朝霧乃愛 短編小説【冬原初音との出会い編】1-序章
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●登場人物●

 

・朝霧乃愛

 

物語の主人公

桜坂学園☆初等部に通う三年生

 

・セバスチャン

 

朝霧家に勤める使用人

 

・如月沙夕(きさらぎ さゆ)

 

朝霧家に勤めるカリスマメイド。

桜坂学園☆高等部に通う一年生

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みんな、こんにちは!桜坂学園初等部五年、朝霧乃愛だよー。今回は、二年前…乃愛がまだ三年生だったときのある出来事をみんなにお話ししようと思います!

乃愛が通う桜坂学園は埼玉県にあって、幼稚部から大学部まである学校なんだけど、そんな桜坂学園初等部に、外国に留学していたとってもすごい人が帰ってくるの…どんな人だろうね!

乃愛とあの人の出会いのお話し、はじまりはじまりー♪

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「……様、乃愛お嬢様、お目覚めください」

 

何度も繰り返し呼び掛けてくるその声に、乃愛は目を覚ました。ゆっくりと目を開けてみると、目に映ったのは大きな窓から射しこむ太陽の光とゆらゆらと風に踊るカーテン。

 

「乃愛お嬢様おはようございます」

 

声の方向を見ると、見慣れた顔が目にはいる。その人は乃愛の身の回りのお世話をしてくれている朝霧家の執事、セバスチャンだった。

 

「ふぁー。爺やぁー」

 

「お目覚めになられましたか。乃愛お嬢様」

 

こんな朝早く乃愛を起こそうとする爺やは乃愛の大切な睡眠を妨害するにっくき敵なのだ。

 

「はぁーい、おやすみなさぁーい」

 

と乃愛が言うと、爺やは額に汗を浮かばせながらこう言った。「乃愛お嬢様、おやすみではございません。朝ですから、おはようです」

 

「もうぅ、のあぁ、おねむだから、おやすみなさいだよー」

 

乃愛は大きなくまさんのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめて、爺やに背を向けた。

 

だって、眠いんだからしょうがないじゃん。爺や、乃愛が朝弱いの知っているくせにひどいよ。こうなったら徹底的に抗戦してやるんだから。

 

「まったく、お嬢様は毎日毎日‥‥お願いですから起きてください」

 

「やだやだやだぁ、まだ起きないー。もうちょっとだけ寝かせてよー」

 

「だめです。旦那様に叱られてしまいますよ。お嬢様は良い子ですから、わかってくれますよね?」

 

「良い子じゃなくていいもんっ、パパのこと言うのずるいよ。もう爺やってば朝からうるさいんだから」

 

と、ぶぅぶぅ文句を言ってみる。爺やは何年も乃愛のお世話をしてくれてるから、乃愛の弱点をもちろん知ってて、パパのことをだしにつかって納得させようとしてくる‥‥でも、負けない。乃愛はもっと寝ていたい、だってベッドの中ってふわふわしてて気持ち良いんだもん♪

 

乃愛と爺やが言い争いをはじめてから数分が経ったころ、突然ドアが力強く開けられて、一人の女の子が部屋に飛び込んできた。

 

「もうっ、セバスチャンは甘いんだからー、乃愛、早く起きなさいっ! 大事な用事に間に合わなくなるよ!」

 

そう言って、女の子は乃愛のベットまで歩いてくると、毛布をぎゅっと掴んで強引に奪おうとしてきた。

 

この女の子、さっちゃんこと、如月沙夕は朝霧家に住み込みで働いている女子高生なの。

さっちゃんが来たからって負けるわけにはいかない! これはもはや睡眠をかけた戦争なのだ。乃愛は負けないようにひっぱり返すんだけど、何度かひっぱりあいをしているうちにだんだん手に力が入らなくなってくる。そうこうしているうちに結局力尽きて、毛布、おまけに大好きなくまさんのぬいぐるみまで取られてしまった。

 

「さっちゃんのばかぁ、くまさぁん返してよー」

 

「じゃあ、起きるよね?」

 

さっちゃんは、女子高生をなめるなという表情で乃愛のことを見つめてきた。負けじと「いぃーだぁ」とにらみ返すけど、これじゃあくまさんを取り返せない。

だけど、どうしたらいいんだろう……そうだっ、ここはもう、お願い攻撃をすればいいんだ! そうすれば、さっちゃんもわかってくれるはず。そう考えて、乃愛は目をうるませてさっちゃんへ無言で訴えかけた。さっちゃんは乃愛を見て、一瞬くらっと体勢を崩したけど、ぐっと堪えるように視線を逸らした。

 

視線を逸らされちゃうともう打つ手がない……もうすっかり眠気も吹き飛んでいたので、しょうがなく起きることを約束した。

 

それを聞いたさっちゃんは、やっと毛布とくまさんのぬいぐるみを返してくれた。

さっちゃんってば、いつもはとっても頼りになる優しい綺麗なお姉さんなんだけど、なんで朝はこんなに鬼みたいなんだろう……鬼さっちゃんのばかぁ

 

