20140523ツイッタお題『●●にピッタリなキス』 |
ツーリングの途中で廃校を見つけた。
虎徹さんと2人、そっと教室に入ってみる。黒板、教卓、生徒机。なんだか新鮮で懐かしい。
僕が生徒の席に座ると、彼は教卓に立った。
「何だよ、バニー」
「似合いますね」
「何が?」
「黒板。あなたならきっといい先生になる」
「そうかなぁ」
僕が微笑んで頷くと、あなたは器用に片眉を上げて顎をかいた。
「アカデミーでも、生徒にとても慕われてたじゃないですか」
知識的に優秀な教師はたくさんいる。でも、生徒に慕われる教師になるのは難しいものだ。
もともと親しみやすい性格の彼だから、教壇に立っても成功するだろう。僕は素直にそう思ったのだ。
そんなことを考えながら、僕は暫く、教壇の上で黒板を眺めたり、教卓を触ってみたりする虎徹さんの横顔を見つめていた。
すると、彼がふとこちらを見た。
目が合い、ゆっくりと微笑んで、虎徹さんは僕のほうに歩いてきた。
ゆっくりと教壇を降り、靴の音を響かせて――
やがて僕が座っている席の前まで来ると、彼はお行儀悪く机の上に腰かけた。
「無理じゃねぇかな、俺が先生とか」
すぐ近くで響く、低く甘い声。
「どうして?」
尋ねた僕に、融けるような微笑み。ざ、と窓の外の植樹が風に鳴る。
「授業中に…生徒見て、こんなことしたいなんて思うようじゃ」
そう言った虎徹さんの片手が頬に触れ、顔が近づく。そっと上唇を食んで離れた彼は、微かに笑いを含んだ声で呟いた。僕は呆れと、ほんのりとかきたてられた情熱との間で小さくため息をついた。
「こんなことって…あなた、こういう場所なら誰にでもそうしたくなる癖でもあるんですか?」
わざと真顔で質問を投げかける。すると、今度は彼はくすくすと笑いだした。
「冗談だよ。もしお前と『先生と生徒』なんて関係だったら」
再び、虎徹さんの金茶色の瞳が近づいた。
「絶対に…我慢なんかできねぇけどな」
僕がそれに返事をする前に、深く熱い口付けに唇を塞がれた。唇から、舌から、溶かされてしまいそうな、激しく、心地よいキス――
「…やべぇ。お前と2人きりで放課後補習とか絶対無理。想像しただけで超コーフンしちまった」
掠れた声で、僕の顔を掴んだままの彼が言う。
「まあ、お前は優秀だから…きっと補習なんていらねぇんだろうけどさ」
「僕だって…もしあなたが先生だったら」
上がりそうな息の下で微笑む。欲を隠そうと思っても、彼と同じく掠れた声しか出なかった。
「わざと赤点取って…補習を受けようと思うかもしれませんね」
微笑むと同時に、再び口付けられる。虎徹さんの体重がまともにかかり、僕は彼ごと椅子の上から床に転がった。
埃っぽい床に僕を押しつけ、彼は僕の口内を隅々まで愛撫し、唇を食んだ。僕も夢中で彼の服の背を掴み、彼に応える。が、欲と情熱たっぷりに僕の首筋を指先でなぞった虎徹さんは、勢いよく身体を起こした。
「っだ!ヤベぇ。マジでヤバい!このシチュヤバすぎっ」
そう言うと、僕の腕を掴み、ぐっと引っ張って起こしてくれた。
「もう行こうぜ、バニー。こんなとこでおっぱじめちまったら、絶対予定の時間に宿に着けねぇぞ」
「…そうですね」
少し目眩を覚えながら、僕も立ち上がる。彼の言うことも尤もだが…正直――何て中途半端!!
すると、虎徹さんが悪戯っぽく笑った。
「続きは宿でやろうぜ、バニー」
ぐっとひそめた声で、更に続ける。
「今夜は俺のこと…『先生』って呼んでくれてもいいぜ?」
それには僕も吹き出した。
「では、急ぎましょうか、虎徹さん。飛ばしますから、居眠りして落ちないでくださいよ」
校舎を出ると、初夏の爽やかな風が空気を洗う。
果たして今夜、本当に彼を『先生』と呼んだら――彼は一体、どんな顔をするだろうか。
たまの休日を利用した、僕達の小さな旅行の一コマ。
了
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診断メーカーお題。 『さくやの虎兎にピッタリなキスは…誰もいない教室で興奮を抑えきれずにするキスです』 というので書いてみました。 |
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