本編補足 |
左遷
C1 圧力
C2 起点
C3 実家
C4 客人
C5 出立
C1 圧力
カン大陸帝国。エンクン市。アマヅ軍港にタグボートに牽引されて入港する巨大空母テンエン。艦橋からアマヅ軍港を見つめるカン大陸帝国の大将軍で白髪に立派な白髭のチョウカツと参謀のニーソウ。
ニーソウ『将軍。ようやく戻ってこられましたね。』
チョウカツは顎髭を人差し指と親指で摘まんで撫でながらニーソウの方を眼を細めて見る。
チョウカツ『うむ…。』
艦橋の窓からはカン大陸帝国の大多数の軍艦が見える。
アマヅ軍港に並ぶカン大陸帝国の軍人達。正面に立つチョウカツの息子で将校のチョウヒッサツ。テンエンからタラップが降ろされ、降りるチョウカツとニーソウ。敬礼する軍人達。チョウカツ、ニーソウもそれに倣う。チョウカツの傍らへ寄るチョウヒッサツ。
チョウヒッサツ『長旅ご苦労様です。父上。司令部にて、皇帝がお待ちです。』
眉を顰めるニーソウ。
ニーソウ『皇帝?』
チョウカツは腰に手を当てる。
チョウカツ『うむ。』
チョウカツは顎髭を撫でながら、チョウヒッサツの後をついていく。続くニーソウ。
アマヅ軍港。煌びやかに飾られた司令部で、美女が躍る。玉座に冕冠を被って、壮麗な衣装を着、左右に美女を侍らせる美少年でカン大陸帝国の皇帝リューゼン。傍には側近のハクヒ、ヒムキョク、コウコウにヨーショウがいる。リューゼンの口についている米粒を、彼の唇をなぞってとる美女A。
美女A『お米粒がついておりましたよ。』
美女Aの方を向くリューゼン。
リューゼン『うん。そうか。』
美女Aは米粒を自身の口に入れる。彼らの前に現れるチョウカツ、ニーソウ及びチョウヒッサツ。一歩前に出てニーソウを見下すヒムキョク。
ヒムキョク『さてもさても、よくもこの地に帰れたものだ。』
首を傾げるニーソウ。
ハクヒ『そなた。この場に立っていて恥ずかしくはないのか?』
彼らを睨み付けるニーソウ。
ニーソウ『…何のことでしょうか?』
額に手を当て上を向くヨーショウ。
ヨーショウ『くっはぁ。あれ程の事をやらかしておいてこの男は!!』
眉を顰めるニーソウ。
ニーソウ『…要領を得ないのだが。』
リューゼンの傍によるコウコウ。
コウコウ『ささ、リューゼン様。この者の処分を。』
美女達を見ているリューゼン。眉を顰めるコウコウ。
コウコウ『リューゼン様。』
頬杖をつくリューゼン。
リューゼン『めんどい。』
コウコウ『め、めんどいって原稿読むだけじゃないですか!』
首を横に振るリューゼン。
リューゼン『いや!だって、めんどいんだもん。お前がやってよ。』
ため息をついて、?頭に手を当ててリューゼンの両脇に居る美女達を見るコウコウ。
美女Aは跪いてリューゼンを見つめる。
美女A『陛下の格好良いところを見て見たいですわ。
体を揺する美女B。
美女B『私も見たい見たい〜。』
美女Aと美女Bを見回すリューゼン。
リューゼン『そっか。そっか。じゃあいくぞ。』
咳払いをして、原稿用紙を取り出すリューゼン。
リューゼン『ニーソウ。この者。ユランシア大陸にて、貴族連合とロズマール王国反乱軍との戦においてチョウカツ将軍の命に背き、独断にて軍令を出し、現場を混乱させ、揚句にはヒート、ガイデン、ノーダの三王国の王子達を危険にさらしたこと…。』
ニーソウは蟀谷に血管を浮き出させる。
ニーソウ『何だと!!』
ニーソウの顔を見て、飛び上がるリューゼン。床に落ちる原稿。リューゼンに駆け寄るコウコウ。
コウコウ『およよよよ。陛下、どうしたしました。』
涙を流しながらニーソウを指さすリューゼン。
リューゼン『だって、怖いんだもん。』
美女Aがリューゼンを抱きしめ、美女Bがリューゼンの頭を撫でる。
