本編
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悪魔騎兵伝(仮)

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第七話 掟

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C1 新興傭兵団

C2 キュッ

C3 紹介

C4 案内

C5 格好

C6 居場所

C7 仕事

C8 八つ目の大罪

C9 依頼

C10 倫理

次回予告

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C1 新興傭兵団

 

フォレスト王国バルサン関に背を向け、暫く歩く黒いドレスを着、ツインテールの髪型のファウス。

 

エグゼナーレの声『第三功はモングの援軍を打ち破ったゼウステス領の武断派部隊キャンサー。』

 

大歓声。

 

顔を上げ、後ろを振り返るファウス。ファウスの銀髪が靡く。ファウスは俯いて歩いていく。木々の隙間から巡回中のフォレスト王国兵士達が見える。彼らの横を炭化した死体を乗せたトラックが砂煙を上げて去って行く。トラックの方を向くフォレスト王国の兵士達。

 

フォレスト王国兵士A『あ〜あ〜、かわいそうになぁ。』

フォレスト王国兵士B『こんなになちまって、まあ、美人だったんだろうが…。残念だな。あんなになっちまうなんて。』

フォレスト王国兵士A『魔女だろうがもったいないなぁ。』

 

ため息をつくフォレスト王国兵士達。顔を上げるファウス。

 

フォレスト王国兵士A『やったのはバッカだがやらせたのは偽王子だ。しかし、偽王子の奴め。魔女にせよ。あんな女の子達を犠牲にしておいて自分がのうのうと晴れの舞台に立とうなんてよ。』

 

眼を見開くファウス。

 

フォレスト王国兵士B『まあ、まったくとんだ自己中野郎の売名行為だぜ。けっ。』

 

ファウスは青ざめ、頭を抱えて崩れ落ちる。

 

ファウス『僕は…僕はなんてことを…あ、ああ。』

 

暫し沈黙。

 

エグゼニ連邦ポルポ市ギルド協会から派遣されたロスト傭兵団団長でスキンヘッドのオクトエイトがファウスの後ろに立つ。

 

オクトエイト『おい。ネェちゃん、じゃなかった…。兄ちゃん。』

 

跳び上がり、震えながら胸に手を当ててオクトエイトの方を向くファウス。

 

オクトエイト『お前、あの偽王子なんだってな。』

 

ファウスはオクトエイトから目をそらし、地面の方を向く。オクトエイトは顎に手を当て、親指で下あごを2、3回なぞり、ファウスを見つめる。

 

オクトエイト『んん〜。』

 

オクトエイトはファウスを上から下へ眺める。

 

オクトエイト『俺はロスト傭兵団団長のオクトエイトって言うんだが…。』

 

オクトエイトは膝に手を掛け、ファウスの顔を覗き込む。

 

オクトエイト『どうだ。俺達ロスト傭兵団に入らないか?』

 

顔を上げ、眼を見開くファウス。

 

ファウス『あなたは何を言ってるんですか。僕は自分の事しか考えていなかった。それで、沢山の人が不幸になった。無実の人達が死……ううっ。』

 

俯くファウス。眉を顰めるオクトエイト。彼はファウスの腕を引っ張る。

 

ファウス『あっ…。』

オクトエイト『いいからついて来い。』

 

オクトエイトの腕を振りほどくファウス。オクトエイトはファウスの方を向く。

 

ファウス『止めてください!』

 

眉を顰めるオクトエイト。ファウスはオクトエイトを見つめる。

 

ファウス『僕はアレスの偽王子なんです!僕なんかと一緒に居たらあなたに迷惑がかかります!!』

 

オクトエイトは自身の頭を撫でながらファウスを見つめる。

 

オクトエイト『少し強引過ぎたかな。』

ロスト傭兵団員Aの声『お頭〜!』

 

オクトエイトは自身の頭を軽く2回叩いて草むらの方を見る。草むらから現れるロスト傭兵団員達。

 

ロスト傭兵団員A『まったく、駆けて行ったと思ったらこんなところに。』

 

ファウスの方を向くロスト傭兵団員達。

 

ロスト傭兵団員B『…お頭、なにかわいい女の子連れてるんですか。』

 

オクトエイトの傍らに寄るロスト傭兵団員C。

 

ロスト傭兵団員C『あねさんにバレたらことですぜ!』

ロスト傭兵団員D『しっかし、その子どこかで見たことが…。』

 

オクトエイトはロスト傭兵団員Cを殴る。

 

オクトエイト『馬鹿野郎!こいつはアレスの偽王子だ。』

 

ファウスはオクトエイト達から顔を背ける。眼を見開くロスト傭兵団員達。

 

ロスト傭兵団員D『ああ!思い出した。』

ロスト傭兵団員E『まじか!』

ロスト傭兵団員F『そいつはすげえや!』

 

眼を見開き、顔を上げるファウス。

 

ロスト傭兵団員A『で、どうなんだ頭。脈ありか?』

ロスト傭兵団員B『頭、この偽王子がいてくれたら随分と心強いぜ。』

 

眉を顰め頷くオクトエイト。顔を上げるファウス。

 

オクトエイト『まあな。』

 

オクトエイトは一歩前に出てファウスの顔を覗き込む。ファウスはオクトエイトを見つめる。

 

オクトエイト『俺達ロスト傭兵団はお前を必要としている。』

ファウス『僕を…必要!』

 

オクトエイト『ああ、必要だとも。しがない傭兵団の一派に過ぎない俺達にはな。それにお前、金もないだろ。』

 

顔を上げ、オクトエイトを見つめるファウス。

 

ファウス『僕…必要。必要…。でも、僕は偽王子で沢山の人が…お母様も。』

 

眉を顰めるオクトエイト。彼は目を閉じた後、眼を開き、ファウスを見つめる。

 

オクトエイト『俺らはお前を欲っしてるんだ!お前が居れば俺達は心強いし、傭兵団の名も広まる!世評がどうと俺達はお前が欲しいんだ!』

 

眼を見開くファウスの手を力強く握り、引き寄せるオクトエイト。ファウスとオクトエイトの目が合う。

 

オクトエイト『俺達についてきな!』

 

ファウスはオクトエイトを見つめる。

 

ファウス『…僕なんかで本当に宜しいんですか?僕は…。』

 

オクトエイトはファウスを見つめ深く頷く。

 

オクトエイト『分かってる。だが、お前を俺達は必要としているんだ。あまり自分を責めるな。』

 

ファウスはオクトエイトの方を向いた後、下を向く。涙の滴がファウスの足元に落ちる。オクトエイトは頷いてファウスを軽く抱き、肩を叩く。

 

C1 新興傭兵団 END

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C2  キュッ

 

フォレスト王国バルサン関を通るオクトエイトにファウス、ロスト傭兵団員達。ロスト傭兵団員達がバルサン関の方を向く。オクトエイトは立ち止まり、ロスト傭兵団員達の方を向く。ファウスもロスト傭兵団員達の方を向く。

 

オクトエイト『どうした?』

 

オクトエイトに向けて手を振るロスト傭兵団員D。

 

ロスト傭兵団員D『おお〜いかしら!鶏どもが処刑されますぜ!!』

 

眉を顰め、顔をそむけるファウス。

 

オクトエイト『おおう。そりゃ、見ものだな。』

 

木々の間からバルサン関を見るファウスとオクトエイト、ロスト傭兵団の面々。バルサン関の階段の下には太い鎖で全身を縛られたモング国総監で、眼帯をかけた烏骨鶏人のキンシンと両手を縛られたコッケ・コー。コッケ・コーの両脇にはシュヴィナ王国の兵士二人が立っている。立ち上がるエグゼナーレ。ファウスはキンシンとコッケ・コーの方を向いた後、俯く。

 

エグゼナーレ『この者、モングの地より立ち入り、ユランシアにおける偽王子事件により混乱したユランシアにおいてその混乱に拍車をかけたことはは許しがたい。多くの人々が彼のおかげで命を失った。よって、死罪!』

 

口角を上げるキンシン。エグゼナーレはキンシンを見下ろす。

 

エグゼナーレ『最後に言い残すことはあるか?』

 

エグゼナーレを見つめるキンシン。

 

キンシン『…此度の戦は我が油断の産物。今更敗戦の責を言い逃れることはしない。だが…。』

 

キンシンはバッカを見た後、エグゼナーレの方を向く。

 

キンシン『エグゼナーレ!偽王子事件後の反乱の波及は、血縁と権力をかさにして横暴と搾取を繰り返す者への爆発と憧れだ!偽王子などきっかけにすぎない!ユグドラシルのマルケルディアでは売れないしがない吟遊詩人が宰相になった!ガイデンの要塞島は暗黒大陸連邦からの逃亡者が指揮し、独立を保っている!芽は既に萌芽し始めていたのだ!今の政を改めない限り、これから続々と民衆は貴様らに対して反乱を起こし、最後にお前の首は断頭台に上がるだろう!』

 

キンシンを睨み付けるエグゼナーレ。

 

エグゼナーレ『貴様…!』

バッカ『敗軍の将の癖に生意気な!』

 

キンシンはバッカを見て鼻で笑う。

 

キンシン『弱いものを切り刻み、他人の功績を横取りすることしか能がないお前が言うか?貴様より、勇気と知恵を備えたあの銀髪の生娘の方が英雄に相応しい!』

 

蟀谷に血管を浮き出させるバッカ。キンシンを見つめるファウス。

 

バッカ『何だと!』

 

キンシンを指さすバッカ。

 

バッカ『おい、エグゼナーレ!さっさとこいつを殺せ!』

 

頷き、手を上げるエグゼナーレ。巨大な牛が四頭、キンシンを縛る鎖の先に結ばれる。巨大な牛に鞭を入れるシュヴィナ王国の兵士達。四方へ駆けていく巨大な牛。鎖がキンシンの体に食い込む。

 

キンシン『貴様らの秩序は崩壊した!』

 

キンシンの体に更に食い込む巨大な鎖。血反吐を穿くキンシン。

 

キンシン『聞け!現状に甘んじている者達よ!武力や知力があれば誰でも自由にあいつらをぶち殺し!』

 

キンシンの体に食い込んだ巨大な鎖から血が流れる。

 

キンシン『権威を簒奪!お前らが…新世界の。』

 

大きな音。飛び散るキンシンの体。目を覆うファウス。

 

キンシン『秩序になるのだーーーーーーーーー!!!!』

オクトエイト『あ、バラ肉。』

 

飛び散ったキンシンのバラ肉を見おろす、各国の王子たち。エグゼナーレはコッケ・コーを見つめる。エグゼナーレを見つめ、一歩前に出るコッケ・コー。

 

コッケ・コー『エグゼナーレ様。私は反乱をしたわけではありません。』

 

コッケ・コーはキンシンの肉片の方を見る。

 

コッケ・コー『このモングから来たこの総監が…勝手にやりました!』

 

唖然とする一同。

 

コッケ・コー『私は彼の命に従っただけであります。それで、まあ、こうなってしまったわけでありますよ。つまりですな。私がモングの総監に従ったことが先か、モングの総監に取り入ったことが先かでありましてね。』

 

眉を顰めるエグゼナーレ。

 

コッケ・コー『つまり、自衛の為が先かほ、保身の為が…。』

 

エグゼナーレは頬杖をつく。

 

エグゼナーレ『…吊るせ。』

コッケ・コー『えっ、えっ?何で?何で?』

 

コッケ・コーの両脇を抱えて、絞首台に持っていくシュヴィナ王国の兵士達。

 

コッケ・コー『ひいぎゃあ!死、死にたくないーーーー!い、意識が飛ぶのが先か!?死ぬのが先かぁ!!』

 

首に縄を駆けられるコッケ・コー。エグゼナーレはコッケ・コーを見つめる。

 

コッケ・コー『お、おお、エ、エグゼナーレ様ぁあああ!!』

エグゼナーレ『お前の言っていることは、言葉は違えど同じことだ。下らん。やれ。』

コッケ・コー『ひひひひひぃいいいいい、死、死、死ぬのが先…。』

 

