リリカルなのは×デビルサバイバー GOD編
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 異界の、異なる世界の理と真実を知る少年たちの言葉を聞いた、一般人である……いや、この場では"あった"と言うべきであろうか? 歳は四十に近いというのに、未だその若々しさを残している男、デビットは固まっていた。

 どこか痛い訳でも、どこか苦しいわけでもない。ただ単に理解が追いつかず、必死に理解しようとしているのだ。

 今まで知り得なかった理を、真実を知ってしまったがために。

 

「確かに」

 

 絞り出した言葉は四文字。

 デビットは、ゆっくりとではあるが、考えを纏めながら語りだす。

 

「確かに君たちの言うことが全て真実であるなら、すべての話に辻褄が合うのだと思う。半年前に起きた原因不明の多数の事故。そして同じく原因不明で、多くの人々が体調不良を訴えた件。その全てがファンタジーのちからであるならば……きっと可能なのだろう。だが……」

 

 果たして何人の人が、その真実を受け止めることができるだろう?

 1+1は一般の人にとって2であるのだが、突然目の前に現れた誰かが「1+1? 当然10だろう?」と言ってもその理由を知り得なければ、それが真実だとは思わない。1+1=2が十進数、人の世界の普通であるなら、1+1=10は二進数、デジタル世界の理だ。

 知っていれば簡単。けれど知らなければたとえそれが本当でも、真実だとは思わない。きっとそれはふつうのコトなのだ。

 それを理解しているからこそ、カイトはデビットを待っている。

 彼もまた、異界の理によって常識を打ち砕かれた側の人間だ。だからデビットの状況もよくわかっている。

 

「落ち着いてください。荒唐無稽な事を話しているのはこちらです。貴方は何もおかしくない。本当ならこんなことを知る意味なんてないんだから」

 

 それはある意味で、自分に対する言葉でもあった。

 翔門会が神の試練に立ち向かうために、ナオヤと協力してCOMPを作らなければ。もしくは自分がア・ベルの魂を持っていなければ……。もしかしたら今もカイトはユズやアツロウたちとバカして、笑って、時に喧嘩をして……そんな普通の生活を遅れていたのかもしれないのだから。

 だからこそ、カイトは心が痛かった。異世界なんて知らずに生きる人を巻き込むことに対して。

 

「いや、そうはいかないのだ。知ってしまった以上、立ち向かわねばな……そのために」

 

 顔を上げる。

 そして、まっすぐと愛娘とその友人。そして訳のわからぬ仮面を被った男を見る。

 

「信じさせてはくれないだろうか? 言葉だけではなく、肌で、空気で、臭いで、五感を感じさせ信じさせてほしい」

 

「パパ……!」

 

 笑い飛ばさず、信じようとしてくれている父親の姿に、アリサは嬉しそうに微笑む。

 

「でも信じさせてほしいって、どうすればいいんですか?」

 

 その横で友人であるすずかが問いかけた。

 

「悪魔という存在の有無を確かめさせてほしい。一番簡単なのは、私自身が異界に赴ことなのだろうが、それは難しいだろう? だがキミの話が本当なら、悪魔という存在を呼べるはずだ」

 

 こくりと一回頷くと、COMPを取り出す事無くカイトは手を前に出す。

 そして、かつてメタトロンを相対した時の感覚を思い出しながら、喚ぶ。

 

「召喚」

 

 其れは闇。其れは穴。其れは扉。

 そこから流れ出る空気は、決して人に良いものではない。通常、人には耐え切れないほどの瘴気がそこにあふれていた。

 

「ジャックフロスト」

 

 ゲートとでも言うべきそこから現れたのは、一体の白い雪だるまだった。

 

「ヒーホー! ジャックフロストだホー!」

 

 ジャックフロスト。愛嬌のある顔と語尾が特徴で見た目通り氷結魔法を得意とする悪魔。

 COMP所持者が召喚可能な悪魔の中でも決して高いと言えるレベルではないが、種族特性「おまじない」による回復効果を持っていることから、東京封鎖前半戦においてカイトも中々にお世話になった悪魔である。

 

