真・恋姫†無双〜だけど涙が出ちゃう男の娘だもん〜[第50話] |
真・恋姫†無双〜だけど涙が出ちゃう男の((娘|こ))だもん〜
[第50話]
「まあ、良い。刹那の言う通り、すぐに結論が出せる事でも無いからな……」
何かしらの決断を下したのか、色々と考え込んでいた北郷は良く聴かないと聞き取れないような小声で((呟|つぶや))く。
そんな彼の小声を、ボクは前方を見ながら愛馬・調和を御しつつ漏れ聞くのでした。
「だが、それなら刹那はどう思っているんだ?」
「え? ボク?」
ゆったりと構えて馬に揺られていたら、いきなり北郷から感想を聞かれる。
ボクはちょっと驚いて、問い返す。
「どう思うって……何を?」
何を聞いているのか分からないボクは、後ろを振り返りながら北郷に問いかけてみました。
「いや。俺が観念や思い込みを持っていたから、劉玄徳の事を問題視していたのは分かった。それなら、そうでない刹那はどう思うのかって事が気になったんだ」
「ふむ……。そうだねぇ、桃香なりに自分の人生を生きているんだなって思っているよ?」
「それで?」
「え? それで……? う〜ん……後は、そうだね。ボクもちゃんと自分の人生を生きなきゃなって、そう思うかな?」
「……それだけか?」
「いや、それだけか? って言われても……。それ以上に何を思えと……?」
現状、劉備との接触は無く、危機が迫ってくるような身の危険も感じない。
また、ボクの中にある劉備への((蟠|わだかま))りは、彼女自身とは関係が無い。
そんな感じなので、ボクは北郷に答えたような感想しか抱いていませんでした。
それを素直に答えてみたのですが、何故か北郷はそんな返答に不満気なご様子。
互いの会話が噛み合っていないみたいなのですが、ボクにはその理由が皆目見当がつきませんでした。
「あー……俺の聞き方が間違ってるのか?
その、なんて言うかだな? 俺が聞きたいのはそういう事じゃなくて、なんで劉玄徳は、あんな矛盾するような行動に整合性を見出しているのかって事が知りたかったんだ」
「……それは、さっき説明したと思うけど? もう一度、説明しろとでも言うのかい?」
ボクは北郷の言葉を聞いて真意を理解してくれなかったと思い、気落ちしつつも怒気を含ませながら返答しました。
北郷は、そんなボクに慌てたような大げさな態度を示す。
「いや、違う! そうじゃない!それは分かってるって! まあ、俺が分かる範囲での話ではあるけどな」
「ん? なんだい?」
北郷の物言いの最後の方が小声すぎて、ボクには良く聴き取る事ができませんでした。
それを確認するも、北郷は大した事では無いとばかりに平然とした態度を取ってくる。
「いや、なんでも無い。あー……つまり、なんだ。そういう意味じゃなくて、刹那にはどう見えるのかって事が知りたいという意味なんだ」
「ボクに、どう見えるか……?」
「そう! 刹那の推察でも良いし、感想でも良いけれど。とにかく、劉玄徳にどういう理由があって、あんな矛盾しているような態度を取っても平然としていられるのかって事が知りたかったんだ」
「ああ、そういう事……」
北郷の説明を受けて、彼が何を聞きたかったのかが理解できました。
しかし今度は、何故そんな事を知りたいと思うのかが分からなくなりました。
他人がどう思うかよりも、自分がどう思うかの方が大事だと考えていたからです。
「一刀の言いたい事は分かった。けどさ、なんでそんな事が気になるの?」
「え? いや、なんでって……。気になるから?」
「……それでは、答えになって無いと思うのだけれど?」
「そ、そうか? そうだな。じゃあ、参考にしたいからって事で良いや。教えてくれ」
「じゃあ、って……」
真面目に問いかけるボクに、北郷は質問の意図などどうでも良いといった感じの答えを返してきました。
そんな投げやりな北郷の態度に、ボクはちょっと((呆|あき))れてしまいます。
でも、なんとか気を取り直して、前方に広がる地平線を見るともなしに自分なりの意見をどう伝えたものかと熟考していくのでした。