涙と鼻水を流すコッケ・コー。目をつぶるファウス。

 

コッケ・コー『な、な、なくなるのがさささ…。』

 

コッケ・コーを蹴飛ばすシュヴィナ王国兵士C。

 

シュヴィナ王国兵士C『うるせー。』

 

翼で喉を掻き、もがくコッケ・コー。

 

コッケ・コー『逝く!逝くのがさ…。死ぬのがぁああああ!!!コケココココケ!!』

 

眼を見開くコッケ・コー。

 

コッケ・コー『コココ、コケコッコーーーーーーーー!』

 

音が鳴り、首を横に垂らしてぶら下がるコッケ・コー。ファウスは眼をそらす。

 

C2  キュッ END

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C3 紹介

 

フォレスト王国バルサン関に止まるロスト傭兵団のフィランテ級小型起動城塞アゴル号に向かって歩いていくオクトエイトとファウス、後ろにはロスト傭兵団の面々。俯くファウス。オクトエイトは立ち止まり、ファウスの方を見る。

 

オクトエイト『どうした?』

 

ファウスは顔を上げてオクトエイトの方を向く。

 

ファウス『オクトエイトさん。』

 

ファウスを見つめるオクトエイト。

 

ファウス『…貴族連合は彼らを殺す必要はあったのでしょうか。』

 

オクトエイトは腕組みしながら、空を向いて2、3回頷く。

 

ファウス『命を取る必要はなかったのではないでしょうか。』

オクトエイト『…ま、手羽先はともかく、モングの総監は人質として使えばそれなりに対価はあったかもしれんが…だ。』

 

ファウスの方を向くオクトエイト。

 

オクトエイト『こりゃ一種のパフォーマンスだ。』

 

首を傾げるファウス。

 

ファウス『パフォーマンス…?』

 

頷くオクトエイト。

 

オクトエイト『ああ、手羽先の公開処刑によってユランシア各地の謀反、反乱を企てる者に対してのいい見せしめになっただろう。それにモングの総監の公開処刑は、貴族連合強しを際立てる。』

ファウス『ですが、もっと方法はあったはずです。こんな残忍な…。』

 

鼻で笑うオクトエイト。

 

オクトエイト『ファウス、お前は仲のいいトモダチを殺した相手を恨まないことができるのか?』

 

眼を見開くファウス。

 

ファウス『それは…。』

オクトエイト『ヨーケイ城が落ちるまでにそりゃあもうすさまじい数の奴らが死んでるんだ。そいつらのお友達は憎き敵に敵わねえから刃の届く味方に怒りの矛先を向けた。貴族連合の指揮は稚拙、大量の戦死者が出たのは上が悪い上が悪い上が悪いとずっと言ってるんだぜ。』

 

眉を顰めるファウス。

 

オクトエイト『さて、そんな状況で今まで、散々オトモダチを殺してきた敵将が捕縛された。ここで生ぬるい判決を下せば、どうなる?温情を示せばどうなる?仲間を殺された奴らの怒りが爆発するかもしれねえじゃないか。』

ただでさえ不満が溜まっているのによ。奴らの怒りの矛先を反らすためには必要な措置だぜ。それにこれで今までの敗戦を帳消しにできるって寸法だ。』

 

俯くファウス。オクトエイトはファウスの肩を叩く。

 

オクトエイト『まあ、そう気にするな。これは貴族連合の裁定でお前には関係のない事だろ。』

 

ファウスの顔を覗き込むオクトエイト。

 

オクトエイト『…そうふさぎこむな。お前さんがやらなきゃ、貴族連合はもっと死人が出てたんだからな。』

 

オクトエイトはファウスの肩を叩く。ファウスは顔を上げバルサン関の方を向く。

 

オクトエイト『…どうしたい?』

 

ファウスはオクトエイトの方を向く。

 

ファウス『少し、よろしいでしょうか。』

オクトエイト『あ、ああ。』

 

ファウスはバルサン関の方を向き、跪いて祈りを捧げる。ファウスを見つめるオクトエイトとロスト傭兵団の一同。オクトエイトはため息をつく。

 

オクトエイト『若いのに辛気臭いな。お前さんよ。』

 

オクトエイトはファウスを持ち上げる。ファウスの着ているドレスのスカートがめくれる。ファウスを見つめるロスト傭兵団員達。

 

ファウス『えっ、あ、あの…。えっ、ひゃん!』

 

ファウスを肩の上にのせるオクトエイト。

 

オクトエイト『ほれ。』

 

ファウスはオクトエイトの肩に乗り、周りを見回す。

 

ファウス『えっ、あ…。』

 

ファウスを見上げるオクトエイト。

 

オクトエイト『どうだ?高いだろ。』

 

木々を見つめるファウス。

 

ファウス『え、ええ。』

オクトエイト『少し高い視線で見て見ろ、世界は違って見えるだろ。』

 

小鳥の囀り。ファウスはオクトエイトの方を見つめた後、正面を向いて下を向く。

 

ファウス『…オクトエイトさん。…ありがとう。』

 

ファウスの頬から垂れる一筋の滴。

 

 

フォレスト王国バルサン関付近の森。ロスト傭兵団のフィランテ級小型起動城塞アゴル号の前に立つオクトエイトにファウス、ロスト傭兵団員達。

 

オクトエイト『こいつは俺達の船アゴル号だ。』

 

ファウスはアゴル号を見上げる。

 

ファウス『これが…。』

 

アゴル号の装甲を叩くオクトエイト。

 

オクトエイト『まあ、見ての通りのボロ船だが…。』

 

格納庫のハッチが開き、現れる元暗黒大陸連邦工兵で、メカニックのスミス。彼はロスト傭兵団員達を見回す。首を横に振るロスト傭兵団員達。

 

スミス『おい、誰だ?わしの改良したこのアゴルーをオンボロ呼ばわりしたやつは!』

 

スミスの方を向くオクトエイト。

 

オクトエイト『おお、おやっさん。』

 

オクトエイトはスミスに近寄り、ファウスの方に手を向ける。

 

オクトエイト『紹介するぜ。新入りのファウスだ。』

 

片眉を上げてオクトエイトの方を向くスミス。

 

スミス『新入り?こんな女の子が?お前、まさか報奨金使って…。』

オクトエイト『いや、女じゃねえ。』

スミス『男か?』

オクトエイト『まあ、そうだが…。』

 

オクトエイトは懐から金貨の入った袋を取り出す。

 

オクトエイト『それに、報奨金もこの通りだ。』

 

眉を顰めるスミス。

 

スミス『イマイチ分からんな。』

オクトエイト『あのな。こいつ…この子はアレスの偽王子だ。』

 

俯くファウス。

 

スミス『なんとまあ、あの偽王子を雇えたのか?』

 

頷き、口角を上げるオクトエイト。

 

オクトエイト『ああ、先を越されなかったからよ。』

 

アゴル号からタラップが降りる。タラップの方を向くオクトエイト。タラップから駆け降りてくるオクトエイトの幼い娘のミンナとキャンデル。手を振るオクトエイト。

 

オクトエイト『おおう。今もどったぞ。』

 

彼女たちはオクトエイトに抱き付く。

 

ミンナ『パパー。パパー。』

キャンデル『お帰りなさい。』

 

ミンナとキャンデルを抱き上げるオクトエイト。

 

オクトエイト『おお、お前達。どうだった?寂しくなかったか?』

 

タラップの上に現れるオクトエイトの妻のアギーラ。彼女は腰に手を添え、オクトエイトを見下ろす。ファウスはミンナとキャンデルを抱き上げるオクトエイトを見つめる。ファウスの方を向くオクトエイト。

 

オクトエイト『ああ、紹介しよう。こいつらが俺の娘のミンナとキャンデルだ。で、タラップの上に居るのが俺の女房のアギーラ。』

 

ミンナは口に人差し指を咥え、ファウスの方を見る。

 

ミンナ『この人誰?』

 

ファウスの方を向くオクトエイト。

 

オクトエイト『ああ、こいつはな…。』

 

眼を閉じ、蟀谷に血管を浮き出させるアギーラ。

 

アギーラ『あんたってのは…。』

 

アギーラはタラップから降りて、オクトエイトに近づく。アギーラの方を向くオクトエイト。

 

オクトエイト『あ、え、ど、どうしたんだ?お前…。』

 

アギーラはオクトエイトに詰め寄る。

 

アギーラ『あんた、報酬はどうしたんだい?』

 

オクトエイトは頭を掻きむしる。

 

オクトエイト『…ま、まあ、多少は貰ったがよ。』

 

オクトエイトは金貨の入った袋をアギーラに渡す。アギーラは金貨の入った袋を受け取る。

 

アギーラ『これだけ?』

オクトエイト『俺達は後半に参戦したんだ。そんな手柄を立てられる暇もなかったし…。』

 

アギーラはオクトエイトの顔を見回した後、ファウスを見つめる。

 

アギーラ『…で、この女は誰よ。』

 

オクトエイトはファウスの方を向く。オクトエイトを睨むアギーラ。

 

アギーラ『まさかあんたこの女をその報酬金で買ったんじゃないでしょうね。』

 

オクトエイトは首を横に振り、両手を前に出す。

 

オクトエイト『待て待て待て!変な誤解はするな。こいつは…ほれ、あの…。』

 

オクトエイトに詰め寄るアギーラ。

 

オクトエイト『あのアレス王国のだな。に、そう偽王子だよ。』

 

眼を見開くアギーラ。

 

アギーラ『アレス王国の偽王子!』

 

俯くファウス。

 

アギーラ『そのだな。ヨーケイ城を落としたらしいんだが。論功行賞の時に省けにされてよ。』

 

アギーラはファウスに近寄り、彼の顎に手を当て、顔を上げる。

 

ファウス『あっ。』

アギーラ『へぇ、想像と全然違うわ。』

 

アギーラはファウスの顔を見つめる。

 

アギーラ『とてもかわいい子ね。』

 

口角を上げるオクトエイト。彼の腕から降りるミンナとキャンデル。

 

オクトエイト『ああ、だからスカウトした。俺達、振興の傭兵ギルドはネームバリューが無えからな。』

 

アギーラはオクトエイトの方を向く。

 

アギーラ『この子、男の子なの?』

オクトエイト『んっ、そうだぜ。』

アギーラ『でも、どうして女装なんか…。』

オクトエイト『モングの総監が女集めてただろ。だから、女装して潜入したんだよな。敵のド真ん中に。』

 

オクトエイトはファウスの胸に肘打ちする。

 

オクトエイト『だよな。』

 

頷くファウス。

 

ファウス『は、はい。』

 

アギーラはファウスを見つめる。

 

アギーラ『あんた見かけによらず度胸があるのね。』

 

アギーラはファウスのドレスの胸元を引っ張る。

 

アギーラ『こんな安物で。』

 

眼を見開くファウス。ファウスのスカートを引っ張るミンナとキャンデル。

 

ミンナ『お姉ちゃん。新入りさんなの?』

キャンデル『ミンナ。男の子ってお母さんが言ってたよ。』

 

ファウスを見上げるミンナ。

 

ミンナ『じゃあ、お兄ちゃんなんだ。よろしくね。』

キャンデル『よろしくね。お兄ちゃん。』

 

ファウスはミンナとキャンデルを見つめる。

 

ファウス『…こちらこそ宜しくお願いします。』

 

アギーラはファウスを見て微笑む。

 

アギーラ『子供相手に改まってるんだから、まったくかわいいわね。』

 

顔を赤らめるファウス。オクトエイトはアギーラの方を向く。

 

オクトエイト『案内宜しく頼むぜ。』

 

頷くアギーラ。

 

アギーラ『よし、ついてきな。』

 

ファウスの肩を叩くアギーラ。オクトエイトが支持を出し、解散していくロスト傭兵団員達。ファウスはオクトエイト達の方を向く。ファウスのスカートを引っ張るミンナとキャンデル。

 

ミンナ『お兄ちゃん。行こ。』

キャンデル『行こ。行こ。』

 

