オーキド「そこに3つのモンスターボールがあると思ったじゃろ?」 1
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オーキド「そこに3つのモンスターボールがあると思ったじゃろ?」

 

オーキド「じゃが、そう都合の良い事なんて世の中にはないのじゃ」

 

オーキド「自らの力でポケモンを得られないトレーナーなど……」

 

サトシ「はい、博士から言って貰えるとは……助かりましたよ」

 

オーキド「なんじゃと?」

 

サトシ「俺はトレーナーになんかなりたくなかったんです」

 

オーキド「何を」

 

サトシ「俺と母さんを置き去りにして消えたあいつ……母さんには随分苦労をかけました」

 

サトシ「ポケモントレーナーなんてろくでなしは居なくなれば良いんです」

 

オーキド「!?」ガタッ

 

サトシ「第一ポケモンで戦って、相手からお金を巻き上げて……チンピラそのものじゃないですか」

 

オーキド「それ以上言ってはならんぞ」

 

サトシ「ポケモンバトルも、この社会のルールも全て無くなってしまえば良いんです」

 

オーキド「……」

 

サトシ「俺は……他の人間から笑われたっていい、しっかり働いて母さんを食べさせてあげたいんです」

 

サトシ「俺は、あいつみたいにはならない!」

 

オーキド「……キミの父親は、あの栄光ある……それを息子の君が」

 

サトシ「母さん、まだあいつのことが好きなんだ……夜中に写真を見て、泣いている」

 

サトシ「俺は、あいつみたいにはならない」

 

オーキド「……ククッ」

 

サトシ「……!? 何がおかしいんですか!!」

 

オーキド「あっはっはっはっっはっは、君は何も分かってはおらぬな」

 

サトシ「何がおかしいんです!」

 

オーキド「……気が変わった、このポケモンを連れて行くといいじゃろう」

 

サトシ「そんなものいりません! それじゃあ!」クルッ

 

オーキド「サトシ」

 

サトシ「なんですか!?」

 

オーキド「また後でな」

 

 

サトシ「クソッ……誰が二度と行くか!」

 

サトシ「家に帰ろう」

 

 

……

 

ハナコ「どうしたの? サトシ」

 

サトシ「……俺、ポケモントレーナーに向いてなかったよ」

 

ハナコ「サトシ、あなた!」

 

サトシ「だからさ、一緒に暮らしてさ……俺、母さんのこと守るから」

 

ハナコ「……ありがとう、さあ、中に入って。 昼食の支度をするわ」

 

サトシ「うん」

 

ハナコ「サトシ、美味しかった?」

 

サトシ「ああ、いつだって最高さ! ……母さん、これから少し出かけてくるね」

 

ハナコ「まって、少し休んでから行った方が良いわ」

 

サトシ「ごめん! どうしてもすぐに行きたくなっちゃってさー! 夕方には帰るから、美味しいご飯お願い!」

 

ハナコ「そう……お腹が痛くなったら休むのよ」ニコッ

 

サトシ「あはは、心配しないでよ。 俺も今日から大人だからさ! じゃあ行くね!」ダッ

 

ハナコ「そうだったわね……行ってらっしゃい!」

 

 

ハナコ「……本当、あの人そっくりね」 ボソッ

 

 

サトシ「こんにちは!」

 

農家のおじさん「サトシ君か、どうしたんだ?」

 

サトシ「ねえおじさん! 俺、働きたいんだ、おじさんのところで仕事をしたいんです!」

 

農家のおじさん「サトシ君、今日は成人の義じゃなかったかな」

 

サトシ「ええ、だから働いて……」

 

農家のおじさん「……サトシ君、君は農業を分かっちゃ居ない」

 

サトシ「えっ」

 

農家のおじさん「今や農業はポケモンでやらなければならないんだ」

 

サトシ「……」

 

農家のおじさん「トキワシティに続くこの棚田、誰が作ったと思う?」

 

サトシ「それは……ポケモン」

 

農家のおじさん「……うちはね、ポケモントレーナーしか必要じゃないんだ」

 

サトシ「俺、ポケモンの何倍も働きます! だから!」

 

農家のおじさん「すまないね……帰ってくれないか」

 

サトシ「……すみません、わがまま言っちゃって。 また、おじさんの美味しい野菜を買いに来ますね」

 

農家のおじさん「ああ、すまんね」

 

 

農家のおじさん「……あいつに似てきたな。 すまん、サトシ君」

 

サトシ「はあ……」

 

サトシ「結局、どこも取り合ってくれなかった」

 

サトシ「ポケモン研究所なんて、はじめっから、もう行く気はないし」

 

サトシ「……もう夕方だ、帰ろう」

 

 

 

サトシ「ただいま、母さん」

 

ハナコ「サトシ、お帰り」

 

サトシ「んー!良いにおい! 母さん、今日のご飯はなんなの?」

 

ハナコ「季節のお鍋よ」

 

サトシ「この香り……フシギダネからしずくをもらって隠し味にしてるね」

 

ハナコ「ふふ、よく分かったわね。 今日は成人だから、特別にしたかったから」

 

ハナコ「もうちょっとまってね」

 

サトシ「うん」

 

 

次の日

 

サトシ「母さん、行ってくるね」

 

ハナコ「ええ、がんばって」

 

サトシ「朝ご飯も晩ご飯も美味しかったし、力がみなぎってるんだ!」

 

ハナコ「ふふっ、気をつけてね」

 

サトシ「それじゃ!」

 

サトシ「今日は南地区のおじさんの家に行ってみるかな」

 

『ねえ、聞いた? サトシ君のこと』

 

サトシ「……?」サッ

 

 

『サトシ君、ポケモンを持たずに仕事をしたいって』

 

『あら〜、ポケモンを使えずにねぇ』

 

『んー、サトシ君の体力なら大丈夫だとは思うけど……』

 

『シッ、それ以上はだめよ。 どこで聞いてるか分からないわ』

 

『あっ、ルールね』

 

『とにかく、サトシ君が来ても断るのよ。 情にほだされて雇ったら家族ごと捕まっちゃうわ』

 

『……なんとかしてあげたいんだけどね』

 

『……凄く良い子なのにね』

 

 

サトシ「結局マサラタウンはどこもだめだった」

 

サトシ「はぁ……もう暗いし、明日トキワシティにいこう」

 

サトシ「……なんなんだ、これ」

 

……

 

ムサシ・コジロウ・ニャース「……」

 

ムサシ「あの子、大丈夫かしら」

 

コジロウ「多分」

 

ニャース「ニャーが助けるニャー」

 

ムサシ「バカ!およし! あたし達が手を出したらいけないのよ!」

 

コジロウ「落ち着け、ニャース」

 

ムサシ「……じれったいわね」

 

ニャース「そうだニャー」

 

説明
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続きます
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