魔法少女リリカルなのは〜原作介入する気は無かったのに〜 第百二十四話 紅茶の精 |
高校生になって早1ヶ月が経ち、世間はゴールデンウィーク真っ最中。
アギトを八神家の面々に紹介してシグナムさんとユニゾンさせてみたがいやはや…。
原作通り見事に適合し、俺以上に相性抜群なユニゾン状態を見せられた。
その後、俺を模擬戦に付き合わせるのもシグナムさんらしいが。
とりあえずアギトの戸籍は『八神アギト』として登録したが当の本人ははやて達と一緒に暮らさず、俺の家でのんびりと過ごしている。
本人はミッドよりも地球で過ごす方が性に合ってるんだとさ。
後はアレだ。仲良くなったルーテシアやジークと一緒に暮らしたい気持ちが強いんだろう。
はやて達もアギトの意思は尊重してるため、強く引き留めたりはしなかった。
ただシグナムさんとユニゾンした際の適合率を見たリインがプウッと頬を膨らませていた。
…悔しいんだろうなぁ。
それを見たアギトも勝ち誇る様に胸を張り、お互いのケンカに発展する事に。
うん。初対面時の関係は概ね原作通りだね。
まあ直に仲良くなるだろう。
そんな回想に耽る事よりも今は…
「高校生になって翠屋来るの初めてだなぁ」
視界に捉えた翠屋を見て呟いてしまう。
最近翠屋のシュークリームを食べていない事を思い出し、せっかくなので翠屋に寄り、シュークリームを堪能して一時を過ごすのも悪くないと思う。
「そうと決まれば善は急げ、だな」
俺は翠屋の扉を開ける。
今日は祝日だし意外に客の姿も多く見掛けるが、空いている席がまだあるので順番待ちにならずに済んだ。
「いらっしゃ……あれれ?勇紀君じゃない」
「どもッス美由希さん」
「久しぶりだね。今日は何か食べに来たの?」
「はい」
「そかそか。じゃあコチラの席にどうぞ」
美由希さんに先導され、俺は席に案内される。
メニューはいつも通りシュークリームとカルピスのセットを頼み、注文した品が来るまではボーッとしながら時間を潰す。
「………ん?」
どこからか視線が……。
キョロキョロと辺りを見渡してみたが楽しそうに談笑してるお客さんしかおらず、コチラに目を向けている人なんて誰もいない。
………気のせいか?
そう思った俺は再びボーッとし始める。
しばらく待っていると
「お、おおおおおお、お待たせいたしました!!!!」
何だか上擦った声を上げて店員さんがシュークリームとカルピスのセットを持ってきてくれた。
……メイドさん?
金髪ツインテールのメイド服を身に纏った店員さんがガチガチに緊張した様子で注文した品をテーブルの上に置いてくれる。
今まで見た事無い人だけど、俺が翠屋に通っていない間に士郎さんか桃子さんが店員として採用したのだろうか?
「そそそ、それではごごごゆっくりどうぞぞぞ」
ガチガチの状態のまま店員さんは言うだけ言って逃げる様に物凄いスピードで去っていった。
うーん……あそこまで緊張してたって事は接客業の経験が無いのだろうか?
ストローに口をつけた所で再び視線が向けられてる様な…。
「っ!!」
今度は視線を送っていたと思われる人物を捉えられたが…。
「(さっきの店員さん?)」
メイド服の店員さんがコッチを見ていた。もっとも視線が合った瞬間、逸らされたけど。
……俺、何かしたか?
首を傾げるが特に思い当たる事なんて無い。
しかも度々コチラに視線を向けている事が分かるし。
ホント何なんだろうか?
「(……うーーん……くえすや飛白さん、飛鈴ちゃんみたいに昔出会ったって線は無いよなぁ)」
思い当たる人は記憶の中に無い。
……後で士郎さん、桃子さん、美由希さんにでも尋ねてみるか?それとも直接本人に…。
いずれにせよ、まずは目の前のシュークリームを堪能しようかな。
俺はカルピスのお代わりを注文しつつ、シュークリームを頬張り始めた………。
〜〜リズリット視点〜〜
はわわわわわわわ………。
どどどどど、どうしましょうどうしましょう!!
