【恋姫二次創作】死神の毒 楽しい新緑 |
馬鹿にされた。また、みんなが私を馬鹿にした。何にも教えてくれないくせに、それでいて何かをしろと言う。何をすればいいか分からないし、どうすれば良いかも分からない。だから私はあいつの言葉を信じただけなのに。信じて失敗したら私を馬鹿にする。死ぬよりも辛い事は生きる事なのかもしれない。今日もまた、私は馬鹿にされる。未来でも馬鹿にされるのだろう。歴史に残る大馬鹿者、そんな風に言われるのだろうか。
私を一番最初に馬鹿にしたのは父親だった。もう歳で起き上がることさえ出来ないような父親は、天才にむかって言った。私が無能ならば私の代わりに天才が国を治めろと。そんな事を耳にしたのは父親が死んだずーっと後。周りの美しい女性は私の目を隠して、隣の頭脳役の彼は僕の耳を塞いだ。何にも分からない。気付いたら父親が築いてきた物が全て崩れていた。仲間、軍力、民、誇り。私は周りの人の言葉を聞いて信じたのに。
魏なんて恐れる必要など無い。もう少しすれば魏なぞ滅ぶ。そう言ってたのに。
誰も私を助けてなどくれなかった。ただただ指を指し笑うだけ。何も知らずに頑張ったのにも拘らず、あいつらは指を指す。
殺したい
あの馬鹿共の苦痛に満ちた悲鳴を聞きたい
私を馬鹿にするあのゴミ共を
私を無能扱いするあのカス共を
私は死ぬ間際そう思った。別に私は戦場で殺されたわけではない。むしろ必死に生きた。頭のいいあの人たちは私を笑うのを必死に分からないフリをして、静かに暮らした。64歳まで生きた。当時ではかなりの長生きである。命の大切さくらい私にも分かる。
なのに、なんで皆は私を馬鹿にするのだろう。後世にまで私のことを馬鹿って言うんだろう。
私は悪いことをしたのだろうか?
確かに軍に居る以上は天国にはいけないと思う。命を奪って奪われるそんな世界なのだから。でも、私はそんな中でも一番馬鹿にされる。
何で?
私だって敬語を覚えた。振舞い方も覚えた。軍の指揮はちょっと自信がないけど、頑張った。なのに。
私はまた生まれた。絶望した。またあんな人生を送るのか。また馬鹿にされるのか。また笑われるのか。そんな私の身体は女になっていた。あの憎たらしい両親や、ウザい天才も居ない。私を騙した頭脳役も居ないし、美しい女性も居ない。でも、優しい両親は居た。
貧しい。なんとか生きていけるくらいの家。両親は畑に出かけていく。私は一人ぼっち。でも、嬉しかった。初めて母の優しさを知り、初めて父の強さを知った。帰ってくると笑って私を抱きしめる。私を馬鹿にして殴るあいつ等とは違い、優しく幸せに。
私は生きていると、ある人と出会った。触覚のような髪が二本はねる人。その人は私に言った。この世界にも天才が居る。父親が居る。私を笑ったあいつらがのほほんと生きて居やがる。私はその人に付いて行く事にした。父と母から別れるのは辛かったけど、どうしてもあいつらが楽しそうなのは、なんだかグツグツする。お腹がグツグツして、頭がモヤモヤして、何か吐き出してしまいたいようなグチャグチャが私を廻る。
私はその人から植物を習った。ニョキニョキって生えてくる緑の皆は私を馬鹿にしない。むしろ父や母みたいに優しい。いっつも太陽に向かってニコニコしてる背の高い彼や、冷たい雨が大好きな紫色のあの子。地面に生えていて、暖かくなると顔を出すふわふわしたあの人も、皆が優しい。
その人はそんな私の姿を見て、三人のお友達と緑の皆の餌を紹介してくれた。なんだかいっつも変な笑い方をする女の子、透明でピカピカなツルツルを持つ女の人、白髪がモサモサしてヒゲもモサモサしてるオジサン。後は綺麗に作られた木の小屋に出たり入ったりする緑の皆の餌。
