英雄伝説〜運命が改変された少年の行く道〜 |
〜トールズ士官学院〜
「もし……」
リィンが傘をさして学院を出ようとするとリィンを呼び止める声が聞こえた。すると正面から一人のメイドがリィンに近づいてきた。
「雨の中、お呼び止めして申し訳ありません。こちらの学院の学院長室はその建物でよろしいでしょうか?」
「あ、はい。本校舎の1階右翼ですね。受付の人は帰ったかな……よかったら案内しましょうか?」
「ふふっ……ありがとうございます。ですが、そこまでお手を煩わせるわけには参りません。それでは失礼します―――リィン様。」
リィンの申し出を遠慮したメイドはスカートを摘み上げて会釈をした後入口に近づき、傘をしまうと再びリィンに一礼をして校舎内へと入って行った。
「……………………………」
メイドが去るとリィンは黙って考え込み
(あら♪もしかして好みのタイプだったのかしら♪)
「違うから。それより……今の人、俺の名前を呼んでいたよな……?」
ベルフェゴールの念話に呆れた表情で答えた後考え込んだ。
「あら、リィン?」
その時アリサが近づいてきた。
「アリサか。そっちも帰りなのか?」
「ええ、エマやプリネ達はまだ残って勉強していくみたいだけど。私の方は寮に戻って明日に備えることにするわ。」
「そうか……えっと、せっかくだから一緒に帰るか?」
「そ、そうね。」
リィンの申し出にアリサは頬をやや赤らめた後リィンと共に下校し始めた。
〜トリスタ〜
「その、考えてみたら2人で帰ることなんて珍しいわね。」
リィンと共に下校しているアリサはリィンから僅かに視線を逸らして呟き
「そう言えば……ハハ、ひょっとしたらこれも雨の日のおかげかな?」
(あら♪)
苦笑しながら言ったリィンの言葉を聞いたベルフェゴールはからかいの表情になった。
「…………………………貴方、よく天然って言われることない?」
一方アリサはジト目でリィンを見つめた後尋ね
「へ……?うーん、別にそんなことは。ああ、でもなぜか妹達には何度か言われた事があったな。」
尋ねられたリィンは首を傾げた後双子の姉妹に言われた時の事を思い出した。
「はあ……その妹さん達とは気が合いそうな気がするわね。」
「???」
(フフ、ご主人様に射止められた者同士としてかしら?)
疲れた表情で溜息を吐いたアリサの言葉を聞いたリィンは首を傾げ、ベルフェゴールは口元に笑みを浮かべて見つめていた。
「それで、中間試験の自信の方はどうなの?」
「そうだな……やれることはやったけど。ベストを尽くせたかといえばちょっと厳しいかもしれない。」
「ふふ、そっか。」
自分の質問に難しそうな表情で答えるリィンをアリサは微笑みながら見つめた。
「アリサも何気に頭が良いよな。入学試験も、委員長やマキアスの次くらいの成績じゃなかったか?」
「ううん、ユーシスの方がちょっと上だったわね。これでも地元じゃ、トップに近い成績だったんだけど……さすがに帝国は広いなって改めて実感しちゃった。」
リィンの質問に首を横に振って答えたアリサは苦笑した。
「はは、そういうもんか。アリサは確か、ルーレ市の出身って言ってたよな。あの大都市のトップというのもかなり凄いと思うけど。」
「うーん、と言っても日曜学校での成績だから。それを言うならリィンの方が凄いじゃない。」
「俺?」
アリサの言葉を聞いたリィンは首を傾げ
「えっと、プリネ達から貴方達―――”シュバルツァー男爵家”の立場はある程度聞いているわ。」
「”シュバルツァー男爵家”の立場??」
「その……元敵国の貴族だから、忠誠の証として子供のリィン達が幼いのにメンフィル帝国に留学して、軍隊やメイド等何らかの形でメンフィル帝国に仕える事になったって。」
首を傾げているリィンにアリサは言い辛そうな表情で答えた。
