「真・恋姫無双 君の隣に」 第26話 |
思春さんと穏様が帰国されて、報告を聞いた雪蓮様は何も言わずに佇まれてます。
報告の内容は、私達から言葉を奪うには充分過ぎるものでした。
祭様の身を挺しての孫家への忠義。
全てを理解した上での一刀様の御決断。
お二人の覚悟と決意は、雪蓮様ですら想像出来ない事でした。
他勢力から見れば、祭様の裏切りに一刀様の野心、この二点が浮き彫りになるでしょう。
これまで友好関係にあった孫家と袁家にもヒビが入り、以前の反董卓連合の時とは違って、明確な敵として認識される事になります。
何故、こうなってしまうのでしょうか?
祭様も一刀様も、とてもお優しい方なのに。
「一刀は戦乱の世となってしまう基を断とうとしてるのね」
「ああ、御遣いはそこから生まれる怨嗟を全て受け止めようとし、そして祭殿も分かった上で孫家を護ろうと全てを捨てた」
「・・二人共、馬鹿よね」
「・・そうだな」
このままでは祭様か一刀様のどちらかが、いえ、お二人共が命を失う事になるかもしれません。
・・それなのに、私には何も出来ないんです。
悔しくて、何の力にもなれない自分が悔しくて、涙が止まりません。
「亞莎、泣くのは止めなさい、そんな暇はないわ」
蓮華様?
「私は諦めないわ。祭の事も、一刀の事も。一刀が言ってたわ、人は色々な理由で戦うけど、戦う相手の事を知っていれば原因を除いていけばいいと。どんなに困難でも諦める理由にはならないと」
蓮華様のお顔とお声が、一刀様と被ります。
「私は二人と一緒にいられる未来を掴んでみせる!亞莎、力を貸して。貴女の力が必要なの!」
「はいっ!」
そうです、一刀様も頑張られてるんです。
お約束しました、一緒に頑張ろうと。
「その通りね。歩みを止めていたら何も始まらない。一刀に譲れないものがあるように、私達にも譲れないものはあるわ。それでも前に進む者だけが掴める物がある。二人に負けてられない、いいわね皆っ!」
「「「 はいっ!! 」」」
祭様、一刀様、私も絶対に諦めません。
私達の耳に穏様から最後の報告が届きます。
「最後に冥琳様〜、一刀さんから言伝を頼まれてます〜」
「私に言伝?此処で?皆の前でか?それに、穏。気になっていたのだが、御遣いに真名を預けたのか?」
「はい〜、やっぱり好きな人には真名で呼んで欲しいじゃありませんか〜」
か、一刀様〜。
うう、一刀様の素晴らしさを知ってしまったら仕方のない事ですけど。
蓮華様が小声で呟いておられます。
「また増えた、分かっているけど、また増えた」
思春さんから凄い殺気です。
「あの種馬、やはり斬る!」
雪蓮様も憤慨して、
「ちょっと、私への愛の告白は?」
・・雪蓮様、それは無いかと。
「それでですね〜・・・・・・・・・・・・」
「真・恋姫無双 君の隣に」 第26話
オッ、着いたか。
「大将、お待たせや。天和達と投石器がご到着やで」
「か〜ずと、来たよ〜」
「一刀、食事は?お風呂は?いい加減にお小遣い頂戴よ!」
「いよいよ荊州も活動範囲に入るのですね、楽しみです」
ハハ、元気そうで何より。
「真桜、ありがとう。天和達もよく来てくれた。先ずは四人共ゆっくり休んでくれ、食事もお風呂も用意してあるよ」
四人共喜んで行ってしまった、・・真桜、報告は?