「雪だるま?」

「わぁ……可愛い!」

 

 どうやらジャックフロストは女子二名には中々好評なようである。しかしデビットは何やらビミョーな表情をしている。恐らくは、想像していた「悪魔」とグラが全く違うからだろう。

 そして、当のジャックフロストはというと……。

 

「ヒーホー……? サマナー!」

「ん?」

「こいつら喰っていいのかホ?」

 

 惚けたような顔で、とんでもない事を言い出したジャックフロストは、その見た目はともかくとして、悪魔という存在であると感じさせる。

 

「……あとでマグネタイトを一杯やるからそれで満足してくれ」

「ヒホ! 分かったホー!」

 

 サマナーは太っ腹だホーと言いながら、ジャックフロストは送還の光の中へと消えていった。

 

「可愛くても悪魔は悪魔なんだ。論理感が人とは違う。だからまぁ……気にしなくていいよ」

「人でないが故に、人を殺す事に違和感を持たない……か」

「えぇ。人が簡単に虫や、他の生き物を殺すようにね」

「そうか、そうだな……」

 

 辺りが静まったかのように暗くなる。

 

「暗くなったところで意味は無いだろ。今は一刻も早く自体の収めるのに務めるべきだ」

「あんたに言われるまでもないさ。それでデビットさん、協力してくれますか? してくれませんか?」

「……まだ、気になることは沢山あるが。今はそんなことを言っている場合ではないか」

 

 机上にある電話に手をかける。

 

「私だ、デビットだ。市長に連絡を……あぁ、大至急だ。急務だと伝えてくれ。あぁ、ではよろしく頼む。……さぁ、何を呆けているんだ?」

 

 電話を終えたデビットは言う。

 

「この事件を終わらせるための一歩が今踏みしめられたんだ。だったら先を急ぐべきじゃないかい?」

「え、あ……はい!」

 

 デビットの言うとおり、事態解決のための必要なピースが一つ埋められた。

 窓を見る。未だ黒雲渦巻く空にあの少女となのはたちは居るのだろう。

 そして、彼女たちではこの自体を収集させることが出来ないことも、なんとなくではあるが分かっていた。

 その理由は闇の書との一件に絡んでいる。

 闇の書に手も足も出せなかった彼女たちが、同じような力を持っている少女に勝てるとはどうしても思えなかったからだ。

 

「早く行こう、手遅れになる前に」

 

* * *

 

 今私たちはあの子と相対していました。

 私、王、そしてレヴィは言うに及ばず。突如現れた二人のギアーズと呼ばれる少女に、管理局に属する魔導師たち。これらのそうそうたるメンバーを相手にしながらも、それでもあの子は私たちを圧倒していました。

 たった一人……泣きながら。

 その時私たちはまだ存在していませんでした。なぜなら、私たちという存在が居なくても紫炎の書を扱うにはあの子一人いれば十分だったのですから。

 でもそれはつまり、紫炎の書のマスターが居なくなってしまったら、あの子は一人になってしまうということ。それをどれだけ嫌がっていたのか、かつてあの子であった私は知っていました。

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 あの子の後ろにある黒い影、闇が管理局の執務官の肩を袈裟斬りにします。でも、執務官である少年はその一撃をデバイスで受け流そうとしてその衝撃を殺す事ができず飛ばされてしまいます。

 

「大丈夫ですか!?」

 

 それを受け止めたのは、赤い燃えるような髪が特徴のギアーズと自称する一人の女性でした。

 

「すまない。助かったよ……」

 

 とはいえ、かれこれもう数時間程戦っている現状、もうすでに体力という意味では限界に近いと言えるでしょう。このままではあと数時間も立たずに全滅してしまうのはわかりきった現実として私たちに訴えかけていました。

 

「ダメだ。ここで私たちが退いてしまったら……! 私たちの住んでる場所が……! 皆が!」

 

 金髪の……確かフェイトと言いましたか。あの子の言うとおり、今ここで退いてしまえばもしかしたら、海鳴市に何かしらの被害が出てしまう可能性がありました。

 