私は今最大のピンチを迎えていると言っても過言ではありません。
私が美味しい紅茶を日本に広めるために英国から来て100年…この翠屋と言うお店で従業員として雇って貰ってから早1ヶ月が過ぎていました。
これまではこの綺麗なお店で紅茶を入れ、お客様の喜ぶ顔を見られる幸せを噛み締めていられたのです。
ああ……私の入れた紅茶を飲み、安らぎの一時を堪能するお客様達…。
紅茶の精を自称する私にとってこれ以上ない満足感。
で・す・が!!!
その幸せも今日限りで終わりを迎えるかもしれません。
ある1人の男の方が翠屋にやって来た時、私はビビビッ!!と感じたのです。
『この人は危険だ!!』と…。
何だか普通の人には無い力を持ってる様な感じがします。
ゴゴゴゴゴッ!!ていうくらいに力を発現させてます〜。
ひょっとしたら私を退治しにきたゴーストバスターやベムハンターなのかもしれません。
「(ヤバいです。私このままだとやっつけられちゃいます)」
ううっ……私はまだ死ぬ訳にはいきません。
こうなったら…
「(こ、((これ|・・))を混ぜてお客様には強制的にご退場願いましょう)」
幸いにもあの男の方は飲み物のお代わりを注文し、丁度出来上がったものを持っていくところでした。
私は誰にも見られていないのを確認してポケットから取り出した小瓶に入っている液体を数滴飲み物に垂らしてかき混ぜます。
「いらっしゃいませー」
そこへ新たなお客様が来ます。
「あ、レスティアちゃんいらっしゃい」
「御機嫌よう美由希。勇紀はいるかしら?」
店内に入って来たのは黒い長髪の女の子です。
「(むむむ…)」
何だかあの子、普通の人じゃないですね。
このお店のマスターの娘さんで私にとっては先輩の美由希さんが対応し、席に……って
「(あ、あの男の方の席に!?)」
まだ空き席はあるのにわざわざ相席させるという事は彼女もあの男の方の知り合いですか!?
「(ま、まさか彼女も私を退治しに!?)」
「???」
はっ!?
私と彼女の視線が合ったので思わず私は明後日の方向を向いて顔を逸らします。
いけませんいけません。どうしても男の方と今入って来た彼女の行動が気になって目で追ってしまいます。
……こうなれば彼女もご退場願うしか……。
ゴメンなさい。でも私が生きるためにはやるしかないんです。
心の中で私は謝罪しながらあの男女が座っている席に向かうのでした………。
〜〜リズリット視点終了〜〜
街を適当にブラブラしていたらしいレスティアが翠屋に現れ、俺と相席してすぐに
「お、お待たせいたしました……」
来た来た、来ましたよー。
お代わりのカルピスが。
運んできたのは先程同様メイド服着た店員さん。
テーブルの上にカルピスを置くだけ置いたら逃げる様に去って行ってしまったが。
「……うーん……」
「どうしたの?」
「いや……あの店員さん、絶対に俺の事警戒してるなぁって思ってな」
「警戒?何かやらかしたの?」
「翠屋に来てからは何もしてない」
「以前どこかで何かしたんじゃないの?」
「思い当たる節は無いんだなぁこれが」
レスティアに尋ねられる度正直に答える。
で、カルピスの入ったコップを手に取った瞬間
「っ!!」
レスティアに奪われた。
「あの……レスティア?」
「……………………」
レスティアは俺の言葉を無視し、カルピスを凝視してから自分の口に運ぶ。
ああ……俺のカルピスが……。
「………やっぱり」
コップを置くレスティア。
何がやっぱりなんですか?それより俺のカルピスを……
「勇紀、このカルピスには毒が盛られてるわよ」
「俺のカルピ…………毒?」
俺がそう言うや否やレスティアは即座に結界を展開する。
「レスティアさん!!?」
堂々と魔法行使ッスか!?