ファウスはミンナとキャンデルの方を向く。

 

ファウス『は、はい。』

 

C3  紹介 END

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C4 案内

 

数機のロスト傭兵団使用人型機構が並び、ジャンク品が所々に置かれているアゴル号の格納庫。腰に手を当てるアギーラ。

 

アギーラ『ここが格納庫兼武器弾薬庫。』

 

周りを見回すファウス。アギーラはロスト傭兵団使用人型機構を見上げる。

 

アギーラ『あんた、こいつ操縦できるのかい?』

 

頷くファウス。

 

ファウス『はい。』

アギーラ『あはは。そりゃ頼もしいわね。この傭兵団素人多いから。』

 

ロスト傭兵団使用人型機構の周りを駆けまわるミンナとキャンデル。

 

ミンナ『きゃはははは。』

キャンデル『お人形さん。お人形さん。』

 

アギーラはミンナとキャンデルの方を向く。

 

アギーラ『コラ!ミンナにキャンデル!走り回っちゃ駄目よ。ここはガラクタが多くて危ないんだから。』

 

ため息をつくアギーラ。ミンナとキャンデルは座り込んでジャンク品を見つめる。

 

ミンナ『ガラクタ!ガラクタ!』

キャンデル『ガラクタ!ガラクタ!』

アギーラ『しっかし、相変わらずきったないわねぇ。』

 

アギーラの後に現れるスミス。

 

スミス『汚くねぇ。俺が分かるように配置してあるだけだ。そもそもこれはガラクタじゃねぇ。宝の山なんだぞ!』

 

スミスの方を向くアギーラ。

 

アギーラ『あら、そう。』

 

スミスはファウスの方を向く。

 

スミス『ファウスとか言ったな…。』

 

スミスを見つめるファウス。

 

ファウス『はい。』

スミス『ちょいとお前さんに話が…。』

 

アギーラはスミスの方に手を向けて払う。

 

アギーラ『ああ、そんなもん後々。こっちよ。ついてきて。』

ファウス『えっ、あ…。』

 

アギーラはファウスの方を向く。

 

アギーラ『ささ、こっちよ。』

 

アギーラとスミスの方を何回か向くファウス。アギーラはミンナとキャンデルの方を向く。

 

アギーラ『ミンナ、キャンデル。おいで。』

ミンナ『はぁ〜い。』

キャンデル『は〜い。』

 

アギーラの方へ駆けていくミンナとキャンデル。ファウスの方を向くアギーラ。

 

アギーラ『ささ、早くしな。』

 

ファウスはスミスの方を向いて一礼すると、アギーラの方へ駆けていく。格納庫の扉が閉まり、動き出すアゴル号。

 

アゴル号の廊下。進むアギーラ、続くファウス。彼の傍らに寄るミンナにキャンデル。

 

ミンナ『ねえねえ、お兄ちゃんって王子様?』

 

眼を見開くファウス。

 

キャンデル『お兄ちゃん王子様なの?』

 

下を向くファウスの方を向くアギーラ。

 

ミンナ『ねぇねぇ。』

キャンデル『ねぇ、お兄ちゃんってば。』

 

ミンナとキャンデルはファウスの袖を掴む。ファウスは手を開き、掌を見つめ、ため息をついて顔を上げる。

 

ファウス『王子…ではないけれど王子をしていました。』

 

首を傾げるミンナとキャンデル。

 

ミンナ『何それ〜。』

キャンデル『王子じゃないのに王子なんてまほーみたいね。』

 

キャンデルの方を向くミンナ。

 

ミンナ『えっ、まほー?』

 

ミンナはファウスを見上げる。

 

ミンナ『お兄ちゃん、魔法使いなの?』

 

首を傾げるファウス。

 

ファウス『…魔法使いではないけれど魔法は使えますよ。』

キャンデル『やっぱり。魔法が使えれば王子様になれるんでしょ。』

 

手を叩くミンナ。

 

ミンナ『えっ、お兄ちゃん。まほーができるの。見せて見せて。』

キャンデル『私も見た〜い。』

 

ファウスを見つめるアギーラ。ファウスはしゃがみ、両手の掌を向い合せ、呪文を唱える。ファウスの掌が青く光り、両手の掌の間には丸い水の塊が現れる。眼を見開いて、丸い水の塊を見つめるミンナとキャンデル。彼女たちは水の塊を指でつつく。歪んだ後、元に戻る水の塊。ミンナとキャンデルはファウスを見る。

 

ミンナ『これ、何?』

ファウス『水の塊ですよ。』

キャンデル『水ー。面白〜い。』

 

キャンデルは水の塊を何回もつつく。

 

ファウス『水術と空術の応用です。』

 

頷くミンナとキャンデル。

 

ミンナ『へー。』

キャンデル『へー。』

 

アギーラがファウスとミンナにキャンデルの傍らに寄る。

 

アギーラ『さ、行くよ。』

 

アギーラの方を見上げるミンナとキャンデル。

 

ミンナ『え〜。もう。』

キャンデル『もっと、お兄ちゃんと遊ぶもん。』

 

アギーラは上体を前に出す。

 

アギーラ『そろそろお昼よ。お腹が空いたでしょう。』

 

ミンナとキャンデルの腹が鳴る。彼女たちは自分の腹を見る。

 

アギーラ『ほらほら、食堂に行ってなさい。』

ミンナ『お腹空いたー。』

キャンデル『ごはんごはん!』

 

駆け去って行くミンナとキャンデル。アギーラは姿勢を元に戻し、ミンナとキャンデルの背を眺める。

 

アギーラ『やれやれ。』

 

ファウスの方を向くアギーラ。

 

アギーラ『すまないねぇ。』

 

首を横に振るファウス。

 

ファウス『いえ。なんだか僕の方が元気を頂いているような気がして。』

 

2、3回頷くアギーラ。

 

 

洗濯室の扉の前に立つアギーラとファウス。

 

アギーラ『ここが洗濯室。衣服を洗って干す部屋ね。天気が良ければ外に干すけどね。清掃道具もこの中よ。』

 

アギーラは扉を閉め、アゴル号の艦橋を見上げる。

 

アギーラ『で、あそこが私たちの司令塔ってわけ。』

 

頷くファウス。

 

アギーラ『ついてきて。』

 

ファウスはアギーラに続く。階段を登り、アゴル号の艦橋に入るファウス達。艦橋の船長席に座るオクトエイト。

 

オクトエイト『おう、遅かったじゃねえか。』

 

オクトエイトに頭を下げるファウス。

 

アギーラ『ちょっと子供達がね。』

オクトエイト『ああ、そうか。』

 

機器の並ぶ艦橋の中を見つめるファウス。

 

アギーラ『ここが艦橋。で。』

 

アギーラは天井を指さす

 

アギーラ『この上は一応船長室だけど。まあ、私たちのプライベートルームね。』

 

オクトエイトはファウスの方を向く。

 

オクトエイト『それでお前の部屋なんだが…。』

 

艦橋から出るファウス達。オクトエイトが廊下の突き当りの部屋を手で指す。

 

オクトエイト『あそこだ。倉庫をちょこっと改造してな。』

 

アギーラはファウスを見つめる。

 

アギーラ『ま、新入りに個室は良くないけど。この容姿じゃね。あいつらもムラムラするかもしれないし。』

 

突き当りの部屋の扉を開けるオクトエイト。部屋の中を見つめるファウス。

 

オクトエイト『まあ、と言ってもベットしかないが…。』

 

ファウスはオクトエイト達に深々と頭を下げる。

 

ファウス『あ、ありがとうございます。』

 

ファウスを見つめるオクトエイト達。

 

オクトエイト『おいおい。顔を上げろって。照れるじゃないか。』

 

ファウスの方を向くアギーラ。

 

アギーラ『さてと、後は食堂ね。』

 

ファウスの方を向くオクトエイト。

 

オクトエイト『飯はまだだろ。さ、食いに行こうや。』

 

オクトエイトを見つめるファウス。

 

ファウス『…食事ですか?』

オクトエイト『何だお前、食べないと体が動かねえぞ!』

 

オクトエイトはファウスの肩を強く叩く。

 

C4 案内 END

-8ページ-

C5 格好

 

アゴル号の通路を歩いていくオクトエイトにアギーラ。アギーラはアゴル号の食堂の前で止まる。ファウスの方を向くアギーラ。

 

アギーラ『ここが食堂よ。』

 

食堂を開けるアギーラ。食堂に入るオクトエイト達。スパゲッティ、魚の缶詰、ウィンナー、スープを食べているロスト傭兵団員達とミンナにキャンデル。調理器具、鍋、コンロ等がある場所を手で指すアギーラ。

 

アギーラ『それで、あそこが厨房。奥は食糧庫よ。』

 

オクトエイトが木製の扉を指さす。

 

オクトエイト『で、向こうが脱衣所、その奥がシャワールームだ。』

 

オクトエイトの方を向くファウス。ファウスの方を向くロスト傭兵団員達とミンナにキャンデル。

 

ミンナ『あ〜お兄ちゃんだ。お兄ちゃん。』

キャンデル『お兄ちゃん。』

 

ミンナとキャンデルはファウスに駆け寄り、引っ張っていく。

 

ミンナ『ここに座って。』

 

ミンナの方を向くファウス。

 

ファウス『あ、ええ。』

 

座るファウス。ロスト傭兵団員Dがファウスにフォークで刺した特大のウィンナーを渡す。

 

ロスト傭兵団員D『食べな。』

ファウス『あの…宜しんですか?』

ロスト傭兵団員D『ああ、食べないと無くなっちまうぜ。』

 

頷くファウス。

 

ファウス『は、はあ。』

 

ファウスは特大ウィンナーを口に含む。笑みを浮かべながらファウスを見つめるロスト傭兵団員達。音を立てて特大ウィンナーを噛み千切るファウス。オクトエイトはロスト傭兵団員Cをどかし、席に着く。ロスト傭兵団員Cは違う席に座る。

 

オクトエイト『ささ、食った食った。味は普通だがよ。』

ファウス『いえ、そんなことありません。とてもおいしいです。』

 

笑い出すオクトエイト。

 

オクトエイト『そうか。そうか。』

 

オクトエイトはファウスの肩を強く2回叩く。アギーラがファウスの方を向く。

 

アギーラ『食事が終わったらシャワーを浴びない?さっぱりした方がいいでしょう。』

 

アギーラの方を向くファウス。

 

ファウス『…本当に宜しいのですか?』

 

頷くオクトエイト。

 

オクトエイト『ああ、お前は俺達ロスト傭兵団の一員だからな。』

 

オクトエイトに深く頭を下げるファウス。

 

ファウス『ありがとうございます。』

 

オクトエイトはファウスの肩を叩く。

 

オクトエイト『ま、そう改まるなって。そうだ。』

 

オクトエイトはアギーラの方を向く。

 

オクトエイト『こいつに着替えを用意しないとな。』

 

頷くアギーラ。

 

アギーラ『そうね。』

 

 

アゴル号シャワー室。ファウスは蛇口をひねる。連口から溢れるお湯が彼の体を流れていく。シャワー室の扉に影が映る。体を洗うファウス。吹き抜け窓から入る日の光がファウスの銀髪を光らせ、体を流れる水滴を煌めかす。体についた泡を洗うファウス。

 

打撃音。

大音。

 

扉の方を向くファウス。扉が開き、ロスト傭兵団員達が重なる。目を見開くファウス。ファウスは彼らの方へ駆けよる。

 

ファウス『だ、大丈夫ですか?』

 

倒れた彼らの背に足をのせるアギーラ。

 

アギーラ『大丈夫。大丈夫。こいつら、あんたを覗いてたんだから。』

ファウス『えっ、のぞ…。』

 

アギーラはロスト傭兵団員達を見つめる。

 

アギーラ『あんたたち。さっさと持ち場に戻りな。』

 

ロスト傭兵団員達は両手を上げてシャワールームから駆け去って行く。

 

アギーラ『まったくいい年した大人が何やってるんだかねぇ。男の子なのに。』

 