美女A『おかわいそうに。』
ニーソウはチョウカツの方を向く。
ニーソウ『チョウカツ将軍!あなたからも…。』
ニーソウに背中を見せるチョウカツ。ニーソウはチョウカツの背中を見つめ、司令部に居るリューゼンとその側近たちの方を見回した後、正面を向く。
ニーソウを向き、チョウカツの方を見て首を傾げるチョウヒッサツ。
コウコウ『陛下、まだ残っております。』
リューゼン『やだぁ。やだぁ。だって怖いもん。』
ため息をつくコウコウ。ハクヒが原稿をとる。
コウコウ『ハクヒ殿。』
コウコウの方を向くハクヒ。
ハクヒ『もう宜しいでしょう。ここからは私が…。』
ハクヒはニーソウの方を向く。
ハクヒ『ニーソウ!貴殿の現在の官職を解き、三日月島サンカイの地方軍務官に任命する。』
ヒムキョク『もう一度、軍人としての資質を磨かれよということだな。』
ヨーショウ『処刑されなかっただけありがたいと思え!陛下の慈悲であるぞ!ギヘヘヘヘ。』
握り拳を震わせ、歯ぎしりして下を向くニーソウ。
C1 圧力
C2 起点
カン大陸帝国帝都テンヨウ。中央区にあるニーソウの邸宅。大門は開き、使用人達が家財道具を運んでいる。大門に続く階段に座り新聞の国際欄を眺めているニーソウ。
シーン皇国隊士隊副隊長のサゼンが貴族連合とロズマール反乱軍との戦闘の不手際により、ヒート、ガイデン、ノーダ三王国の王子を危険にさらし、揚句には腕を一本失った体たらく故、除隊されるという記事を見つめ、ため息をつくニーソウ。
ニーソウ『君もか…。』
頬杖をつき、空を見上げるニーソウ。新聞に中指と人差し指をかけてめくる大商人のクンカ君。
クンカ君『おっはよ〜。』
ニーソウはゆっくりとクンカ君の方を向く。
ニーソウ『ん、ああ。クンカ君か。』
クンカ君『聞いたぞ。失態を犯して、左遷されたと。』
ニーソウの横に座り、肩に手をまわすクンカ君。
クンカ君『しっかし、まあ、あれだな。君が左遷されたと知ったら、黄色い声を上げてた女子連中はパッと居なくなちまったな。』
ニーソウ『ま、女心というのはそんなものだろうね。』
クンカ君は人差し指を上にあげてクンカ君を見つめる。
クンカ君『こういう時に来て支えてくれる女の子ってのを嫁にもらった方がいいぞ。』
ニーソウはクンカ君を見つめて笑う。
ニーソウ『だったら君が女なら良かった。』
笑い出すクンカ君。
クンカ君『折角、慰めてやろうと思って来たら、まったく落ち込んでないな。』
ニーソウ『そうだな。』
立ち上がるニーソウ。
ニーソウ『さてと。』
ニーソウは懐から懐中時計を取り出して見つめる。
ニーソウ『そろそろお爺様の所へ行かなくてはな。』
階段下に現れるニーソウ所有の高級車。膝下を軽くはたき、砂埃を落とすニーソウ。ニーソウを見上げるクンカ君。
クンカ君『…お爺様か。』
クンカ君を見下ろすニーソウ。
ニーソウ『ああ、すまないな。』
立ち上がるクンカ君。
クンカ君『そうか。俺も久々にニートゥ殿の顔を見たくなった。どれ、付いていってもいいか?』
ニーソウはクンカ君を見つめる。
ニーソウ『…ああ。別にかまわないが。』
笑顔になるクンカ君。
クンカ君『そっか。ではご同行させてもらおう。』
歩き出すニーソウとクンカ君。
ニーソウ『が、あの車に乗り込めば一蓮托生だぞ。』
眼を閉じ、口角を上げるクンカ君。駆けてくる男装したニーソウの侍女で子供のアコン。
アコン『ニーソウ様。お車の準備ができました。』
アコンを見つめるクンカ君。
クンカ君『ほお。』
ニーソウの方を見つめるクンカ君。
クンカ君『暫く見ないうちに随分と小さい子を雇ったな。』
頷くニーソウ。
ニーソウ『アコンという。』
一礼するアコン。
