「真・恋姫無双 君の隣に」 第24話 |
着いたか、こんな形でまたアイツに会う事になるとはな。
フン、軍務だ、仕方あるまい。
祭殿の率いる孫軍五千、穏殿と私が補佐する事になった。
穏殿は参謀として、私は江夏出身で地に詳しい事から従軍している。
孫家では援軍に雪蓮様と蓮華様のどちらが行くかで揉め、半日かかっても互いに譲らず、挙句の果てには話を聞きつけた小蓮様が「シャオも会ってみた〜い」と言われて収拾がつかなくなった。
その事を聞いた祭殿が御姉妹に拳骨を落として、「儂が往く」の一言で決まった。
御姉妹も祭殿には逆らえず、出陣するまで亞莎を含めて羨ましげな目で見続けられた。
城外で既に出陣の準備が出来ている一刀が我等を迎えた。
「北郷です。此度の援軍の要請を受けて頂き感謝します」
「長沙太守、孫伯符の命で参った黄公覆と申す。御遣い殿のお気遣い、個人としても礼を申し上げる。思春は既にご存知じゃろうが、後ろにおる二人が共に参戦する者達じゃ」
「陸伯言と申します。お見知り下さい〜」
「甘興覇、主の命により参りました」
・・一刀、何を嬉しそうな顔をしている。
そういう笑顔は蓮華様にだけ見せていればいいんだ、別に私にまで見せなくていい。
フン、大陸中に武名を轟かせておきながら何も変わっていないか。
どうせ自分の身辺警護は疎かなままだろう。
・・仕方のない奴だ、今回は私が護って・・、
「あれ〜、どうして曹操軍の程cさんが此処にいるんですか〜?」
「真・恋姫無双 君の隣に」 第24話
一刀との不戦同盟を華琳が受ける事に決めて、僕達軍師は今後の行動を話し合う。
「青州を攻めましょう。あそこは黄巾の残党が多く居ます、天和達に帰順を促させれば多くの兵が取り込めます」
「でもそれだと袁紹と陶謙の双方に挟まれる形になる。徐州を陥として一刀との境界線をはっきりさせた方が、後方の憂いを軽減出来ると思う」
「待って!出来れば?州の統治に時間が欲しいのよ。足元がおぼつかないと急変があった時に対処が難しくなるわ」
「まずは外交で揺さぶってみませんかー。袁紹さんの目を河北に向けさせて敵の足並みが揃わないようにするといいと思いますー」
こうやって意見を交わしてると、何か燃えてくるわ。
僕と同じくらいの力を持つ軍師と競い合って知を出し合う、軍師の血が騒いで仕方ないもの。
桂花達も同じかな?
僕も此処に、大分馴染んできたみたい。
・・月も長安で政に励んでると聞いてる。
僕も頑張る、出遭えた時に胸を張って逢えるように。
更なる議論を重ねる僕達に、華琳が不敵な顔を浮かべて予期出来ない言葉を述べた。
「貴女たちの誰か、一刀の軍師になってきなさい」
・・はあ?何言ってんのよ、華琳は。
桂花や稟も僕と同じで、言ってる事が理解できない顔をしている。
風は特に変わりないわね。
「聞こえなかったかしら?その表情だと聞こえてるでしょう、フフ」
楽しそうに話す華琳に、正気に戻った僕達が問い返す。
「ちょっと、本気?」
「嫌です!絶対に嫌です!私が華琳様の元を離れるなんてありえません!」
「華琳様、おふざけにしても程がありましょう。華琳様の軍師である私達が、何故一刀殿の軍師になるのです」
僕達の猛抗議にも華琳は余裕を崩さない、つまり当然狙いがあるという事。
