模型戦士ガンプラビルダーズI・B 第24話 |
日曜日に模型店『ルジャーナ』で催されたくじ引きガンプラバトル大会の翌日、
ナナ達は模型店『ガリア大陸』にてその内容をツチヤとソウイチに話していた。集まったのはアイ、ナナ、コンドウ、ツチヤ、ソウイチの五人だ
「昨日のバトルは楽しかったわよ、くじ引きでもアタシは結構いいの引けたし」
「ランダムでビギニングひくたぁ凄いッスねぇ、しかもリボーンズそれで倒すとは」
「まぁ、アタシの実力って奴?」
「オイオイ、俺達三人で力合わせて勝ったという事を忘れるなよ?」
「ハハ、ハジメさんも自信がついてきたってわけだ」
「……」
「そういう話聞くとますます出れなかったの悔やむッス。あ〜あ、俺達も出られたらなぁ。ノーベルガンダムに乗ったコンドウさんなんてそうそう見れるもんじゃないッスよ」
一瞬コンドウの顔がバツが悪そうになる。
「見たいのアサダ?オッサンの服、よく分かんないけど例の全身タイツみたいな格好だったのよ。リボン付きで」
「……やっぱ行けなくて正解だったッス」
「いい加減混ぜっ返すの勘弁してくれ、後になって思い出すの恥ずかしいんだから」
「結構ノリノリでやってたけどねオッサン」
「いや!なにふり構ってる状況じゃなかっただけだから!」
必死に首を振り訂正するコンドウ。
「で、改造するのかコンドウさん、プリキュ○かアイ○ツか艦○れにして自分の愛機に、ラブ○イブの方が良くない?」
「しないよ!てかなんで今日は俺がいじられなきゃいけないんだぁぁ!」
「……」
コンドウがノーベルガンダムに乗ってたと知るとツチヤとソウイチは執拗に話に振ってくる。普段はあり得ないコンドウだからだろうか。
――オッサンって案外いじられ系かも――と見ていたナナは感想を思う。
だが賑やかなその横で、一人妙に黙ってる人物がいた。
「ヤタテ?どうしたんだ。さっきから全然喋ってないぞ?」
「え?……あ……」
気の抜けた声で返事するアイだった。今日はここに来てから一言もしゃべってない。燃え尽きたかのようにそばの椅子に座ったままだった。
「あ〜ツチヤさん、アイは今日体力テストあったんだけどね、燃え尽きちゃって」
「体力テストで燃え尽きた?どういう事?」
「今日学校で模型部の部長と言い争いになっちゃってね。そいつが『いい結果残せたらガンプラ買ってあげる』って約束したの」
「大方それでヤタテの奴がムキになって、歩くのもおぼつかない位必死になりすぎたって事かい?」
「ナ!ナナちゃん!言わないでよ!」
立ち上がったアイが叫ぶと同時に、カクっと膝が折れる。立っていても膝が笑っていた。
「あう……」
「ゴメンゴメンアイ、座ってていいよ」
「体力テストでそこまでとはなぁ、体育の授業とかやってるだろ?」
再び椅子に腰掛けるアイ、力を入れるとふとももに痛みが走る為、ゆっくりと座った。しかし痛みは抑えられず声を上げる。
「あたたた!やってますけど……」
「アンタって体力ない上に運動オンチだからね」
「そのうえいつもガンプラ作ってるから運動不足になりがちって事スか」
「高校生でそれってどうなんだよ」
容赦ない発言だ。事実だがぐさぐさとアイに突き刺さる。
「い・いいじゃないですか……ガンプラバトルには関係ないし。操縦するのに運動神経は関係ないですよ」
「そういえばボールでゴッドガンダム倒したんだったな、ヤタテ」
「でもFポッドなら負けそうッスね。あれはやった事ないんスか?」
ソウイチの質問にアイは「う゛」と唸った。実際に動きをトレースするFポッドなら身体能力は大きくかかわる筈だ。
「そりゃやった事はないけど……別にいいでしょ?わざわざ不利な状況でやる必要もないし」
アイが面白くなさそうに口を尖らせる。その時だった
「あ〜いたいた!アイちゃ〜ん!」
二階に駆け上がってくる男がいた。雇われ店員のハセベだ。
