東京ワンダーグラウンド |
東京は黄昏時の秋葉原、一人の少女がとあるビルの屋上、それもふつうは超えてはならない柵の向こう側に立っていた。彼女が今いる所から片足を出すだけでその体は真っ逆さまに落ちてしまうだろう。
腰まで伸ばした特徴的なピンク色の髪は屋上特有の強風に煽られ流麗に舞っている。軍服のような黒を基調としたデザインの衣装にグラマラスな身を包み、左腰には薄紅色の鞘に納められた日本刀が、右腰には銀色に光るハンドガンが装備されていた。
誰か一人でも上を見上げて彼女の存在に気付けば、たちまち飛び降り自殺をしようとしているやつがいると大騒ぎになるだろう。しかし、ここには大騒ぎする観衆も上を見上げようとする者もいない。
“あの日”から地上からは生きた人間は姿を消し、代わりに人の形をした化け物が徘徊するようになった。
「さてと、見晴らしのいい所に来たのはいいけど、何処にいますかねぇ……」
彼女は左腕のウェアラブル端末に送信されたマップデータを見る。そこには今現在立っている秋葉原の地図が載っていた。ピンク色に点滅する彼女の現在位置を除いて、黒色に点滅するマーカーが三つほど街中をフラフラと動き回っている。
その中の一つが彼女のマーカーに近づいていた。
「お、ラッキー。すぐこの下に来てんじゃん。」
落ちている小銭を拾ったような笑顔を浮かべると、
彼女はビルから飛び降りた。
彼女は名前を 八坂((やさか)) 流華((るか)) という。
「うっっっわ、怖っ!怖い怖い!怖い怖い怖い怖い!」
流華は空中で体勢を反転させ、地面に背中を向けると、両足の踵をビルの壁面にこすりつけた。ガリガリとブーツの鋲が火花をあげるのが肉眼で見えそうだ。
「やっと、っと、うあああああああ。」
しかしそれでも落下速度は止まる気配を見せない。それどころか、無理やりこすりつけた衝撃で体勢も不安定になりかけている。
「こ、ンの!」
流華は腰元の刀を鞘ごと抜くと、コンクリートの壁に思い切り突き立てた。
劈く轟音を立てながら、コンクリートがめくれ上がっていく。一方で流華の鞘には傷は一つもついてない。
結果、地に着く直前で彼女の体は静止した。地面までは彼女の足から二十センチ程。
「あっっっっぶな。ギリギリ〜♪」
あと一歩で死んでいたかもしれないのに、流華はそれでも平気な素振りを見せるのだった。ちなみに、彼女は基本この程度では動じない。
「よいしょ、っと。抜けた抜けた。あんまり無茶はするもんじゃないわね〜」
壁から刀を引き抜くと腰の元の位置に収めた。
「さて、と。あ、ヤベ。すっかり存在を忘れてた。」
埃をはらって振り返った先には、
「ア…………ガァ……アアア……」
異形と呼べる化け物がそこに立っていた。
肌は煤けたかのように薄黒く、目玉は真っ黒に染め上がり、ちょうど瞳の位置にに絵の具のような真っ赤な二重丸ができていた。言葉にならない声を出しながら彼女に近づいてきたのは人間と同じ服を着たまるでゾンビのような生物だった。
「ガア……ア…………」
その生物は流華を見据えると、
「アアアガァアアアアア!!!!」
涎を垂れ流しながら飛びかかってきた。その動きは眼前に餌を置かれた野犬の如く危険なオーラを纏っていた。
「はいはい、さっそく生物本能全開ですね、っと。」
「ガアアアアアア
ばしゅっ
ア、 ガ、ア?」
流華は特に変わった様子もなく襲ってきた化け物をただただ己の得物で斬り伏せたのだった。
化け物の生首が宙を舞う。自分の胴体を見下ろすその目は自分に何が起きているのか理解できていなかった。首から上を失った体は膝から崩れ落ちると、ピクリとも動かなくなった。
「ふう。取り敢えず一匹片付け完了っと。」
ガタン
即座に彼女は音のした方を振り返る。さっき見たマップには他の化け物の反応は無かった筈だ。新手だろうか。
「………………あ、あの……」
荒廃したビルの中から出てきたのは彼女より六歳ぐらい若い少女だった。
