妖世を歩む者 〜1章〜 3話
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1章 〜向き合う者〜

 

3話「新たな遭遇」

 

――― 林は続くよどこまでも。

猫又を信じたことを、陽介は早くも後悔しかけていた。

いまだに林を抜けられる気配はない。

 

日も落ち、夕方から夜に変わろうとしていた。

 

「村までどれくらいかかるのか、聞いておけば良かったですね」

 

村までは歩いて1日、という可能性もある。

少なくとも猫又は「今日中に着く」とは言っていない。

 

おそらくまっすぐに進めてはいるだろうが、あまり距離が長いとそれも怪しい。

 

――― グゥ

 

「おなか、すきましたねぇ」

 

肝試しが終わった後で友人達とご飯を食べに行く予定だった。

その前に妖世へと飛ばされ、ひたすら林の中を歩く。

空腹になるのも当然である。

 

距離が分からない以上、下手に急いで体力を消耗するのは避けたい。

こんな林の中では、"頼れる"妖怪よりも、"襲ってくる"妖怪の方が出会う確率は高いはずだ。

いざという時、疲れて動けませんじゃ話にならない。

 

そう考えて陽介が歩き続けていると、突然足が重くなった。

 

――― ッ!?

 

足に伝わる感触から、掴まれていることは分かった。

恐れていたことが、現実になってしまった。

そう思った陽介は、恐る恐る掴まれた自分を足を見て、

 

「ふぇ〜〜…」

 

それが女の子であることに気がついた。

獣のような耳を見るに、どうやら妖怪ではあるらしい。

とても弱っているように見えるが、陽介の足をしっかりと掴んで離さない。

 

「困りましたね」

 

早く進みたいところではあるが、この妖怪の女の子を置いていくことにも抵抗があった。

妖怪の中には、人の姿で相手を油断させて襲うものもいる。

この妖怪の女の子も、弱っているようだが陽介の足を掴む力はかなりのものだ。

 

しかし陽介には、この子が自分を襲おうとしているようには思えなかった。

今も足にしっかりとしがみついている女の子に、陽介は問いかけた。

 

「君、いったいどうしたんですか?」

 

「ふぇ?誰ですか?」

 

どうやら足を掴んだのは無意識だったらしい。

ゆっくりと顔を上げ、状況を確認する女の子。そして、

 

「うわっ、す、すみません!」

 

陽介の足を掴んでいることに気づき、慌てて飛び退いた。

しかし、その先には木の根が地表にむき出しで、

 

「きゃっ」

 

足を引っ掛けた女の子は転んでしまった。

 

「だ、大丈夫?」

 

弱っていたとは思えないその女の子に向けて、陽介は手を差し出した。

 

「ありがとうございます」

 

女の子はその手を取り、なんとか立ち上がった。

少し恥ずかしそうに顔を赤らめた女の子は、陽介の顔を見て、

 

「あれ?人間さん?」

 

とつぶやいた。陽介が人間であることに今初めて気づいたらしい。

 

「そういう君は、妖怪さん?」

 

なんとも間抜けな返しではあるが、相手に敵対の意思はない。

それならと陽介は、少しおどけてみせたのだ。

 

「あはは、変な人間さんですね」

 

どうやらそれは正解だったらしい。

女の子はおどける陽介に笑って返してくれた。

 

「冗談はおいといて、僕は陽介。君が言ったとおり、人間だよ」

 

自分を"人間"だと自己紹介することに、妙な感じを覚える陽介だった。

 

「陽介さん、ですかぁ。…あ、私は"オボの人妖"で、アトリっていいます!」

 

「"オボ"の……、じんよう?」

 

――― 人妖。

それが何なのか、今の陽介はまだ知らない。

説明
これは、妖怪と人間、そして"人妖"の住む世界のお話です。

"人妖"の女の子の容姿等は、GREEのアプリ『秘録 妖怪大戦争』を参考にしています。
※既にこのアプリは閉鎖となっています。

拙い文章ではありますが、楽しんでいただければ幸いです。

構成)
・1章5話で構成(場合により多少変動)
・5話の2ページ目にあとがきのような何かを入れます
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妖怪 人間 人妖 オリジナル アプリ 秘録_妖怪大戦争 

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