ファウスの方を見るアギーラ。

 

アギーラ『さ、もう大丈夫…。』

 

ファウスは顔を真っ赤にして、秘部を隠す。アギーラはファウスから素早く目を離すと更衣室へ去って行く。

 

アギーラ『き、着替えは棚の上に用意しておいたから。』

ファウス『は、はい。』

 

 

アゴル号更衣室。バスタオルで水滴を拭くファウス。髪をバスタオルで包みながら棚の上を見る。棚の上には上物の黒いドレスと女物の下着が置かれている。首を傾げ、周りを見回すファウス。ファウスは2、3歩歩き、再び周りを見回した後、首を傾げる。扉に近寄るファウス。

 

ファウス『アギーラさん!あの…着替えが無いんですが!』

アギーラの声『えっ?着替えなら棚の上に置いておいたけど。』

 

ファウスは棚の上の方を見る。

 

ファウス『えっ、でも…棚の上には黒いドレスと…。』

アギーラの声『ああ、それよそれ。それが着替えよ。』

 

眼を見開くファウス。

 

ファウス『えっ…だ、だって。僕は男で、女装したのは作戦の為やむおえず…。』

オクトエイトの声『まあ、それに着替えてくれや。』

ファウス『え、どうしてまた女装しなければならないんですか?』

 

脱衣所の扉が開き、現れるオクトエイト。彼はファウスを見つめる。

 

オクトエイト『少し事情が違ってきてな。本来なら男物の服を渡す筈だったんだが…。』

 

バスタオルで前を隠しながらオクトエイトを見つめるファウス。

 

オクトエイト『アレス王国の偽王子は銀髪をツインテールにし、女装した美男子という噂が立っていてな。』

 

眼を見開くファウス。

 

ファウス『…そんな理由で。』

 

ファウスの肩を叩くオクトエイト。

 

オクトエイト『そんなことを言うな。イメージ戦略は大切なんだ。特に俺らみたいな弱小の振興傭兵団にはな。お前が女装してくれないと、依頼主や他の奴らから俺達はすげえ奴を雇っていると見られなくなる。噂通りの格好をしていないと奴らに相手にもされなくなる。それは傭兵団にとっちゃ死活問題だ。特に俺らは知名度が圧倒的に低い。』

 

オクトエイトを見つめるファウス。

 

オクトエイト『だからお前は俺達にとって必要な心強い存在なんだ。分かるな。ファウス。』

 

オクトエイトはファウスの眼を見つめる。ファウスはオクトエイトの眼を見つめ、頷く。

 

ファウス『分かりました。僕、頑張ります。』

 

 

アゴル号食堂。脱衣所の扉を開くファウス。黒いドレスに身を包むファウスを見つめ感嘆の声を上げる一同。ファウスを見つめるオクトエイト。

 

オクトエイト『髪はどうした?縛らないのか?』

ファウス『すみません。一人だと難しくて…。』

 

オクトエイトの方を向くアギーラ。

 

アギーラ『そう。この方が大人びていて私的には好みだけど…。』

 

頭に手を当てるオクトエイト。

 

オクトエイト『おいおい。頼むぜ。お前。』

アギーラ『分かってるわよ。』

 

アギーラはファウスの髪をリボンでしばる。

 

ロスト傭兵団員A『おお、こりゃあ。』

 

ファウスを取り囲むロスト傭兵団員達。

 

ロスト傭兵団員B『お〜。かわいいじゃん。』

ロスト傭兵団員C『う〜ん。』

 

ロスト傭兵団員Cはファウスのドレスを掴む。眉を顰めるファウス。

 

ファウス『えっ、な、何を。』

 

ドレスのスカートを少し上げるロスト傭兵団員C。彼は立ち上がり、顎に手を当ててオクトエイトの方を向く。

 

ロスト傭兵団員C『頭、どうもこれでもいいんだけどよ。』

オクトエイト『何だ?』

ロスト傭兵団員C『もっと色気があってもいいと思うぜ。こいつはいい脚してるからな。もっとスカートを短くすべきだ。』

オクトエイト『色気か。』

 

オクトエイトはアギーラの方を見つめる。

 

オクトエイト『おい、アギーラ。そのスカートの裾を短くすることはできるか。』

アギーラ『ん、できるよ。』

 

眼を見開くファウス。アギーラがファウスの着ているドレスのスカートを短くする。

 

アギーラ『こんなもんかい。』

ファウス『えっ、えっ…。』

 

ファウスは自分の足を見つめる。

 

ファウス『こ、こんな…。』

 

顔を真っ赤にするファウス。

 

ファウス『み、短すぎます!』

 

C5 格好 END

-9ページ-

C6 居場所

 

アゴル号、甲板。洗濯物を干すファウス。現れるオクトエイト。

 

オクトエイト『よっ!』

 

ファウスはオクトエイトの方を向く。

 

ファウス『あ、オクトエイトさん。』

 

頭を下げるファウス。

 

ファウス『おはようございます。』

 

オクトエイトはファウスの傍による。

 

オクトエイト『しかし、お前さん良く働くな。』

ファウス『いえ、せっかく、拾って頂いたのにこんな事しかできなくて僕…。』

 

微笑むオクトエイト。

 

オクトエイト『いい。いい。それより、お前さん。ロボットの操縦ができるんだってな。』

 

オクトエイトを見つめ、頷くファウス。

 

ファウス『え、ええ。』

 

笑い出すオクトエイト。

 

オクトエイト『そいつは良かった。俺達ロスト傭兵団にはロボット操縦できる奴が少なくてよ、こいつが終わったら、格納庫のハッチに行ってくれねぇか。』

 

頷くファウス。

 

ファウス『はい。』

オクトエイト『スミスのおやっさんに聞けばだいたい分かるからよ。』

 

 

アゴル号格納庫。ジャンク品をいじるスミス。扉が開き、現れるファウス。

 

ファウス『失礼します。』

 

スミスは振り向いてファウスを見つめる。

 

スミス『ああ、何だ。お前さんかい。』

ファウス『はい。オクトエイトさんから…。』

 

立ち上がるスミス。

 

スミス『話は聞いている。』

 

スミスはロスト傭兵団使用人型機構No4を指さす。

 

スミス『ほれ、そこのNo4のロボットそれがお前のもんだ。』

 

スミスの横に立ちロスト傭兵団使用人型機構No4を見上げる。

 

ファウス『あれが…。』

 

ため息をつくスミス。ファウスはスミスの方を向く。

 

スミス『ところで、お前さん貴族生活が長かったんだろ。』

 

眼を見開き、スミスを見つめるファウス。

 

スミス『なんでユランシアの貴族共は人形遊びの騎士ごっこにお熱なんだ?』

 

首を傾げるファウス。

 

ファウス『それはどういう…。』

 

腰に手を当て、ため息をつき、ファウスを見つめるスミス。

 

スミス『どうやら、その様子じゃ考えたこともなかったようだな。』

ファウス『はい。』

スミス『それが問題だ。機種には地形による得手不得手がある。野戦では車両が強く、空戦では航空機が強い、海戦では船、深海では潜水艦…。人型機構は、ジャングルや山岳といった車両では走行困難な場所か、障害物が沢山ある市街ぐらいしか有用な用途は無い。それにも関わらずあらゆる局面で人型機構を使うとはまったくもって…な。』

 

ファウスはスミスを見上げる。

 

スミス『暗黒大陸連邦の統一戦争は知ってるか?』

 

頷くファウス。

 

ファウス『名前だけは…。』

スミス『あの戦争で、人型機構はものの役に立たなかった。野戦で戦車と戦闘機と激突し、残ったのはスクラップの山とおびただしい死体だった。』

 

ファウスは胸に手を当てる。

 

スミス『鮮血戦争は知ってるか?』

 

頷くファウス。

 

スミス『13年かかっても終結しなかった戦争を終結させたのは暗黒大陸連邦の大航空兵力だった。人型機構は俺達の爆撃が去った後、残り物を虐殺しやがった。俺達はな。鮮血の13年を終わらせた英雄として、国に迎えられると思っていた。ところがどうだ。帰ってみれば大量殺人者、道義を持たぬ卑劣漢として扱われた。そもそも、ユランシアのバカどもが人型兵器を盲信し、車両や航空兵力を軽視したことにも問題がある。揚句は、自らのやった咎を俺達になすりつけた。まったくユランシアのやつらは…。』

 

俯くファウス。

 

ファウス『スミスさん。ごめんなさい。僕…なんかが謝ってもどうしようもないけれど。』

 

スミスは頭を下げるファウスを見つめる。

 

スミス『すまねえな。もうどうでもいい過去のことを話ちまってよ。とどのつまり、まあ、ユランシアの奴らが人型機構を盲信する理由を知りたかった。悪気はねえよ。』

 

スミスはロスト傭兵団使用人型機構No4の方を向く。

 

スミス『多少、ならしで動かしてみるか?』

 

顔を上げるファウス。

 

ファウス『え、はい。』

スミス『ここは狭いがよ。』

 

ファウスは頷き、ロスト傭兵団使用人型機構No4に乗り込む。椅子に座り、操縦冠を装着するファウス。動き出すファウス機。

 

 

アゴル号。ファウスの部屋。窓から月の光が差し込み、ベットに座るファウスを照らす。ファウスは星の散りばめられた夜空を見上げる。

 

ノックの音。

 

ファウスは扉の方を向く。

 

ファウス『はい。』

ミンナの声『お兄ちゃん。いるー?』

キャンデル『お兄ちゃん。』

 

ファウスは立ち上がり、照明をつけて扉を開ける。ファウスの部屋に駆け込んでいく絵本を持ったミンナとキャンデル。ファウスはベットで飛び跳ねる彼女たちの方を向く。

 

ファウス『ミンナちゃんにキャンデルちゃん?どうしたんですか?こんな時間に。』

 

ファウスのベットに腰かけるミンナとキャンデル。

 

ミンナ『んーっとね。』

キャンデル『あのね。おとーさんとおかーさんがプロレスごっこをやっていて。』

 

顔を合わせるミンナとキャンデル。

 

ミンナ『お兄ちゃんの所へ行って来いって。』

キャンデル『ねー。』

ミンナ『ねー。』

 

ミンナとキャンデルの横に座るファウス。

 

ファウス『へえ。そうなんですか。』

 

ミンナは両手で絵本を持つ。

 

ミンナ『ねぇねぇ。お兄ちゃん。これ読んで。』

 

絵本を見るファウス。

 

キャンデルはファウスの前で、手を合わせる。

 

キャンデル『ねえねえ、お願い。お兄ちゃん。』

 

ファウスは頷き、絵本をミンナからもらい、広げる。

 

ファウス『まほうつかいのしょうねん。』

 

ファウスはミンナとキャンデルの方を向いた後、絵本を見る。

 

ファウス『むかし むかし いんじゃのもりに

 

まほうつかいのおじいさんと でしのしょうねんがすんでおりました。

 

かれらは ひび まほうのしゅぎょうとけんきゅうにあけくれていました。』

 

両脇に座るミンナとキャンデルの方を向いた後、絵本の頁をめくるファウス。

 

ファウス『どっかーん

 

おおきなおとがなりひびき いえのやねとかべがこわれ けむりがあがっています。

 

まほうつかいのおじいさんがすすだらけになりながら とびらをあけてでてきました。

 

しょうねんはおじいさんにかけよります。

 

おじいさんはまたしっぱいしてしまったといいました。 

 

バラバラになったおうちをながめ しょうねんはためいきをつきます。

 

またですかとしょうねんはいって こうぐばこをもってきました。

 

きょうも たいへんな いちにち になりそうです。』

 

ファウスの腕を掴み、絵本の挿絵を見つめるミンナとキャンデル。彼女たちを見て微笑むファウス。

 

ファウス『おじいさんは じゅもんをとなえます。

 

するとこうぐばこのなかの どうぐたちが うごきだしました。

 

トンテンカン トンテンカン。

 

まるで おどっているように おうちをしゅうりするこうぐばこのどうぐ。

 