アコン『アコンと申します。』
クンカ君に耳打ちするニーソウ。
クンカ君『なんと…。』
クンカ君はアコンを見つめる。
顔を上げるアコン。屈むクンカクン。
クンカ君『アコン君か。どおれ。』
クンカ君は懐からユランシア大陸バロナ王国産のアメ、ゴルーを取り出す。
クンカ君『ユランシア大陸バロナ王国産の飴玉はいかがかな。』
アコンはクンカ君を眼を細めて見つめる。
アコン『飴玉なんていりません。子ども扱いしないでください。』
ニーソウはクンカ君の方を向く。
ニーソウ『ユランシアのバロナ王国のアメか。珍しいな。一つもらおう。』
クンカ君『はいよ。』
ニーソウはクンカ君からゴルーを受け取り、包み紙をとって舐める。
アコン『ああっ、ニ、ニーソウ様が貰うなら私も!』
笑いながらゴルーを懐から取り出すクンカ君。
C2 起点 END
C3 実家
カン大陸帝国帝都テンヨウ。中央区の道路を走るニーソウ所有の車。前方と区切られたプライベートルーム。向かい合って座るニーソウとクンカ君。
クンカ君『サンカイは世界中の海賊が集まる都市だ。下手をすれば殺されるかもしれない。実際に赴任した地方官は逃亡もしくは殺され、現在は一応、カン大陸帝国の都市と言っているものの空白地帯…。』
頬杖をつくニーソウ。
ニーソウ『分かり切ったことを。まったく長ったらしい説明文だ。そんなことは誰でも知っている。今更説明する必要もないだろう。』
クンカ君『しかし、君は動じていない。そして死地に向かうのに嬉々としている。』
クンカ君はニーソウを指さす。
クンカ君『その自信。確証を得る。』
頬杖を解き、クンカ君を見つめるニーソウ。
クンカ君『サンカイは危険だが世界中から富と人が集まる交易路。統治が叶えば莫大な利権を我々にもたらす。君の祖父、ニートゥ殿の人脈を利用して既に手は打っているのだろう。』
ニーソウは頭を撫でて笑い出す。
ニーソウ『流石だな。だが、クンカ君よ。私について来れば、失敗した時も一蓮托生に本当になるぞ。それでもいいのか?』
笑い出すクンカ君。
クンカ君『これまで君についていって利益にならなかったことはなかった。』
苦笑いして窓からの景色を見るニーソウ。
カン大陸帝国帝都テンヨウ。中央区にある長年カン大陸帝国の政治家を務め、隠居したでニーソウの祖父ニートゥの館の前にニーソウ所有の高級車が止まる。
高級車から降りるニーソウとクンカ君にアコン。去って行くニーソウ所有の高級車。門衛Aと門衛Bがニーソウに駆け寄り跪く。
門衛A『おお、これはお坊ちゃま!』
門衛B『この度は災難でしたな。』
立ち上がる門衛A。
門衛A『ささ、こちらへ。ニートゥ様がお待ちです。』
ニーソウは親指でクンカ君を示す。
ニーソウ『クンカ君も行くぞ。』
クンカ君の方を向く門衛達。
門衛A『は、はは。』
門衛B『宜しいのですか?』
門衛たちを見つめるニーソウ。
ニーソウ『構わんさ。』
階段を上がって行くニーソウとクンカ君。扉が開き、駆け出てくるニーソウの祖父ニートゥ。
ニートゥ『おお。ニーソウや。よくぞ来てくれた。それに…。』
ニートゥはクンカ君の方を向く。
ニートゥ『クンカ君も。』
一礼するクンカ君。
クンカ君『お久しぶりです。』
ニートゥはアコンを見下ろす。
ニートゥ『サンや。暫く見ないうちに綺麗になったの。』
顔を赤らめるアコン。アコンを見つめるクンカ君。
クンカ君『綺麗になった??』
笑みを浮かべるニーソウ。
ニーソウ『こういう所には読みは働かないかクンカ君。彼女は女だよ。あらぬ噂が立たぬように男装してくれているのさ。』
片眉を上げるクンカ君。
ニートゥ『ささ、宴の準備は整っている。…客人もな。』
C3 実家
C4 客人