「それでは、聞かれたから答えるけれど。でも、最初に断っておくよ? これから言う事はあくまでボクの感想であり、そうであると確証がある訳じゃない。その事は、ちゃんと理解して聞いて欲しい」
「ああ、もちろんだ。それで?」
ボクは、北郷に人の意見や感想を聞く事の注意を((促|うなが))してみました。
しかし彼は、たいした事では無いとばかりに軽くいなす。
そんな北郷に((一抹|いちまつ))の不安を感じつつも、ボクは自分なりの意見を話していきました。
「そうだね。ボクが思うに、桃香には人々と一緒に幸せで在りたいという想いが根幹にあるのだと思う。それはまあ、誰もが大なり小なり思っている事ではあるのだけれどね。彼女の場合は、それがとても大きいのだと思う。そして、その((為|ため))に考え出した手段が、誠意をもって話し合うという事なんだろう。けれど、その考え出した手段が全ての人達に適用できない。というより、取り合ってもらえないから苦労している。今現在の彼女は、そんな感じなんだと思うよ」
「なるほど……」
「さらに言うと、もしかしたら彼女は頭が良すぎる。というか、天才の((類|たぐい))なのかも知れないね。それに、人という存在を信じ((過|す))ぎているんだとも思う。だから、あんな((風|ふう))に成っているんじゃないかな?」
「はあぁああ〜? 頭が良すぎる?! というか、天才?! あの子が?!」
劉備の((為人|ひととなり))や北郷から聞いた彼女の想いなどを((鑑|かんが))みて、ボクは自分なりの意見を告げました。
でも北郷は、言われた事が予想外だったらしくて驚きの声を上げる。
確かに、劉備の放つ雰囲気はどこか頼りなく、ほわほわしている印象が強い。
だから北郷が、どこか呆れるような感じを言葉に匂わせるのも無理ないと思いました。
「あ〜……うん、言いたい事は分かる。確かに桃香の雰囲気や話し方だけを見れば、そんな風に疑問を持つのも無理ないかも知れないね。
でもね一刀、ボクはこう思うんだ。頭が良いとか天才とか言うよりも、この場合は意識水準が高かったからと言った方が良いのかな? まあ、いずれにせよ。そのようであったからこそ、桃香は世間の風潮に流されずに自力で自分の進む道を見い出して、それを行い続けて来れたんだろうとね。もしそうでなかったら、彼女は今この場所に居なかったと思う。だって、普通だったら自己の安全を第一に考えて、危険の無い((無難|ぶなん))な人生を((歩|あゆ))もうとするはずだもの」
ただ((己|おのれ))の保身のみを考え、権力者に((媚|こ))びを売ってでも生き延びようとしていた在りし日の自分。
ボクは北郷に、そんな((嘗|かつ))ての自分自身を((省|かえり))みながら感想を告げるのでした。
「彼女が見い出した道……? なんで、そんな事が刹那に分かるんだ? 普通、そんな事は分からないだろう?」
北郷はボクの言葉が((腑|ふ))に落ちないようで、それを確認するように問いかけてきました。
「ボクにだって、桃香の見い出した道の((細々|こまごま))とした事まで分かるわけじゃ無い。そんな事、本人以外に分かりようも無い。ただ彼女もまた、ボクと同じように((自|みずか))らの道を((歩|あゆ))んでいるようだったから分かっただけさ。
もっとも、それは誰でも同じ事だし、単に意識的に行なっているかどうかの違いがあるだけの話なんだけどね」
ボクは気楽な感じで説明した後、ちょっと後ろを振り返って北郷の様子を((垣間|かいま))見ました。
その時に見て取れた北郷の様子は、まだ良く分からないといった感じが見て取れる。
だからボクは、さらに説明した方が良いと思うのでした。
「ねえ、一刀。天才な人と普通の人の違いって、なんだと思う?」
前方に姿勢を向き直して、北郷に問いかけてみる。
「いきなり話が飛ぶな。しかも、天才と普通の人の違いだ?」
北郷はボクの質問に呆れた感じで返答してきました。
