朝霧乃愛 短編小説【冬原初音との出会い編】2 |
●登場人物●
・朝霧乃愛
物語の主人公
桜坂学園☆初等部に通う三年生
・如月沙夕(きさらぎ さゆ)
朝霧家に勤めるカリスマメイド
桜坂学園☆高等部に通う一年生
・吉井朱美(よしい あけみ)
桜坂学園☆初等部に通う四年生
今日は雲ひとつない青空がどこまでも広がっていて、日差しがポカポカと暖かい気持ちのいい日になった。
冬原初音嬢 お誕生日会会場はこちら――
交差点に差し掛かったところで、その白い看板が目に入る。
初音様にもうすぐ会えるんだと思うと、緊張で手が汗ばんできた。
「緊張してきちゃったよー、乃愛……初音様とちゃんとお話しできるかな……」
付き添いで来てくれているさっちゃんに、思わず呟いてしまう。
「乃愛だったら、大丈夫だよ!」
「でも……」
乃愛が不安な気持ちでいることをさっちゃんは気づいてくれたのか、手をぎゅっと握ってくれた。
「乃愛、緊張してるの? 大丈夫だよ! もっと肩の力抜いてさ。ねっ、リラックスしよ! いつもの乃愛でいればいいんだよ」
そう言って励ましてくれる。
今日はセバスチャンではなく、さっちゃんに付いて来てもらってよかった。セバスチャンは乃愛の身の回りのお世話を一所懸命やってくれるけど、乙女心はわかってくれないの。こうやって乃愛のことをわかってくれて、勇気付けてくれるのは、同じ女の子のさっちゃんだけ。
さっちゃんに「うん、ありがとう!」と返して、看板が示す方向へ行くと、お誕生日会の受付に辿り着いた。
さっちゃんに受付を済ませてもらい、会場に続く一本道に入る。
途端に、信じられないくらい綺麗な景色が視界いっぱいに広がった。
「すごーい! さっちゃん見てー、お花がいっぱいだよぉ!」
「さすが冬原財閥、お金の掛け方が半端ないね! もらった案内図だと、会場までのこの道は200メートル続くらしいよ、両側にお花がいっぱいだね!」
さっちゃんも少しはしゃいだ声だ。
見渡す限りどこまでもお花畑が広がっていて、そのカラフルな景色にとてもワクワクした気持ちになる。今すぐにでもお花畑を駆け回りたかったけど、せっかくのドレスが汚れちゃうからぐっと我慢したの。
両側に広がるお花畑は目で楽しむだけにして、会場までの一本道を歩いた。
会場に着くと大勢の人が集まっていて、乃愛と同じ年くらいの子もたくさんいる。
「初音様はどこかな?」とさっちゃんに聞くと、もらった案内を読んでいたさっちゃんが説明してくれた。
初音様は会場の正面玄関から登場する予定で、時間もまだ30分くらいあるみたい。
乃愛とさっちゃんは、初音様が来られるまで会場内を見て歩くことにした。
会場にはお花の他に、オブジェがいくつも飾られていて、子どもが喜ぶものばかりだった。
「あっ、これはらいおんさんかな。そっちはきりんさん、あっちにはくまさんもいるよぉ」
「いろいろ飾ってあって面白いね。乃愛くらいの子どもが来ているからねー。飽きさせないためにいっぱい工夫してあって
楽しませているんだね。あっ、あそこにいるの乃愛のお友達じゃない?」
さっちゃんの視線の先を見ると、初等部のお友達がいた。
「朱美ちゃーん、ごきげんよう」
と、その子に駆け寄る。
「ごきげんよう、朝霧さんもいらしたんですね」
この女の子は吉井朱美ちゃんといって、ピアノの教室が同じで仲良くなった子なの。乃愛より一歳年上だよ。
「朱美ちゃんがいて、びっくりしたよぉ」
「私もびっくりしましたの、朝霧さんも呼ばれていたのですね」
「うん」
乃愛がそう言った後、朱美ちゃんの表情が強張っていくのが見えた。
「そういえば朝霧さんは、初音さんにお会いしたことがありますの?」
「乃愛は今日が初めてだよ! 朱美ちゃんは?」
「私はアメリカでお会いしたことがありますわ、私の方が一歩リードしてますわね」
「???」
何が『一歩リード』なのかわからなかったけど、言葉にはしなかった。
「今日は初音様と仲良くなれる機会ですから、お互いがんばりましょうね。それではごきげんよう」
そう言うと、朱美ちゃんは乃愛達から離れて行く。
いつもと違う朱美ちゃんを不思議に思いながら、さっちゃんに「『一歩リード』ってどういうこと?」と聞くと、さっちゃんは気にしないでいいよと言った。
楽しく過ごしていたお誕生日会だったけど、なんだかもやもやした感じが乃愛の心に残った。
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桜坂学園☆初等部の短編小説です。 ・公式サイト http://www.sakutyuu.com/ ・作家 hogawa |
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