あっというまに かれらの おうちはもとどおりになりました。

 

しょうねんはおじいさんのほうをむきます。

 

こんなべんりな まほうをつかい かんきょうをかえてしまえば よのひとたちが どれだけしあわせになるかと。

 

おじいさんは とびあがって よろこび やや もどったもどった、これでじっけんがさいかいできるぞといきごんで いえのなかへかけこんでいきました。』

 

頁をめくるファウス。

 

ファウス『しょうねんはこうぐばこをてにもちます。

 

どっかーん…。』

 

吐息。ファウスは顔を上げ、眠るミンナとキャンデルを見、絵本を閉じて、窓に映る夜空を見る。

 

C6 居場所 END

-10ページ-

C7 仕事

 

アゴル号ファウスの部屋。窓から外を眺めるファウス。彼の眼にはポルポ市が映る。

 

ファウス『街…。』

 

ファウスの部屋の扉が開き、現れるオクトエイト。

 

オクトエイト『おう、起きてたか。』

 

ファウスは振り返り、オクトエイトの方を向く。

 

ファウス『あ、おはようございます。オクトエイトさん。』

オクトエイト『そろそろ、俺らの本拠地だ。』

ファウス『本拠地?』

 

オクトエイトはファウスを手招きする。

 

オクトエイト『艦橋について来な。』

 

頷くファウス。

 

ファウス『はい。』

 

オクトエイトに続くファウス。

 

 

アゴル号艦橋。集まるロスト傭兵団員達。オクトエイトは彼らの横を通る。ファウスはロスト傭兵団員達の後ろにつく。ファウスの方を向くオクトエイト。

 

オクトエイト『なにやってるんだ。こっちこっち。』

 

オクトエイトはファウスを手招きする。

 

ファウス『え、は、はい。』

 

オクトエイトの傍らに寄るファウス。咳払いするオクトエイト。

 

オクトエイト『さて、お前ら。ようやくポルポ市だ!』

 

大歓声が上がる。

 

オクトエイト『しかし、その前に留守番を決めなきゃならねえ。』

 

顔を見合わせ、眉を顰めるロスト傭兵団員達。

 

オクトエイト『ここにくじがある。』

 

オクトエイトはくじを机の上に置く。

 

オクトエイト『下に赤い印があるものを引いた奴が留守番だ!さ、引いた引いた。』

 

ロスト傭兵団員達は一斉に駆け出してくじをひく。一歩前に出るファウス。オクトエイトはファウスを手で遮る。

 

オクトエイト『お前はいい。』

 

オクトエイトを見上げるファウス。

 

ファウス『でも…。』

オクトエイト『お前は、ここははじめてだろ。』

 

頷くファウス。

 

ファウス『はい。』

 

オクトエイトは笑顔になりファウスの肩を叩く。

 

オクトエイト『他の連中にお前が居るってことを自慢しなくちゃな。』

 

眉を顰めるファウス。オクトエイトはファウスを見つめる。

 

オクトエイト『大丈夫、大丈夫。心配ねぇよ。気のいい連中どもだ。それに、もし何かあれば俺達を頼れ。お前を守ってやるからよ。』

 

ファウスはオクトエイトを見つめる。

 

ファウス『オクトエイトさん…。』

 

体を震わせるファウス。

 

ファウス『僕なんか…僕なんかに…。』

オクトエイト『お、おい。どうした?』

 

オクトエイトはファウスの肩に手を置く。

 

ファウス『こんなに良くして頂いて…本当に嬉しいんです。』

 

ファウスを見つめるオクトエイト。ざわめき。くじをみつめ、歓声を上げるロスト傭兵団員達と頭を抱えるロスト傭兵団員達。

 

 

アゴル号ファウスの部屋。ベットに腰かける黒いドレスを着たファウス。隣で彼の銀髪を櫛でとかすアギーラ。

 

ファウス『こんなこと、自分でできます。わざわざアギーラさんにやってもらわなくても。』

 

ファウスを見つめるアギーラ。

 

アギーラ『分かってないわね。これから行くのはギルド街。もしかしたら、依頼主に身分の高い人が来るかもしれないじゃない。あなたはこの傭兵団の看板なんだから。』

 

アギーラを見つめるファウス。

 

アギーラ『そう。だから身だしなみはきちんとしないと。第一印象が大事なのよ。』

 

頷くファウス。

 

ファウス『はい。』

 

アギーラはファウスのドレスのボタンを見る。

 

アギーラ『第一ボタンが外れてるわよ。』

 

アギーラはベットに櫛を置き、ファウスのドレスのボタンに手を掛ける。

 

アギーラ『やだ…これ、掛け違えてるじゃない。』

 

顔を真っ赤にするファウス。

 

ファウス『す、すみません。』

 

アギーラはファウスの着ているドレスのボタンを一つ一つ外した後、一つ一つつけていく。

 

ファウス『ありがとうございます…。』

 

ファウスの頭を撫でるアギーラ。

 

アギーラ『気を付けてね。』

ファウス『はい…。』

 

 

アゴル号から降り立つファウスとアギーラ。ファウスを見つめるオクトエイトとミンナにキャンデル。

 

オクトエイト『おお、見違えたな。』

ミンナ『お兄ちゃん。お姫様みたい。』

キャンデル『綺麗…。』

 

ファウスは顔を赤らめる。ファウスの背を押すアギーラ。

 

アギーラ『さ、行っといで!』

 

ファウスはよろめきながらオクトエイトの前に立つ。ファウスの手を取るオクトエイト。

 

オクトエイト『その分なら大丈夫そうだ。さ、行くか。』

 

頷くファウス。

 

ファウス『はい。』

 

彼らに向けて手を振るミンナとキャンデル。

 

ミンナ『パパー、行ってらっしゃい。』

キャンデル『行ってらっしゃい。』

 

手を振るオクトエイト。

 

オクトエイト『おお、いってくるぜ!』

 

ミンナとキャンデルはファウスの方を向く。

 

ミンナ『お兄ちゃんもね。』

キャンデル『お兄ちゃん、いってらっしゃ〜い。』

 

ファウスはミンナとキャンデルに向けて手を振り、オクトエイトの後ろをついていく。

 

 

エグゼニ連邦ポルポ市ギルド街。警備室の椅子に座り、頬杖をつくアカハライモリ人のコルツ。ゲート現れるオクトエイトにファウス。コルツは目を見開き、オクトエイトの方を見つめる。

 

コルツ『あれ、オクトエイトさん。奥さんが居るのに愛人同伴ですか?』

 

門衛Aを睨むオクトエイト。

 

オクトエイト『違う!こいつはアレスの偽王子だ。』

 

眼を見開き、ファウスを見つめるコルツ。

 

コルツ『ほう、ロスト傭兵団が偽王子を雇ったって話は聞いてたが、この子が。』

 

頷くオクトエイト。

 

オクトエイト『そうだ。で、今日は、このギルド街の案内だ。』

 

頷くコルツ。

 

コルツ『さいですか。ま、オクトエイトさんがいれば安心でしょう。どうぞ。』

 

コルツに会釈するファウス。ゲートを潜るオクトエイトにファウス。行きかう大勢の人々。ファウスは周りを見回す。

 

ファウス『すごい人。』

 

笑うオクトエイト。

 

オクトエイト『ここは、もとは寂れた過疎地だったのよ。』

 

眼を見開くファウス。

 

ファウス『えっ、こんなに沢山の人や建物がいっぱいあるのにですか。』

 

頷くオクトエイト。

 

オクトエイト『ああ、今の市長がプロスデン王国からこの地を買い取ってな。ギルドを誘致したんだ。』

ファウス『そうなんですか。すごいですね。その市長さん。』

 

ファウス達の目の前に現れる人だかり。中央で言い争うUMAハンターギルド員達とツチノコハンターギルドの主でツチノコ人のゲイン。

 

UMAハンターギルド員A『ツチノコなんていねえんだよ!』

ゲイン『なにおう!ツチノコはいる絶対にいるにきまってるんだろうがよ!』

UMAハンターギルド員B『まあまあ、そうやけになるな。なあ、ゲインさん。ありゃトカゲの見間違えだ。』

 

首を横に振るゲイン。

 

ゲイン『違う!ツチノコはトカゲじゃねえ。蛇だ!ミッシングリンクの蛇なんだ!』

 

ため息をつくUMAハンターギルド員達。

 

UMAハンターギルド員C『いい加減、俺らのギルドと融合しちゃどうだ?ゲインさんよ。ツチノコもUMAもかわらねえだろ。だいたい、あんたはツチノコ一つにかけすぎなんだよ。俺達リアルモンスターハンターはな、幅の広さも重要だぜ。』

 

蟀谷に血管を浮き出し、顔を真っ赤に染める。

 

ゲイン『そうやってお前らは常に逃げ道を作っているんだ!覚悟が足りない!それでもリアルモンスターハンターか!』

UMAハンターギルド員D『あんだとテメェ!』

 

ファウスはオクトエイトの方を見上げる。

 

ファウス『オ、オクトエイトさん。』

 

ため息をつくオクトエイト。

 

オクトエイト『な、賑やかだろ。ほっとけ、ほっとけ。あのギルド連中の衝突は日常茶飯事だからな。』

ファウス『で、でも…。』

 

ファウスは一歩前に出る。

 

ファウス『止めなきゃ…。』

オクトエイト『おい、ファウス。』

 

蹄鉄の音。黒毛の馬に乗ったポルポ市市長フォルスワーズに馬に乗ったポルポ市職員達が現れる。ポルポ市職員Aが叫ぶ。

 

ポルポ市職員A『道を開けろ!市長が通るぞーーーー!』

 

左右に分かれる人だかり。黒毛の馬に乗ったゆっくりと闊歩するフォルスワーズと市職員一同。大歓声が上がる。馬に乗ったポルポ市職員Bの方に目くばせするフォルスワーズ。頷くポルポ市職員B。

 

ポルポ市職員B『ここにロスト傭兵団団長オクトエイトは居るか?』

 

眼を見開くオクトエイト。オクトエイトを見上げるファウス。

 

ポルポ市職員B『ここにロスト傭兵団団長オクトエイトは居るか?』

 

オクトエイトは一歩前に出る。フォルスワーズを見つめるオクトエイト。

 

オクトエイト『お、俺が、いや私がロスト傭兵団団長オクトエイトです。』

 

フォルスワーズはオクトエイトを見つめ、馬から飛び降りて彼の前に立つ。

 

フォルスワーズ『おお。君がロスト傭兵団の…。先程ゲートから連絡があってな。君とアレスの偽王子が来ていると。』

 

ファウスは胸に手を当て、震え、後ずさりする。

 

フォルスワーズ『して、その偽王子は何処にいる?』

 

ファウスの方を向くオクトエイト。

 

オクトエイト『こちらです。』

 

フォルスワーズはファウスの傍らに寄り、ファウスを見つめ、顎に手を当てて、2、3回頷く。フォルスワーズを見つめるファウス。オクトエイトはファウスに目くばせする。ファウスはフォルスワーズに一礼する。

 

ファウス『…ファウスと申します。』

 

ファウスの横顔を眺めるフォルスワーズ。

 

フォルスワーズ『これが…まるで花だな。』

 

フォルスワーズはオクトエイトの方を向く。

 

フォルスワーズ『オクトエイト。良くやった。』

 

跪くオクトエイト。

 

オクトエイト『はは!』

 

フォルスワーズはオクトエイトの肩を叩く。

 

フォルスワーズ『帰ってきてすぐにで悪いのだが、仕事を引き受けてくれないか。』

 

頭を下げるオクトエイト。

 

オクトエイト『ししし、仕事!市長さん自ら…俺達に?』

 

頷くフォルスワーズ。

 

オクトエイト『はい!喜んで。』

 

手を叩くフォルスワーズ。

 

フォルスワーズ『仔細は庁舎で話す。ついて来い。』

オクトエイト『はっ!』

 

黒毛の馬に乗り、ファウスの方を向くフォルスワーズ。

 