ニートゥの館。廊下を歩くニートゥにニーソウ、クンカ君にアコン。ニートゥの館鳳凰の間の扉の前に立つ彼ら。ゆっくりと扉が開く。そこにはテーブルに並べられた数々の料理。椅子に座る元大提督で現在海賊ののテーワと娘のテーイが座る。眼を見開くクンカ君。
クンカ君『…これはテーワ殿!!』
ニーソウの方を見るクンカ君。
クンカ君『あの大提督のテーワ殿か。』
頷くニーソウ。彼らの方を向くテーワ。腕組みをするテーイ。彼らに向けて揖礼するニーソウ。続くアコン。ニーソウの方を向いた後、揖礼するクンカ君。
ニーソウ『ようこそおいで下さいましたテーワ殿。私ニーソウと申します。』
立ち上がり、揖礼するテーワとテーイ。
テーワ『話はニートゥ殿から聞いています。災難でしたな。それで、この度はサンカイの統治に付くと。』
顔を上げるニーソウ。
ニーソウ『はい。』
前に出るニートゥ。
ニートゥ『挨拶はその位に、席に着いて宴を始めようではないか。料理が冷めてしまうぞ。』
頷き、席に座る一同。クンカ君はテーワを見つめる。
クンカ君『しかし、大提督のテーワ殿にまみえることができるとは。』
クンカ君の方を向くテーワ。
テーワ『はは。昔の話です。マジックシード収賄事件で地位を失ってからは昔、提督今海賊ですよ。』
テーイ『父上。』
テーワはテーイの方を向いた後、咳払いする。
テーワ『おっと。』
ニートゥ『今も昔も宮廷の体質は全く変わっておらんの。』
ニートゥは棒棒鶏を摘まむ。
ニートゥ『しっかし、チョウカツの奴め。詫びも居れに来ぬとは。あいつも歳をとって頭が固くなったの。』
ニーソウ『まあ、よろしいではありませんか。』
ニーソウの方を向くニートゥ。
ニートゥ『宜しくは無いだろう。お前はあいつらのおかげで地位を失い、コウ家の才女のコウリュウ殿との縁談も破談になった。』
ニーソウ『しかし、お爺様。おかげで地の利は得られる。』
ニートゥ『相変わらず、切り替えの早い子だな。』
ニーソウはテーワの方を向く。
ニーソウ『では、テーワ殿。サンカイ統治の御助力をお願いします。』
頷くテーワ。ニートゥの侍女達がフカヒレスープを運んでくる。
C4 客人 END
C5 出立
カン大陸帝国帝都テンヨウ。中央区にあるニーソウの邸宅。家財道具を詰めたトラックが走り去っていく。大門を潜り、邸宅を見つめるニーソウ。庭の木々が風に揺れ、木の葉が舞い落ちる。大門に現れるコウ家の才女コウリュウ。
コウリュウ『行ってしまうのですか?』
振り向くニーソウ。
ニーソウ『これは、コウリュウ殿。』
2、3歩前に進むコウリュウ。
コウリュウ『私を置いて。』
ニーソウはコウリュウを見つめる。
ニーソウ『貴女の父君の選択は間違っていない。私も大切な貴女を危険なところへ行かせられない。』
ニーソウの胸に飛び込むコウリュウ。
コウリュウ『ニーソウ様。』
コウリュウを抱きとめるニーソウ。
ニーソウ『安心してください。私は戻って貴女を迎えに来ます。』
コウリュウはニーソウを見上げる。
コウリュウ『きっと。きっと、いえ、絶対ですよ。』
ニーソウを強く抱きしめるコウリュウ。風が彼らの衣服を揺らす。
コウリュウ『…このままずっといられたらいいのに。』
木の葉が舞い落ちる。暫し抱き合うニーソウとコウリュウ。一礼するコウリュウ。
コウリュウ『お元気で。』
コウリュウは大門から去って行く。大門の方を暫し向くニーソウ。ニーソウは邸宅の方を向いた後、大門から出て、階段を降りる。
彼は顔を上げ、ニーソウ邸宅を見た後、カン大陸帝国の巨大な宮廷アボ宮殿を見つめる。
C5 出立 END
END
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