『とは言っても、このままだと全滅しちゃうよ! 一旦撤退して、作戦を立てなお……』

 

 頭に響き渡るような女性の声を、私たちは最後まで聞くことが出来ませんでした。その前に私たちはあの子の一撃を受けて一瞬ではありますが、意識が飛んでいたのですから。

 

 黒い光の一撃。

 

 それはかつてあの子に、私たちに、希望を与えた青年が放った一撃に酷似していました。

 

「ぐっ……! うぅぅ……シュテル! 何かこう、策はないのか!」

 

 ボロボロにバリアジャケットを羽織りながら、それでもなお王はあの子に立ち向かおうとします。

 名前以外の記憶もまだ思い出せないというのに、その姿はかつてあの子の見た王の姿そのもので……。

 

「ンー。おうさまー、さすがのシュテるんでも難しいんじゃないかな―これ」

「……いえ。あります」

「へ!?」

 

 少し抜けた声を出したのは、青い髪を持つ私たちのムードメーカーレヴィでした。

 とはいえ、鳩が豆鉄砲を撃たれたようなそんな表情をしているのは、この子だけではなかったようですが。

 

「ふ、ふふふふふ!」

 

 肩を震わせながら、この後来るである大音量の笑い声に耐えるために耳をふさぎます。

 白い目で見られたことをもうすっかり忘れてるのか、私たちが見ていたいつもどおりの王であるのを誇示するように。

 

「ハーハッハッハッハッハ! さすがはシュテル! 我が自慢すべき家臣よ!」

「……そう褒められるようなものではありません。ですが、ありがとうございます王よ」

「それでどうするの? シュテル」

 

 私のオリジナルである、タカマチ ナノハ。

 かつて、まだ全開を出せなかったとはいえ私を打ち倒した力ある心優しい少女。

 

「なにをする必要もありません」

「へ?」

「どうする必要もないんですよ。今この状況に気づいて、最悪の状況になる可能性を知ればあの人は絶対に動きますから」

「あの人〜?」

 

 ギアーズの片割れ、キリエと名乗った少女が首をかしげます。

 とはいえ、説明する必要もないでしょう。なぜならもう、その時は近づいているのですから。

 

「あの人って……もしかして」

「えぇ、動くはずですよ? あの子があの歌を、今の感情のまま歌っている限り、あの人にとっての最悪は消えるどころか近づいているのですから」

 

 こうして話している間、あの子は私たちに攻撃をしてきません。

 あの子が私たちと戦うのは自己防衛のため。自分に敵意をもち攻撃してくるものを自動で攻撃・防御しているだけに過ぎなくて、あの子はただ泣きながら歌っているだけですから。

 

「ん〜……私はその人のこと知らないからなにも言えませんけど」

 

 赤髪の少女。確かキリエはアミタと呼んでいました。

 

「どうして今行動してないんですか? 最悪の状況になる可能性を知れば。ってことは、知ってますよね? 今なにが起きているのか」

 

 あぁ、なんとなく理解しました。

 今のこの状況を知っているのに、何故行動をしないのかわからないと、彼女は言っているのだと思います。

 正義感の塊のようなそんな彼女ですから、あの人の行動に納得出来ないのでしょう。

 

「……そんなの関係ないだろう。今この場に居ない者の話をしても仕方があるまい」

 

 ムスッとしながら王が答えます。

 おそらく、自分の誘いを断られたことを思い出しているのでしょう。

 

「まぁ、そうなんですけど……」

「それで最悪の事態ってなんやの?」

 

 少しだけ濁ってしまった空気を変えるように、王のオリジナルであるはやてが言います。

 

 私が口を開こうとした時、少しだけ肌がピリッと、静電気が起きたようなそんな感覚を感じました。

 それはきっと、世界を引き裂こうとするそんな者たちの意思に他なりませんでした。

 そしてそれは、目に見えるようなそんな形に、私たちに対して牙を向こうしています。

 だからその前に、私は彼女たちに警告の意を込めて、宣言します。

 

「……悪魔の無制限召喚による混乱・及び戦闘が行われる可能性があります」

 