服は擦り切れボロボロに、足は裸足で真っ黒になっている。まるでスラム街の子供のようだった。
「もう、大丈夫ですか…………?」
おずおずとこちらの様子をうかがっている。不安そうにキョロキョロと見回していた。
どうやらまだ周囲に例の化け物がいるのではないかと不安がっているようだ。
流華は再びマップデータを見て周辺に黒いマーカーがないのを確認すると、笑顔で猫の様に手招きした。
「うん。だいじょぶ。来ても平気だよ〜オイデオイデ。」
「は……はい…………」
流華の所へやってきた少女はミサと名乗った。なんでも、親が化け物に襲われ自分も命からがら逃げてきたということ、怖くて外に出られずすぐ近くにあったビルに逃げ込みそこで救援が来るまで過ごしていたという。非常倉庫に保存食がたっぷり残っていて他に逃げてきた人もいなかったのが今日まで生き抜くことができた理由だそうだ。
安全な場所に連れていくため、流華は手をつないだが、ミサの手は小さく震えていた。
「わたし…………もう助かりますよね?もう二度とあんな化け物に遭いませんよね?わたし…………もうあんなの見たくないです……あいつらは私の両親を喰ったんです……お父さんもお母さんも化け物になっちゃって、もうあんなの見たくないです…………」
しおれたミサの声に対し、流華はゆっくりと言葉を返した。
「…………ごめんね、あなたの言う通り。もっと早く助けに来てあげられればあなたのお父さんもお母さんも救えたのに。本当にごめん。だからあなたは絶対に、あなたのご両親が託した思いは私たちが受け継ぐ。あなたは私が命に代えてでも守るからね。」
今にも泣きそうなミサを流華はしっかりと抱きしめる。ミサは嗚咽で震えていた。ミサの熱が服や皮膚を通じて伝わってくる。
ミサは、声をあげて泣いた。両親を目の前で殺され、一人孤独に生き延びてきた。その辛さは堪え難いものだっただろう。それは彼女の服が、体が、そして何より彼女の顔が物語っていた。
「だから、さ、元気出して?」
「………………はい。」
流華はにっこりと咲いた花のように語りかける。それにつられてミサも顔を綻ばせた。
「でも、何処へ行くんですか?というか、わたし、あなたのことについてちゃんと知らないと思うんですが…………」
「あ、そういえばそうだったね。じゃあせっかくだし、あの化け物共なんかについても説明してあげる。私のことを説明ってなるとそこからになるかな〜」
流華は難しそうな顔をして言った。
「はぁ………………」
流華はすぅ、と息を吸った。
「えっとね、昔、って言ってもちょっと前ぐらいなんだけど、ある科学者が新しいウィルスを開発したのは知ってる?」
「はい、聞いたことがあります。なんでも細菌兵器になるとかで政府が研究を中止しろとかってニュースになってましたよね。え?まさか……」
「そう、そのまさか。首都直下地震が起きた中でどさくさ紛れに散布しちゃったてわけ。まぁ、散布って言っても飛沫感染はしないんだけどね。で、そのウィルスの名前が『ζ((ゼータ))ウィルス』。一度感染すると、瞬く間に全身に回って感染媒体を求めて狂暴化するの。それがさっきの化け物こと『Z((ゼット))』。ほんでもって、その感染方法が」
「まだ感染してない人に噛みつくってわけですね……」
「そう。一度噛まれるとたとえどんなに分厚い防護服を着ていたとしても貫通しちゃうってのが厄介なところ。感染者は筋力と膂力がアップしてるし、一般の銃火器なんかじゃ死なない。今の所解っている対処法として『捕食させない』ように首から上を胴体から斬り離すとかがあるの。」
「首チョンパ…………」
「そ。首チョンパ。」
「ぐ、グロ……」
ミサの顔が青ざめていく。
「あはは、まぁ私たちは慣れちゃったからね。」
「私たち……?」
