英雄伝説〜運命が改変された少年の行く道〜
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〜貨物列車内〜

 

「……だ、だまされた……せっかく家を出たと思ったのに掌(てのひら)の上だったなんて……」

「えっと、その……」

「元気を出してください、アリサさん。」

肩を落として疲れた表情になったアリサをエマとプリネは心配そうな表情で見つめ

「どうやらお母さんとは上手く行ってないみたいだな?」

ルーレ駅でのアリサとイリーナ会長のやり取りを思い出したリィンは尋ねた。

 

「ええ……見ての通りよ。……何というか、昔から折り合いが悪くてね……士官学校に入ったのも実家を出たからなんだけど……―――まさかあの人が理事をしている学院だったなんてっ!ああもう、バカバカッ!なんでもっとちゃんと調べなかったのよ〜っ!?」

「その、何というか……」

「ご愁傷様と言うしかありませんね……」

「えっと……すみません。常任理事の一人がアリサさんのお母さんである事をもっと早く言っておけばよかったかもしれませんね。」

自分を責めているアリサをリィンとエマは心配そうな表情で見つめ、プリネは申し訳なさそうな表情で見つめた。

 

「ふむ……そこまで嫌がることか?」

一方アリサの様子が気になったガイウスは不思議そうな表情で尋ねた。

「その……色々あるのよ。昔から、仕事人間のくせに私には変に干渉してきて……口では好きにしろとか言いつつ、今回みたいに手を回してきて……はあ……変だと思ったのよ。お祖父様から頂いた学費口座が入学以来、減ってないんだもん……」

ガイウスの質問に答えた後溜息を吐いたアリサの話を聞いたリィン達はアリサの迂闊さに冷や汗をかいて呆れた。

 

「という事は、お母さんが払ったということか……」

「理事をしてらっしゃるならその程度の融通は利きそうですね。」

「フン―――いいじゃないか。その程度の干渉くらい、ありがたく思うべきだろう。」

「なっ……!?」

ユーシスの指摘を聞いたアリサは信じられない表情でユーシスを見つめた。

 

「あの場に現れて、俺達に挨拶しただけまだマシというものだ。―――完全な無視よりもな。」

「あ……」

「……ユーシス。」

「ユーシスさん……」

ユーシスとアルバレア公爵の親子関係を思い出したアリサやリィン、エマは心配そうな表情でユーシスを見つめ

「……フン。つまらん事を言ったようだ。

リィン達に見つめられたユーシスは鼻を鳴らして何でもない風に装った。その後シャロンからもらった昼食を食べ終えたリィン達は列車の乗組員と会話をしていた。

 

「――へえ、士官学校の実習なんかで高原に行くのか。軍人のタマゴってのも色々と大変なんだなぁ。」

「はは……まあ、それなりには。」

「普通の士官学校としてはかなり異例だと思いますが……」

「確かにそうですね。異例なのは私達――”Z組”と言うべきでしょうし……」

乗組員に感心されたリィンやエマ、プリネはそれぞれ苦笑していた。

 

「しかし、あの時のお前さんがそんな制服を着ているなんてなぁ。馬子にも衣裳っていうか、なかなかカッコイイじゃないか。」

「そうか……ありがとう。」

乗組員の賛辞の言葉にガイウスは静かに頷いた。

「ガイウスは背が高いから士官学院でも目立つよな。」

「そうね、2年の先輩を含めてもかなりの高さじゃないかしら。」

「ノルドの民というのは皆、お前のように背が高いのか?」

「いや、オレより背が高いのはオレの父くらいだろう。弟は小柄の方だが……これから伸びるかもしれない。」

ユーシスの質問に答えたガイウスは故郷にいる兄弟たちの顔を思い出した。

 

「ガイウスさんってたしか兄弟が多いんですよね?」

「弟一人に、妹が二人いる。人見知りするかもしれんがよろしくやってくれ。」

「ふふ、わかったわ。」

「しかし段々、ノルド高原に近づいてきた気分になってきたな。」

「フッ、確かにな。」

「一体どんな所なんでしょうね?」

「は〜、何だか羨ましいねぇ。―――今、ちょうどアイゼンガルド連峰の半分くらいまで来ている。ゼンダー門まで2時間くらいだからもう少しのんびりしててくれ。」

「ええ、わかりました。」

「よろしくお願いする。」

そして乗組員はその場から去って行った。

 