 ざわっ! と、空気が変わりました。

 そしてその瞬間――文字通り、空間が割れたのでした。

 

* * *

 

 世界が割れたその時、野生の獣の眼光のように感じるそんな眼が、私たちを捉えました。

 

 黒いその姿は、一言で言えば鴉。

 でも違うのはその大きさと……。

 

「クァーーーー!! 久方ぶりの地上、久方ぶりの陽の光ッ!」

 

 バサッ! と、その翼を、自らの存在を誇示するかのように広げる。

 その見た目だけで言えば神々しく……なりはしませんね。どう見てもただの化け鳥です。

 

「焦るなバイブ・カハよ」

 

 その化け鳥を戒めるかのように、一人の羽根を生やした……そう、天狗が立ちはだかります。

 

「これからは太陽という名の陽を我らはいつも浴びることが出来る。そう、かの少女がおればな」

 

 天狗はあの子を見ています。

 彼が悪魔なのであれば、あの話を聞いていても不思議ではありません。

 

「さて……」

 

 天狗はあの子から、私たちに視線を移します。

 

「ふむ……なるほど。何時の世も、魔導師たちは世界の守護者と相成り得る……いや、その傲慢さを振りまいておるか」

 

 どこか小馬鹿にしたような、それでいて懐かしいものを見るような眼で私たちを見ます。

 

「フン。やはり魔導師は変わらんようだな。例外たるはあの覇王と悪魔使い……そして、その二人の核となった聖王のみか。……いや、悪魔使いは魔導師ではなかったか」

 

 この状況を理解することが出来ない面々の中で、いち早く動いたのはかの執務官でした。

 

「お前たちは……お前たちは何なんだ!!」

 

 天狗は執務官を、冷たい……まるでゴミを見るような眼で見ます。そして……

 

「我らは貴様らが悪魔と呼ぶ存在であり、神と呼ばれる可能性を抱く者であり……貴様ら魔導師の罪の結晶よ」

 

 その手に持つ杖を振ると強い風が私たちを襲います。

 

「なにっ……? これは……」

 

 守護騎士シグナムのバリアジャケット。そしてそのデバイスに小さなものではありますが、傷がついていました。

 

 ――衝撃魔法ザン。

 

 闇の書との戦いでも彼が使用していた、カマイタチを生み出し攻撃する魔法。

 

 火炎魔法アギ・氷結魔法ブフ・電撃魔法ジオ。

 

 これら三つと比べると制御が容易く、致命傷を与えずに相手を制圧可能とし易い魔法と言えます。

 

 火炎魔法は弱ければたやすく薙ぎ払われ、強すぎればその生命を簡単に失う。

 氷結魔法は弱ければ大した損害を与えられず、強すぎれば腕を、足を……様々な部位を壊死させることになりかねない。

 電撃魔法もまた同じく。弱ければ大した損害を与えられず、強すぎればその生命をたやすく奪う。

 

 けれど衝撃魔法はその威力を変えたとしても、当てる場所にさえ気をつけてしまえば問題はないのです。

 

 でもそれは、手加減する人の理屈です。

 攻撃を受ける側からすれば、カマイタチなんてどこから来るか分からない攻撃は対処が難しく……。

 

「くっ」

「ひゃっ!」

 

 その反応は三者三様、十人十色という感じです。

 風を見切りいなすもの。見切ることが難しいと感じ防御に徹するもの。対応することが出来ないもの。

 ちなみに私はどちらかといえば二番目です。あのバトルオタク(シグナム・フェイト)たちのようなことなんて私にはできませんから。まぁ、レヴィのオリジナルに関して言えば、見切るしか無いということでしょうけど。当たったら戦闘不能確定ですし。

 

「……む?」

「ありゃ?」

「へ?」

「ん〜?」

 

 天狗が、鴉が攻撃して周りの方たちが防御に回っているなかで、ピタリと動きを止めたのが四人居ます。いえ、正しくは最初から動いていない私を含めて五人。

 

「なんで私たちには攻撃をしてこないんでしょう?」

「んー。これはお姉さんたちを馬鹿にしているのかな―?」

 

