九番目の熾天使・外伝 -蒼の物語- |
戦姫編 第二話 「到着と帰還」
暗い場所だった。
彼女が目を覚ますと、其処は暗く何も見えない場所だった。
一人で何が起こったのかと戸惑う彼女は周りを必死に見回す。
しかし、周りにあるのは
闇
闇
闇
闇一色だった。
ならば動けばいい。
一歩踏み出す確かな感覚を頼りに、彼女は歩く。
そして。何かを見つけた。
小さく光る何かを。
その光に手を伸ばしたのだ・・・
青空が広がる。
木々も生い茂る所もある。
人と自然が絶妙なバランスで合わさっている場所。
其処にBlaz達四人の姿があった。
Blaz「着いたー・・・」
鈴羽「ココが?」
アルト「・・・ああ。」
アルトはそう言って一歩一歩前に進む。
近くには手すりがあるので其処に手を置いた。
所々錆びた手すりを持ち、アルトはその先にある景色を懐かしそうな顔で眺めていた。
その先には街があった。人々が賑わい、営む場所。
そして彼女の最期の場所。
帰って来た。複雑ともいえる心境を胸にアルトの中で取り合えずの喜びを感じていた。
アルト「・・・。」
Blaz「・・・んじゃとっとと仕事を終わらせるぞ。」
ニュー「はーい♪」
Blazがそう言うと後から転移されたBlazとアルトのバイクのもとに移動した。
どちらも日本製のスポーツバイクと言うのは、二人の任務などの事を考えてという事である。
また作者の独断と偏見であるというのは一応言っておこう。
アルト「んじゃこれからどうする?」
Blaz「取り合えず夕暮れまで一旦調査と言う事で。集合場所はココだ。それと、出来るだけ面倒事は起こすなよ。」
アルト「そりゃそっちだろ?」
Blaz「やかましい・・・」
その後。Blazと鈴羽は先に行ってしまい。残ったアルトはそんな彼等を見て呆れつつも信用しているという顔で二人を見ていたのだった。
アルト「・・・行くか。」
ニュー「うにゅ♪」
しかし、ずっとバイクと言うのもガソリン的に避けていきたい。
そんな訳で、アルトはまず近くにパーキングが無いかと思い、バイクを走らせていったのだ。
自分が死んでもう何年経っただろう。
そんな事を思いつつバイクを走らせる。
ミラーや周りには所々自分が知らないビルや店が立っていた。
アルト(・・・あんま時間は経ってないって事か・・・)
時間が余り経っていないという事を知り、ひとまずの安心をしたアルト。
そのひとまずの意味は、今は彼女だけが知る事だという。
だが、同時にまだ不安は残っている。
自身の正体がバレないか。と
規則良く硬貨が数枚、メーターの中に入っていく。
一定の金額が入れられるとバイクの後ろのタイヤにストッパーが付けられる。
これでバイクは動かせなくなった。
そして最後にメーターから駐車券が発行され、それをアルトは取る。
これを再度メーターに入れればストッパーは外されてバイクは動かせるという事だ。
アルト「よし。行くか、ニュー。」
ニュー「うにゅ!」
アルトに対してニューが返事をすると、アルトはニューの手を握ってパーキングを後にする。
自分が知っている古いパーキングだったが、どうやら取り壊しなどは無かったらしい。
そんな事を考え、パーキングエリアから出ると、アルトにとって其処は自分が居た場所であり、知らない場所といった感覚だった。
アルト「・・・。」
流石に何か心配になってきたので一応ニューと自分を確認する。
自分はジーパンと黒いシャツ、そして上着を一枚羽織っている。
顔にはサングラス型のバイザーを付けているので多分一目でバレる心配は無い筈だ。
それに、自身の得物は偽装としてギターケースに入れている。
敵などが現れた時はこれで対応すればいい。
そして、ニュー。
一口に言えば服装は鈴羽のお下がりらしい。
昔のスポーツジャージ一式でサイズが多少合ってないが、それはそれでいいとクロガネ隊のメンバーやカーラが言っていた。
靴はスポーツシューズなので動きやすさを重視している。
そして何より、何故か今回ニューは何時の間にか髪の毛を三つ編みをツインにして後ろに下げていたのだ。
何時もなら三つ編みは一つなのだが、どうしてこうなったのかは誰も検討が付かないらしい。
アルト「・・・ま、いっか。」
気にすりゃ負けか、と思いアルトは一歩を踏み出す。
一歩一歩踏み出していくと、何処からか好奇心がくすぶられ、表情が明るくなる。
其れを見て、ニューも嬉しくなったのか、アルトの手をしっかりと握りながら二人は歩き始めたのだ。
ニュー「♪〜♪♪」
アルト「・・・。」
嬉しそうに歩くニューを見てアルトは次第に心配を忘れてニューの嬉しさに感化されていく。