「あ、ハセベさん。どうしたんですか?」
「君宛に店にメールが届いたんだ。君に挑戦したいってさ」
「挑戦状が?」
「お〜来たッスね。今回はどんな人なんスかね?」
「下のパソコンに描いてあるから降りてきて!」
「え!?ちょっと待って!今私筋肉痛……」
急いでるのかアイの言葉に耳を貸さず、そのままハセベは下に駆けおりていった。
「とりあえず……下にいかないと……」
手すりにしがみつき、一段ずつ降りようとするアイ、その横でソウイチ達が階段を駆け下りていった。
「こっちも興味があるッスから先行ってるッス」
「速く降りてこいよ」
「アイ頑張って〜」
「みんな待ってよ〜うう〜」
店内にアイのうめき声が響いた。
「え〜なになに……今週日曜日、前回のくじ引きガンプラバトルと同じ要領でバトルを申し込みたい。
十時に模型店『ダハールのピラミッド』で待つ。 ヒガサ・ヨウタ」
店のパソコンに届いたメールをアイが読む。その周りをコンドウ達が自分も見ようと集まっていた。
「前回のくじ引きガンプラバトルと同じ要領?」
「あの時と同じ、ランダムでガンプラを選んで作るって事だろ?」
「って事は前回のイベントに出てた人スかね?」
「みたいだね、あった事はないだろうけど顔は見られてるんじゃないかな?」
OKの答えを返信で書きつつアイは答える。
「しかし……ダハールのピラミッドか……」
「知ってるの?オッサン」
「行ったことはないんでなんとも言えんが……最近できた店らしいが割と遠いぞ?場所はルジャーナの方が近い」
『ルジャーナ』隣の県な為かなり遠い。
「って事はまた電車使わなきゃいけないんですか……コストかかるな」
「ん〜それだけだったかなぁ」
なにか喉に引っかかった様に唸るコンドウ。
「どした?コンドウさん」
「いや、もう一つ特徴があったはずなんだが……どうも思い出せない……これが一番重要だったような……」
「なんスかそりゃ」
そして日曜日がやってきた、アイ、ナナ、コンドウ、ツチヤ、ソウイチ、そして『面白そう』とついてきたタカコとムツミの7人は店を前にして茫然としていた。
「うわ〜本当にピラミッド型だよナナちゃん」
入口前で見上げながらアイが呟く。一週間近くたったのだからもう筋肉痛は全快していた。
「プラモ屋にこのデザインってどんだけ店長物好きなんだろうね……」
模型店『ダハールのピラミッド』はルジャーナの一個前の駅の近くにあった。特徴はアイ達の言った通り、
完全なピラミッド型をした建物で、だが周りの駐車場、中に入る自動ドアだは普通だ。周りは普通の建物だけにあまりにも周囲からは浮いてる建築物だった。
「それにしてもタカコ達がこんな遠くまでついてくるとはねぇ」
ついてきたタカコとムツミを見ながらナナが言う。
「前回バトルしたカサハラ君ってカワイイ男の子だったんでしょ?今回のもそういう子かもしれないしこれはインタビューしないとね〜」
「いっつもそうだねタカコ……、ボクは予定なかったから……」
「まぁとりあえず入ってみようよ」
そのまま7人は中に入る。ピラミッド型だけあって中は広々としており、様々な商品の置かれた棚が見える。
「中自体は普通のプラモ屋なんだね」
「さすがにな。内装までエジプト風にする必要はないだろうし」
「そんでチャレンジャーはどこスか?呼んどいて姿現さないのはいただけないッス」
横一列に並ぶ7人、しかしその時だった。突然アイの後ろから手が伸び、アイの胸を思いっきり掴む。
アイは初めは状況が理解できない為硬直していたが直後、理解すると同時に大きな悲鳴を上げる
「いっ!?ぎぃいやぁああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
『!!?』
周囲の客が一斉にこちらを見る。いきなり何が起こったのか理解できないナナ達は驚愕の顔をしていた。
「何!?なんなんですかぁぁ!!」