フォルスワーズ『ファウス、君も来い。』

ファウス『はい。』

 

闊歩する黒毛の馬に乗ったフォルスワーズに馬に乗ったポルポ市職員達。後に続くオクトエイトにファウス。

 

民衆A『あれが、アレスの偽王子。』

民衆B『雇ったのか!いや、雇えたのか…あの偽王子を。』

民衆C『すげーな。ロスト傭兵団は。』

民衆女A『あの子が?イメージと違ってかわいい。』

民衆女B『かわいいけど怖いわ。』

民衆D『でも、すごい奴だろ。あのヴロイヴォローグを破り、新鋭ホバー戦艦を撃破して、わずか三人の手勢でモングの総監の居るヨーケイ城を敵味方一人の死者なく落としたんだろ。』

民衆女C『でも、ヨーケイ城じゃ、結局、貴族連合に皆殺しにされたじゃん。意味ねっての。』

 

俯くファウス。

 

 

ポルポ市庁。市長室。椅子に座るフォルスワーズ、ソファに座るオクトエイトとファウス。

 

フォルスワーズ『実はプロスデン国王からの直々の依頼があり、傭兵団を使いたいと。』

 

眼を見開くオクトエイト。

 

オクトエイト『プロスデン!あ、あの傭兵嫌いで有名な!!』

 

頷くフォルスワーズ。

 

フォルスワーズ『だからこそ、こちらとしても良い傭兵団を選出したいと思っていてな。』

 

フォルスワーズはオクトエイトを見つめる。

 

フォルスワーズ『そこに偽王子を雇ったという君らが来た。どうだ?引き受けてもらえないか?』

 

頷くオクトエイト。

 

オクトエイト『願ってもない話だ。』

 

胸を叩くオクトエイト。

 

オクトエイト『任せておくんなさい!』

 

オクトエイトを見て、頷くフォルスワーズ。

 

フォルスワーズ『頼もしいな!頼んだぞ。このポルポ市始まって以来の、王族からの直々の要請だ。くれぐれも粗相のないようにな!』

 

頭を下げるオクトエイト。頭を下げるファウス。懐から手紙を取り出し、オクトエイトに渡すフォルスワーズ。

 

フォルスワーズ『詳細はここに書いてある。期待しているぞ。』

 

頭を下げるオクトエイト。頭を下げるファウス。

 

 

市庁を出るファウスとオクトエイト。オクトエイトは後ろからファウスを抱き上げる。手足を動かすファウス。

 

ファウス『あんっ!』

 

ファウスはオクトエイトの方を向く。

 

ファウス『オ、オクトエイトさん!こ、これは!』

 

笑うオクトエイト。

 

オクトエイト『お前を雇ってから運が向いてきた!これまで話しかけられもしなかった市長にも話しかけられ、王族から直々の依頼を受けることができるようになった!俺は嬉しい!

この…ロスト傭兵団が。ロスト傭兵団が…。』

 

涙を流すオクトエイト。ファウスはオクトエイトを見つめる。

 

ファウス『オクトエイトさん…。』

 

C7 仕事 END

-11ページ-

C8 八つ目の大罪

 

夜間。アゴル号に集まるロスト傭兵団の面々とファウス。

 

ロスト傭兵団員A『けっ、折角、くどきおとせるところだったのに。』

ロスト傭兵団員B『俺なんぞ、あとちょっとで勝てるところだったんだぜ。』

ロスト傭兵団員C『ざまあねえな。留守番組に回らないからそうなる。』

ロスト傭兵団員A『テメー。ちくしょう。こんなことなら留守番にしとけば良かったぜ。』

 

彼らの前に立つオクトエイト。その傍らにはファウス。

 

オクトエイト『急で悪いな。仕事だ野郎ども。』

 

オクトエイトを見つめるロスト傭兵団員達。

 

オクトエイト『雇い主はプロスデン王国。』

 

眉を顰めるロスト傭兵団員達。

 

ロスト傭兵団員D『プロスデン!?』

ロスト傭兵団員E『プロスデンだって。』

ロスト傭兵団員B『あの傭兵嫌いで有名な…他国から人を拉致してまで自国の兵にしちまうところが?』

 

歓声を上げるロスト傭兵団員達。頷くオクトエイト。

 

オクトエイト『そして、これは市長直々の依頼だ!』

 

眼を見開くロスト傭兵団員達。アギーラはオクトエイトを見つめる。

 

アギーラ『本当に!?本当に市長直々の依頼なの?』

 

頷くオクトエイト。

 

オクトエイト『ああ。』

 

オクトエイトに抱き付くアギーラ。

 

アギーラ『あんた、やったじゃない!』

 

オクトエイトは頭に手を当て、顔を赤らめる。

 

オクトエイト『よ、よせやい。お前、いい歳して…。』

 

大歓声を上げるロスト傭兵団員達。ロスト傭兵団員達を見つめ、何回も頷くオクトエイト。

 

オクトエイト『これはチャンスだ!俺達ロスト傭兵団が世に羽ばたくための!これより、アゴル号、アウトセーフヨヨイノ高速道路へ向かうぞ!』

 

鬨の声をあげるロスト傭兵団員達とファウスにミンナとキャンデル。

 

 

プロスデン王国アウトセーフヨヨイノ高速道路付近の森に止まるアゴル号。艦橋からアウトセーフヨヨイノ高速道路を見下ろすオクトエイトにファウス、ロスト傭兵団員達多数。ミンナとキャンデルが艦橋の窓を指さす。

 

ミンナ『ねぇねぇ、お人形さん。』

キャンデル『お人形さんがいっぱ〜い。』

 

眉を顰めるオクトエイト。

 

オクトエイト『なんだこりゃ。』

 

アウトセーフヨヨイノ高速道路上を覆うプロスデン王国のヴィンセン級人型機構とパンツァー級戦車、輸送トラック群。

 

ロスト傭兵団員A『こりゃ、圧巻だぜ。』

ロスト傭兵団員B『おいおい、こりゃ俺達の出番はないんじゃないか?』

 

オクトエイトはロスト傭兵団員達の方を向く。

 

オクトエイト『通電しろ。俺達が来てるってな。』

ロスト傭兵団員C『アイサー。』

 

機器のボタンを押すロスト傭兵団員C。

 

ノイズ音。

 

顔を上げるロスト傭兵団員C。

 

ロスト傭兵団員C『えっ、あれ…。』

 

ロスト傭兵団員Cに近づくオクトエイト。

 

オクトエイト『どうしたい?』

ロスト傭兵団員C『いや、それが…これは??』

無線からの声『全ての渋滞を根絶やしにしてやる…!』

 

眼を見開き、眉を顰めるオクトエイト。

 

オクトエイト『はぁ?』

 

揺れるアゴル号。艦橋の窓を巨大な閃光が走る。窓に駆け寄る一同。アウトセーフヨヨイノ高速道路に転がる瓦礫の山。唖然とする一同。

 

光を指さすミーナ。

 

ミーナ『あ…光。』

キャンデル『…綺麗。』

ロスト傭兵団員A『…いったい何が??』

 

無線からの声『人類よ!傲慢、貪欲、嫉妬、憤怒、暴食、色欲、怠惰…。我々は既に七つの大罪を犯す危険性をはらみながら、なぜ八つ目の大罪である渋滞を作り出すのか!!』

オクトエイト『な、何なんだ…。』

 

アウトセーフヨヨイノ高速道路を爆走するレーシングカーでバンパーにガントリングガンを取り付け、ボンネットに波動砲を取り付けてあるキャデルヌSF889改。

 

無線からの声『渋滞は罪だ!死を持って贖わなければならぬ罪だ!!』

 

艦橋を駆けまわるミンナとキャンデル。

 

ミンナ『つみー。』

キャンデル『つみー。』

 

笑い出すミンナとキャンデル。アギーラが腰に手を当ててミンナとキャンデルを見つめる。

 

アギーラ『ミンナ!キャンデル!上に行ってなさい!』

ミンナ『ママー。でも。』

 

アギーラを見つめるミンナとキャンデル。アギーラはミンナとキャンデルを掴み、上に上がって行く。騒ぐミンナとキャンデル。

 

アギーラ『危ないの!』

 

艦橋上のプライベートルームに消えていくミンナとキャンデル。

 

ロスト傭兵団員C『この意味不明な無線の発信源、特定しました!』

オクトエイト『まったく、この非常時にふざけたことを言っている馬鹿はどいつだ!?』

ロスト傭兵団員C『…あ、あのレーシングカーです。』

 

青ざめる一同。

 

無線からの声『渋滞は滅ぼさなければならぬ!渋滞を巻き起こす者も神の名において裁かなければならぬ!贖罪、すなわち死!』

 

キャデルヌSF889改に向けてマシンガンを撃つヴィンセン級人型機構群。

 

無線からの声『遅い!この渋滞に魂を売った者どもが!』

 

キャデルヌSF889改は片輪走行で、それを全てよけ、ドリフトしながらガントリングガンを発射する。脚部を破壊され、転ぶヴィンセン級人型機構達。キャタピラと砲台を破壊されるパンツァー級戦車、横転する輸送トラック。脱出するプロスデン王国の兵士が次々にハチの巣にされていく。

 

無線からの声『これは罪深き八つ目の大罪である渋滞を引き起こす愚かなる人間たちとの聖戦!』

 

残ったヴィンセン級人型機構と戦車達が反転し、キャデルヌSF889改に砲撃を繰り返すが全て回避される。ファウスはプロスデン王国軍を見つめ、艦橋から駆け去って行く。ファウスの方を向くオクトエイト。

 

オクトエイト『お、おい。ファウス!何処へ行く!』

 

 

アゴル号格納庫に駆け込むファウス。彼はロスト傭兵団使用人型機構No4に乗り込む。露天甲板から降りてくるスミス。

 

スミス『おい、お前さん。何やってるんじゃ!』

ファウス『何をって、出撃です!止めなきゃ。』

スミス『止めろ!ありゃ、キャデルヌSF889。ちと古いがボルスマーク社の最高傑作だ!スピード、旋回、何もかもが人型機構より上、しかも…地形は奴の独壇場の高速道路だ。乗っているドライバーの腕も超一流。お前も見ただろうプロスデンの人形どもも戦車もなすすべなく破壊されたのを!』

 

ファウスはスミスを見つめる。

 

ファウス『…それでも、行きます!やらなきゃ、もっと多くの人が…。』

 

ファウスを見つめ頷くスミス。ファウスは操縦冠を被り、自機に乗り込む。モニターに映るオクトエイト。

 

ファウス『オクトエイトさん…。』

オクトエイト『ファウス。お前、本当に行くのか。』

 

頷くファウス。

 

無線からの声『俺にスパイクは効かんぞ!愚かなる渋滞の眷属めが!姑息な真似を!渋滞は消さねばならぬ!滅ぼさなければならぬ!渋滞は宇宙の法則を乱す!止めなければならぬ!』

スミス『タイヤに魔力コーティングしてあるのか。』

無線からの声『渋滞など…要らぬ!』

 

オクトエイトの後ろに映る艦橋の窓を横切る巨大な閃光。

 

ロスト傭兵団員C『第二波!プロスデン軍被害甚大ーーーーー!』

オクトエイト『チッ、今のでプロスデン軍の2/3が壊滅したぜ。』

 

オクトエイトはファウスを見つめる。

 

オクトエイト『それでも行くのか。』

 

頷き、自機を発進させるファウス。

 

オクトエイト『分かった。しかし、俺達が出てっても足手まといになるだけだろう。できるだけサポートしてやる。死ぬなよ。』

 

頷くファウス。

 

ファウス『はい!』

 

アゴル号の格納庫から発進するファウス機。

 

 

アウトセーフヨヨイノ高速道路を爆走するキャデルヌSF889改。フロントドアの窓が開く。エグゼニ連邦元スピードレーサー世界チャンピオンで元救急隊員のマッハーが雄たけびを上げる。

 

マッハー『見たか!我が力を!渋滞など一捻りだ!これで…渋滞を…全ての渋滞を…全世界の渋滞をひねり潰す!』

 