「うん、私たち。実はあの後緊急で政府が対Z用組織として新しい組織を作ったの。それが私たち『Ajent((エージェント))』。私以外にもたっくさんいるの。あ、ゴメン、そんなにいなかったかも大体何人ぐらいだろ?」
流華は記憶を頼りに指折りしつつ数え始める。
「えっと、そのエージェントっていうのは普通の人と何が違うんですか?さっき普通の銃火器じゃ効かないって言ってましたよね?」
「あ、うん。まぁそうなんだけどね、他にも解った特徴があって、皮膚に聖水をかけると溶けるのが解ったからそれを武器として転用した弾丸ができたからそれ使って戦えるようになったり、ほら、こんなの。」
流華は腰の銀色のハンドガンを抜き取ってみせる。
「まぁあんまり一般の方には言えないことが幾つかあるんだよね。ゴメンニョ。」
「い、いえ聞いたのはこっちですし、言えないことは無理に聞いたりなんかしませんよ。」
「フフフ、中々いい子だね。ヨーシヨーシ。」
流華はミサを猫の様に撫でまわした。
「さてと、そろそろ目的地の秋葉原駅に着くよ。ちょっと前に他のAjentに連絡しといたから会えるはずなん…………だ……けど……」
そこは確かに元々秋葉原駅だった。しかし、そこはあられもない瓦礫の山となっていた。
ザザザ……
「…………八坂、聞こえるか?今どこにいる、秋葉原に行った救助部隊の隊員と連絡が取れなくなっているんだ。返答してくれ!」
流華の小型のトランシーバーから連絡が入る。向こう側で叫んでいる男性らしき声は物凄く焦っている。
「えー作戦部隊聞こえます―?こちら八坂。秋葉原駅の前にいます。取り敢えず今私が見ているものそのままありのままに言いますね。」
「お?おう、どんなだ。」
「えーと、大型のZの攻撃により秋葉原駅が崩壊。救助部隊の方が生き埋めの恐れあり、至急増援頼んます。取り敢えず目の前のZだけ片づけときますね。」
「わ、わかった。持たせといてくれ。すぐ向かわせる。」
ブツッ
「ちょ、ちょっと流華さん!待ってください!あんなの倒せっこないです!」
そう言ってミサが指さした先には異様な姿をしたZがいた。
筋骨隆々どころか腕のサイズがおかしい。片腕だけで太さは成人男性のような太さとサイズをしている。
「ヴガヴァ―――――――?」
Zが轟くような雄叫びを上げる。叫びが突風の様に吹き抜け木霊した。
「ひっ!」
ミサが思わず固まる。その横で流華は左腰の日本刀に左手を添えた。
「ゴリラタイプの動物種((アニマロイド))か。珍しいわね。上野の動物園からでも来たのかしら。ま、何にしても排除させてもらうけどね。」
「むむむ無理ですよ!あんなの倒せるわけないです!とにかく逃げましょうよ!勝てっこない!」
「いやーまぁそう言うわけにもいかないからね。そうだね、君はどっかそこら辺の物陰にでも隠れてて。できるだけ遠くに。危ないからね。」
「で、でも…………それじゃ…………」
「だ〜いじょ〜ぶだ〜いじょ〜ぶお姉さんに任せて。」
ニコニコ笑いながら流華はミサにヒラヒラと手を振る。最早おなじみになってきたその行為に不安を覚えながらも、ミサはそれほど遠くはない瓦礫の山の陰に隠れた。
本当はもっと遠い方が良いかもしれないけど何よりどうやって闘うのか見てみたかったのがミサの本音だった。
「さてさて、始めます、か!」
流華は地面を力強く踏むとゴリラ似のZのすぐ目の前に飛び込み、踏み込みながらの水平一直線に刀を振るった。しかしその刃(やいば)はZの強靭な左腕に引っかかるぐらいで深く斬り付けることすら叶わなかった。
「ぐ、やっぱり固いか。 グ!?」
次の瞬間刀ごと流華の全身が浮き上がり、宙に浮いた流華の腹にZの裏拳がしっかりとヒットした。
「か、っハ!」
流華は大きく吹き飛び真横のビルにめり込むように突っ込んだ。積み木が崩れるが如くコンクリートが崩れ、窓ガラスやコンクリートが物凄い音を立てて砕け散る。
「流華さん?」
ミサはその一部始終を見て思わず叫んだ
「だーいじょーぶっ?これくらいならまだ平気?」