「春に士官学院に来るときに知り合ったのか?」

乗組員が去ると乗組員がガイウスを知っていた事を思い出したリィンはガイウスに尋ねた。

「ああ、その時も同じ貨物列車でな……帝国の習慣についても色々と教えてもらった。」

「ふふ、なるほど。」

「それは助かったでしょうね。」

「ああ、オレを士官学院に推薦してくれた恩人も含めて色々な人に世話になっている。これも風と女神の導きだろう。」

「風と女神か……」

「はは、ガイウスらしいな……」

(フフ、その女神の子孫がいると知ったら、どういう反応をするでしょうね。)

その後列車はようやくリィン達の目的地である”ゼンダー門”に到着した。

 

16:30―――

 

〜ゼンダー門〜

 

「おお、やっと到着したか。」

リィン達が改札を出ると隻眼のエレボニア将校がリィン達に近づいてきた。

「あら、貴方は確か……」

「中将……ご無沙汰しています。」

エレボニア将校に気付いたプリネは目を丸くし、ガイウスは軽く会釈をして挨拶をした。

「うむ、数ヵ月ぶりになるか。士官学校の制服もなかなか新鮮ではあるな。”トールズ士官学院”……深紅の制服は初めて見るが。」

「これが自分達”Z組”の象徴である色だそうです。」

(………どうやら帝国正規軍の将官の方みたいね……)

(ああ、中将という事はこの門の責任者なんだろう。)

(ガイウスさんと随分親しいみたいですけど……)

(しかし隻眼か……どこかで聞いた事があるような。)

ガイウスと親しく話している様子の将官をリィン達は興味ありげな表情で見つめ

「ふむ、そしてそちらが……」

「ええ、オレの級友で”Z組”の仲間になります。」

リィン達を見回した将官にガイウスは頷いて説明した。

 

「―――士官学院Z組、リィン・シュバルツァーです。」

「初めまして、アリサ・ラインフォルトです。」

「エマ・ミルスティンです。よろしくお願いします。」

「ユーシス・アルバレア。お初にお目にかかります。」

「フフ、噂には聞いていたが面白い顔ぶれが集まっているようだ。それと……ご挨拶が遅れ、申し訳ありません、プリネ姫。」

リィン達の事を微笑ましそうに見つめていた将官はプリネに気付いて会釈をし

「こうして実際に会うのは初めてでしたね、ゼクス中将。プリネ・カリン・マーシルンと申します。オリヴァルト皇子やミュラー少佐から中将のお噂はかねがね聞いてます。」

「フフ、一体どんな噂をされているのやら。」

プリネの話を聞いた将官は苦笑した後、リィン達を見つめて自己紹介をした。

 

「帝国軍、第三機甲師団長、ゼクス・ヴァンダールだ。以後、よろしく頼む。」

「”隻眼”のゼクス……!」

「アルノール家の守護者か……」

将官―――ゼクス中将が名乗るとリィンとユーシスはそれぞれ目を見開いてゼクス中将を見つめた。

「ほう、私の名を知っているようだな?」

「アルノール家の守護者……」

「それって確か……」

「……”ヴァンダール”といえば、皇族・アルノール家を守護する武門の一派として有名だ。そして”隻眼”のゼクスといえば、帝国正規軍で五本の指に入る名将とも聞き及んでいる。」

「”アルゼイド流”と並ぶ帝国における武の双璧……その、お目にかかれて光栄です。」

「ハハ、そう持ち上げられるほど大層な人間ではないのだが。おぬし達の話も聞きたいがさすがに時間も時間だ。今日中に帰るつもりならすぐに出発した方がいいだろう。」

「ええ、そのつもりです。すみません。お願いしていた件は………?」

ゼクス中将の言葉に頷いたガイウスはゼクス中将を見つめ

「うむ、用意してあるぞ。」

ゼクス中将はガイウスの問いかけに頷き、その様子を見守っていたリィン達は首を傾げた。

 