表のストリートを歩き、アルトは鼻歌を歌い、ニューは嬉しそうに何かを歌う。
何を歌っているのかは分からないのは、恐らく彼女が作った即席の歌だからだろう。
アルト「っ・・・・・・」
ニュー「うにゅ?」
すると、アルトの歩きは次第に遅くなり、やがて足を止めた。
何事かとニューはアルトの方に目をやる。
どうやら彼女は一枚のポスターが気になっていたらしい。
ニューはアルトが釘付けになっていたポスターを一緒に見て直感的な感想を述べた。
ニュー「きれいだねー」
アルト「・・・ああ。そうだな・・・」
一面ほぼ蒼と白のカラーリングのポスター。
其処には一人の若いアイドルが写っていたのだ。
其れを見てアルトは唯一言。
アルト「・・・そっか・・・」
と呟いたのだった。
= 数十分後 =
時間はそろそろ昼時に近づく。
世の中「腹が減っては戦はできぬ」と言うことでアルトが軽い軽食を買って二人で何処かの公園で食事を取っていた。
アルト「・・・。」
アルト達が街を移動して情報などを集めた結果、ここまでで幾つか解った事がある。
一つはこの街は以前大きな災害があったらしく、幾つかの施設などが此方に移動していると言う事。
それにともなってまだその災害によって破壊された街などが復興していないという事。
そして、その根本である災害は『矢張り』解決していないという事。
アルト(ま。ざっとこんなモンか。)
今知った事を取り合えず纏めたアルトは、軽食を終えて考え事をしつつ空を見上げる。
この後更に深く調べるか。
その為にはと思い、場所の再確認などをして行動に移そうと考えた。
アルトが次の行動を決めたのでニューにもそろそろ移動すると言おうとしたのだが
アルト「・・・・・・アレ?」
気が付けば ニューは既に 行方不明。
アルト「・・・・・・・・・マジ?」
一方その頃。
Blazは鈴羽と共に昼食を取り終えており、この世界で自分達が持って居た通貨が通じたというのにある種の驚きを感じていた。
鈴羽「・・・意外といけるものだね。」
Blaz「場所が場所だ。通じるって可能性もあっただろ?」
鈴羽「まぁそうだけど、実際通じるって思いも寄らなかったし。」
Blaz「ま。金が無くなったら強盗共から巻き上げればいいだろ。」
鈴羽「そんな物騒な・・・」
実際に物騒な人物なのは事実なのだが、其処は言わないでおこう。
Blazはそう言ってバイクの近くによって次の行動について考えていた。
Blaz「・・・んじゃ次はどうすっかなぁ。」
鈴羽「・・・あっち・・行ってみる?」
Blaz「あっち・・・なぁ・・・」
あっちと言うのは今もまだ復興されていない場所の事だ。
右も左も分からない場所なら怪しい所を手当たり次第しか方法は無い。
Blazは鈴羽の意見を聞き入れてその場に行こうとした。
が、僅かに感じた気配にBlazは動きを止めた。
Blaz「・・・・・・。」
鈴羽「・・・Blaz?」
Blaz「・・・何でもねぇ。行くぞ。」
鈴羽「・・・?」
Blazがバイクを走らせて十分ほど経ってから、鈴羽は気になっていたのでBlazに尋ねる。
何を感じたのか、それなりの付き合いなので彼の動作の意味は結構分かっていたのだ。
鈴羽「・・・何があったの?」
Blaz「・・・管理局の連中だ。一般人に紛れていた。」
鈴羽「ッ!」
Blaz「気づかれちゃマズイ。気づいてないフリしてろよ。」
鈴羽「・・・分かった。」
鈴羽に注意を言うとBlazはミラーで後ろを確認した。
黒いバイクが二台ほど先程から後をつけていた。
見た目では解らないが、Blazからすれば一発で解る魔力を発していたのだ。
長い間デバイスを使っていた感じのある魔力のオーラ。
間違いなく管理局の、それも本局の局員だった。
Blaz(連中・・何が狙いでココに来た・・・俺?いや、だったら別の方法がある筈だ。だったら・・・)
何か別の理由がある。
考えられる理由を頭の中ではじき出し、Blazは運転をしつつ考えていた。
だが、その何かがわからない。
ならばそれを知るのを急ぐべきだ。
取り合えずの考えを決めたBlazはバイクを動かし、目的地に向かって行ったのだった。
そして・・・
アルト「ニュー・・どこだー?」
ニューがはぐれてしまい、アルトはストリートをバイクで移動していた。
服と髪があれなので一目で解る筈。
なのに居ないとなると・・・
アルト「・・・何処まで行ったんだアイツ・・・」
異常な程の迷子スキルである。
アルト「って関心している場合かっての・・・」
こうなれば手当たり次第だと思い、アルトはバイクの速度を少し上げる。
その時だ。
アルトは青いバイクに乗った少女とすれ違った。