「あはは!まっ平らだぁ!」
手が離れると涙目で顔を真っ赤にして両手で胸を抑えるアイ、後ろからひょこっと少年が出てきた。
「読んだのはオレッチさ、ようこそ。ダハールのピラミッドへ、俺がメールを送ったヒガサ・ヨウタだよん」
快活そうな顔つき、髪はパイナップルの様にひっつめにし、鼻には絆創膏をつけ身長は150p半ば、
シャツは一部ズボンからはみ出していて、見るからにワルガキ、もといイタズラ好きな元気そうな少年だった。
「初対面で何するのぉぉ!!」
「挨拶がわりだよ挨拶がわり。うちのクラスの女子にもやってんだけど皆姉ちゃんみたいな反応するんだぜ?」
「それ嫌がってんでしょうがぁぁ!!」
「ア・アイちゃん……気持ちは分かるけど抑えて……」
がなるアイをムツミとナナが必死になだめる。
「それより姉ちゃん達前リョウの奴に勝ったんだろ?いいなぁ、オレッチじゃアイツにはいくらやっても勝てないのに」
「リョウ君とは知り合いかい?君も前のイベントで出てたの?」
「そだよオッサン、アイツとは幼なじみだよ。前のイベントの時もゾックに乗ってたんだけどリョウにやられちゃってさ」
「あぁ、あのゾックか」
前回リボーンズキャノンに組みついてた奴だ。そのままリボーンズガンダムに変形した後撃ち抜かれて倒されたが、
「そそ、立ち話もなんだから二階で話そうぜ。店長には話つけてプラモ選ぶスペースはつけてもらってんだ」
「……年齢的にはタカコ好みっぽいけど、どうなのタカコ……」
「悪いけどセクハラする子はNG、大事なのはNOタッチ精神だよ!」
そしてそのまま、全員が二階にあがる。建物がピラミッド状な為か天井は四角錐の内側の形状をしていた。とはいえ、
ガンプラバトルの設備はしっかりしており左右四台ずつ計八台のポッドがおかれている。
そして二階中央には前のイベント同様テーブルの上に白い箱が置かれていた。公のイベントでなく個人の対戦の為数は十個もないが。
「とりあえず……私はこれを選ぶよ」
アイがまたヨウタが胸を掴まないか警戒しながら箱をとる。
「じゃ、オレはこれね」
アイがとった後、ヨウタも箱を引き抜く。そしてお互いが取ったガンプラの中身をお互いに見せ確認する。
「私のはHGFCのゴッドガンダムだよ」
「オレはHGのダナジン、お互いいいの引き当てたんじゃね?」
ダナジン、『ガンダムAGE』後半に登場した敵機だ。その姿はドラゴンとしか言いようがない。
「みたいだね、それじゃ作成するから工作室借りるよ」
下に降りていく二人、一対一の勝負である以上、ナナ達はそれをただ見ているしか出来なかった。ツチヤが不安げに呟く。
「今日の相手は大丈夫なんだろうか、今までにない相手だしペース乱されて苦戦ってのも十分考えられる」
「大丈夫でしょツチヤさん、現にアイツのゾックに勝ったリボーンズをアタシらが倒してんだよ?アイの腕前なら一人でもアイツ位……」
「……いや、案外マズイかもしれないよ……」
不吉な事を呟いたのはムツミだ。ナナはどゆこと?と疑問に思い問いかける。
「……ここにいる他のビルダー、見てみなよ……」
ムツミが指した二階を見回す。他のビルダーがガンプラバトルで遊んでいるが、ガリア大陸の様なパイロットスーツは誰ひとりとして着ておらず、
前回のコンドウが着ていた様なファイティングスーツを着たビルダーしかいなかった。
「……まさかここって」
ナナが頭に不安要素を口にすると同時にコンドウが叫んだ。
「あ!思い出した!!」
……二時間後……
ナナ達は工作室で出来あがったガンプラを見る。アイのゴッドガンダムとヨウタのダナジン、どちらもシールを貼って組み立てただけだが丁寧に仕上げられていた。
「限られた時間でも結構うまくできたなヤタテ」
「基本ですよコンドウさん」
「でも、うまく動かせるの?」
「今更何言ってるのナナちゃん?そりゃ本編と違って普通に操縦するわけだけど……」
