させることで、オレ達の国力を削ぐ狙いもあるんだろうな」

 

 

 

つまり、この今回の曹操軍の要求は、北郷たちにとっては何の益もないものであった。

 

 

 

魏延「だが、下手をすれば揚州は孫策軍に奪われることになるのだぞ?ワタシたちを潰すためだけに揚州を捨てるというのか?」

 

張遼「そんだけ自信があるっちゅーことやろ。取られたら取り返す。ウチらが昔曹操から兌州獲った時もそーやった」

 

 

 

張遼は苦々しい表情で思い出すように言った。

 

かつて、虎牢関の戦いに敗れ、長安に落ち延びた呂布軍は、元董卓軍の張済、樊稠らと袂を分かち、

 

各地を放浪した後、曹操の挑発に乗る形で兌州を奪ったことがあった。

 

傷心の呂布を罵倒する曹操の挑発は、荒んだ呂布軍には効果的であり、

 

(兌州に呂布軍を誘い込み、返り討ちにする予定だった曹操軍側が、不測の事態で曹操他何人かの主力が不在だったということもあり)

 

呂布軍は圧倒的な武力で兌州の曹操軍を屠り尽くし、制圧したのであった。

 

しかし、兌州を制圧して間もなく、徐州にて親の仇を討ち果たした、俗にいう徐州大虐殺を終えた曹操が兌州に帰還。

 

呂布軍との長きに渡る戦闘の末、曹操は兌州を取り戻したのであった。

 

 

 

北郷(確かこれって、官渡の戦いの隙をついて、孫策が手薄の揚州をハイエナしようとしたけど、途中で死んじゃって失敗に終わるって

 

流れだったよな。けど、たぶん孫策は死なないっぽいよな・・・)

 

 

 

これまでの経験上、この世界での出来事が、必ずしも北郷の知る三国志の世界と同じでないこともあるため、

 

今回も恐らく自身の知る歴史とは異なる展開を見せるであろうと北郷は予想していた。

 

 

 

北郷(ということは、本来赤壁以降に起こるはずの、合肥の地を巡って魏と呉が長年争い続けた戦いが、前倒しで今から始まるってこと

 

なのか・・・)

 

 

 

などと北郷は色々考えてみるものの、ここでグダグダ考えても仕方がないと思い、北郷は一度思考を停止した。

 

 

 

北郷「とにかく、南蛮族のことも気になるけど、すぐに合肥に向かおう。もし間に合わなかったら大変なことになるぞ」

 

魏延「そうだな。かつて南蛮族を上手く相手取っていた趙?がいないのは苦しいが、桔梗様もおられることだし問題ないだろう」

 

高順「日が暮れるまでには揚州に入っておきたいですね。そうすれば明日の昼までには合肥城に着くことができるでしょう」

 

張遼「ほならもう出発するで!ささっと行ってちゃちゃっと孫策軍片付けて、曹操軍の度肝抜いたるわ!」

 

 

 

そして、張遼と合流した北郷たちは、鳳統捜索を一時中断し、不本意ながら曹操軍を救援すべく、合肥へと馬を走らせた。

 

 

 

【第四十回 第三章:臥竜鳳雛捜索編 ‐ 合肥救援編C・急転!援軍要請 終】

 

 

 

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あとがき

 

 

第四十回終了しましたがいかがだったでしょうか?

 

というわけで援軍要請は曹操軍からでした。

 

美以ちゃん達との問題や雛里ちゃん捜索も気になる所ですが(どうでもいいですが水鏡先生の最終試験の内容も 笑)

 

以前どこかでも言いましたが、第三章後半のキーパーソンは霞、、、合肥と言えば、霞無双な予感です。

 

華琳様に借りた貸しは大きかったわけですが、はたしてこの援軍要請に応えることが、

 

曹操軍、北郷軍、そして孫策軍にとってどう影響するのか、、、

 

なんだか南蛮やら鳳統やら合肥やらと、こんなてんこ盛りで収拾つくのか?とstsも疑わずにいられないのですが、

 

どうか温かい目で見守っていただければありがたいことこの上ありません!

 

前半の緩い感じから一変しそうな予感ですが、次回からもどうぞよろしくお願いします。

 

 

それでは最後になりましたが前回のアンケートの結果を報告します。

 

5.24.22:30現在、集計結果は以下の通りとなりました・・・

 

 

 

1.折角公式様が新キャラを作ったのだから反映させたらいいんじゃないの? → 2

2.まだキャラのこと理解してないんだから気にせずオリキャラでいったら? → 9

3.オリキャラをこれ以上増やすなよ・・・ →→→→→→→→→→→→→→→→ 0

4.もう男のオリキャラはいいよ・・・せめて女の子にしてよ・・・ →→→→→ 1

5.どっちでもいいからはよ話作れ →→→→→→→→→→→→→→→→→→→→ 2

 

 

 

他にも男の娘とかオッサンとかの意見もいただきました。

 

アンケートにお答えいただきました方々、改めましてお礼申し上げます!