ファウスは疾走するキャデルヌSF889改を見つめる。

 

ファウス『どうすれば…あの人を止めれる?』

 

眼を見開くファウス。

 

ファウス『…そっか、変えればいいんだ。』

 

機器のボタンを押す。モニターに現れるオクトエイト。

 

オクトエイト『どうした?怖くなったら逃げてきても問題ないんだぞ。』

 

ファウスはオクトエイトを見る。

 

ファウス『オクトエイトさん。お心遣い感謝します。援護射撃をお願いできますか?』

 

眉を顰めるオクトエイト。

 

オクトエイト『援護射撃?あのスピードの奴にいくら撃っても当たらないぜ。』

 

首を横に振るファウス。

 

ファウス『いえ、高速道路にお願いできますか。』

 

眼を見開くオクトエイト。

 

 

前方で右往左往するプロスデン軍。爆走するキャデルヌSF889改の前方の高速道路に集中砲火を浴びせるアゴル号。破壊される道路、倒壊する高架橋。

 

マッハー『おおおおおお!!』

 

急旋回するキャデルヌSF889改。

 

マッハー『おのれ新手か!渋滞めぇ!』

 

逆走するキャデルヌSF889改。

 

マッハー『渋滞は消滅させなければならぬ!息の根を止めねばならぬ!こんなところで終わってたまるか!すべての渋滞を全滅させるまでは!死滅させるまではぁああああああああ!』

 

キャデルヌSF889改の周りに落ちるプロスデン王国の放つ砲弾と銃弾。アゴル号の一斉射撃が、キャデルヌSF889改の前方の高速道路を破壊し、高架橋を破壊する。

 

マッハー『渋滞さえなければ、こんなに惨めになることも、困窮することもなかった!渋滞ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!』

 

飛び上がるキャデルヌSF889改。プロイデン軍からの砲撃がキャデルヌSF889改に数発当たる。ファウス機が飛び上がり、キャデルヌSF889改の波動砲とガントリングガンを切り払う。宙を回転し、バランスを崩し横転するキャデルヌSF889改。砂煙を上げて高速道路に着地するファウス機。凄まじい勢いで回るキャデルヌSF889改のタイヤ。

 

炎に包まれるキャデルヌSF889改のフロントドアが開き、這い出てくるマッハー。彼はよろめき、立ち上がって頭に手を当てる。コックピットのハッチを開くファウス。

 

マッハー『渋滞が無ければこんなに悲しむことはなかった!苦しむことはなかった!悔いることはなかった!』

 

マッハーは写真を取りだし眺める。

 

マッハー『渋滞が無ければ失うことも、亡くすこともなかった!憎い渋滞!許せない渋滞!全てを奪った渋滞ぃいいいいいいい!!何もかも全部渋滞が悪い!この渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!渋滞が!!…。』

 

マッハーを見つめ、口を開くファウス。ファウス機を引っ張るロスト傭兵団使用人型機構No1。

 

マッハー『渋滞がぁあああああああああああああああああああああ!!』

 

大多数の砲弾と銃弾が炎に包まれるキャデルヌSF889改とマッハーを四散させる。ロスト傭兵団使用人型機構No1のコックピットのハッチが開き、現れるオクトエイト。

 

オクトエイト『危なかったな。味方の弾にやられるところだったぞ。』

 

炎で包まれる高速道路を眺めるファウス。風に舞う、焦げた新聞記事の切り抜き。見出しには、とばすも間に合わず!レース世界チャンピオン、妻子死なすと書いてある。

 

C8 八つ目の大罪 END

-12ページ-

C9 依頼

 

崩れたアウトセーフヨヨイノ高速道路。瓦礫とスクラップとなったヴィンセン級人型機構と戦車を撤去し、死体、負傷者を運ぶプロスデン王国の兵士達。艦橋から下を見るファウス。後頭部に両手を添えるオクトエイト。

 

オクトエイト『たく、とんでもない事に巻き込まれたな。ま、みんな無事でよかった。』

 

ファウスは跪き、祈りを捧げる。

 

オクトエイト『犠牲になったプロスデンの連中はかわいそうだったがな。』

 

立ち上がり、オクトエイトの方を向くファウス。

 

ファウス『オクトエイトさん。何であの人はこんなことをしたんでしょうか?』

 

眉を顰めるオクトエイト。

 

オクトエイト『さあな。』

ファウス『しきりに渋滞って…。』

オクトエイト『まともじゃねえあたまのいかれた奴だったんだろうよ。』

 

揺れる地面。周りを見回すファウス達。アゴル号の後方より現れるプロスデン王国軍ビスマルク級機動城塞、ヴィンセン・ロード級人型機構多数。ロスト傭兵団員Cがオクトエイトの方を向く。

 

ロスト傭兵団員C『おおおお、お頭!通電、つ、通電!ププププロスデン…。』

 

オクトエイトはロスト傭兵団員Cの傍らに寄る。

 

オクトエイト『落ち着け。』

 

深呼吸するロスト傭兵団員C。

 

ロスト傭兵団員C『お頭。プロスデンの、プロスデンの国王から通電です。』

 

オクトエイトはロスト傭兵団員Cに詰め寄る。

 

オクトエイト『ププ、プロスデン国王だと!何をしている!早く繋げ!!』

 

アゴル号のモニターに映るプロスデン王国国王フードリヒ。彼は周りを見回す。立ち上がりフードリヒを見つめる一同。眼を見開き、急いで跪くオクトエイト、彼を見て跪く一同。

 

オクトエイト『プロスデン王。この度は…わ、我が…。』

 

オクトエイトを見下ろすフードリヒ。

 

フードリヒ『この度の働きには感謝する。』

 

頭を下げる一同。

 

オクトエイト『はは。』

 

ファウスを見下ろすフードリヒ。

 

フードリヒ『そこにいるのはアレスの偽王子か。久しいの。』

 

顔を上げフードリヒを見つめた後、頭を下げるファウス。

 

ファウス『は、はい…。』

フードリヒ『活躍は常々聞いている。ヴロイヴォローグを倒し、ロズマールの新鋭ホバー戦艦を破壊、山火事の鎮火にモングの総監を打ち破った。そして今回の事だ。それに農奴の身でありながらアレス王国の王位の簒奪を謀る…。』

 

ファウスは眉を顰め、俯く。

 

フードリヒ『まさしくポルポ市長が押してくる傭兵団の訳だ。』

オクトエイト『お褒め頂きありがとうございます。』

 

頷くフードリヒ。

 

フードリヒ『さて、早速だが依頼がある。』

 

顔を上げるオクトエイト。

 

オクトエイト『は、はい。』

フードリヒ『実は先程の襲撃のゴタゴタで徴発した人夫どもが脱走した。バトル王国との決戦を前にな。ザクセン、アイゼルク、ポメラニアにグリーンアイス連邦の手前もある。その人夫達を連れ戻してほしい。そいつらはこの高速道路ヤ・キュウケン地点から徒歩で北へ向かっている。』

 

フードリヒを見つめるオクトエイト。フードリヒはオクトエイトの眼を見つめる。

 

フードリヒ『…不服か?』

 

頭を下げるオクトエイト。

 

オクトエイト『いえ、めっそうもない。喜んで引き受けさせていただきます。』

 

笑みを浮かべるフードリヒ。

 

フードリヒ『そうこないとな。プロスデンは使える奴らは歓迎する。仔細はそれに書いてある。』

 

フードリヒの侍従が懐から手紙を取りだし、呪文を唱える。フードリヒの侍従の手から手紙が消え、オクトエイトの前に現れる。手紙を取るオクトエイト。彼はそれを開き、見つめる。顔を上げるオクトエイト。

 

オクトエイト『任せて下さい。ロスト傭兵団の名に懸けて!』

 

オクトエイトを見下ろすフードリヒ。

 

フードリヒ『では、頼むぞ。』

 

消えるモニター。扉を開けて駆け降りていくミンナとキャンデル。

 

アギーラ『こ、こら!ミンナ、キャンデル!今、重要な…。』

 

拳を震わすオクトエイト。オクトエイトに駆け寄るミンナとキャンデル。

 

ミンナ『パパー。パパー。』

キャンデル『パパ、どうしたの?』

 

飛び上がるオクトエイト。

 

オクトエイト『やった…やった!しがない傭兵団の俺達が王から直々の依頼をもらったぞ!』

 

雄たけびを上げるロスト傭兵団の一同。眼を見開くアギーラ。

 

アギーラ『え、え、ほ、本当に?本当にプロスデンの王様から…直々に?』

 

頷くオクトエイト。手を叩くアギーラ。

 

アギーラ『すごい。すごい…ゆ、夢のようだわ。』

オクトエイト『このロスト傭兵団。創業以来の第一歩だ!これを足掛けにすりゃ、俺達は町で大手を振って歩ける!仕事が入って金にも困らなくなる!』

 

オクトエイトはファウスを見つめる。

 

オクトエイト『ファウスよ。お前のおかげだ。ありがとう。』

 

ファウスはオクトエイトを見つめる。

 

ファウス『そんな、僕は何も…。』

 

ファウスに駆け寄るロスト傭兵団の一同。

 

ファウス『え、あ、あの…皆さん、どうしたんですか?』

 

ファウス胴上げするロスト傭兵団の一同。

 

ロスト傭兵団員A『これもファウスおかげだ!』

ロスト傭兵団員B『ファウスがいたからだ!』

 

大歓声が上がる。

 

ファウス『み、皆さん…。』

 

C9 依頼 END

-13ページ-

C10 人道

 

アウトセーフヨヨイノ高速道路ヤ・キュウケン地点に辿り着くアゴル号。オクトエイトは周りを見回す。

 

オクトエイト『ここから北上か。』

 

腕組みするオクトエイト。

 

オクトエイト『このアゴル号じゃ目立ってしょうがねぇ。まだ、明るいしな。奴らは徒歩。』

 

オクトエイトはファウスとロスト傭兵団員Aとロスト傭兵団員の方を向く。

 

オクトエイト『よし。ファウス、それにお前とお前、付いて来い!』

 

頷く一同。

 

 

アゴル号の格納庫。ロスト傭兵団使用人型機構に乗り込むオクトエイトにファウス、ロスト傭兵団員Bにロスト傭兵団員C。格納庫に現れるアギーラにミンナとキャンデル。手を振る彼女たち。

 

ミンナ『頑張ってね。』

キャンデル『行ってらっしゃい。』

 

手を振るオクトエイトにファウス、ロスト傭兵団員Bにロスト傭兵団員C。アゴル号の格納庫のハッチが開き、発進するロスト傭兵団使用人型機構達。ファウス機のモニターにオクトエイトの顔が映る。

 

オクトエイト『よし、きっと何か痕跡を残してるはずだ。探せ。』

 

散開するロスト傭兵団使用人型機構達。周りを見るファウス。ファウス機のモニターに映るロスト傭兵団員B。

 

ロスト傭兵団員B『こっちだ来てくれ。足跡を見つけた。』

 

しゃがみ、コックピットのハッチが開いているロスト傭兵団使用人型機構No3に近寄る一同。ロスト傭兵団員Bが手を振る。

 

ロスト傭兵団員B『おおい!こっちだ。』

 

ロスト傭兵団Bの周りに集まるロスト傭兵団使用人型機構達。それらのコックピットのハッチが開き、降りてくるオクトエイト、ファウス、ロスト傭兵団員A。腰に手を当てるロスト傭兵団B。彼の傍には無数の血痕と無数の足跡。眼を見開くファウス。

 

ファウス『血…。』

ロスト傭兵団B『見てくれ、頭。』

 

オクトエイトはしゃがみ、血痕と足跡を見つめる。

 

オクトエイト『…足跡も隠す暇もなく逃げたってことか。』

 

立ち上がるオクトエイト。ファウスはオクトエイトの傍による。

 

ファウス『オクトエイトさん…。血が。』

 

ファウスの方を向くオクトエイト。

 