――まだ気付いてない!?――「いやアイ、実は……」
「普通に操縦?できねーよここ」
「へ?」
ナナが真実を言おうとするがヨウタが代わりに言う。
「いやだってここ、Fポッドしか置いてねーもん」
「な……」
突如アイの顔が急激に青ざめる。一気に自信を失った感じだ。
「そんな……それじゃ」
「ヤタテ……すまん、俺が前日にいうべきだったんだがここに来るまで忘れてしまって」
「あ、コンドウさん、大丈……へぅっ!!」
言葉の途中でまたアイが寄声を上げる。ヨウタがアイの尻を触ったのだ。
「な〜に落ち込んでんだよ姉ちゃん」
「またなにスンのぉぉっっ!!!!」
「ねぇ君……、もしかしてわざとアイちゃんに不利な状況で戦おうとしてない……?」
不審に思ったムツミがヨウタに問いかける。
「あ!姉ちゃんひでぇや!俺が卑怯な手ぇ使ったと思ってる!!」
「え?いや、そうじゃないけど……」
さもショックを受けたように驚くヨウタ。
「まぁそう言われても仕方ねぇやね……オレ、リョウに対して自信をつけたいだけなのに……」
突然、シュンとしながらヨウタは呟いた。カサハラ・リョウ、前回戦った凄腕ビルダーだ。
「リョウ君にか?」
「そうだよ。リョウとは張りあってるガンプラ仲間だけど、オレはリョウ程の実力はないんだ。いつもアイツはオレの先を行っちまう。
それが羨ましかったんだ。でもいつか!アイツを追い越してみせるって誓った!」
妙に芝居がかった様にリアクションを取るヨウタ
「そのタイミングでヤタテがリョウ君を倒したわけか」
「そのとーり!正直言ってショックだったよ。でもアイツを倒した姉ちゃんに勝てばアイツへの自信はつけられる!」
「だからアイに挑戦したってわけ?」
「そう!でも普通にやったんじゃまず勝てない!オレはガンプラより体育の方が得意だから勝手ながら少しでもこっちに有利な方法で挑みたいんだ!
勝てなくてもいい!ああ〜せめてオレが自信さえつけられたら〜!よよよよよ〜」
拳を握りながら力説するヨウタ、リアクションが妙に大袈裟に見えた為胡散臭く見えたが……
「そうなんだ。いいよ、乗ってあげる」
一番先に答えたのはアイだ。
「アイちゃん?いいの?この子はNOタッチ精神を忘れた子だよ〜」
意味不明な事言わないでよタカコ……とツッコミを入れるムツミ。
「いいもなにも、元々挑戦受ける為に来たんじゃない。それにこういう状況でやるのって別によくある話だよ。私だって今まで勝ってきたんだからFポッド位わけないよ」
「まぁ、別にその辺はボクもいちゃもんつけるわけじゃなかったけど……」
それを聞いた瞬間ヨウタの顔がパァッと明るくなった
「おっしゃあ!サンキュー姉ちゃん!先着替えて待ってるぜぃ!」
「負けないからね!」
そう言いつつ工作室を出ようとするヨウタは
むぎゅ
「っっ!!!!!」
すれ違いざまにアイの尻を触って行った。
「ま!またぁぁっっ!!!!」
「アハハ!胸はちっちぇえのにケツはデケえんだな姉ちゃん!!」
「な!」
顔を真っ赤にし、尻をさするアイを尻目にヨウタは出て行った。
「い……言っちゃいけない事を……!」
――気にしてたんだアイ……――
ちなみに口調とは裏腹にヨウタの頭の中は
――な〜んて〜のはぜ〜んぶウッソ〜♪このダハールのピラミッドはまだ出来たばかりでトップのビルダーがいないわけ。
ここで姉ちゃんみたいな凄腕ビルダーを倒せば、オレがトップビルダーって大手を振って言えるわけ〜!リョウに勝てずとも強豪ビルダーになってみせるぜ〜♪――
と全っ然言ってる事と本心は違っていた。
そしてガンプラバトルが始まった。今回のステージは『ネオホンコン決勝大会用リング』
巨大な円形の舞台をビームロープ(プロレスリングのロープのビーム版)が囲み、周囲は海、まさに一対一の為のステージだった。
「こんな恰好までするなんて……」