ビルの中から叫び声が聞こえたかと思いきや瓦礫を吹き飛ばして中から流華が帰ってきた。そのままの勢いでZの懐に潜り込み辻斬りの様にZの後ろ腰を斬り付けると瓦礫の山から転がりながらアスファルトに着地した。しかしZは尻でもはたかれたかのような素振りを見せると流華に向かって吠えるのだった。
「マジか……こりゃ楽にはいかないな……賃金上げてもらお。」
「流華さん?無事ですか!?ていうかなんで平気なんですか……」
ミサは瓦礫から飛び出し流華に近づこうとした。
「来ちゃダメ!今はあいつの注意はこっちに向いてんだからアンタが来たら意味がなくなるの!おとなしくそこで待ってて!」
「で……でも……」
「言ったでしょ、お姉さんは丈夫なんだから。簡単には死ななないの。」
流華は日本刀ではなく右腰のハンドガンに手を伸ばすと、Zの顔めがけて二発ほど撃ち込む。
弾丸を払おうとしたZの右腕が煙を上げた。よく見ると被弾したと思われる個所に火傷のような傷跡ができていた。
「? 何で?普通の銃火器じゃ意味が無い筈なのに。」
不思議に思うミサをよそに流華はZに肉迫し、火傷の上から腕に対して刀を下から上へと抜刀する。
流華が刀を鞘に納めるとZの右手首が吹っ飛んだ。
「 ガヴァアアアア?」
突然起きたことに頭が着いていけないのか、ワンテンポ遅れてからZは自分の右腕を押さえて叫んだ。
流華はZの背後へと回り込み跳び上がると刀に手をかけた。
「終わらせる。八坂流抜刀術特式壱の型 散歌((ちりうた))」
キン、と刀が鞘に収まった音が聞こえたとき、Zの叫び声はプツンと止み、前のめりにZが崩れたかと思うとその首から上がごろりと落ちた。それは紛れもなくさっきまで雄々しく吼え猛っていた生物の生首だった。ミサはその鮮やかな断面図を見ないようにした。
「八坂、無事か!今増援を連れて来た。すぐに瓦礫の処理を……ってそこの子は?」
さっきのZといい勝負なくらい屈強な体格の男達を連れて、流華と似たような服装の男がやってきた。どうやら流華の上司らしき彼は、ミサのことについて流華に尋ねた。
「生存者の子、名前はミサちゃん。なかなかにいい子。」
「はぁ、そうか。まぁ無事で何より。その子が生存者なら今すぐにでもその子をAjentに連れて行きたいところなんだが、この瓦礫を片付けなきゃならん。他の奴らはどうした?」
「多分そろそろあっちも終わらせていると…………」
と、流華が見た先からもの凄い土煙を上げて何かが走ってきた。
「流―――――――華―――――ち―――――とうっ!」
「グエッ 」
猛スピードで走ってきた何かは流華の名を叫ぶと思い切り飛びついた。
それはミサよりも小柄な少女だった。流華とは対照的に新緑のような緑色の髪色をしている。流華と同じ軍服を着た少女は流華に抗議を始める。
「聞いてよ流華ちーせっかくイスカが狙ってたの鉄君が仕留めちゃったの!酷いよ!ずるいよ!なんとか言ってやって!」
「あ……イスカ、気持ちはわかる。でも今はとりあえず離れて。アバラが折れてるかもでめっちゃ痛い。」
抱きつかれた流華は青い顔をしている。
「あ、ごめん。」
「え、流華さんアバラ折れてるんですか?なら早く病院に……」
「流華ちーこの子誰?」
「ん、ああ。無事だった子だよ。」
「ちょっと流華さん!」
「かもだから、かも。折れてないかもしれない。ただちょっと響くような痛みがあるだけだから。大丈夫、なはず。」
「いやそれ全然大丈夫じゃないですよね?確実に折れてますよね?」
「だーいじょーぶだーいじょーぶ。」
「で、その鉄はどうしたの?」
「あれは目玉狙ってチンタラしているからさくっと済ませたんだ。横取りなんざしてねぇ。仕事はさっさと済ませろよ。ったく。」
頭上から声が聞こえたと思うとまたも流華と同じ軍服を着た少年が飛んできた。服の袖から鉄の鎖を伸ばしてターザンのように降りてきた少年は投げやりにそういった。
