英雄伝説〜運命が改変された少年の行く道〜
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夕食前にリィン達はオリヴァルト皇子からある話を聞かされていた。

 

〜夕方・聖アストライア女学院・聖餐室〜

 

「―――驚きました。学院の理事長をされているのが皇族の方とは聞いていたのですが。」

「ハッハッハッ。驚くのも無理はない。今をときめく『放蕩皇子』が伝統ある士官学院の理事長なんかやっているんだからねぇ。まー、あまり聞こえがよろしくないのは確かだろうね。」

リィンの言葉に声を上げて笑って答えたオリヴァルト皇子は苦笑して説明し、オリヴァルト皇子の答えを聞いたリィン達は冷や汗をかき

「お兄様、ご自分でそれを言ったら身も蓋もありませんわ。」

アルフィン皇女は呆れた表情で指摘した。

「というかお主がよく士官学院の理事長を務められるな?音楽院の方が似合っているぞ。」

「そだね。女好きのそいつなら、むしろ女の子がいっぱいいるこの学院の理事長を務めたかったんじゃないの?」

リフィアとエヴリーヌはそれぞれ呆れた表情で指摘し

「リ、リフィアお姉様、エヴリーヌお姉様。」

「……二人とも、余計な事を言わないでください。」

二人の指摘を聞いたプリネは表情を引き攣らせ、エリゼは疲れた表情で指摘した。

「ハッハッハッ。いや〜、ボクも叶うことなら、そうしたかったんだけどね〜。一度は考えた事もあるんだけど、残念ながらミュラー君やアルフィンに止められちゃったんだよね〜。」

「考えた事はあるんですか……」

「フウ……さすがにお兄様が女学院の理事長になるのは、色々と不味いですから止めて当然ですわ。」

そして笑顔で答えた後心底残念そうな表情をしたオリヴァルト皇子の話を聞いたリィン達は再び冷や汗をかき、ツーヤとアルフィン皇女は呆れた表情で溜息を吐いた。

 

「で、ですが本当なのですか?殿下が”Z組”の設立をお決めになったというのは……」

「タネを明かせばそういう事さ。元々、トールズの理事長職は皇族の人間が務める慣わしでね。私も名ばかりではあったんだが一昨日のリベール旅行で心を入れ替えたのさ。」

アリサの質問に答えたオリヴァルト皇子は静かな表情になった。

「一昨日のリベール旅行……」

「”リベールの異変”ですね。」

「ああ、あの危機における経験が帰国後の私の行動を決定付けた。そして幾つかの”悪あがき”をさせてもらっているんだが……そのうちの一つが、士官学院に”新たな風”を巻き起こす事だった。」

「新たな風……」

「……すなわち我々、特科クラス”Z組”ですか。」

「では、身分に関係なく様々な生徒を集めたのも……?」

オリヴァルト皇子の話を聞いてある事が気になったマキアスはオリヴァルト皇子を見つめた。

 

「ああ、元々は私の発案さ。もちろんARCUSの適性が高いというのも条件だったがね。」

オリヴァルト皇子の説明を聞いたリィン達全員は黙り込んだ。

「……今となってはその意図も何となくわかります。こうして”特別実習”という名目で各地に向かわせることの意味も。」

「この帝国で起きている実情……貴族派と革命派の対立を知らしめ、考えさせるのが狙いですか。」

「無論、それもある。だが私は君達に現実に様々な”壁”が存在するのをまずは知ってもらいたかった。その二大勢力だけではない、帝都と地方、伝統や宗教と技術革新、帝国とそれ以外の国や自治州までも……この激動の時代において必ず現れる”壁”から目を背けず、自ら考えて主体的に行動する―――そんな資質を若い世代に期待したいと思っているのだよ。」

「あ……」

「……それは…………」

オリヴァルト皇子の答えを聞いたリィン達は再び黙り込んだ。

 

「正直、身に余る期待ですけど……」

「ですがようやく、色々なものに合点がいった心境です。」

「たしかにこの”Z組”ならばそんな視野が持てるかもしれない……」

「そういった手応えが自分達の中にあるのも確かです。」

「……だね。」

「フフ、そうか……そう言ってくれただけでも私としては本望だ。”Z組”の発起人は私だが既にその運用からは外れている。それでも一度、君達に会って今の話だけは伝えたいと思っていた。そこにアルフィンが、今回の席を用意すると申し出てくれてね。」

Z組の面々の答えを聞いて静かな笑みを浮かべたオリヴァルト皇子は話を続けた。

 