改めて言葉を吟味する、・・確かに一刀の陣営は軍師が不在よね。
張勲は軍師に近いけど、戦術より謀略を得意としてるし。
「春蘭ちゃんの恩を返す為ですかー?」
風の言葉に疑問が解ける。
「ああ、そういうこと。荊州攻略だけ手伝ってこいって訳ね。それなら納得だわ」
春蘭の件は、その場にいた秋蘭から事のあらましは聞いてる。
あのお人好しのことだから恩に着せるつもりはないだろうけど、誇り高い華琳がそのままにしとく訳ないわね。
大体、一刀の奴、華琳達と知り合いだなんて聞いてないわよ。
それも真名で呼び合う仲なんて。
「成程、一刀殿とはいずれ戦うことになるでしょう。借りは早めに返しておくべきでしょうね」
「た、確かに華琳様がアイツに借りを作ったままなんていいわけないわ、でもそれなら春蘭に行かせればいいじゃない」
そんなの無理に決まってるでしょ。
春蘭、秋蘭、霞の三将はそれこそ休み無しで戦ってるのに。
「今の状況で春蘭が抜けたらこっちがきついわよ」
「詠の言う通りです。桂花、冷静になって下さい。全ての状況を鑑みるに、私達の誰かが行くのが最善です」
「じゃあ、誰が行くのよ?私は華琳様と離れるなんて絶対に嫌よ!」
「それは私とて同様です。詠、貴女はどうですか?」
「僕が行ける訳ないでしょ。つい最近に投降した身なのよ」
それに冗談じゃないわよ、どんな顔して一刀と会えっていうのよ。
ああ、僕の馬鹿、何であんな事しちゃったのよ。
く、口付けしちゃうなんて。
月、あれは好きとかじゃなくて、そう、制裁なのよ。
勝手に真名を呼んだ一刀への罰なのよ。
僕が大事なのは月だから、信じてくれるよね。
「風、流琉を護衛につけるわ。貴女の成すべき事は分かるわね?」
「はいー、お任せをー」
「という訳で風と流琉ちゃんは、お兄さんに差し出されてしまったのですー。哀れ生贄の風達はお兄さんに食べられてしまう運命なのですよ」
チリーン。
違うだろ!そりゃ二人が傍に居てくれるのは嬉しいし心強いけど、誤解を招く事を言うな!
「に、兄様。優しくして下さい」
チリーン。
流琉、相変わらず耳年増だね、女の子が簡単にそんな事言っちゃいけません。
全く華琳のヤツ、こんな意表を突いてくるとは。
春蘭が失明してなくて本当に良かったけど、恩を返すも含めて絶対に面白がって送ってきたに違いない。
好きに使っていいと書面に書いてたけど、大事な風と流琉を粗末に扱えるかっ!
おまけに玉を磨くのはいいけど傷はつけないようにってどういう意味だ、・・分かるだけに情けない気持ちになるよ。
とはいえ断ったら外交問題になるし、絶対に俺の性格を見越しての考えだ。
「風、流琉、後でちょっと話があるから」
「おやおや、流石お兄さんですねー。二人まとめてですか」
「兄ちゃんよう、種馬の名に恥じない活躍だな」
「風。・・ちょっと待て!まさかそっちでも俺は種馬って言われてるのか?」
「ぐう」
「寝るなっ!」
「おお、何を今更な事を問われて、白々し過ぎて眠ってしまったのですよー」
チリーン。
「わははははっ、噂には聞いとったが、流石は御遣い殿じゃな。此度の戦、楽しみになってきたわい」
黄蓋将軍が噂を聞いてるって、孫家でもか?
一体俺って他国で何て噂されてるんだよ?
