英雄伝説〜運命が改変された少年の行く道〜
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〜トールズ士官学院・1年Z組〜

 

「うーん、そろそろ本格的に暑くなってきそうな雰囲気ね。そして夏と言えばビールの季節!明日は自由行動日だし、帝都にあるビアガーデンでもハシゴしに行っちゃおうかしら♪」

サラ教官の話を聞いたリィン達全員は冷や汗をかいて呆れ

「まあ、別に構いませんが……」

「ダンディな中年紳士とやらと一緒に行けるアテでもあるのか?」

リィンは戸惑いながら頷き、ユーシスは呆れた表情で指摘した。

 

「むぐっ……言ってくれるわね。って、そうだ!プリネ、”臨時領主”の権限とかでケルディックの”風見亭”のおばちゃんにあたしが激安の値段で地ビールの飲み放題ができるように頼んでよ〜。あたしとあんたの仲でしょう〜?」

「え、えっと……冗談ですよね?」

「というか領主を何だと思っているんですか……」

「生徒におごりを期待するなど、教官としてのプライドすらもないのか?」

そしてある事を思いついたサラ教官に見つめられたプリネは表情を引き攣らせ、ツーヤは疲れた表情で溜息を吐き、レーヴェは呆れた表情で指摘した。

 

「むぐっ、相変わらず余計な一言が多い生意気な後輩ね。ま、それはともかく次の水曜日は実技テストよ。もう慣れてきたと思うけど一応、備えておきなさい。」

「はい、わかりました。」

「ということは来週末に”特別実習”があるわけね。」

サラ教官の話にエマは頷き、今まで実技テストの後に特別実習がある事を思い返したアリサは呟き

「ふう……前回からそんなに経っていない気がするんだが。」

「「……………………」」

マキアスは疲れた表情で溜息を吐き、ラウラとフィーは黙り込んでいた。

 

「でも、そっか……そうなると今年は帝都の夏至祭に行けないなぁ。」

「”夏至祭”というと……」

「6月に帝国各地で開かれる季節のお祭りみたいなものかな。」

「七耀教会というより、精霊信仰の伝統がベースになっているらしいわね。」

エリオットの呟きを聞いて疑問に思ったリィンとアリサが説明した。

 

「故郷のノルドでも似たような祭はあったな。だが、どうして帝都の夏至祭は6月ではなく7月なんだ?」

「そうそう、あたしも前から不思議に思ってたのよね。それで、どうしてなの?」

「ふう……貴方は一応、教官でしょう?」

ガイウスに続くように首を傾げたサラ教官の様子を見たマキアスは呆れた表情で指摘した。

 

「たしか”獅子戦役”が由来だと聞いているが……」

「ええ、ドライケルス大帝が内戦を終結させたのがちょうど7月だったらしく……そのお祝いと合わせて一月遅れで夏至祭が開かれたのがきっかけだと言われていますね。」

「へ〜、なるほどねぇ。そういえばトマス教官がそんなことを言ってたっけ……話が長くなりそうだから途中で失礼しちゃったけど。」

「まあ、気持ちはわからなくはないですけど……」

「あの先生、歴史談義になるとすっごく話が長くなるもんねぇ。」

「けっこうウザい。」

サラ教官からある教官の名が出てくるとリィンとエリオットは苦笑し、フィーはジト目で呟いた。

 

「夏至祭で思い出したが……確か今年の夏至祭はメンフィル帝国のVIP達が特別に招待されているらしいな。」

「もしかしてプリネさん達のように国家間の関係修復の為ですか?」

ある事を思い出したユーシスに続くようにエマはプリネに尋ねた。

「ええ、そう聞いています。」

「招待に応じて参加するメンバーを知ったら驚きますけどね……」

「フッ、確かにそうだな。正直、豪華メンバーと言ってもおかしくない面々だからな。」

エマの疑問にプリネは頷き、苦笑するツーヤの言葉にレーヴェは静かな笑みを浮かべて頷いた。

 

「豪華メンバーって……」

「やっぱり皇族の方達なのかしら?」

レーヴェの言葉が気になったエリオットは目を丸くし、アリサは尋ねた。

「はい。参加する方はお父様、お母様、イリーナ様、そしてリフィアお姉様とレン。お父様達の護衛としてファーミシルス大将軍とエヴリーヌお姉様が来ると聞いております。」

「た、確かにそのメンバーなら豪華メンバーと言ってもおかしくないな…………」

「……そうなのか?」

「うん……プリネの両親は勿論、”英雄王”の正妃の”聖皇妃”やメンフィル皇帝の跡取りの”聖魔皇女”は凄く有名だもん。」

プリネの説明を聞いたリィンは表情を引き攣らせ、ガイウスの疑問に頷いたエリオットはガイウスに説明し

「”空の覇者”の異名を持つファーミシルス大将軍と”魔弓将”の異名を持つエヴリーヌ殿は一人でエレボニア帝国軍を壊滅させたとの逸話がある程の相当な腕前の武人だと聞いている。」