「まあまあ、一刀の質問に答える為の意識調査とでも思ってよ」
「はあ〜……。それはまあ、あれだ。普通の人とは出来が違うの一言に尽きるだろうな。それぞれの道で、普通の人が出来ないような事を成し遂げていく人だと思うぞ」
「そう思うのか、なるほどね」
「で? それが、どうかしたのか?」
北郷には前後の会話が自分の質問と噛み合っていないように思えたのか、問い((質|ただ))すように疑問を投げかけてきました。
「確かに天才は、一刀の言う通り普通の人とは出来が違うように見える。中には((桁|けた))違いとも思えるような人達もいるから、そう思うのも無理は無い。でもね。天才の天才たる((所以|ゆえん))は、そこじゃない。その在り方にこそ、あるんだよ」
「在り方?」
「そう、在り方。
天才という人達はね、自分自身を常に信じているんだよ。というより、疑いを持たないのさ。自分がやりたいと思う事をやり遂げる事に対してね」
「そりゃあ、そうだろうさ。やりたい事をやりたいように出来る能力があれば、誰だってそう成るに決まっている。俺だって、出来ればそうしたい。俺に限らず、誰だってそうだろう。でも、それが出来ないから、みんな苦労してるんじゃないか」
ボクの説明に対して、北郷は吐き捨てるような物言いで不満をぶつけてくる。
そんな北郷の態度につられる事なく、ボクは((淡々|たんたん))と言葉を続けていくのでした。
「何故、天才はそう在れるのか? 能力が普通の人より優れているからなのだろうか? 確かに、それも一因かもしれないけれど、本質は別のところにある。
では、その理由とはなんだろうか? それは、意識を『今この瞬間』に向けているからなんだ。そして、『今』必要な事を『((直観|ちょっかん))』で受け取り、それを実行に移していく事に((躊躇|ためら))いを((覚|おぼ))えないからなのさ。いや、むしろ。その過程を楽しんでいるとさえ言えるだろうね。楽しんでいるから、その過程を繰り返す循環も早い。だから、普通の人とは違って見えてくるのさ」
「は? 直観?」
「ん? 一刀に分かり安い言葉を選んだつもりなんだけど。もし、直観という語句の意味が分かりずらければ、((閃|ひらめ))き・気づき・((導|みちび))き・情報・お知らせ・内なる((声|ささやき))といった言葉と置き換えてくれても良いよ。意味合いは、たいして変わらないと思うしね」
「違う。直観の意味が分からないって事じゃない」
北郷が言葉の意味を取りこぼしたと思ったボクは、他の語句を使って説明を補完します。
でも何故か、北郷はそれを否定してくるのでした。
「違うのかい? じゃあ、何が言いたいのかな?」
「俺が言いたいのは、直観なんて”あやふや”なものが、なんの役に立つのかって事だ」
北郷は((憤|いきどお))りを感じているような荒い言い方で話してきました。
ボクはそれを意に((介|かい))する事なく、静かに問いかける。
「何故、直観が一刀の言う通りに”あやふや”なものだと感じるのだと思う?」
「何故って……そういうものだからだろう?」
「そうやって決めつけてしまったら、そこで止まってしまうよ」
「いや。それは、そうだろうけど……」
言いどもりながら反論をしてくる北郷に対して、そのまま告げていく。
「理由を取りあえず三つ上げてみる」
そう言った後に利き腕を横に出し、人差し指を空に向かって突き立てる。
「まず、一つ目。一刀が今言ったように、直観を”あやふやな”ものだと決めつけてしまっている。
自分の現実は自分自身で創っていると言ったよね? そういうものだと決めつけしまえば、そういうものに成ってしまうんだよ」
次に、中指を立ち上げました。
「二つ目。直観を得た後に、それを行動に移した経験が少ないから判断に迷う。
だけど誰にだって、『良く分からないけれど、何故かそうした方が良いような気がする』といった経験の一つや二つはあると思うんだ。だから、それを行なった後の結果を比べてみたら判断できるようになると思う」
最後に親指を上げて、説明していきます。