「やっぱり曹操さんにも手を回してたんですね〜。抜け目ないです〜」
「それはこちらも同じなのですよー。お兄さんお得意の皆が得するので断れない交渉術が炸裂ですねー」
「あっ、そうですね。私も天の国の料理を教えてもらえますし」
チリーン。
いつのまにか背後に思春が立っている。
「一刀、以前に別れ際で私が言った言葉を覚えているか?」
首、とか言ってたかな。
孫家の人達が予定通り到着したので、このまま出発です。
兄様と並んで馬を進めますが、つい兄様を横目で何度も見てしまいます。
私と風さんは一昨日到着して、不戦同盟の返事と暫くお世話になる事をお伝えしました。
兄様は凄く驚いてましたが、笑顔で私達を歓迎してくれました。
昨日の朝食は兄様が自ら作ってくれた、ぱんけーきという天の国の料理を頂きました。
とっても美味しくて作り方を教えて欲しいとお願いしたら、今度一緒に作ってみようと約束してもらえました。
朝食後に風さんが案内を買って出てくれて街を見て回りました。
街は凄く賑わってて、初めて見る食材が一杯あります。
街の人に聞いたところ、兄様は農作業に役に立つ知識を広め、牛や豚に山羊などを増やし、商人を通して方々の国から栽培できそうな新たな食材を探してもらってるそうです。
それに天の国の簡単な料理や加工品の作り方を無償で教えてくれて、今では子供でも知っているとか。
話を聞いた人は小さな村の出身で、貧しかった村も御飯がちゃんと食べられるようになったと嬉しそうに言われてました。
他にも色々な所で話を聞いてみましたが、皆さんが兄様の事を笑顔で話されてます。
褒めるだけじゃなくて、兄様の事を笑い話の種にもしていましたが。
警備の人達は聞いてても咎めようとしません。
こんな事ってありえるんでしょうか。
「流琉ちゃん、不思議ですかー」
吃驚しました、思ってたことをいきなり言われて返事が出来ない私でしたが、
「ふふふー、顔に出てましたよ」
「そ、そうなんですか」
私は自分の顔に触れながら、
「はい、不思議です。だって兄様はとても偉い立場の人なのに」
「そうですねー。お兄さんは全然偉そうに見えませんが」
「ですが納得もいくんです。上手く言えないんですが、兄様といると普段どおりの自分でいられるんです」
街の人達も同じなのではないでしょうか。
華琳様にお仕えしてから大分経ちましたけど、やっぱり今でもお傍にいくと緊張します。
それなのに兄様だと自然体でいられるんです、数えるほどしか会ってないのに。
ここに来る事を聞いた時も前に戦った関係なのに不安は湧かなくて、逆に会えると思ったらとても楽しみにしてました。
季衣にも凄く羨ましがられたし。
「風も同じです。お兄さんといると、とっても楽です、どうしてなんでしょうねー?」
そんな会話をして昨日を過ごしましたが、兄様の事ばかり頭に浮かんで晩はあまり眠れませんでした。
今も多くの兵を率いている兄様を見ても、やっぱり緊張はしません。
でも兄様と目が合った時は、恥ずかしくなって目を逸らしちゃいました。
しくじりました。
「祭様〜。すいません、突入する機を掴めませんでした〜」
「かまわん。次の戦までくらい待てる。儂等は何年も耐えていたのじゃからな」
今回の孫軍の編制は、祭様をはじめ先代孫堅様の頃から仕えていた古参兵が大部分を占めます。
その為、弔い合戦となる今回の戦に対して戦意は非情に高いです。
此度の戦で孫軍は遊撃軍としての扱いです、行動は私達の判断に委ねられてます。
ですが、今回私達の出る幕はありませんでした。
強いですね〜、袁術軍五万。
黄祖軍三万を瞬く間に粉砕です〜。
野戦で応じてきた黄祖軍は、程cさんの計に嵌まって翻弄され、袁術軍の見事な連携で一蹴されました。
御遣いさんにお願いされて、袁術軍五千の指揮を任された思春さんも敵先鋒の将を討ち取る大活躍です。
黄祖には逃げられましたが、これで江夏の攻略は決まりでしょうね〜。
それにしても、御遣いさんは大胆不敵です。
戦術を曹操軍の程cさんに任せて、自軍の五千を孫策軍の思春さんに任せて、援軍の私達は好きにさせる。
「ありえませんよね〜」
「穏、何がありえんのじゃ?」