「ひ、一人で軍隊を壊滅に陥らせたって……」

ラウラの話を聞いたアリサは表情を引き攣らせた。

「正直、普通なら夢物語だと思うけどバリアハートの時に見せたエステルさん達の強さを思い返せば、実際本当の話に聞こえてくるんだよな……」

「”人間”の”ブレイサーロード”達ですらあの強さなのだから、そいつらを越える”空の覇者”達なら一人で軍隊を壊滅させたという噂が真実であるとしか思えん。」

「ア、アハハ……確かにそうですね。」

「たったあれだけの人数でわたし達を守りながら領邦軍を壊滅に陥らせた上、生身で戦車や装甲車まで破壊したもんね。一体どんな、非常識な体験をしたのか今でも気になるくらい。」

疲れた表情のマキアスの言葉に同意したユーシスの言葉にエマは苦笑しながら頷き、フィーは呆れた表情で呟いた。

 

「レン姫で思い出しましたけど……別れ際にレン姫はプリネさんの事を”お姉様”と言っていましたが……」

「ええ、レンは私の妹です。まあ、血は繋がっていませんが……」

ある事を思い出したエマに尋ねられたプリネは頷き

「血は繋がっていないって……まさか養子なのか?」

「はい。様々な複雑な事情があって孤児になったレンはお父様とお母様の娘として引き取られたんです。ちなみに引き取られる前のレンの身分は”平民”ですよ。」

「ええっ!?じゃ、じゃあ皇族が”平民”を養子にしたの!?」

「お、俺もその話は初めて聞いた……確かにレン姫は養子で知られていたけど……」

マキアスの疑問に答えたプリネの話を聞いたエリオットとリィンは驚き

「……まあ、孤児から大貴族になったツーヤという例もいるのだから、メンフィルならあり得てもおかしくないと思うが。」

「アハハ、確かにそうですね。」

冷静な様子のユーシスの言葉にツーヤは苦笑しながら頷いた。

 

「はいはい、私語はHR後にして。とにかく、暑くなりそうだし、夏バテには注意しておきなさい。ま、寮の優秀な管理人さんが美味しい料理を作ってくれるから心配いらないかもしれないけど〜。」

(やっぱりシャロンさんと何かあるみたいだな……?)

(うーん、そうみたいね。シャロンに聞いても『何でもありませんわ』とかはぐらかされるけど……)

サラ教官の含みのある言葉を聞いたリィンに視線を向けられたアリサは頷いた。

「それじゃあ、HR終了。マキアス、挨拶して。」

「わかりました。起立―――礼。」

そしてHRが終わり、リィン達がそれぞれ談笑している中、一人で机に座っていたフィーは突如立ち上がって教室から出た。

 

「あ、フィーちゃん……」

フィーの行動に気付いたエマは目を丸くし

「……………………」

ラウラは真剣な表情で黙って去って行くフィーを見つめた。

「えっと……私ちょっと追いかけてみますね。」

「あ、それなら私も付き合います。」

「うん、お願い。」

「わかりました。」

そしてエマとプリネはフィーの跡を追って教室から出た。

 

「……ふう、ラウラもちょっとは折れなさいよ。貴女の方が年上なんだし。」

「ええ……それに人それぞれに様々な事情がある事はわかっているでしょう?」

「うん……それはその、わかってはいるのだが……」

アリサとツーヤの指摘にラウラは複雑そうな表情で頷いた。

 

「……相変わらずか。」

「水錬の勝負の檻でも揉めていたようだが……」

一方女子達の様子に気付いたリィンとガイウスはアリサ達を見つめ

「フン、先月の実習も今ひとつだったそうだな?」

ユーシスはマキアスに尋ねた。

 

「ああ……結局あの二人は最後まであんな調子だったな。―――なあリィン、君の方で何とかできないか?」

「何とかしたいとは俺も思っているけど……また、どうして俺なんだ?」

マキアスに尋ねられたリィンは戸惑いながら尋ね返した。

「いや、普通に適任だろう。」

「フッ、生徒会の手伝いをするお人好しでもあるからな。」

「いや、別にそこまで大した事はしてないんだが……」

ガイウスとユーシスの言葉に謙遜していたリィンはずっと黙っているエリオットに気付いた。

 

「……?エリオット、どうした?」

「わわっ、な、何?あ、そっか……うん。僕もリィンは適任だと思うよ。マキアスとユーシスの仲直りにも一役買ったみたいだし。」

「じょ、冗談じゃない!」

「仲直りなど、お花畑な妄想は止めてもらおうか?」

エリオットの答えを聞いたマキアスは驚き、ユーシスはエリオットを睨んだ。

 

「あはは、息ピッタリだし。えっと……そろそろお先に失礼するね。部活に行かなくちゃだから。」

「ああ、吹奏楽部か。」

「フン……そろそろ俺も行くか。」

「おっと、僕も部長に呼ばれているんだった。」

「皆、また後でな。」

その後クラスメイト達はそれぞれの部活に向かい、リィンは暇潰しに校舎内を歩き始めた。

 

 

説明
第95話
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コメント
感想ありがとうございます 本郷 刃様 ホントあのころが懐かしいですよ…… ジン様 絆イベントはめんどいんでやらないつもりです。フィーですか……今の所、考えていないんですよねぇ。原作以上にアルフィンのフラグを作る話は思いついていますが(sorano)
そういえば絆イベントの話はやらないんですね? あとはフィーの攻略がいつ始まるのか楽しみですね^^閃の軌跡で好きな女性キャラがアリサ、フィー、エリゼ、アルフィンなので^^(ジン)
青春してますねぇ・・・若いっていいなぁ・・・(本郷 刃)
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