「心配いらないわ。認識阻害も忘れずに使っているから」
翠屋にいた一般人のお客さん達は俺とレスティアが他愛の無い会話をしている様に見える様、魔法を掛けてるらしい。
なら一安心……じゃない。
「何で毒が?てかレスティアは毒入りカルピス飲んで大丈夫なのか?」
「愚問ね。毒ぐらいで死ぬ様なユニゾンデバイスじゃないわよ私は」
流石神様お手製のユニゾンデバイス。
てかリンスやリイン、アギトは毒を摂取したらどうなるんだろ?
「それによく毒が入ってるなんて分かったな」
「カルピスの色に違和感を感じたからね」
「色?」
俺はジーッと見るけど普通のカルピスと何ら変わらん様に見える。
…………良く見抜けたなレスティアは。
「さて……私のマスターを毒殺しようとした輩に制裁を加えないと、ね」
「あわわ!!どうなってるんですかぁ〜〜〜!!!?」
んんん?
結界内に俺とレスティア以外の声が上がる。
さっきのレスティアの台詞からすると、俺のカルピスに毒を盛った犯人って事だろうけど…。
「(……さっきの店員さん?)」
結界に取り込まれていたのはメイド服の店員さんだった。メチャクチャアタフタしてる。
あの人が毒を盛ったのか?
毒を盛られる様な恨みを抱かれてるなんて、ますます記憶に無いんだが。
「お、お客様やマスターさん達が消えましたよぅ…」
「気にする事は無いわ。私が貴女を閉じ込めただけだから」
「ふぇ!?」
レスティアの声に気付き、コチラを向いた店員さん。
「あああ、貴方方は!!わわ、私に何か御用でしょうか?」
「ええ。勇紀を毒殺しようとした貴女を消そうと思ってね」
「えええぇぇぇっっ!!!?」
サラッと消すとか言ったレスティア。
冷静に喋っている様でかなり声色には怒気が含まれている。
ここまで怒ってるレスティアを見るのは初めてだなぁ。
「ふふっ。今宵の私は血に飢えているわ」
「まだ夜じゃないよね!?」
レスティアの台詞に思わず突っ込んでしまう。
しかも血に飢えてるとか物騒過ぎる。
「あの〜……出来れば穏便に解決してほしいのですが……」
「毒を盛った人物が言う事じゃないわね」
全くですね。
毒殺しようとしておいて穏便にとかどれだけ自分勝手な事か…。
「もっとも、貴女は人間じゃないみたいだけど…」
「そういう貴方達こそ普通の人じゃないじゃないですか。ゴーストバスターですよね!?そうなんですよね!?私を退治しに来たんですよね!!?」
今度はやや早口で言い返してくる店員さんだが、レスティアの言葉を否定しなかったな。
人間じゃないのかあの店員さん。
「翠屋に来た当初はどうでも良かったけど、勇紀の命を狙うとしたら話は別ね」
レスティアから感じる魔力が徐々に上昇していく。
「遺言は……必要無いわね。聞かせる相手いないでしょうし。なら………とっとと死になさい」
その言葉を皮切りに放たれた砲撃魔法。
「ひゃわわ〜〜〜!!!!」
咄嗟に攻撃を躱した店員さん。中々の身体能力ですな。ただ……
ドオオオオオオォォォォォォォォンンンンンンンッッッッッッ!!!!!!!!!!
レスティアが放った砲撃魔法が着弾した瞬間、結界内の翠屋の約3分の1と海鳴市の一部が消滅した。
「「……………………」」
その光景を呆然と眺める俺と店員さん。
「ん?加減を間違えたかしら?まあ、結界内の出来事だし問題無いわね」
レスティアは首を傾げるが、すぐに何も無かったかの様に振舞い直す。
普段はちゃんと力の加減具合も完璧なレスティアだが、この力の解放量は珍しく加減を間違えた結果らしい。
サスガマリョクサイキョウノユニゾンデバイスダナァ…。
「それに……『獅子は兎を倒すのにも全力を尽くす』と言うしね」
異性を魅了かつ畏怖させる様な獰猛な笑みを浮かべて言うレスティアを見て店員さんは顔面蒼白だ。
どんだけお冠なんですかレスティアさん!?
てか力の加減間違えたとか言ってたけどワザとじゃないの!?