「ほほう、随分甘やかしているようですねー」
「こいつは華琳に報告だな、自分だけ優しくして懐柔してるとは」
うわっ、風。
「いや、違うんだよ。今回は荊州の治安活動に一役買って貰うから、充分に生気を蓄えて貰っとこうというだけで、別に甘やかしてるわけじゃないから」
「ほほう、生気を蓄えさせて美味しく頂こうというわけですかー」
「お盛んなこった、孫軍のネーチャン達ともねんごろな様子だったしな」
何故それを!いや、待て、こういう心理的揺さぶりは風の得意分野。
おそらく、どう返事しても絡めとられる。
ここは別の話題に、
「ほほう、別の話題を持ち込んで追求を逸らそうというのですかー」
「ニーチャン、そいつは自白してるのと一緒だぜ」
駄目だ、やっぱり風には勝てない。
というか勝てる気がしない。
「風、俺が悪かったから華琳に話すのは勘弁してくれ」
「ふふふー、素直なお兄さんは好きですよー。それで、予定通り襄陽を攻略ですか?」
「ああ、襄陽の混乱は相当なものになってる。この機を逃す理由は無い」
細作からの報告では、襄陽城内は決戦か降伏かで相当揉めてるらしい。
数日前に劉表軍が江夏に進軍してきたが、脱走兵が続出して慌てて撤退したと情報が入ってる。
江夏の人心も落ち着いてきた、後は人選して同行していた文官達と、現地採用した者達とで統治を任せる。
治安に関しても黄祖の軍は解体したし、駐屯部隊一万と天和達の歌が力強い援護になるだろう。
襄陽攻略の先鋒に最初は凪を呼ぼうと思っていたけど、陣営に加わった祭に任せることにした。
孫堅の下、劉表と戦を重ねていた祭の武名は荊州で浸透している、凪よりも適任だし留守の寿春も安心できる。
その祭だが、以前の赤壁では華琳に真名を預けるのを断っていたのに、今回は自ら預けてくれた。
どういった心境の変化なのかは分からないが、純粋に嬉しくもある。
祭との会話は楽しかったし、尊敬できる人だから。
最初はさん付けしようとしたが、「祭でよい」と言われ呼び捨てで呼んでる。
とにかく、準備は整った。
「風、後で見て貰うけど、投石器の性能を活かせる戦術を考えてくれ」
「人使いが荒いですねー。流琉ちゃんには甘々で風は扱き使うのですかー」
「そんな訳ないだろ、風も流琉も俺にとって大事に決まってる!」
「・・・これだからお兄さんは油断できないのです」
風は横を向いて、少し赤くなっていた。
真桜ちゃんも一緒に、久しぶりのお風呂。
「アンタら、明日からしっかり働いてもらうで」
「分かってるわよ。ちいの魅力で江夏の人達を夢中にさせちゃうんだから」
「まあ、やる気があるのはいい事よ、ちい姉さん」
「私も頑張るよ〜、一刀の為でもあるもんね」
最初は皆で話してたけど、そのうち無言になってお風呂を堪能してる。
う〜ん、気持ちいい。
疲れが溶けていくよ〜。
あれ?誰か入ってきた、ひょっとして一刀かな。
違った、初めて見る人だ。
「なんじゃ、気配はあるのに静かなんで変じゃと思っとったが、いい若いもんが風呂と同化しとったか」
お酒を片手に湯に入ってきた、誰だろ、この人?
「アンタが黄蓋はんか。大将の報告書に書いてあったわ、ウチは李典や」
「ほう、三羽烏の一人か。優れた工作の技術を持つ者と聞く。世話になることになった黄蓋じゃ、よろしく頼むぞ」
「アンタが大将を裏切らんかったらな」
「・・一刀がそう言っておったか?」
「んな訳無いやろ。ウチらがそう考えとるだけや。アンタと戦った事のある凪が、孫家を裏切る人の拳や無かったってな」
「楽進の事か。あ奴は強くなるのお」
真桜ちゃんの詰問を、黄蓋さんって人はお酒を呑みながら聞き流してる。
否定も肯定もしてないよね。
でも、何か辛そうに感じる、表情や仕草に変化は無いんだけど。
私はただ聞くだけで、ちいちゃんや人和ちゃんも固唾を飲んで見守ってる。
「まあええわ。大将の力になってくれんなら有り難いしな」
「えっ、それでいいの?」
思わず声を出しちゃったけど、真桜ちゃんはしたり顔で、
「大将に関わるもんは自然と幸せな方向に進んでいくねん。余程のアホや無いかぎりな。天和らも実感あるやろ」
それって、何か分かるかも。
「そんな訳無いじゃない。こんなに仕事尽くめで不幸に決まってるわよ」
「一刀さんと会えるから道中ご機嫌だったと思うけど?」
「私は一刀に会いたかったし、一杯歌えて幸せだよ〜」
この後、真桜ちゃんに一刀の事を色々聞いて楽しかった。
黄蓋さんも交じりはしなかったけど話は聴いてたと思う、最初より美味しそうにお酒を飲んでたから。
孫策軍が武陵を陥とした報が入ってきた。
桔梗様の予測した通り、そのまま南下して桂陽、零陵へ侵攻したらしい。
そして御遣いも動いた、至急で襄陽への救援が要請された。
・・納得がいかない。
何故に援軍に来てやった我等が、他国の王の指示を受けて行動しなければならないんだ。