「三つ目。『自我』や『我欲』が前面に出過ぎている。
二つ目に繋がってくる話だけれど、直観というのは謙虚な状態じゃないと得られない。素直で在れれば尚((宜|よろ))しい。だから、それ以外の時に考えつくものは、だいたいが損得で考えている自分の都合。そうであって欲しいと望む、ただの願望だったという事さ。でも、これだって経験を積んで行けば判断できるように成ると思う」
理由を説明した後に、ボクは腕をそっと((下|お))ろしました。
「そうは言っても、だな……」
「ん? 分かりずらかったかな?」
何かを言いたそうな北郷の言葉を受けて、ボクは後ろを振り返って問いかけてみる。
そこで見て取れる北郷の様子は、どことなく途方に暮れているような感じでした。
「……いや、良い。そんな事を聞いても、今の俺には判断できないからな。
それよりも、だ」
「うん? なにかな?」
自分を立ち直らせた北郷は、決意を新たにしたような視線をボクに向ける。
「さっきの質問に戻るけれど。刹那((曰|いわ))く天才であるところの劉玄徳さんは、何故あんな矛盾した行動を取り続けているのでしょうかね? それこそ直観とやらで気がついて、自分の行動を見直しても良いだろうに。その質問に対する回答を聞いていないのですけれど、どうなってしまったのでしょうか? 先生」
北郷は((額|ひたい))に青スジを立てているニッコリとした笑顔の表情で、ボクに丁寧な言葉を投げかけてきました。
それは((暗|あん))に、『人の質問を無視して、((訳|わけ))分かんねぇ話ばかりほざいてんじゃねぇぞ、オラァア!』といった、どこぞの不良さんが言いそうな文句を((匂|にお))わせているようでした。
ボクはそんな北郷の態度にちょっと溜め息をつき、身体を前方に向けてから話しを続けていきます。
「だから、だよ」
「は? だから?」
ボクの言葉の意味が理解できなかったのか、北郷は意味不明といった語句を含ませた問いを発する。
「桃香が天才の類で、今まで彼女の人生を直観を得つつ実行しながらやって来た。その過程を楽しみながらやって来たとは言っても、時には((辛|つら))かったり苦しかった事もあっただろう。でも、今の桃香を見て分かる通り、彼女はその影を微塵も感じさせないほどの光り輝くばかりの強さを持っている。さらには、たとえ他人から矛盾していると思われる行動であっても、自らの望みを実現すべく辛抱強く行ない続ける意思も持っている。
だけど、答えというものは常に自分の中から見い出すもの。ゆえに、自身の中に無い答えは表に出てこない。だから、桃香には分からない。理解できない」
「何を……?」
ボクは真剣な顔つきで後ろ振り返り、北郷の瞳と視線を交わしてから告げていきます。
「やりたいと思う事を恐怖心で足を((竦|すく))ませて実行できない、苦悩。
信じたいと思いつつも信じ続ける事のできない、心の弱さ。
他人を((蹴|け))落としてでも我が身の栄達を望む、我欲。
そういった人の弱さ、心の((闇|やみ))をだよ」
「そ……」
説明された内容に言葉を詰まらせて驚きの表情を見せる北郷に、ボクは尚も語っていきました。
「まだ桃香には、人の心の闇の側面についての理解が((十分|じゅうぶん))に出来ていないんだと思う。彼女自身が天才で、普通の人達が苦労しながら乗り越えている段階を簡単に越えてしまったがゆえにね。たとえ、どれほど慈愛に満ちた人であっても、自分自身が経験した事の無い心情は((慮|おもんばか))る事が出来ないんだよ。
だからこそ、ボク達は多様性に満ちた体験を通じて、様々な経験を積んでいくんだ。自分自身を成長・向上させるという意味合いだけで無く。『思いやり』という想いだけが、自分と他の存在とを繋げてくれる唯一の((懸|か))け橋だから」
そういった後に、ボクは前方に身体を向き直しました。
「天才は、『今この瞬間・今ここ』に在る。だから、『今』必要な事を『直観・気づき』で受け取れる。