「わ、私はまだ退治される訳にはいかないんですぅ〜〜〜〜〜!!!!」
ダンッと勢いよく地を蹴り、店員さんは大きく跳躍する。
「逃げるつもり?結界内に閉じ込められているのだから逃げても無駄なのにね」
やれやれと言った様子を浮かべながらもレスティアは追い掛ける。
しかし跳躍したメイドさんは追撃してくるレスティアの方に振り向き、何かをばら撒いた。
「ちゃ、茶フ散布ーーーーーー!!!!」
「うっ!」
店員さんのばら撒いた何かがレスティアの目に入り、レスティアは目を瞑って小さく呻く。
今度は重力に引かれ、落下し始めた店員さんがレスティアの胸元に足を置き
「必殺、紅茶落としーーー!!!!」
そのまま地面にレスティアを叩き付ける。
「レスティア!?」
おいおい何だあの店員さんは?レスティアを地に付けるとか。
「ぼ、暴力反対ですので、これでどうかお引き取りを…」
「アンタ言ってる事とやってる事がまるで合ってないよね!?」
やたらと応戦してるじゃん。
「全く……服が汚れるじゃない」
ムクリと起き上がるレスティアは当然無傷。
立ち上がってドレスについた埃をパンパンと手で叩く。
「ぜ、全然効いてないですよ…」
まああれで倒せたら苦労はありません。
「ふぅ……ゼロ距離で砲撃を叩き込んであげようと思ったけど止めたわ」
「だからさっき追撃したのか!?」
「確実に消すためよ」
今度は自分の周囲に魔力弾を展開する。
「待て待て待て!!さっきから『消す』とか何気なく言ってるけど非殺傷設定は作用してるだろ?」
「ええ」
「じゃあどうやって消す気だ?」
「……………………」
俺が指摘すると黙り込むレスティア。
ひょっとして自分自身に非殺傷設定掛かってるの忘れてた?
「……勇紀、非殺傷設定の解除を…」
「却下じゃ!!」
「でもあの女は貴方の命を狙ったのよ?また狙われない様に今の内に消しておかないと」
「消すな消すな。俺としては何で毒殺しようとしたのか理由が知りたいんだ」
「じゃあ理由を知った後で…」
「消したら駄目だからな!!?」
どうしてもあの店員さんを消したがるレスティアを見て俺は溜め息を吐かざるを得ない。
レスティアもアレですか?俺至上主義だったりするんですか?聖帝様と同類ですか?
「私を((サウザー|アレ))と一緒にしないでくれる?」
「いや……」
擁護してあげたいのは山々なんだが君のさっきからの発言はもう…。
「……仕方ないわ。消すのは諦めましょう」
聞き分けが良くて何よりだ。
「せっかくの非殺傷なんだし、精神を完全に殺しましょうか♪」
「おいっ!!?」
「冗談よ。貴方の命に背く様な事はしないわ」
本当だろうな?
「ただ、少し痛めつけるぐらいの事はするわよ。タダで見逃すなんていうのは許容出来ないから…」
「……程々にな」
ホントはタダで見逃してやってほしいんだがね。
俺が命令すりゃレスティアは従うだろうけど、本人納得しないかもしれんし。
「了解。……という事で待たせたわね」
コソコソと音を立てずに逃げようとする店員さんの後ろ姿に声を掛ける。
当の本人はビクッと身を竦ませ、ゆっくりとコチラへ顔だけ向ける。
「い、いえいえ。全然待ってませんから!!何なら私の事は気にせずお話を続けていて下さい」
彼女はおそらく逃亡しようとしてるのだろうが、結界内に閉じ込められてる以上逃げ場なんて無いのだ。
「とりあえず、貴女を少し痛めつけてから捕える事にするわ」
レスティアの周囲に展開されていた魔力弾が一斉に店員さんに向かう。
「ひゃ、ひゃわわっ!?」
それを上手く躱す店員さん。……やっぱり身体能力高いなオイ。
レスティアも本気で魔力弾を放ってはいない様だが。精霊魔術どころか誘導弾とかも使わないし。
しかし見た目はアクセルシューターぐらいの小さな魔力弾なのに着弾した瞬間の『ドゴオオオォォォォォンンンンッッッ!!!』という威力がヤバい。
例えるなら『見た目がイオラなのに一発一発がイオナズン級の威力だぞ!』って感じだな。
……いや、イオラどころかイオだな。バーン様が放ってたイオラはもう少しサイズが大きかったし。
「貰ったわ」
「ふえっ!?」
魔力弾を躱すのに必死だった店員さんとの間合いを一気に詰め
「((闇魔千刃|ブレイド・ストーム))!」
ズババババッ!!!