「そうだったんですか……」

「フフ、お兄様のためというのもありますけど。エリスの大切なお兄さんに一度、お会いしたかったのもありますね。」

「ひ、姫様……!」

「フフ、お兄様は素敵な方ですものね。」

「………………」

リィンを見つめて微笑むアルフィン皇女とセレーネの答えを聞いたエリスは焦り、エリゼは顔に青筋を立てて微笑んでいた。

 

「はは……―――そういえばずっと気になっていたんですけど、プリネさんとツーヤさんの留学はオリヴァルト皇子の頼みという事でしたけど……」

「………エヴリーヌもまだ聞いてない。何でプリネ達をそっちの事情に巻き込んだわけ?」

リィンの疑問に頷いたエヴリーヌはオリヴァルト皇子を見つめた。

 

「そう言えば君達はまだ二人の留学した”真の理由”を知らなかったな……」

「”真の理由”、ですか。二人は両国の国家間の関係修復の為に留学していると聞いていましたが……」

オリヴァルト皇子の言葉が気になったユーシスはオリヴァルト皇子を見つめた。

「勿論それもある。私が彼女達の留学を望んだの本当の理由は君達では対処できなくなってしまった危機に陥った時の”切り札”として、君達を手伝って欲しいと望んだのだよ。」

「ぼ、僕達では対処できなくなってしまった危機って…………」

オリヴァルト皇子の答えを聞いたエリオットは不安そうな表情をし

「……”身喰らう蛇(ウロボロス)”によってエレボニア帝国が第2の”リベールの異変”のようになることを危惧しておられるのですね、オリヴァルト皇子は。」

プリネは静かな表情でオリヴァルト皇子を見つめた。

 

「なっ!?そ、それは……!」

「………………」

プリネの言葉を聞いたマキアスは驚き、ラウラは真剣な表情でオリヴァルト皇子を見つめ

「フフ、その通り。”リベールの異変”で”身喰らう蛇(ウロボロス)”はリベールから手を引いたが、他の国で同じような事が起こらないという保証はない。”執行者(レギオン)”辺りが相手になると、さすがに今の君達では荷が重いだろうからね。それは私自身、”リベールの異変”で彼らと直接剣を交えたから、彼らの恐ろしさは嫌と言うほどわかっているよ。」

「お兄様………」

「「…………」」

真剣な表情で答えたオリヴァルト皇子の話を聞いたアルフィン皇女とエリス、そしてエリゼはそれぞれ心配そうな表情でオリヴァルト皇子やリィンを見つめた。

 

「その”執行者(レギオン)”に関してですが……―――本日、”怪盗B”こと執行者No.]”怪盗紳士”ブルブランが関わった盗難事件にあたし達がブルブランの謎かけで盗まれた品物を取り返し、更にブルブラン自身と接触しました。」

「まあ……”怪盗B”と言えばお兄様のお話にあった………」

「”怪盗B”だと?奴と接触したのか?」

「ああ……まんまと逃げられてしまったけどな。」

「ほう?まさか美を巡る我が好敵手が既に君達と接触したとは。フフ、さすがは我が好敵手。目の付け所が良いね。」

ツーヤの話を聞いたアルフィン皇女は目を丸くしてオリヴァルト皇子を見つめ、ユーシスは眉を顰めてリィン達を見つめ、リィンは疲れた表情で答え、オリヴァルト皇子は静かな笑みを浮かべた。

 

「た、確かに僕達が実際”怪盗B”みたいな人達と戦っても勝てるかどうかわからないよね……?」

「ああ……訳のわからない術も使うし、ツーヤ達の話ではとんでもない実力を持っているようだしな……」

「……ツーヤやプリネ無しの今のわたし達が戦っても、勝率は限りなく低いだろうね。」

不安そうな表情のエリオットの言葉にマキアスは疲れた表情で頷き、フィーは真剣な表情で答え

「……そうだな。悔しいが、今は精進あるのみだな。」

フィーの意見にラウラは重々しい様子を纏って頷いた。

 

「まあ、そういう訳で忙しいプリネ姫達には申し訳ないと思ったんだけど、彼女達に君達のサポートを頼むことにしたのさ。」

「そうだったんですか……」

「……俺達の身を心配して頂きありがとうございます。」

オリヴァルト皇子の答えを聞いたアリサは目を丸くし、ガイウスはオリヴァルト皇子に会釈をした。

 