アイは自分がGガンダムの主人公、ドモンと同じデザインのFスーツを着ていた。黒い全身タイツの様なスーツに関節部にアンテナ、腹部に日本の日の丸が描かれてる。
啖呵を切ったはいいがこれを着るとなるとさすがに恥ずかしく感じる、しかし向うはそれをお構いなしに仕掛けてきた。
「FポッドならGポッドより得意だぜぇぇ!!」
両手のビームサーベルを振り回しゴッドガンダムに斬りかかるヨウタのダナジン、
「くっ!」
アイもゴッドガンダムのビームサーベルで受け止める。しかし受け止めた時、ダナジンは尻尾のダナジンスピアでゴッドガンダムを薙ぎ払った。
「ぅあっ!!」
Fポッドに衝撃が走り、ゴッドガンダムは大きく弾き飛ばされる。
「まだ!」
弾き飛ばされ、なお起き上がりビームソードで斬りかかろうとするアイ、しかしそのままバーニアで突撃するかと思いきや、ドタドタと走りながらダナジンに向っていった。
あまり緊張感のない光景だ。そのままダナジンめがけてビームソードを縦に振り下ろすが、簡単にダナジンは横にかわす。振り下ろす予備動作が大きすぎるのだ。
「動きが遅い!でも!」
「なんだ、おせぇなぁ姉ちゃん、胸小さい女は走るの早いんだろ?」
「人それぞれだよぉおおおおおお!!!!!!!!!!!!」
ダナジンはかわした動きで両手のビームマシンガンを撃つ。アイは顔を真っ赤にしながらゴッドガンダムでかわそうとするがしきれず、
両腕で顔と胸をガードしマシンガンを受けた。
「予想は出来てたけど、どーすんのよ!圧倒されまくってんじゃん!」
観戦モニターを見ながらナナは叫んだ。
「マズイッス。運動神経がないとは思ってたけどここまでダイレクトに差が出るものとは……」
「向こうがよく動く上に、ヤタテの方は動きがスローモーションだ。これでは当たる攻撃も当たらないぞ」
この場にいた全員がこの状況にマズイと感じていた様だ。
「今のヤタテはファーストのアムロが初めて乗った機体がシャイニングガンダムだったような物だ。どうする?ヤタテ」
「ガンダム見てないボクらじゃ、例えが分からないですコンドウさん……」
「しかもファーストのアムロの体力じゃFスーツすら着れないッス。あれ着るのえらい体力必要スから」
「ハハハ!姉ちゃんもFポッドなら形無しだな!」
「それでも……結構持ってるけど!」
ヨウタは笑いながら余裕をかます。バトルはずっとヨウタが優勢だった。しかしなかなかアイに決定打を与える事は出来ない。
今のアイは確かに動きが鈍いが、いい所にいけそうな攻撃はほとんど捌いている。
サーベルでつき刺そうとすれば同じくサーベルで捌き、顎のビームシューターを至近距離で撃とうとすればバルカンを頭部目掛けて撃ってくる。
向うも散々Gポッドで戦ってきた経験上解ってるのだろう。
「ホント!随分としぶといぜ!ケツが大きいから重くてトロいんだろうけど!」
「あぁ!?だからやめてよその言い方!」
アイがまたも大声を上げる。女の子へのこういった発言はヨウタの癖だ。だがこの無神経さはある意味作戦として機能していた。
怒らせて相手の判断を鈍らせる。特に女の子はコンプレックスに敏感だ。
「そしてすばやくは動けない!なら!」
「!」
ヨウタのダナジンはゴッドガンダムの背後に一気に回る。反応の遅れたアイはゴッドガンダムを両脇からダナジンに羽交い絞めにされてしまう。そのまま高度へ飛び立つダナジン
「あ!何を!?」
「このまま地面に叩きつけてやらぁ!!」
かなりに高さにあがるとそのままダナジンは一気に急降下をかける。ゴッドガンダムをイズナ落としの要領で頭から叩きつけて破壊するつもりだ。
「マ・マズい!?」
「残念だったな!ケツデカ姉ちゃん!この勝負もらったぜ!」
「だからやめてって!」
「気にすんなよ!上半身マッチ棒か、こけしみたいにヒョロいのにせめてケツだけでかいんだからよ!