普通の人は、過去を後悔して未来を((憂|うれ))いてばかりいる。その為に、ほとんど『今』を生きていない。だから、もたらされる答えが”あやふや”に成ってしまう。
天才は、受け取った答えを決心して実行に移していく。だから、良いと思うか悪いと思うかは別にしても、その結果が受け取れるし経験も積まれていく。
普通の人は、受け取った答えが本当かどうかの証拠を求めるだけで実行には移さない。だから、いつまでたっても結果が受け取れないし経験も積まれない。
天才は、この一連の過程を楽しみながら行う。だから、これらの過程を繰りかす循環が早くなっていく。
普通の人は、やらない。やっても、おっかなびっくり行う。経験不足・不安感・恐怖心などの影響で、そう成らざるを得ない。だから、その循環が遅いのさ。
天才は、普通の人の目には見えない現実が見えている、信じられないと思う事を信じ続ける事が出来る。だから、普通の人が不可能だと諦めてしまう事さえも成し遂げて行けるんだ」
ちょっと間を置いてから、ボクは言葉を続けていきます。
「でもね。実行に移したかは別にしても、今までの人生で直観を受け取った経験が一度も無いという人は居ないと思うのさ。そして、どんな人にでも初めてはあるし、最初は経験不足で上手く出来なくて当たり前なんだ。
だから、ボクは思うのさ。
誰もが自分自身を見つめる事が出来れば、自分以外の存在に預けている権利を取り戻していけば、不安や恐怖心に((踊|おど))らされる事なく今この瞬間に生きる事さえ出来れば、どんな人だって天才のように在れるはずだって」
ボクがそう言い切った後、おずおずとした感じで北郷が問いかけてきました。
「自分自身を見つめる事が出来れば……? それじゃあ、刹那が本当にやり遂げたい事って、まさか……?」
「そうさ。すべての人々に天才に成ってもらう事だよ。
持って生まれた才能は人それぞれ、やりたいと思う事も千差万別だと思うけれど、その在り方は誰にだって可能なはずだからね。
その為にボクは、新しい概念を広めながら問いかけているのさ。
『あなたは、どう在りたいのですか?』ってね」
確かめるような質問をしてきた北郷はボクの返答を聞いて、痛くなった頭を((抱|かか))え込んでいるような言い方で話しかけてきました。
「人類天才化計画って、((本気|まじ))かよ……? いや、本気なんだろうな、実際に行動しているわけだし……。
でも、本当にそんな事ができるのか?」
そう言ってきた北郷の心情を慮りつつ、ボクは話していきました。
「一刀。人が何かを出来るかどうか問いかける時、暗に『そんな事できっこない』という思いを((潜|ひそ))ませている。何故なら、『だから、自分に出来なくても仕方がない』という言い訳を事前に用意したいからだ。
それに、本当に問題にしている事も、それが正しいかどうかという事でさえ無い。その事が自分自身に可能で、((尚且|なおか))つ恩恵に((与|あずか))れるかどうかを問題にしているんだよ。
でも、そんな事は事前に分かるわけが無い。だって、そうだろう? やってみなけりゃ分からないんだもの。
だからボクは、そう問われたならば、こう答えるしか無い。
『できるかどうかは問題じゃない、やるかどうかが問題だ』と」
どうか、((怖|お))じ((気|け))づいて弱気に成らないで欲しい。
どうか、自分自身の可能性を信じて欲しい。
弱気のまま自分自身の可能性が信じられなければ、それが自分の現実なんだと感じられてしまう。
自らの現実に対する定義が変わらなければ、今までと同じ在り方で生きるしかない。
それではいったい、なんの((為|ため))の人生か――!!
「いや、だからって――!」
「分かっているさ! ボクの言ってる事が受け入れ((難|がた))いという事ぐらい、この在り方が((狭|せま))き門である事ぐらい、言われるまでも無くボク自身が誰よりも知っている! ((他|ほか))の誰よりも安全な暮らし、((無難|ぶなん))な人生を望んでいたのは、他ならぬこのボク自身なんだからさ!!