自らの翼を無数の刃に変えて店員さんを切り刻んだ。
……非殺傷設定だと分かってても超不安なんだよねぇ。
「???」
しかしレスティアは僅かに首を傾げ、翼を元に戻してから俺の側に降り立つ。
「どうしたレスティア?」
「……やっぱり彼女、人間じゃないわね。切り刻んでみたけど手応えを全く感じなかったもの」
手応えを感じない?
「ええ……」
どういう事だ?彼女も亮太やルーテシアみたいな((自然系|ロギア))っぽい身体の持ち主だとでも?
「うーん…似てるけど違うわね。((実体があるのに本体じゃない|・・・・・・・・・・・・・))という感じだわ」
レスティアの言い分だと目の前にいる店員さんは実体のある分身体らしく、本体自体は別にあるという事に。
むぅ……なら((自然系|ロギア))じゃないな。
「ひ…酷いですぅ。私のメイド服が……」
「……………………」
レスティアの((闇魔千刃|ブレイド・ストーム))でメイド服の至る所が斬られ、肩や胸元等、肌が大きく露出されていた。
………何ていうか……エロいです。
「…彼女の本体に攻撃しないと意味が無いわね」
「っ!!?やっぱり私を退治しに来たんじゃないですかああぁぁぁぁぁっっっっ!!!!」
「退治?」
いや、俺は普通に翠屋で一服しようと思って来ただけなんだが…。
退治……その言葉に引っ掛かるな。
普通の人間だったら『退治』なんて単語使わないよな。
そこへ先程彼女が言ってた台詞をふと思い出す。
『そういう貴方達こそ普通の人じゃないじゃないですか。ゴーストバスターですよね!?そうなんですよね!?私を退治しに来たんですよね!!?』
ゴーストバスター……鬼斬り役の事か?
その鬼斬り役を恐れる存在……。
「………もしかして妖?」
「よ、妖怪じゃないです!!私は紅茶の精(自称)なんです!!」
小声で言ったつもりなのだが、バッチリ聞こえていた様で反論された。
「ひょっとしてさ……俺が鬼斬り役として君を退治しにきたと勘違いされてる?」
「………違うんですか?」
「「違うけど(違うわね)」」
俺とレスティアは同時に言葉を発する。
「じゃ、じゃあ何しにお店に来たんですか?」
「「一休み」」
正直に答える。
「だ、だったら最初に言って下さいよぅ……」
「ふ・ざ・け・ん・な!!」
「何もしてない勇紀を毒殺しようと最初に仕掛けてきたのは貴女でしょう?」
「うっ……ごもっともです」
俺が怒鳴り、レスティアが冷めた目で見ながら言うと店員さんはその場で縮こまる。
その後、結界を解いてから誤解を解き、必死に謝罪してくる店員さんと、それでも不機嫌気味なレスティアを宥める事によって、翠屋での騒動は幕を収めるのだった………。
ゴールデンウィークも明け、俺はいつも通りフローリアン姉妹と共に通学する。
教室に入り、自分の席に着く。
「「よっす勇紀」」
「優人、泰三おっはー」
近くの席で談笑してた2人が俺に気付き、俺も挨拶で返す。
優人に関しては元々『天河』と呼んでいたが、鬼斬り役云々の関係で話す事が多く、すぐにお互い名前で呼び合う程打ち解ける事が出来た。
本人は未だ鬼斬り役になる事に消極的だが、そこは今後の人生の成り行き次第だな。
で、優人繋がりで泰三とも仲良くなった。
父さんと同じ名前だが、感じは若干違う。ついでに謙介とは俺以上に仲が良い。
主にエロトークの方向で馬が合う様だ。
実際にはここに宮本っつークラスメイトも加わる事が多いがな。
「なあなあ勇紀。今日の放課後空いてるか?」
「ん?予定は特に無いな」
「だったら俺達に付き合えよ」
泰三からのお誘いが来た。『俺達』って事は優人も一緒なのか?
