そらのおとしものafter 雨のお散歩 |
「今日も雨…」
イカロスは窓の外を、無感情な顔で見つめていた。
この空美町にも梅雨がやってきた。雨の日も、これで何日目になるだろうか。
ニンフとアストレアは湿気った煎餅を、退屈そうに食べている。
カオスはイカロスの隣で、降り続ける雨を見つめている。
智樹はと言うと、部屋で何かをしていたはずだ。たがついさっき、そはらが智樹の部屋に行き、彼の悲鳴が聞こえた。
今、顔を真っ赤にしたそはらが廊下を渡って家を出て行ったところだ。
「ねぇ、イカロスお姉様」
「?」
「私、お散歩したい!」
「…おさん…ぽ…?」
そんなカオスの目は、好奇心で満ち満ちていた。
イカロスはもう一度外に視線を戻し、
「お散歩…」
と呟いた。
早速玄関で長靴を履き、それぞれの傘を持って外に出る。
「たくさん降ってるね」
「うん…」
そこまで強いわけではないが、シンシンと絶え間無く、雨は降り続けている。
カオスは初めて履く長靴に興味津々だ。
「行きましょう、カオス」
「うん!」
イカロスは自分の羽が濡れてしまわぬよう、ギリギリまで縮めた。
2人はそれぞれの傘をさし、表に出る。
さしあたり、大桜のある丘まで行くことにした。
家を出てすぐ、大きな水溜りを見つけた。
カオスはその水面に映る自分の顔を、近づけたり、水面を揺らしたりしながら見つめていた。
やがて十分に楽しんだのか、イカロスの手を引き、再び歩き出す。
次に見つけたのはカエル。鮮やかな緑色をした生き物が、道をピョンピョンと跳ねながら通り過ぎていく。
「カエルさんも楽しいのかな?」
「きっと…そうだと思う…」
「えへへ、カオスも楽しいよ」
再び歩き出す。
道に人はいなかった。この雨の中、外を出歩く人はいないだろう。その所為か、今日の空美町は何だか寂しい。
流石のカオスも、少し不安を感じたか、イカロスの手を少し強く握っているように思える。
「あ、車…」
イカロスは、道の先から一台の車がやってきている事に気付いた。
雨であっても、車ならば関係ない。
やがてその車は、イカロス達の目の前を走り去ろうとする。
だが、その直前にイカロスは気付いた。自分達の前に大きな水溜りがあることを。
車はスピードを緩めない。
傘を捨て、イカロスはピンクの翼を広げてカオスをかばった。
「イカロスお姉様?」
案の定、車は水溜りの上を走り抜け、水飛沫がイカロスを襲った。
雨で濡れないように縮めた翼は、既にずぶ濡れだ。
髪の毛からも、ポタポタと雫が垂れている。
「濡れてない?カオス」
「うん…でも、イカロスお姉様が…」
イカロスは首を横に振り、大丈夫、と一言答えた。
「お前ら、何してんだ?」
そんな2人を不思議そうな目で見る少年、桜井 智樹。
何故か彼は顔中傷まみれだ。おおよその検討はつくが。
「マスター?」
「いやぁ、そはらにやられた俺のエロほ…じゃない。お宝を買い直しに行く途中だったんだけど」
そこで智樹は言葉を切り、イカロスを見て駆け寄った。
「イカロス、お前ずぶ濡れじゃねぇかよ!」
「あの、これは…」
「はぁ…何しとったか知らんが、このままじゃ風邪引いちまうぞ。とりあえず、家に帰って風呂入らないとな」
智樹はカオスに視線を向け、
「ちみっ子。お出掛けの所悪いけど、家帰るぞ。また今度な?」
「うん…」
そんなカオスの顔は、とても悲しそうだった。
「お散歩ねぇ…」
智樹はイカロスを風呂に入れ、茶をすすっていた。
エロほ…お宝は買い損ねたが、仕方あるまい。
「ごめんなさい、お兄ちゃん…」
「いや、お前が謝ることじゃない。この歳なら、色々経験したい気持ちもあるだろうし、ぶっちゃけ仕方ない状況っぽいからな。まぁでも、今度からは気をつけろよ?」
「うん…」
「カオス、元気無いわね」
ニンフは煎餅を食べる手を止め、カオスの顔を覗いて来た。
「アルファーの事、心配してるの?」
「だって、イカロスお姉様に迷惑かけちゃったから…」
そんなカオスに智樹は溜息をつき、
「だったら、一言謝ればいいじゃないか。気持ちを伝える事も大事だぞ?」
「気持ちを、伝える?」
「そう。人間ってのは、言葉で気持ちを伝えるもんだ。だから、お前の口からハッキリと伝えるんだ」
「……うん!」
丁度いいタイミングで、風呂から出て着替えたイカロスがリビングに入ってきた。
駆け寄るカオス。
カオスの言葉にキョトンとしているイカロス。
無感情な表情のまま、その場にしゃがみ込み、カオスの頭を優しく撫でる。
そこには、仲睦まじい姉妹の姿があった。
今日も桜井家は、平和に1日が過ぎて行く…
「ニンフ先輩!私の頭にキノコが!」
「あんた今いいとこなのに!それにキノコじゃなくてカビよ!」
「美味しいですかね?」
「んなわけねぇだろ!ってかお前も風呂入ってこーい!」
作者より…
しばらく何も投稿してないと落ち着きませんね。
というわけで、そらおとSSを投稿しました。
とりあえず今は、新しい続き物の準備をしていますが…なかなか進みません。
そう言えば、読んでない方にはわからないかも知れませんが、「仮面ライダーディケイド?破壊者と天使達?」の第二十一話について。
「エールアロー」とか、「アメイジングアルティメット」とか、色々とオリジナルな設定を出しましたが説明してませんね。
その他にも、実はディケイド激情態の設定もちょっと違ったりするんですが。
まぁ、気が向いたら何処かで説明をしておきます。(勝手だな、おい)
そんなこんなで、何とかやっております、D.C.Dです。
それではこの辺で、さようなら…
説明 | ||
原作そらおとのその後、という設定です。 ※前回まで投稿していた「仮面ライダーディケイド?破壊者と天使達?」とは一切関係ありません。 |
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