でもね、それでもね。人はいつか必ず、この道を選んで進んで行く事になるんだよ」
尚も声を荒げて否定的な言動を取ろうとする北郷を抑えるように、ボクは言葉を強くして主張しました。
彼の抱えているであろう気持ちや疑問は、((嘗|かつ))ての自分自身が抱えていたものに他ならない。
だからその想いは、痛いほど理解できていたからです。
これから北郷が身をもって知るであろう、それらが無駄な((足掻|あが))きでしかないという無情な事実も含めて。
正しいという証拠が、どこにある? あるのなら見せて欲しい。そうすれば、信じられるかも知れない。
他に手段は無いのだろうか? 見落としてるだけでは無いのか? 確信が持てるように、もっと情報を集めてみよう。
本当に、それで生きていけるのか? どこかで((野垂|のた))れ死ぬんじゃないのか? そうならないという確証、納得できる保証が欲しい。
でも、これらの答えは誰にも分からない、答えられない。
誰かが示した証拠は誰かにとっての確証であって、それが自分にも同じに出来る、もたらされるという保証には成り得ないから。
いくら待っても、どれだけ待ち望んでいても、納得できる答えは事前には決して得られない。
それぞれが体験した事を通じて一人ひとりが経験する事こそが、本当に知りたいと望んでいる答えだから。
「……なんで、選ぶ事になるんだよ?」
「この道を進んで行く事だけが、一人ひとりの人生を納得して生きて行ける唯一の方法だからだよ。
たとえ、この道が((茨|いばら))の道に見えたとしても、他の道が((煌|きら))びやかで素敵な道に見えたとしても、他の道を選択すれば必ずどこかで行き((詰|づ))まってしまう。立ち戻らざるを得なくなるのさ」
「しかし、すべての人が望んでいるとは限らないだろう? その在り方とやらを、さ」
「確かにそうだね。だからボクは、誰にも強要や強制をしていない。気づいた人から気づいた人なりのやり方で、やってくれればそれで良いと思っている。たとえこの狭き門が、誰に対しても分け((隔|へだ))てなく開かれていたとしても、門をくぐるかどうかは一人ひとりの選択に任されている事だから。
でもね。人は誰しも心の奥底で、自分の人生を情熱的に生きてみたい、自分自身の可能性を確かめてみたいって、そう感じているんだと思うんだよ。もし、それが感じられないというのなら、それは今までの人生で学んでしまった思い込みや観念があるからなのさ。だから、それを受け入れ解き放ってくれさえすれば、人は誰でも自分の本当の人生、本当の幸せを受け取れるように成るんだ」
ボクがそう言うと、北郷は気を静めて語ってきました。
「だが、そうは言っても難し過ぎるだろう、これは。いくらなんでも」
「そうだね。誰にでも出来る事だとは言っても、簡単に出来る事ではないのかも知れないね。だから今、一刀が難しいと感じても無理ないと思う。
でも、初めは誰でもそうなんだよ。後は決心して、受け取った答えを実行に移してしていく。本当に、ただそれの繰り返しなのさ」
「しかし、なぁ……」
「それにね。一刀は気がついていないかも知れないけれど、みんな知らず知らずのうちに行なっている事なんだよ、これは。ただ、意識的に行なっていくかどうかの違いでしかないのさ」
「……そうなのか?」
「そうさ。だってボク達は、その為に生まれて来たんだ。新しい自分自身を経験する為に、最高の自分という高みへ至る為に、ね」
「へ?」
北郷はボクの最後の言葉を冗談だとでも思ったのか、短い問いを発する以上は話しかけて来ませんでした。
それとも、少し考える時間を取る事にしたのでしょうか?
いずれにしても、ボクは北郷の意思を尊重してそれ以上は語らず、ただ愛馬に揺られるに任せる事にしたのでした。
いくら情報を集めてみても、使いこなせなければ意味が無い。
使いこなせなければ、情報過多が原因で混乱してしまう事にもなりかねない。
だから今、気づける事から気づいていけば良い。
受け入れられる事から受け入れていけば良い。
無理する事なく、それぞれの進め方で進んで行ければ、それで良い。
いずれそれが、呼吸するように自然に身についていれば、それで良い。
それもこれも、自然が今の在り((様|よう))のまま存在してくれていればの話だけれど。
それ以外に、やりようも無い。
だから今この瞬間、生かされている事に感謝しよう。
それが((巡|めぐ))り巡って、自分が生きる事に繋がっていくのだから。
説明 | ||
無難な人生を望み、万年やる気の無かったオリ主(オリキャラ)が、ひょんな事から一念発起。 皆の力を借りて、皆と一緒に幸せに成って行く。 でも、どうなるのか分からない。 涙あり、笑いあり、感動あり?の、そんな基本ほのぼの系な物語です。 『書きたい時に、書きたいモノを、書きたいように書く』が心情の不定期更新作品ですが、この作品で楽しんで貰えたのなら嬉しく思います。 *この作品は、BaseSon 真・恋姫†無双の二次創作です。 |
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1964 | 1780 | 8 |
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オリ主 ほのぼの? 覚醒 真・恋姫†無双 真・恋姫無双 BaseSon 独自ルート 不定期更新 | ||
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