バンドを組んだぜ!5
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「全員の実力がどれ位とかもわかんねーよな」

「パイプラインとかで良いんじゃないか?オーソドックス!エレキ!ギター!って感じで俺は好きだぜ」

「ん、まあ判りやすいな。課題曲みたいなもんだから、君達も知ってる?」

「は、はい!全部暗記してます」

 基本的な曲は、卒業生に叩き込まれている。

「俺としては、ここはロッカーの基本である、『監獄ロック』を押したいところなんだが、ギターの技術はかるにはやっぱりこれだよな!」

「きっくん渋い所攻めるね〜、俺は『ハウンドドック』の方がリズム取りやすいかな」

「は?ビートルズでいいだろ?」

「じゃあ俺はドラムだから、『X』かな〜」

「eoheohエーックス出来るのかよ?!」

「ジャンピングエーックス!!」

 青年がふざけたように、腕でエックスのポーズをとる。

 ワイワイと、演奏する楽曲について話し始めるMSSPの面々に部員二人はついていけない。

「あの、すみません、じゃあ、『パイプライン』で!」

「時間押してるんで!良いですか?!」

「あ、わりーわりー」

 テヘペロミ☆と青年がぺロっと舌を出し、自前のギターを手に持った。

 他のメンバーも、1分ほどチューニングをし始め、スタジオにはギャーンギャーン、ポーンポーン、シャンシャンと、楽器の調整音が響く

「んじゃ、みんないいな?『パイプライン』だぜ?FB、OK?」

「OK、それじゃいきましょう!」

 楽曲が始まった。

 『パイプライン』は、1963年にリリースされ大ヒットしたインスト・バンド "ザ・シャンティズ" がオリジナル作品で、翌年の1964年にベンチャーズによるカヴァー曲が発表された。サーフィンロックだ。

 曲名のパイプラインは、サーフィンをする時の、大きな波が作る“波の輪”のこと。

サーフィン・ミュージックは波乗りからヒントを得て作られた音楽でサーフィン・ミュージックの基本のリズムはロックン・ロールから成っている。

 独特の「テケテケテケ」という部分は、昔からある『クロマチック・ラン』と言われる奏法だ。ブリッジ側でミュートして音を出し、高音から低音まで下がって行く。

 弦の上に軽く載せて音出しをするとハーモニクス音が出てしまうから、しっかり弦を押さえないといけない。

 様々なミュージシャンが、TAB譜をネットで公開しているが、卒業生達には、「耳でコピーしろ!」と教えられたので、毎日のように部員二人はパイプラインや、ダイヤモンドヘッドを電車や家や休みの時間に聴いていた。

 多分、基本のエレキギターの曲なら大体弾けるのではないだろうか。

 ベンチャーズはシンプルだけれど、色々な音の組み合わせで出来上がっている。

 ドラムだけではなく、エレキギターの教則本としても、ベンチャーズは最適だ。

 乾いたギターの曲に、波の打ちつける様子がサウンドで表現される。

 曲のサビにカッコ良さが凝縮されているのだ。

 

 

 

 

 

「いぇーい!」

 青年は、ハイタッチを全員から貰って回った。

「いやいや、二人とも、基本はバッチリですね!これならあの譜面も大丈夫かな〜?」

 サングラスの青年が、ごそごそとバックを漁り始める。

 部員二人は、楽曲の音合わせで、実力の差を思い知り、二人で励ましあっていた。

「すごかったね」

「想像以上だよ」

 和気あいあいと話し合っている。

「また無茶苦茶なTAB譜書いたんじゃねーだろうなぁFBの野郎」

「ドラムは基本がわかれば後はセンスだし」

「ギターさいきょう〜!」

 そこで、時間を告げるライトが点灯した。

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