「お願いしていた件……?」

「えっと、今日中にガイウスの実家に行くのよね?」

「もしかして移動手段の確保ですか?」

「ああ、プリネの言う通りオレの実家に向かう為の移動手段を中将に用意していただいた。」

「フフ、ついてくるがいい。」

そしてゼクス中将について行ったリィン達が外に出ると遠くも見渡せるほどのノルド高原の牧歌的な景色が見えた。

 

〜ノルド高原〜

 

「こ、これは―――」

「………………」

「なんて……なんて雄大な……」

「鉄路の果て……遥かなる蒼穹の大地……いや―――言葉は不要か。」

「ええ……これほど圧巻される景色に似合う言葉はありませんね。」

(へえ……これほどの風景、もうこの時代には残っていないと思っていたのだけど……)

(うわあ〜!この草原の空を思いっきり飛んだら気持ちいいんだろうな〜!)

(素晴らしい!人の手による開発がされていないこの景色!一種の芸術だな!)

(……中々のものですわね。しかし……この覚えのある気配……どうやらリザイラはこの高原のどこかに”領域”を同化させているようですわね。)

ノルド高原の景色に圧倒されたリィン達は呆け、ベルフェゴールとペルルは興味ありげな表情をし、アムドシアスは感心し、フィニリィは驚いた後真剣な表情で考え込んだ。

「フッ、気に行ってくれたようで何よりだ。」

リィン達の様子を見たガイウスは口元に笑みを浮かべた。するとその時軍人達が馬を連れてきた。

 

「馬……もしかして。」

「そうか……馬で集落まで移動するのか。」

「ああ、高原での移動は馬がないと成り立たない。馬術部のユーシスはもちろん、リィンとアリサ、プリネも乗れると聞いていたからな。」

リィンとユーシスの推測に頷いたガイウスは説明をしてリィン達を見回した。

 

「あ、うん。たぶん大丈夫だと思うわ。」

「俺も実家で乗っていたから大丈夫だ。」

「私もたまに乗馬をしていますから勿論大丈夫です。」

「えっと、私は馬には乗った事ないんですけど……」

唯一乗馬経験のないエマは不安そうな表情でガイウスを見つめ

「委員長は、誰かの後ろに乗って欲しい。馬の負担の事を考えるとアリサかプリネの後ろが良さそうだ。」

「確かに……エマ、それでいい?」

「は、はい。ちょっと緊張しますけど……」

ガイウスの提案に頷いたアリサの言葉にエマは頷いた。

「よし……さっそく乗らせてもらうか。」

そしてリィン達はそれぞれ騎乗した。

 

「よーし、どうどう。」

「フフ、いい子ね。」

「……いい馬だな。」

騎乗したリィンやプリネ、ユーシスはそれぞれ馬を宥め

「エマ、大丈夫?」

アリサは自分の背後で自分の腰を掴んでいるエマに尋ねた。

「は、はい……何とか。

「ふふっ、走り始めたらちゃんと掴まっててね。」

「フフ……大丈夫そうだな。」

二人の様子を見たガイウスは安堵の表情で微笑んだ。

 

「いずれもノルドの集落で育てられた駿馬だ。1時間もかからずに集落までたどり着けるだろう。―――そうだ。地元のガイウスはともかく。お主たちにはこれを渡しておくとしよう。」

「え……」

ゼクス中将はリィン達にノルド高原の地図を渡した。

「わぁ……!」

「ずいぶん詳細でわかりやすい地図ですね。」

「なるほど、軍の測量で作成した物というわけか。」

「高原の広さを考えると相当の時間がかかったんでしょうね……」

「うむ、実習の時に役立てるといいだろう。」

「……とても助かります。」

ゼクス中将の好意にリィン達はそれぞれありがたく受け取った。

 

「――さて、そろそろ出発するといい。風と女神の加護を。長老とラカン殿によろしくな。」

「はい。」

「わざわざのお見送り、ありがとうございました。」

「それでは失礼する。」

そしてリィン達はゼクス中将に別れを告げ、ノルド高原へ馬を走らせ始めた……!

 

説明
第78話
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コメント
感想ありがとうございます 本郷 刃様 リザイライベントを書いた時、何気に時間がかかりましたwwなんせ18禁の話も書いたのですし(激怒)(sorano)
リザイラがここで仲間になりますか、楽しみです(本郷 刃)
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