溺れて死んだ |
その日は晴れていた。雲ひとつない。
彼、ボルビッシュは酒に溺れていた。頬は朱に染まり、瞳は空ろ。泥酔だった。見かねた友人――ダビッシは飲みかけの酒ビンを取り上げる。
「おいボル、いい加減飲みすぎだぞ。そんなんじゃ明日にも死んじまう。もうここらへんでやめとけ」
「だまれよダービ。そのビンを置いてくれ、頼むよ。じゃねえと俺は今すぐに死んじまう」
強引にビンを奪い取り、そのほとんどを口からこぼしながら飲み干す。空になったビンはボルビッシュの手から滑り落ち。転がる。その先には同じように空になった酒ビンが詰まれていた。
「げぶう……なん……げぼおおおおおお」
腹の中身をぶちまけて、ダビッシは倒れた。突然の出来事に困惑するボルビッシュ。背中をさすってやるが、効果はない。やがてすべてをぶちまけて、ボルビッシュは動かなくなった。
「おい……ボル、大丈夫か? だからもうやめとけっていったんだ」
悪態はつくが、放っておくこともできない。仕方なくベッドに運ぼうと、背負おうとし……
「し……死んでる……息が、脈もない……」
ダビッシはただただ愕然とするしかなかった。長年連れ添った友人が、前触れもなく、死んだのだ。
「うおおおおおおおおお、ボルビイイィィィッシュ!!」
悲痛な叫びは、降り出した雨音にかき消された。
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