流華より少し年上の彼はまるで先程の鎖のようなダークグレーの髪色をしている。
「鉄鎖(てっさ)、あんたそんなこと言ってるけど、どうせ斬るときに愉しんでたんでしょ。」
「モチのロンさね。まぁなんてったって俺は性格が悪ぃからな。」
鉄鎖と呼ばれた少年は底意地の悪そうな顔をしてそう言った。
「はいはい。」
「え……えと、あの、流華さん。」
「ん?あーゴメンゴメン。すっかり忘れてた。こいつらは、さっき言ってた私の仲間たち。」
「こいつらって……まぁいいか。生存者だな、俺は鉄鎖。まぁ仕事してる。」
「イスカはイスカだよー」
イスカという少女は元気溌剌に自己紹介をした。
「よ、よろしくお願いします……」
「あんたらちょっとこの瓦礫の片付けやっといて。私この子に色々説明しなきゃならないから。」
「はーい。」「うぇーい。」
イスカは元気に、鉄鎖は気だるそうに返事した。
「じゃ、ミサちゃん、片付け終わるまで散歩としゃれ込もうか。」
「は、はぁ…………」
「J((ジョーカー))因子?」
「そう。私があんな怪物に殴られても死なない理由がこれ。Zウィルスを基として作られてね人類がZに立ち向かう唯一のジョーカー((切り札))だからJ因子。」
駅のすぐ近くの廃ビルの非常階段を上っていく二人。カツンカツンという鉄製の階段ならではの金属音が響く。
「なるほど……じゃ、じゃああのピストルは?銃火器は効かない筈じゃ……」
「お、よく覚えてたね。うん。“普通の”は効かないよ。秘密は銃じゃなくて弾にあるの。」
「弾?銃弾ですか?」
「そうそう。この銃弾は特別製でね。対象に被弾すると炸裂して中から聖水がまき散らされるの。で、聖水は……」
「Zを溶かす。」
「正しくは皮膚をね。で、溶けて脆くなったそこを斬り落としたわけ。これが私たちがZどもと戦える理由。」
「そういうことだったんですね。……………………あの、流華さん。」
「ん?なぁに?」
「なんというか…………殺伐としてますね。血生臭くて、残酷で、常に死と隣り合わせだなんて。」
俯きがちにそういうミサ。しかし、流華はそれを笑い飛ばした。
「ハハハ、まぁそうかもね。私達はいわゆる生物兵器みたいなものだし、生きやすいかって聞かれたら返答に困るけど、でも、生きるしかないから。」
そう言って流華は屋上に通じるドアを開ける。鍵は壊れているらしい。
「それに、こんな世界でもいいことはあるもんだよ?おいで。」
そう言って二人は屋上に出る。
そこは
絶景としか言いようがないくらい綺麗な黄昏があった。赤々と燃え盛る太陽がビル群にゆっくりと、しかし着実に飲み込まれていく。
「――――綺麗…………」
「でしょ。まだ世界はこんなに綺麗で美しくて、これが明日もやってくる。まるでワンダーランドみたいじゃない?いつまでも終わらない夢のように見えるの。そんな世界、簡単には死ねないじゃない。」
「そう、ですね。」
「じゃ、何かの縁があったらまた会おうねん。」
「はい。本当に、本当にありがとうございました!」
最初に出会った時には見れなかった明るい笑顔を見せてミサはAjentの係員に連れられて行った。
きっと彼女は強い子になるだろう。そう思い流華もしっかりと手を振る。
「終わったか?なら、さっさと帰ろうぜ。」
「そうね。今日も一日疲れたわ〜」
「流華ちーおばあさんみたーい。」
「ぐ、かなりショック。」
「いいから帰んぞ。」
こうして流華たちは今日も任務を終えて帰っていく。彼らはJ因子を体に持つ人類の切り札。各々武器を携え今日も明日もZを殺し続ける。それがAjentである。
説明 | ||
またもや第一話です。 厨二臭いアクションものを書きました。拙いかとは思いますが、何かしらコメントして頂ければと思います。 某狩りゲーやら、格ゲーのキャラを参考に書きました。 |
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