了承して居室に戻られた桔梗様を訪ね、意見する。
「桔梗様、もう益州に帰りましょう。こんな馬鹿な戦に付き合う必要はありません」
「そうだな、お主の言うとおりだが。すまぬ、もう少し付き合ってくれんか」
「何故ですか!あんな奴等の為に御遣いを討ち取っても仕方ないでしょう」
こちらを見下し、紫苑様のお子を人質にし、自ら戦おうともしない唾棄すべき者達など滅びてしまえばいい。
何とか紫苑様のお子を救い出して、お二人も益州に来てもらえば。
「焔耶よ、最初からこの戦に勝ち目など無い」
「何を言ってられるのですか、桔梗様や私に、鍛え上げた兵達に敵などいません!」
常に堂々とされ武人の在り様を示し、厳しく兵を叱咤される桔梗様の言葉とは思えない。
「わしらなど井の中の蛙よ。負けを承知で援軍に来たのは紫苑の為と、焔耶、お主に世の広さを知って貰いたかったからだ」
「仰る意味が分かりません。紫苑様の事はともかく、戦う前から何故負けるなどと言われるのです。それに益州において私より強いのは桔梗様だけです。そんな私に敵う者など、そうはいるとは思えません」
確かに大陸最強と聞く呂布の武勇の噂はとんでもないが、所詮噂だ、尾ひれも背ひれも付いているに決まってる。
「焔耶よ、この戦が終わったらお主は益州に戻らず新たな主を探せ。そして叶うなら益州の民を幸せに導ける王に仕えてくれ」
「承服致しかねます!戦には勝てばいいし、益州の民を幸せに導くのなら、いっそのこと桔梗様が王になればよいではありませんか」
あの盆暗の劉璋など、追い払ってしまえばいい。
これまで桔梗様をどれだけ蔑ろにしていたか。
「わしは徒花よ。実を作らねばならぬ王になどなれぬ。この命、最期は友の為に使う」
私は報告書に眼を通しながら、内容に驚きを隠せません。
「一刀様の政は本当に凄いです。僅か数ヶ月でここまで治安が良くなり、景気も上がるなんて」
長安の街は活気に溢れています。
私の地元の天水も更なる発展を遂げていて、今迄手を出せなかった事も計画に挙がるようになってきました。
「いやいや、基本に寿春で行われてる政をそのまま当て嵌めてはいても、細かな点は月の手腕によるものだ。主が安心しておられるのも月がいるからだろう」
「星さん、お帰りなさい。洛陽への使者、お疲れ様でした」
以前の戦で休戦の勅取得に助力を貰えた方達とは定期的に繋ぎを取っていて、一刀様からも洛陽の情報収集を依頼されており、細かに報告を送っています。
「その事だが、主が攻め込んでる劉表が朝廷に泣き付いてる様だ。元々主に対し敵対心を持つ者達がこれ幸いと動いている。劉表の方から攻め込んでいるし討伐令もあるので、下手な事は起こらぬと思うが」
「そうですか。やはり動いてますか」
洛陽の治安は、また乱れてると聞きます。
どうしてあの方達はご自分の利益しか考えられないのでしょう。
このまま放置していては、一刀様が私の二の舞になってしまうかもしれません。
そんな事はさせません、私は一刀様をお支えすると誓ったんです。
「星さん、お戻りになられたばかりで申し訳ありませんが、軍議を開きます。皆さんに集まって貰うように伝えて下さい」
「心得た。フッ、やはり愛する者に抱かれた者は強くなるのだな」
「へう。と、とにかくお願いします」
星さんが退出され、私も残っている政務を急ぎ片付けます。
不思議です、力が凄く湧き上がって来ます。
星さんの言うとおり、私は強くなったのでしょうか?
今の私を見たら、詠ちゃんはどう思うかな?
政務が丁度終わる頃、皆さんが来てくれました。
一刀様は「大事なものを失わない為なら幾らでも戦う」と言われて戦って下さいました。
私も同じ思いです。
貴方の為なら私も戦います、そして必ず勝ってみせます。
説明 | ||
一刀と祭の覚悟に雪蓮たちは強い決意を持つ。 一刀は襄陽攻略の準備を整える。 |
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コメント | ||
…真での蜀勢に関してはキャラ自体よりも、一刀を持ち上げようとする余りに無印での蜀より劣化した集団として描写した、シナリオにこそ問題があると思う…。(クラスター・ジャドウ) ↓最初は華琳の当て馬としてライバルを育てるつもりだったけど、呉は豪族共和国だから新体制統一を目指す一刀とガッチャンコすんのは仕方ない事なのか・・・隠が持ち帰ったメッセージがカギ?(kazo) 今更なんだけど一刀さんと雪蓮達が戦う必要あるのかしら?(牛乳魔人) 焔耶かぁ・・・なんつーか原作スタッフの悪意勘ぐる程魏延の問題点だけでデフォルメしたようなキャラだしこんなもんじゃないかね(白黒) 月がいい子すぎる;;焔耶はもう少し成長してくれ驕りすぎだろw(nao) |
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