「御遣いさんの人の配し方です。大事な戦で他国の将や軍師を中枢に置いて戦うなんて出来ませんよ〜」
冥琳様がここにいらっしゃいましたら、絶対に同じ事を思われます。
「ふむ、お主の言う事は分かるが結果はこの通りじゃ。儂から言わせれば思春達は信頼してくれた御遣いの気持ちに応えただけじゃ。理詰めで考えるだけでは人は力を充分に発揮できぬよ」
軍師としては耳が痛いですね〜。
冥琳様から我が軍の戦力保持、袁術軍の戦力分析、御遣いさんの力量を測るように言われてましたが、それでは不充分のようですね〜。
冥琳様と私は、このままでは孫家は御遣いさんに取り込まれてしまうと危惧してます。
御遣いさんは雪蓮様に敵だと公言してられるそうですが、行いは孫家にとって好い事ばかりです。
下心があれば雪蓮様が見抜くでしょうし、蓮華様や亞莎ちゃん達も慕いはしないでしょう。
・・ですが力の差は大きいですし、今も広がる一方です。
孫家に手を差し伸べた理由もお聞きしましたが、到底納得できません。
董卓軍に味方した事も、未だに理由が分かりません。
一体何を考えてるんでしょうか〜。
「穏、知識を得るのは書物でもよいだろうが、人を知るには接さねば何も分からぬぞ」
夜も更けて天幕の中で俺は書状を作成してる。
よし、出来た。
劉表への降伏の勧告状、降伏条件を記した書状。
・・絶対受け入れないだろうけどな。
細作に劉表の領地へ降伏条件を流すように指示してある、どう転ぶかは正直分からない。
でもこれは今後の戦いの重要な要素になる、ただ勝つだけじゃ俺にとっては意味が無いんだ。
片付けていたら見張り番の兵が来客を告げる。
「御遣い殿、失礼するぞ」
「黄蓋殿、何か御用でも?」
「なに、少し話したいと思うてな。少し付き合わんか」
「駄目ですよ、お話は歓迎しますが酒は駄目です」
「なんじゃ硬いヤツじゃのお、仕方ない、酒は抜きじゃ」
黄蓋殿が座られ、俺も対面に座る。
少し緊張するな、今迄こんな妙齢の女性とは接した事が無かったから。
でも話してみれば印象どおり、おおらかで大人の女性だった。
色々聞いて聞かれて楽しい時間が流れた、俺も甘えてしまったのか愚痴もこぼしてしまった。
「うむ、楽しかったぞ。次は酒を飲みながら語りたいものじゃ」
「そうですね。その時は一番良い出来の酒を出しますよ」
「そういえば酒も造ってると聞いてたのお、楽しみにしとるぞ」
天幕から出て行こうとする黄蓋殿の足が止まる。
「御遣い殿、お主は孫家の敵か?味方か?」
「敵です。必ず雪蓮とは戦う事になるでしょう」
「フッ、はっきり言うのお。じゃがそれで良い」
そのまま振り返らずに黄蓋殿は天幕から出て行った。
二日後、俺達は黄祖を討ち江夏を占領する。
「桔梗様、至急の用とお聞きし参りました」
「焔耶、劉璋のボウズが劉表と同盟を結んだ。わしらは援軍として荊州に向かう。早急に準備を整えよ」
「はっ、して敵は」
「おぬしも聞いた事があるだろう。先の反董卓連合の戦で五倍以上の兵を持つ連合軍を実質退けた、天の御遣いよ!」
説明 | ||
久しぶりに一刀に出遭う思春。 だが一刀の傍には予想外の人物が、 |
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コメント | ||
そういや・・一刀のところって軍師はいつもスポット参戦ばっかだな・・・・・・一応将来的にはねねがくるが・・・・これはあれだな。オリキャラだな(霊皇) 大事な戦で援軍に中央を任せるのは一刀しかやらないね〜w今回は援軍で軍師きたからいいが今後軍師不足どう解消するんだろう^^;(nao) 元が高い所に未来の知識でてこ入れ、そこに天の御使いの名と善政が加わるんだから国力あがるのも当然か。しかし劉表と劉璋の同盟か。あれ?劉備詰んだ?(白黒) そりゃ、得体の知れない奴に王家が呑み込まれるのを危惧するのは当たり前だわな……理詰めが通用しないのが一刀の強みだが。ある意味一番敵に回してはいけない存在。益州にも動きがあったか……いろいろ動いてきたな。(Jack Tlam) |
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