視線で優人に尋ねると、本人はコクリと頷く。
「付き合うのは良いけど、何処に行くんだ?」
「この街にある『翠屋』っつー喫茶店だよ」
「……………………」
…俺、先日行ったばかりなんだけどなぁ。
「何でもここのシュークリームは絶品らしいし、美人でスタイル抜群のメイドさんが出迎えてくれるって話しだぜ」
「……………………」
…俺、先日そのメイドさんに毒殺されそうになったんだけどなぁ。
「お前の場合、シュークリームよりそのメイドさん目当てじゃないのか?」
優人が呆れた表情を浮かべながら聞き返し、泰三は笑顔で親指を立てサムズアップで答える。
「で、どうよ?俺達と一緒に行かね?」
「……まあ、良いけどな」
「そうこなくっちゃ!!じっくりメイドさんを堪能しようぜ!!」
……テンション高いなぁ。
「「ジーーーーーッ」」
「……何ですか?」
フローリアン姉妹にジト目で見られてるので尋ねてみたが本人達は『別に』と言ってそっぽを向かれてしまった。
「メイドさん…メイドさん…」
「「「あ、宮本」」」
俺、優人、泰三の声が重なる。
コイツが先程言っていた宮本だ。
名前は確か………………何だっけ?
「(お、思い出せん…)」
何故か出てこない。
……まあ良いか。
コイツも友達の1人で特徴はケツアゴ、そしてよく吼える。
「メイドさん…い、イヤオオオオオォォォォォおぶらあっ!!?」
吼えたかと思うと吹き飛ばされていった。
「五月蠅い。あと邪魔」
あ、飛鈴ちゃんだ。
確かに自分の席を陣取られてたら邪魔だわな。だからと言って蹴り飛ばすのはどうかと思うが。
まあ、これはよく見る光景の1つだしクラスの皆も見慣れた光景であるため、特に騒いだりしない。
今日も変わりない1日が始まりそうだねぇ………。
で、放課後になって翠屋に来た訳だが……
「「「……………………」」」
俺達が翠屋に入店し、泰三の目的であるリズことリズリットの姿を見た瞬間、鬼斬り役のくえす、飛白さん、飛鈴ちゃんがスッゲー視線をリズに向けてるんですよ。
あ、くえすとは翠屋に向かう途中で偶然出会って俺達に着いて来た。
飛白さんは飛鈴ちゃんと一緒に帰る筈だったらしいが、さざなみ寮に戻ってもする事が無いらしいのでやっぱり俺達に着いて来る事になった。
ちなみに今いるメンバーは俺、優人、九崎、アミタ、キリエ、飛鈴ちゃん、飛白さん、くえす、泰三、宮本の10人だ。
アリサ、すずか、テレサ、謙介、直博、誠悟の6人は用事があるらしく、一緒に来れなかった。
肝心のリズは…
「ひううぅぅぅ……」
ガタガタと震え、涙目である。コッチに注文を聞きに来ようともしない。
これはアレだ。鬼斬り役の3人が鋭い視線を向けてるからだ。
まあリズは((付喪神|つくもがみ))という存在で人間じゃないし、鬼斬り役の3人がその事に気付かない筈が無い。
「メイドさーーーん!!!注文良いですかーーー?」
泰三が元気な声でリズを呼ぶが、リズは近寄って来ない。
美由希さんも今日はシフト入れてないのかいないし、桃子さんは厨房でケーキやシュークリームを作るのに忙しいため、ホールには出て来れない。
士郎さんはコーヒー豆の仕入れに出て行った。
…しょうがない。
「全員何注文するかこの紙に書いてくれ」
俺がメモ用紙の1ページを切り取り、隣のアミタに回す。
「???そんな事しなくてもあのメイドさんに頼めば良いんじゃないですか?」
「いや、そのメイドさんがコッチに来ないからこうやって書くしかないんだって。で、俺が直接桃子さんに手渡す」
「桃子さん?」
「奥の厨房にいる人の名前だよ。俺の知り合いのお母さんなんだ」
俺は説明しながら、さっさと皆に注文する品を書く様に促し、全員が書き終えてメモ用紙が戻って来たので席を立って厨房の方へ向かう。
「すみません桃子さん。注文良いですか?」