重いならケツから落とした方が効果ありそうだけど!アハハハハ!!」
「」
ぶちっ
勝利を確信し調子に乗ってアイのコンプレックスをつつきまくるまくるヨウタ、
もうじきダナジンはゴッドガンダムを地面に叩きつけるだろう。しかしその時だった。
ゴッドガンダムの背中のバーニアが全開で噴射された、熱は背中のダナジンに直撃する。
「うわ!あぶね!!」
ヨウタはダナジンの手を離す。ゴッドガンダムはそのままリングに降り立つ。(しかし着地がうまくいかずよろけたが)
そのままゴッドガンダムは着地したダナジンにゆらっと向き直る。
「なんだ?さっきとなんか様子が?」
「……さっきから黙って聞いていれば好き放題言って……」
アイが呟くように淡々と喋る。同時に各部の装甲が展開していく。妙に凄みのあるオーラを放っており、ヨウタは本能的にそれを感じていた。
「言っていいことと悪いことの区別も……」
最後に胸部のマルチプライヤーが展開、と同時に背部バーニアを全開でふかす。爆発的な勢いでダナジンに迫る。ゴッドフィールド・ダッシュだ。
「つかないんかぁぁっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
その勢いでダナジンの顔面を思い切り殴り飛ばす。吹っ飛んだダナジンはそのまま地面を削りながら転がった。
「!!!うひぃぃっ!!」
「アイが……キレた」
観戦していた一同は初めて見るアイにナナは驚いていた、というより戦慄していた。
アイはナナ達が聞いた事が無いような大声をあげダナジンに猛攻をかける。つたない動きなのは変わらないが明らかにさっきと違っていた。
普段おとなしい人間程怒らせてはいけないとはよく言ったものである。
「悩むの辞めたバカはほんと強いってことスかね」
「人の事バカっていうんじゃないソウイチ、しかし、復活だな」
「いやコンドウさん、そんな事より明鏡止水どころか完全に怒りのスーパーモードなんだが……」
「細かい事は気にしちゃいけないッス、ツチヤさん」
「こ!こりゃやべぇ!」
「逃げんなぁぁああああああっっ!!!!!!!!!!!!!!!!」
ヨウタはゴッドガンダムの勢いに圧倒されていた。ダナジンが一度距離を置こうとすると、
すかさずアイのゴッドガンダムの右腕の前腕カバーが展開、拳も赤く輝く、爆熱ゴッドフィンガーだ
「うぁああああああああああああああああっっ!!!!!!!!!!」
技名も叫ばずにダナジンに向けて放つゴッドフィンガー
「ひ!ひぃっ!」
ヨウタもダナジンの掌からビームサーベルを出す。そしてゴッドフィンガーとビームサーベルがぶつかり合う。ぶつかった途端にまばゆい閃光が走るが……
「き!効いてない!?」
ダナジンのビームサーベルはゴッドフィンガーには効かずそのままダナジンの掌を掴み握りつぶした。
そのままダナジンの頭部めがけて右手のゴッドフィンガーが迫る。
――そ!そうだ!姉ちゃんは頭部に集中しきっている!怒りで一切躊躇なくなった分防御はがら空きだ!今の内にダナジンキャノンを使えば!――
一瞬でヨウタは思案すると股間部に備わったビームキャノン『ダナジンキャノン』をアイに撃とうとするが、
「邪魔」
ぐしゃっ
直後、アイはヨウタの……ダナジンの股間を握りつぶした。握りつぶした左腕も赤く輝いていた。左手のゴッドフィンガーだ。
真っ赤に熱せられたアイの左手が、ヨウタのダナジンキャノンを握りつぶした直後、ヨウタの絶叫が響いた。
「ダ!ダナジンキャノンが!オレのダナジンキャノンがぁぁっっ!!」
Fポッドのダメージはガンプラからビルダーに連動する事はない。だがどういうわけかヨウタの精神的ダメージは大きかった。
観戦していたナナ達は絶句していた。そしてなぜか男性陣は地獄絵図でも見るかのような顔で恐怖におののいていた。
「ショボ、全然掴み応えないね」
「!?」
原因不明だがアイの発言に精神的ショックを受けるヨウタ、
そして何故か握りつぶした時と発言の際、アイの顔は物凄く楽しそうだった。
その隙をつき右腕のゴッドフィンガーはダナジンのコクピット、頭部を掴みあげる。
「ひぃぃっ!!ガ!ガンダムファイトでコクピットを狙っちゃいけないんだぞ!!」
「今のステージは決勝大会仕様だよ?本編の決勝大会でコクピットの攻撃は認められてるよ?」
ヨウタの慌てた声と対照的に妙に淡々とアイは話す。それがヨウタには妙に怖く感じた。
「あ!ケツでかくても胸ちっちゃくても気にする必要ないよ!むしろ貧乳好きな人だっているし!貧乳はステータスd」