オクトエイト『んっ、ああ、怪我してるやつらがいるようだな。行くぞ。』

 

ファウスはオクトエイトの方を向き、血痕と足跡を向いた後、自機に乗り込む。モニターに映るオクトエイト。

 

オクトエイト『怪我してるやつがいるらしい。そう遠くへは行けねえだろ。』

 

眉を顰めるファウス。

 

オクトエイト『よし、足跡を辿っていくぞ。』

 

動き出すロスト傭兵団使用人型機構達。暫く歩む彼ら。前方に見える数十名のプロスデンの脱走人夫集団。頭に包帯を巻いた者、体を支える者等が多数。振り向き、眼を見開いて震え、青ざめる、その場に座り込む彼ら。眼を見開いて彼らを見つめるファウス。

 

ファウス『…これは。』

 

彼らはロスト傭兵団使用人型機構の方を指さす。

 

脱走人夫A『おお、おい。ありゃ、傭兵だ!』

脱走人夫B『追手か!俺らを連れ戻しに来たんだ!プロスデンの奴らめ!』

脱走者女A『い、い、嫌よ。もう、あんな生活に戻りたくない。』

脱走人夫C『も、もうお終いだ…。』

脱走者女B『もう、終わりよ!もう、お終いなんだわーーー!』

 

モニターに映るオクトエイトの顔。

 

オクトエイト『よし、行くぞ。回り込め!徒歩じゃ、このロボットからは逃れられん!』

 

動き出すオクトエイト機とロスト傭兵団使用人型機構No2にロスト傭兵団使用人型機構No3。モニターに映る眉を顰めたオクトエイト。立ち上がり、ロスト傭兵団使用人型機構達を睨み付ける脱走人夫D。

 

脱走人夫D『貴様ら!金さえもらえば何でもやるのか!薄汚い傭兵団め!俺達はあのフードリヒの徴兵隊に無理やり連れてこられて人夫として働かされたんだ!』

 

立ち上がる脱走兵E。

 

脱走兵E『俺達は長時間、重労働させられ、輜重隊が戦闘に巻き込まれれば後ろからは督戦隊に撃たれ、前からは敵に撃たれるんだ!揚句に脱走すりゃ、即銃殺…。てめえらに何が分かる!』

 

頭を抱える脱走者女C。

 

脱走者女A『もう嫌ーーー!お願いよ!国に帰して。お父さんにお母さんに会わせて!』

 

泣き叫ぶ脱走者女C。青ざめ体を震わす脱走者達。ファウスは彼らを見つめた後、機器のボタンを押す。モニターに映る眉を顰めたオクトエイト。

 

オクトエイト『どうしたファウス。とっとと動け!』

 

オクトエイトを見つめるファウス。

 

ファウス『オクトエイトさん…。あの人たちの怯えようは尋常ではありません!それにさっき言ってたこと…。』

オクトエイト『気にするこたぁねえ。戯言だ。』

ファウス『で、でも!』

 

ファウスを睨むオクトエイト。

 

オクトエイト『こいつは仕事だ!国王直々の依頼なんだ!俺達の浮沈がかかってるんだぞ!』

ファウス『で、できません!僕には…できない!こんなこと!』

 

舌打ちするオクトエイト。

 

オクトエイト『勝手にしろ!』

 

ファウスから目をそらすオクトエイト。

 

オクトエイト『抵抗する奴は殺しても構わんぞ。どうせ銃殺刑だ。王の許可もある。』

 

眼を見開くファウス。

 

ファウス『なっ!』

 

泣き叫び、立ち上がって駆け出す脱走者女C。

 

脱走者女C『もう、嫌ーーーーーーっ!』

 

銃声。

 

伏せて、眼を閉じる脱走者女C。煙が上がる。目を開く脱走者女C。

 

脱走者女C『えっ、あれ…。』

 

脱走者女Cは右手部と肩部が破壊され、煙が上がるファウス機を見上げる。モニターに映る眼を見開くオクトエイト。

 

オクトエイト『ファウス!てめぇ!!』

脱走者A『お、おい。仲間割れを始めたぞ!』

脱走者B『い、今がチャンスだ!逃げろーーーっ!』

 

森の中に駆けていく脱走者達。彼らを追うロスト傭兵団使用人型機構No2とロスト傭兵団使用人型機構No3。ファウス機はそれらに足をかけて転ばせ、中央を駆けるオクトエイト機の前に立つ。顔を真っ赤にしてファウスを睨み付けるオクトエイト。

 

オクトエイト『ファウス!おめぇ!自分が何をしているのか分かっているのか!』

 

頷くファウス。

 

ファウス『オクトエイトさん!こんな任務止めましょう。』

 

ファウスを睨み付けるオクトエイト。

 

オクトエイト『気でも触れたかファウス?これは俺らロスト傭兵団がビッグになるチャンスなんだ!こいつらを持ってきゃ、俺らは認められるんだ!』

ファウス『こんな非道な任務で認められるなんて…そんなの間違ってる!』

 

オクトエイトはファウスを睨み付ける。

 

オクトエイト『はぁ?これは依頼だ!仕事だ!任務をこなすこと!それが傭兵団の信用なんだ!失敗すれば、信用は得られねえ!仕事も来なくなる!!分かるだろファウス!』

ファウス『僕は…あなたに救われた。あなたは僕の恩人で…その人にこんなひどい事をして欲しくない!』

 

眼を見開き、涙を浮かべるファウス。

 

オクトエイト『誰がこのロスト傭兵団の団長だ!命令に従え!』

ファウス『何で、どうして分かってくれないんですか!僕は…。』

オクトエイト『分かってねぇのはテメェの方だ!つべこべ言うなガキ!とっととどけ!』

 

立ち上がり、脱走者達に向かって銃を向けるオクトエイト機とロスト傭兵団使用人型機構達。ファウス機がそれらの両腕を切り払う。目を見開くオクトエイト。

 

オクトエイト『な、何すんだテメェ!』

ファウス『あなたに…こんなことやらせない!』

 

モニターに映るオクトエイトの蟀谷に血管が浮きでる。

 

オクトエイト『ファウス!てめぇ!』

 

ファウス機に一斉に突撃するオクトエイト機とロスト傭兵団使用人型機構達。ファウス機は彼らを投げ飛ばすが、脚部を切り裂かれる。

 

オクトエイト『うわっ!』

ロスト傭兵団員B『か、頭。この状態じゃ無理ですぜ!』

 

舌打ちするオクトエイト。オクトエイトはファウスを血走った目で睨み付ける。

 

オクトエイト『覚えていろよ!ファウス!お前は!お前は恩をあだで返したんだ!』

 

眉を顰め、俯くファウス。駆け去って行くオクトエイト機とロスト傭兵団使用人型機構達。ファウスは掌を見つめる。

 

ファウス『僕は…。』

脱走人夫Aの声『おい、気を付けろ!まだ、一機残ってやがる!』

脱走人夫Bの声『金に汚い傭兵だ。きっと、あいつら取り分で揉めたんだ。』

脱走者女A『じゃ、じゃあ、あいつ来るの…。』

脱走人夫F『逃げるんじゃあ。とにかく逃げるんじゃあ!!』

 

銃声。

 

木々がざわめき。うめき声と悲鳴が上がる。軍靴の音と銃声が鳴り響く。

 

プロスデン王国徴兵官A『けっ、やっぱりこうなったか。』

プロスデン王国徴兵官B『まったく役に立たん傭兵団どもだぜ。ぺっ。』

 

眼を見開き、森の方を見つめるファウス。

 

ファウス『そんな。』

 

ファウスは壊れた自機から飛び降り、森の方へ駆けていく。

 

銃声が何回も鳴り響く。

 

ファウス『止めて…。』

 

転ぶファウス。ファウスは顔を上げ、手を伸ばす。

 

ファウス『止めて!止めてください!!』

 

鳴り響く銃撃の音。

 

 

 

エグゼニ連邦ポルポ市ギルド街。ほつれ、汚れた黒いドレスを着たファウスがゲートの前に立つ。警備室から彼を見るコルツ。

 

コルツ『…お前、ファウスか。』

 

頷くファウス。コルツはファウスを睨み付ける。

 

コルツ『お前よくこの街にのこのこ来れたもんだな。』

 

俯くファウス。頬杖をつくコルツ。

 

コルツ『お前がプロスデンの依頼を反故にしたおかげで、市長は責任を取って拳銃自殺。』

 

眼を見開くファウス。

 

ファウス『し…市長さんが…。』

コルツ『ギルド街は壊滅さ。今まで得られたギルド街の助成金も貰えなくなっちまったし、どうすんだよ!お前!!』

 

頭を下げるファウス。

 

コルツ『てめぇがいくら頭を下げても無駄なんだよ!』

 

俯くファウス。

 

コルツ『で、お前の属していたロスト傭兵団な。解散したよ。ざまねえな。最も借金で首が回らなくなったオクトエイトは家族でバルゲ海に突っ込んで一家心中したぜ。』

 

眼を見開き、顔を上げるファウス。

 

ファウス『オ、オクトエイトさんが…心中…。』

 

ファウスから目をそらすコルツ。

 

コルツ『ああ。まだ子供もいたのに。かわいそうにな。』

 

崩れるファウス。

 

ファウス『そんな。オクトエイトさん。アギーラさん…ミンナちゃんに…キャンデルちゃん…。』

 

ゲートに集まるギルド街の人々。先頭に立ち、ファウスを睨み付ける元ロスト傭兵団員A。

 

元ロスト傭兵団員A『お前!ファウス!』

 

ファウスを睨み付けるギルド街の人々。

 

元ロスト傭兵団員A『あの脱走者達は結局プロスデン兵に殺されたじゃねえか!!お前の独善的で自己満足な独りよがりの人道で誰が救われた!誰も救われちゃいないじゃないか!結局、市長は死に、団長は一家心中!ギルド街は潰れ、俺達は職を失った!』

 

ファウスは目を潤ませ、両掌を見つめる。ファウスに向かって物を投げつける人々。

 

ギルド街人A『ちくしょう!お前のせいだ!このギルド街が潰れたのは!』

ギルド街人B『お前のせいで俺達は失業したんだ!』

ギルド街人C『ぶっ殺せ!ぶっ殺せ!』

 

俯くファウス。各々武器を持ちファウスに駆け寄るギルド街の人々。元ロスト傭兵団員Aが彼らの前に立つ。

 

元ロスト傭兵団員A『止めとけ。奴は偽王子だ。逆にこっちが怪我するかもしれねえ。現に俺達はこいつにやられてんだ。』

 

眉を顰めるギルド街の人々。

 

ギルド街人女A『それも…そうね。』

ギルド街人D『こんな奴、俺らが罪を犯して殺す価値もない。』

ギルド街人E『どことでも行っちまえ!』

ギルド街人女B『もう二度とここへ来ないで!!』

 

ファウスを睨み付け、去って行くギルド街の人々。警備室に戻るコルツ。彼はテレビをつける。蹲るファウス。

 

ファウス『僕は…僕は…何ということをしてしまったんだろう…。僕…どうすれば良かったの…?』

 

暫し沈黙。立ち上がるコルツ。彼は眉を顰めファウスの傍らに寄り、彼の肩を叩く。顔を上げるファウス。

 

クルツ『とっとと出てけ、お前が視界に映るのも不快だ。』

 

ファウスはクルツの顔を見つめ、立ち上がる。ファウスの背中を押すクルツ。

 

クルツ『さ、行った行った。お前が居るだけで迷惑なんだよ!』

 

ファウスはギルド街の方を向いた後、俯いて去って行く。

 

C10 人道

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次回予告

 

 

説明
・必要事項のみ記載。
・グロテスクな描写がございますので18歳未満の方、もしくはそういったものが苦手な方は絶対に読まないで下さい。
・心理的嫌悪感を現す描写が多々含まれておりますのでそれういったものが苦手な方は絶対に読まないで下さい。
・心理的嫌悪感を現す描写が多々含まれておりますのでそれういったものが苦手な方は絶対に読まないで下さい。
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