「あら?どうしたの勇紀君?リズちゃんに注文すれば良いのに」
「あー……実はですねぇ…」
俺が説明しようとしたら
「ゆ、ゆうぎざあ゛〜〜〜〜んん!!!」
ガチ泣きしたリズが俺の後を追って厨房に入ってきた。
「なんなんでずが!?なんなんでずがあのびどだぢ〜〜〜!!!!」
「少し落ち着けリズ」
「だっで!ものずごぐわだじのごどにらんでぐるんでじゅよぅ〜〜〜!!」
「はいはい。俺がちゃんとあの3人に『リズは無害です』って説明してやるから」
「ぼ、ぼんどでじゅがぁ〜〜〜〜?」
「ホントホント」
リズの頭を撫でて気を落ち着かせる。
とりあえずあの3人に睨む行為を止めさせないといけないなぁ………。
……まあ、そんなこんなで5月も色々あり、騒がしくも楽しい日々が過ぎていく。
そして更に時間が流れ、5月の終盤に差し掛かった頃、また新たな出会いがあり、この出会いを皮切りに俺も、俺の周りの一部の連中も様々な騒動に巻き込まれて行く事になるのであった………。
〜〜???視点〜〜
「明日で16年……」
時が満ちたか。
いにしえよりの盟約を果たす時が…。
「彼の者は私が必ず護り抜く」
私は傍らに置いてある一振りの刀を手に取る。
源爺、佐和婆……この家の事は加耶に任せておく。
玄関から外に出て家の方に振り返り
「緋剣としての使命を果たしに行く。だからしばしの別れだ」
一礼した後、私は静かにその場から離れ始める。
行くとしようか。彼の者が住まう街に………。
〜〜???視点終了〜〜
〜〜???視点〜〜
あの火災事故から11年もの月日が経ったか。
「……時は満ちた」
あの学園……風芽丘学園に聖遺物が保管されているという情報も裏が取れた。
「今こそ、我が悲願を果たす時が来た」
例え何人であろうとも邪魔はさせん。
「さあ……始めようか。我が悲願を成就させるための戦い…」
『聖杯戦争』を………。
〜〜???視点終了〜〜
〜〜あとがき〜〜
最近蒸し暑くてテンション下降気味です。
梅雨時は嫌いだ……。
説明 | ||
神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。 | ||
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ふむふむ。緋鞠さんご出陣に聖杯戦争ですか。きな臭くなってk・・・ん?『聖杯戦争』?・・・まさか、まだフラグが立つのか・・・収集つくんすかねこれ?(・_・;)(海平?) また、いろいろ設定追加しましたね。さばき切れるのでしょうか?(Guraid) 11年前の『火災事故』って・・・(;・ω・)(紅天の書架) フラグか… 勇紀にかの王がつくんだろうなぁ…(むー) 海鳴で第何次かも知れない聖杯戦争wwwwwもう取り返しのつかないぐらい魔境じゃねえか海鳴wwwwww(黒咲白亜) …聖杯戦争におまひまメンバーが敵味方問わず乱入、さらに勇紀やフローリアン姉妹、ナンバーズ…海鳴市、大丈夫か?(プロフェッサー.Y) へー勇紀が聖杯戦争に巻き込まれるのかーいったい誰を召喚するのか楽しみです。(グラムサイト2) しかし、勇紀の学校で聖杯戦争が始まるみたいですけど、まさか遠坂とかエーデルフェルトとか間桐なんて家が登場するんじゃないでしょうね? 怖いような楽しみなような・・・(俊) また一人勇紀の魅力に堕とされたようですね。こうしてどんどんヒロインが増えるのは嬉しいです。しかし次回からおまもりひまりの原作に突入するみたいで、楽しみです。(俊) 更に混沌と化すみたいだが……、なんかどんな輩が来ても勇紀君なら軽く対処してしまう気がする。(ユジャ狗) すごく・・・・・・・すごいです(アサシン) また、色々きたな(蓮) |
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