「ああ、その事か……とは言っても、誰かに話すような程変わった生活じゃないし、待遇だって毎日朝食と夕食がついている宿屋をわざわざ用意してもらったし、宿自体も治安が行き届いている安全な場所にある綺麗な宿屋で居心地がよかった上宿代はメンフィル帝国が全額負担してくれたから、そんなに酷い生活じゃなかったし……俺達の世界ではおとぎ話の中でしか出てこないような種族もたくさんいる上、魔術もあるから妹は絵本の世界に来たみたいだって、結構喜んでいたよ。」
「そうなんだ。学校とかはどうしていたの?異世界には七耀教会がないから、日曜学校なんてないと思うのだけど……」
「学校はメンフィル帝国が経営している学校に通っていたよ。日曜学校と比べると少しだけ進んでいたから、追いつくのに最初は苦労したし、昼食付きで朝から昼すぎまで授業があったから、慣れない内は戸惑ったよ。」
「へえ……そんなに長い時間勉強する事も驚いたけど、昼食までついているんだ……」
リィンの説明を聞いたアリサは目を丸くした。
「……その、リィン。貴方、私の名前のこと気になったりしないの?」
リィンと共にある程度歩いていたアリサはある事を思い出して申し訳なさそうな表情で尋ね
「ああ……”R”っていうファミリーネームのことか?いや、気になるけど何か事情があるんだろう?」
尋ねられたリィンは考え込んだ後尋ね返した。
「……その、別に大した事情っていうわけじゃ……貴方もそうだけど、フィーの出身とか聞いたら大したことない気がして……」
「うーん、俺はともかく確かにフィーは驚きだったな。――――”猟兵団”の出身か。どんな経緯かは気になるけど。」
アリサの話を聞いたリィンは考え込みながら呟いた。
「なんとなくサラ教官が事情を知っていそうだけど……あの二人、入学式の時から初対面じゃ無いみたいだし。」
「ああ、そうだったな。初対面といえば……さっき不思議な人に会ったんだ。」
「不思議な人?」
「ああ、アリサと会う前にちょっと話したんだけど……」
リィンはアリサと会う前に出会ったメイドの事を話した。
「へえ、貴方の名前を知っていたメイドの人ねぇ。……実は街でナンパしたことがあるとか言わないよね?」
リィンの話を聞いたアリサは目を丸くした後ある事に気付いてジト目になってリィンを見つめ
「ハハ、そんな甲斐性はないって。俺達よりも少し年上か……二十歳すぎくらいの人だったな。」
見つめられたリィンは苦笑しながら答えた。
「二十歳すぎ…………」
リィンの話を聞いたアリサはその場で考え込み
「?どうした?」
アリサの様子を不思議に思ったリィンは尋ねた。
「う、ううん、何でもないの。……そ、そうよね。”彼女”であるハズないわよね。母様のフォローで手一杯だろうしこっちにまで来るなんてことは……」
「???」
自分に言い聞かせるように独り言を呟いているアリサを不思議に思ったリィンは首を傾げた。
「コホン、普通に考えたら第一学生寮で働いている新人のメイドさんじゃない?貴方の名前を知っていたのはちょっとわからないけど。」
「うーん、そうなんだよな。」
その後寮に戻ったリィンは中間試験に備えて勉強をした後、翌日に備えて眠り始めた。
説明 | ||
第67話 | ||
総閲覧数 | 閲覧ユーザー | 支援 |
1827 | 1711 | 3 |
コメント | ||
感想ありがとうございます アリサはまさに期待を裏切らない反応をしてくれますよねww(sorano) アリサよ。その考えが既に嵌っているとなぜ、気づかない?・・・ケケケケ(Kyogo2012) いえ、その彼女さんですww(本郷 刃) もしかしなくてももう分かるなあwそしてアリサは顔を真っ赤にして怒るのが目に見えるw(kanetosi) |
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