 

 

というわけで、てっきゅーコンビはそのままオリキャラで作ろうかなと思います。

 

(もちろん、今後公式様のキャラがちゃんと世に出たら心変わりしちゃうかもしれませんが)

 

また、今後オリキャラ作るときに女の子にするかおっさんにするか男の娘にするかとかは、

 

まぁ話の流れとかで随時判断しようと思います。

 

あと、早く話考えます。はい。

 

 

それではまた次回お会いしましょう!

 

 

 

この世界ではミケトラシャムはただの量産型の雑魚じゃないんだぜ、、、!

 

 

説明
みなさんどうもお久しぶりです!初めましてな方はどうも初めまして!

今回は援軍要請、さて、いったい誰の援軍要請なのでしょうか、、、

ちなみに本文冒頭は捜索六日目の夜(一刀君が三顧の礼のフラグに気づいた日の夜)での話の為、

時間軸的には北郷たちとずれてますのでご注意ください。


それでは我が拙稿の極み、とくと御覧あれ・・・


※第三十七回 第三章A:臥竜鳳雛捜索編@・結成!臥竜鳳雛捜索隊<http://www.tinami.com/view/678395>


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コメント
>くつろぎすと様  お、畏れ多いお言葉…ありがとうございます!(sts)
>berku様  仰る通り今回の展開はかなり無理のある展開なのですが、逆にそれほど北郷軍誕生以来の大きな山場を迎えているということとご理解いただければと思います(sts)
ヤベェ!!楽しすぎるよ!ためてた分一気に読んだらこんなことになってるなんて!テンション上がってきてもうなんでも出来そうだよ!今なら次元の壁を越えられる…いや、超える!!よし、ちょっと音々ちゃんに会いにいってくるわ(=゚ω゚)ノバィ(くつろぎすと)
南蛮から攻められてるのに他国に救援派兵て無理すじなきがこの展開が可能なら魏を攻めるわ まさか一刃居ない間に桃の人にいつの間にか益州のっとられフラグたったかw(berku)
>禁玉⇒金球様  元董卓軍っていう肩書だけで、周りはだいたい仇敵になりますからね。 迷子で落鳳坡に迷い込んだひなりんを張任のおっちゃんが敵と思って誤射とかありそうで怖いですw(sts)
某酒場??「殺っちゃったな〜おい犯っちゃったよ〜」、オヤジ「何がです張仁さん?」、張仁「まさかあんなとこ落鳳坡で女の子が居るなんて思わないもの〜殺して罪を犯しちゃったよ〜」。張仁と鳳統の因果ですね(禁玉⇒金球)
流浪の果てに安住しても気付けば周りは敵だらけ悉く恨み積る仇だらけ旧董卓陣にしてみりゃ「曹、孫、劉、袁、南蛮etcどいつもこいつもぶっ殺してやる」状態ですね。常に先見て保険を掛ける手法は汚いのではなく巧いそして嵌った方が拙いのだ。(禁玉⇒金球)
>naku 様  ねねはいつも頑張ってます!たぶん見えないところでも頑張ってます!あ、雛里ちゃんはたぶん就活じゃなくて単純にサンシャイン付近目指してただけでしょうね(sts)
>nao 様  実在を確認できたところで他勢力に入られてしまえば意味ないですからね…汗(sts)
>神木ヒカリ様  間違いなくのこの合肥の戦いでの活躍が北郷軍の今後を大きく左右することになるでしょうね(sts)
>Jack Tlam様  数の暴力ほど恐ろしいものはないですよね。ミケトラシャムが量産された暁には三国なんてあっという間かもですw(sts)
雛里が後回しにされたwこの間に別の場所に仕官しなきゃいいが^^;(nao)
ここでうまく活躍することができれば、曹操軍も評価せざるを得ず、北郷軍はさらに名を上げることができると思う。活躍を評価しなければ実力主義の曹操軍にとって、結局は口だけなのかということを世論に広めてしまうから。(神木ヒカリ)
量産型が雑魚なのは演出。戦力として強力なのはむしろ量産型の方。「戦いは数だよ兄貴」by.ドズル・ザビ(Jack Tlam)
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