「じゃあ連れてきてよ。その人」
「う!ス!スレンダーでいいなぁ姉ちゃん!」
「……それが」
「え?」
「そう言われるのが一番腹立つフォローなのおおおおおおおぉぉぉっっ!!!!!」
「ご!ごめんなさぁぁぁいっっ!!!!」
ヒートエンドと叫ぶかの様にアイは絶叫しながらゴッドフィンガーでダナジンの頭部を砕いた。コクピットの破壊、これによりバトルはアイの勝利で終わった。
「ハァ……最悪、勝ったのに全然うれしくないよ」
帰りの電車でアイはげんなりしていた。バトルが終わった時、ヨウタはもう完全に真っ白になっていた。
『子どもには少々刺激が強すぎたようだ』とギャラリーのビルダーがいっていたが、どういう意味かはアイには理解できなかった。
……つまりあの行為は本能的にやっていた事になる。
「まぁそれでも負けるよりは余程いいよ……」
「そうだよ〜、勝ったんだからよかったじゃん〜」
隣に座ったタカコとムツミがフォローを入れる。アイはバトルが終わってもしばらく不機嫌だった。
ちょっとだけ離れた座席に座ったソウイチとツチヤが二人を見ながら話す。
「ヤタテさんだけでなく俺達もFポッドのバトル、やっときゃよかったッスかね。近場にないとやりたい気持ちは強くなるッス」
「そうはいっても今日は俺達プラモ持ってきてなかったからな、しかし……人間からかうサジ加減ていうのは気をつけないと」
「ホントッスね、コンドウさんもノーベルガンダム関連でからかうのはある程度控えないと……」
「そうだぞお前ら、あんま人をからかうな!」
――それにしても――
タカコは誰にも見られない様にデジカメで撮ったアイの写真を見る。観戦モニターごしに撮られたアイは、完全に相手をいたぶるのを楽しんでる顔だった。
――アイちゃん、目覚めたのか、それとも元からだったのか……――
アイに見せるのはやめようと珍しくタカコは空気を読んだ。
なお、後にアイが『ダハールの女暴君』とダハールのピラミッドで呼ばれる事になるが、それは別のお話……。
閲覧制限必要でしょうか。コマネチです。
エロネタ書こうとしましたけど、出来あがったら下ネタになってました。しかし出来る限りオブラートに包んだのである程度上品にはできたと思います。…思いますったら!
ついでに言うと、自分の中でアイというキャラに今回追加要素が出来ましたw
正直これでドン引きされないか心配ではありますが、後悔はしませぬ。ではまた、来週はまた改造機を出します。
そしてアイの設定資料です。最初に書き殴ったやつなんで書き直して改めて
設定資料集とかで投稿したいですね。
※23話の展開で一部気に入らない文章があった為修正しました。
サツマがリョウの『ガンダム頭の有無で性格が変わる』という説明と
その発言を元にナナがアイにリボーンズガンダムの弱点を指摘する部分です。
どうもナナ達に、必要以上に話が都合よくながれてしまった様に感じた為修正しました。
勝手に変えてしまい誠に申し訳ありません。よろしければ今後とも読んで頂ければ幸いです。
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第24話「勝利をその手に掴みとれ!」 ランダムでガンプラを組み戦う『くじ引きガンプラバトル大会』アイ達はそこで強豪ビルダー、カサハラ・リョウと戦い勝利した。 |
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飛鳥さん 有難うございます。始めは「ガンプラバトルなんだし、頭がコクピットのヴェイガン系にゴッドフィンガーをかましてみたい」という発想からでした。しかしダナジンの股間にキャノンがあった為に握りつぶす発想に至ったわけです。…予想以上にエグく見えたようですなw(コマネチ) アイ、覚醒(笑) いくらそこに武器があってもそれは男相手ねにはやっちゃダメだろwww (飛鳥) mokiti1976-2010さん 有難うございます。思い知っても代償は、すごく…大きいです…。失くしたモノは戻りません…。(コマネチ) もっとエロい事書いてても何も言われていない人が多いのでこの程度は問題無いかと。そして、何事にも限度という物があるという事をきっと今回の事でヨウタ君は思い知ったに違いない…南無。(mokiti1976-2010) |
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