さっちゃんに手を引かれながら、ゆっくりと起き上がってベッドから降りた。ぺたぺたと歩いてソファへ腰を下ろすと、さっちゃんは乃愛の横に座り、ぼさぼさの髪を優しく梳かしてくれた。

 

「さっちゃん、ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

さっちゃんはそう返してから立ち上がり、クローゼットへ行くと、乃愛の身支度の準備をはじめた。

 

さっちゃんが準備をしてくれている間に、乃愛は爺やにいつものあれをお願いする。

 

「爺や、いつものちょーだい」

 

「はい、お嬢様」

 

爺やはソファの前にあるテーブルまで来ると、「少々お待ち下さいね」と言って、ガラスのティーポットを手に取る。乃愛お気に入りのティーカップにミルクティーを注ぐと、最後に乃愛の大好きなホイップクリームをのせてくれた。

 

「乃愛お嬢様、熱いのでお気をつけてお飲みくださいね」

 

乃愛はこくんと頷いてティーカップの中をのぞく。ミルクティーの上にホイップクリームがぷかぷかと浮いていて可愛い。ティースプーンで少しかき混ぜた後カップを持ち上げて口元に近づけると、ミルクとお砂糖の甘い香りが一層強くなって幸せな気分になる。しばらく香りを楽しんでから、乃愛はミルクティーを飲もうとした。まだ湯気がでていて熱そうだったけど、ミルクティーの甘い誘惑に負け飲んでみる。

すると、

 

「あちゅぅ」

 

ミルクティーはやっぱり熱かった。

 

「お嬢様大丈夫ですか!」

 

「ヤケドしちゃった、でも大丈夫だよ、乃愛がおばかさんなだけだから……」

 

爺やはあたふたし、何度も乃愛に謝るけど、ちゃんと確認しないで飲んだ乃愛が悪いわけで……。爺やは悪くないんだから気にしないでと言って落ち着いてもらった。

 

気を取り直して、ミルクティーに二、三度ふぅふぅと息を吹きかけ、熱さがやわらいだのを見計らいつつ注意しながら飲む。ミルクティーはホイップクリームとまじり、口の中いっぱいに絶妙なハーモニーを響かせた。

 

おもわず頬に右手をあてながら、至福のひと時を味わう。

 

「やっぱり朝はこれがなきゃ、始まらないよね! 爺やとってもおいしいよ! いつもありがとう」

 

「お嬢様に喜んで頂きとても嬉しいです。ですが毎朝お飲みになられて、飽きないのですか?」

 

爺やはちょっと呆れた顔をしている。

 

「うん、爺やが淹れてくれるミルクティーはとってもおいしいもーん」

 

満面の笑みを向けると、爺やは嬉しそうに照れた。乃愛はゆっくりミルクティーを飲み終えると、ティーカップをテーブルに置く。すると爺やはこほんと一呼吸おいてから、乃愛に話しかけてきた。

 

「お嬢様、本日は冬原財閥ご令嬢のお誕生日パーティーですね」

 

「うん、乃愛、すごく楽しみにしてたんだよー。可愛いお洋服も着れるし。そういえばその子ってどんな子なのかな?」

 

「ご令嬢のお名前は初音様です。お嬢様よりも二歳年上で、桜坂学園初等部の五年生ですよ」

 

「乃愛よりお姉さんなんだね!」

 

「聞くところによりますと、初音様は容姿端麗、品行方正、頭脳明晰と三拍子そろった素敵なお方のようです」

 

「そんな素敵な方と会えるなんて、なんかドキドキしちゃうなぁ」

 

「ですが、完璧すぎるゆえ、お友達がなかなかできないようです」

 

「そうなんだ、じゃあ、乃愛が初音様とお友達になるっ! そしたらパパも喜ぶし……」

 

「お嬢様でしたら、きっとお友達になれます。なぜならお嬢様は、誰とでも仲良くなれる天性のものをお持ちですから。しかし初音様は海外から戻られたばかりということで、乃愛お嬢様の他にもたくさんの方々がお祝いに来られます。絶対にご迷惑をお掛けしないようお気をつけください」

 

「はぁーい」

 

そこでさっちゃんが、

 

「おまたせー」

 

と入ってくる。

 

「この日のために、いっぱい可愛いドレスを用意してあるよ。乃愛どれがいい?」

 

「可愛いドレスばっかりで、迷っちゃうの……」

 

そう、乃愛は初音様と絶対仲良くならなきゃいけないの! だって、冬原家のことはパパからずっと聞かされていて、仲良くなったらきっとパパが褒めてくれるもん♪ 乃愛、パパのこと大好きだから……がんばるっ。

 

 

乃愛は初音様と会えることに心を躍らせながら身支度をした。

説明
桜坂学園☆初等部の短編小説です。

・公式サイト
http://www.sakutyuu.com/

・作家
hogawa
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タグ
小説 初等部 学園 朝霧乃愛 

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