「フフ、オリヴァルト皇子の提案のおかげで私達は憧れていた学院生活を満喫していますから、むしろ感謝しているくらいですよ。」

「ええ……クローゼさん達をずっと見ていましたから、いつか学院生活を送りたいと思っていましたし。」

「フッ、二人とも学院生活を満喫しているようで何よりだよ。」

プリネとツーヤの答えを聞いたオリヴァルト皇子は静かな笑みを浮かべ

「……とは言ってもプリネ達がいる事で起こった問題もあるから、正直お主たちエレボニア帝国にとってメンフィル帝国の皇族や貴族であるプリネ達の存在は諸刃の剣と思うぞ。――――ケルディックの件が良い例じゃ。ケルディックの件はお主自身、どう思っているのじゃ?」

リフィアは真剣な表情でオリヴァルト皇子を見つめた。

 

「あ…………」

「それは…………」

ケルディックの件を思い出したアリサとリィンは心配そうな表情でユーシスを見つめ

「………私自身、ユーシス君には悪いと思うが、あの件はアルバレア公爵にとって良い薬になったと思っているよ。まあ、その後の特別実習でも再び強引な手段を取ったにも関わらずエステル君達によって痛い目に合されたようだから、さすがに懲りたと思うが……」

「……私の事はどうかお気になさらず。あの二つの件は両方とも父の暴走ですので、あの結果は父の自業自得だと思っております。メンフィル帝国には大変申し訳ない事をしたと、今でも私や兄自身思っております……」

オリヴァルト皇子は重々しい様子を纏って答え、ユーシスはオリヴァルト皇子に会釈をした後、リフィアを見つめて頭を下げ

「頭を上げろ。もうあの件は既に終わった事。余やリウイ達もあの件はもう気にしておらぬ。」

「……寛大なお心遣い、ありがとうございます。」

リフィアの言葉を聞き、リフィアに会釈をした後頭を上げた。

 

「むう。これからもプリネ達が狙われないって保証はないんだし、内輪揉めしている国なんかにプリネをずっといさせるなんて、エヴリーヌは安心できないけど。」

「エヴリーヌお姉様ったら……」

つまらなさそうな表情で呟いたエヴリーヌの言葉を聞いたプリネは呆れ、エヴリーヌの直接的な言い方にリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「ハッハッハッ。そんなに心配ならエヴリーヌ君も”Z組”に編入するかい?プリネ姫とレーヴェ君の逢瀬の邪魔もできるだろうし♪エヴリーヌ君の見た目なら、学生でも充分通るだろうし。」

「フム、それはよいの。エヴリーヌに勉強させるちょうどいい機会にもなるしな。」

「ええっ!?」

オリヴァルト皇子の提案に頷いたリフィアの様子を見たリィンは驚き

(……プリネさん。エヴリーヌさんがまともに授業を受けてくれると思いますか?)

(多分無理でしょうね……)

ツーヤに念話で尋ねられたプリネは苦笑し

「んー……勉強はヤだけど、プリネの傍にいられる上レーヴェをプリネに必要以上近づかせないためにもいいかもしれないね。」

「フフ、私としたらリフィアの脱走の手助けをする要注意人物がしばらくいなくなりますから、大助かりですけどね。」

「しまったっ!?エヴリーヌに抜けられるとエリゼの監視から逃げ出す事が困難な事に気付かないとは、なんたる不覚……!」

考え込みながら呟いたエヴリーヌの様子を見て微笑むエリゼの言葉を聞いて慌てているリフィアの様子を見たリィン達はリフィアの事を良く知る者達以外全員冷や汗をかいて表情を引き攣らせていた…………

 

 

説明
第119話
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コメント
感想ありがとうございます 本郷 刃様 どうなるかは閃Uの展開次第ですね ジン様 さあ、どうなるでしょうね?(ニヤリ) kanetosi様 まあ、あまりにもわかりやすいですものねww THIS様 ミュラーもきっと学ぶべきものがあるでしょうねww(sorano)
なんでかな?エリゼ乃優位性が揺らがない。ミュラーさんと是非ペンフレンドになっていただきたい気分だ!!(THIS)
あ....このあとの展開が読めたw確かこのあとはアルフィンの問題発言が来るなw(kanetosi)
さてはてマジでエヴリーヌはZ組に編入してくるのかね?そして次回こそ正真正銘の修羅場になるのかな?取り敢えずリィンよ生きろ(ジン)
エレボニアは策謀が渦巻いていますが、メンフィルの掌となるか否か・・・w(本郷 刃)
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