楽しかった。女の子はすっごく身軽で、女の人はすっごい冷静で、オジサンはすっごい優しい。その人もたまに帰ってくると遊んでくれるし、父や母に当てて送った手紙を届けてくれる。
昔のあんなゲロ共とは違って、皆優しいし凄い。口ばっかりじゃない。それでも時々、木で出来た入れ物のなかで周りの餌に悪さをする餌がいた。そんな時は強い餌が悪い餌を捕まえて、私の前に持ってきてくれる。そこからは私の仕事。いっつも優しくしてくれる緑の皆や、あの四人の憂さ晴らしの為に公平に分けてあげる。流石に分解して渡してあげたら喜んでくれるのなんて精々緑の皆と女の子だけ。女の人やオジサン、あの人はジタバタ暴れる餌じゃないと嫌みたい。我が侭だなぁ。
私は緑の皆のご飯を作ってあげる。あの人が持ってきたスコップ?だっけを餌のやわらかいお腹に突き立てる。手足を縛られた餌は煩い声を上げるけど、緑の皆の中ではそんな声が好きで聞くともっとニョキニョキする子も居るから我慢する。お腹に先っぽの尖った部分を突き立てると、土よりも簡単に先が入っていく。固い土はもっと大変だけど、餌のお腹を掘り返すのは簡単だ。「よいしょっ」という掛け声と一緒に突き立てたスコップを手前に引くと先っぽが骨とお肉を分けてくれる。後は緑の皆の口元、地面の中のウニョウニョの近くに埋めてあげるだけ。骨が好きな子や肉が好きな子が居るから無駄にはならない。でもしっかり処理をしないと、緑の皆の天敵の虫が沸いちゃう。虫も餌みたいに殺すことは出来るけどいっぱい来るから本当にウザい。まるであの反吐共みたい。
私の身体は女というか、今世は女なのだろう。でも私は昔の自分としてあいつらを殺したい。だから男っぽく僕って言うんだ。敬語は抜けきらずに中途半端な風になっちゃったけど、まあいいか、です。
「あぁ……」
「あーん、まだ動いてくださいです。まだボコボコちゃんを試してないです!!」
僕はさっき来た男の人を揺する。せっかく強い人だと思って期待したのに、悲しいです。
「えーっと、てい…何とかさん!!ウネウネ君だけで死んでもらったら実験が出来ないです!!」
目の黒色の部分は左右上下へとウネウネ動き回るのです。身体はピクリとも動かず、口からは涎をいっぱい流しているのです。こんなんじゃあ餌にも出来ないのです。
そんな風に色々思っていると、ついに目は動かなくなって、息もしなくなってしまったのです。でも最期はきっと大好きな家族と一緒の夢を見れたはずです。ウネウネ君は目がウネウネしちゃうけど、一番自分の中で思いの強い物が最期に夢として見えるらしいのです。僕は生きているので当然見たことは無いのです。
楽園所属の餌の皆は、ウネウネ君を薄めて薄めて薬としてゴックンするのです。でもウネウネ君は最初は幸せな夢を見られるのですが、最期、本当に自分自身の命が消える時、夢の中ではその一番思いの強い物と一緒に壊れちゃうらしいです。僕は当然見たこと無いですよ?でも、なんであの人は知っていたんでしょうです……。
「てい何とかさん、あの世で家族の皆さんと仲良く暮らしてくださいです」
僕はてい何とかさんに手を合わせる。さ、もう片付けちゃうです。僕は立ち上がると、ゴミを蹴っ飛ばす。僕の居るのは建物の二階、ゴミは窓から落ちていくと、トゲトゲ兄ちゃんに刺さるのです。トゲトゲ兄ちゃんは餌が簡単に突き刺さるくらい鋭利な棘を持っていて、それに刺さった餌を求めてくる虫を食べるのです。
「ちぇっ、ボコボコちゃんはまた今度ためすです」
僕は緑の皆を育てるのです。あの蝿共を殺す為に緑の皆の力を借りるのです。ボコボコちゃんもウネウネ君もトゲトゲ兄ちゃんにも力を借りるのです。だから私は唯一やり方を教えて貰った物に精一杯取り組むのです。それでそれで、父親と天才と・・・・・・とにかく皆、殺すのです。