 アミタは不思議そうに口元に手を当てて。

 キリエは黒い笑みを浮かべて。

 それぞれ考えているようです。それに対して、私は答えを言います。

 

「天狗と鴉の目的は魔導師です。だから、生粋の魔導師であるタカマチナノハ達を狙っているようですね」

「ンー。でもさーシュテるん、守護騎士たちにも攻撃してるよ―?」

「古代ベルカの戦いにおいて、魔導師側の勢力に夜天……闇の書は属して居ました。だから彼らにとって、守護騎士たちは敵扱い。私たちの場合はその時すでに闇の書に取り込まれ、その力を利用されていた。つまり、私たち自身はどの勢力にも属していませんでした。だから私たちは敵としては認識されていないのでしょう」

「ほぇー。なるほどなー、さっすがシュテるん! 色々なこと知ってるぅ!」

「お褒めに預かりまして、ありがとうレヴィ」

 

 ……とはいえさすがに不味いかもしれません。このままでは管理局側が全滅。

 

 と、その時でした。

 天狗たちが召喚されたときと同じように、肌にピリッとした感覚が走ったのは。

 だからこそ、その意味を悟った時私は人知れず微笑んでいました。

 

 ――あぁ、来てくれましたか。あの、約束通りに。

 

 管理局側が貼った結界を(それでも時々穴が開いて見えていたようですが)破ろうとする力強い、空間を振るわえるほどの一撃を感じます。

 これほどの力を持つ存在は数少ないでしょう。

 だからこそ、結界を破ろうとしている人が誰であるか、絞り込めるというものです。

 たとえそれが彼自身でなくても、彼に連なる誰かで在ることは間違いないのですから。

 

 そして、その時はやってきます。

 

 世界を壊すようなそんな一撃が結界を突き破り、それだけでは飽きたらず天狗と鴉、管理局員のメンバーめがけて打ち込まれます。

 しかし、遠くから放たれたその一撃は両者にダメージを与えることはなく。両者を引き離す結果となりました。

 

 結界が破られここに侵入してくる人の姿をしたものと、轟音撒き散らす鉄の塊。

 人の形をしたものは、まさに神々しいそんな姿をしており、鉄の塊からは二人の少女の姿が見えました。

 

 その手にCOMPを持って。

 

「今よ! 行きなさいっ!」

「あぁッ!」

 

 少女の力強い言葉に押されるかのように、一人の少年が今戦場に降り立とうとしています。けれど、それを迎撃するために天狗と鴉がそれぞれ衝撃魔法を放ちます。

 

「ザンか。でも……!」

 

 腕を振るう。

 その瞬間、炎が発生し衝撃魔法を相殺……するどころか、衝撃魔法を取り込み威力を更に押し上げたようです。

 

 広域火炎魔法マハラギ。

 

 本来威力としては最下級の魔法ではあるものの、強者が使用すれば最下級の魔法も全てを焼きつくす業火の炎となりえます。

 そして、目には見えないカマイタチといえど、こちらに攻撃が向かってくるということが分かっている以上、広域による攻撃をすることで防ぐ確率を上げた、ということでしょう。

 

 飛び出してきた少年はそのまま天狗と鴉さえ飛び越え、あの子の前に降り立ちました。

 少しふらふらとはしているものの、宙に浮いた状態で。

 

「三人共、そっちは頼む。俺は……」

 

 あの子の前で静かに。

 

「ただ泣いて、歌っているだけの君にこんなことを言っても仕方ないのかもしれない」

 

 あの子の状態をしっかりと見定めた上で。

 

「それでも……」

 

 宣言をします。

 

「もう二度と、あんな悪夢を起こさせないためにもッ!」

 

 確かな戦うための意思という名の剣を持って。

 

「あんたを止める! 誰かから与えられたものじゃなくて、俺自身の意思でッ!」

 

 今、本当の意味での戦いが始まります。

 

 現在を終わらせ、昨日を始めて、明日を繋げるために。

 

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本当に、本当におまたせしました。

というわけでGOD編11話です。

少しでも楽しんで貰えれば幸いです。

説明
11th Day 動く者たち
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