しかし、相手はヘルメットをしていたし、アルトはニューを探すので手一杯だったので僅かに見ただけだった。
だが、相手の方は確かに彼女を見ていた。
ヘルメットをせずにバイザーだけをつけていたのだ顔と髪が見えても普通である。
「・・・・・・まさか・・・いや・・・」
その少女は一旦バイクを止めると、アルトが走り去っていった方を見ていた。
そして、「何故?」と心の中で疑問を持って居たのだった。
それはアルトの過去に纏わる事。そして過去の一片を知る人物だったからだ。
さて。その頃のニューはと言うと・・・
ニュー「うにゅぅ・・・ちょうちょ・・・」
まさか蝶一匹でココまで迷うとは意外も意外である。
蝶を見失ったニューはアルトの所に戻ろうと辺りを見る。
しかし、場所は既に別の場所。先程まで居た公園ではない。
そんな訳で・・・
ニュー「・・・・・アルト迷子になった?」
盛大な誤解をしながらニューはアルトを探して歩き始めたのだった。
といっても場所は先程の街からかなり離れた場所で、Blaz達と最初に降り立った場所に近い。
そんな場所で、ココが何処なのかと思いつつポジティブな思考と共にニューは歩いていた。
ニュー「あーおいそーらーとりもーどーす♪ちかいはーいまーひとみーにあふれたー♪」
何処で自分の元が出ていたゲームのテーマソングを知ったかはさておき、機嫌よく歩いていたニュー。
すると、彼女の前に典型的な不良・・と言うよりも何処かで見た銀髪オッドアイの残念な奴が現れた。
「ん?んん!?あれは・・・まさか・・・・・・
YO☆U☆JYO!?」
ロリコンではあったが。
「ぐふふふふふ・・・まさかこんな世界でオリ主の力が発揮されるとは・・・この聖羅帝・・・
まだ終わってないという事だ・・・!」
何処かで聞いた名前ではあるが、今更覚えている人物は居ないだろう。
そんな馬鹿がニューへと近づき、不審者の如く彼女に声を掛ける。
聖羅「其処の君。迷子かい?」
ニュー「うにゅ?」
聖羅(か・・かわええ・・・)「迷子なら俺が一緒に居てあげようか?」
勿論このままずっとと言う意味で。
もし彼女の身内が居れば自分の力でどうにでもなる。
そんな馬鹿な思考を考えつつニューに話しかけたのだったが。
ニュー「えっと・・えっとねぇ・・・
死ねロリコン♪」
聖羅「ぐぼはぁ!?」
何処でそんな台詞を学んだのかと思いたくなる台詞を堂々と言ったニュー。
しかし当の本人は平然としており、この後どうするべきかと思い出して行動に移した。
ニュー「逃げろー^^」
ニューはそう言ってガードレールを飛び越えて下に降りていく。
それを見ていた馬鹿は死ぬ気かと思って見ていたが、ニューは軍人の様にしっかりと着地し、その場から急いで走り去っていった。
聖羅「って待てぇぇぇぇぇぇぇ!!俺は・・・俺はオリ主なんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
正直コイツの出番はココで終わらせたい。 by作者
聖羅「俺はかませかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
さて。馬鹿から逃げたニューはそのまま走っているとある程度の距離は稼げたかと思い、速度を歩く程度に落とした。
ニュー「・・・アルトどこかなぁ・・」
そして、再びアルトを探し、ニューは歩き始めたのだ。
場所は先程居た場所から一キロ以上離れ、段々と山奥に入っていこうとする。
そんな場所をニューはココだったかと思い、適当に歩いていた。
「・・・アレ?」
「ん?どうしたの?」
「いや・・・あの子・・迷子かなぁって・・」
「え?」
すると。彼女の前から二人の少女が歩いてくる。
その内の一人がニューが近づいていき、彼女が辺りをキョロキョロと見回していた為、迷子ではないかと思っていたのだ。
そんな迷子のニューが気になったのか、二人のうちの一人がニューに声を掛けたのだ。
「ねぇ君。もしかして迷子かな?」
ニュー「にゅ?」
「お父さんとかお母さんとか。一緒に居た人と迷子になったのかな?」
ニュー「にゅー・・・・・うにゅ・・・アルトが迷子なの・・」
(どっちかというとこの子の方が迷子の様な・・・)
「あははは・・・・・・それじゃあ・・お姉ちゃん達と一緒に探す?」
ニュー「にゅ?探すの?」
「うん。一緒に探そ?」
ニュー「・・・・・・うにゅ♪」
(か・・・かわいい・・・)
ニューの笑顔に頬を少し赤らめた一人。
だが、その前に名前を聞いておかねばと思い、少女はニューに尋ねた。
「よし!それじゃあえっと・・・・名前は?」
ニュー「ニューだよー♪」
響「ニューちゃんね!私は響。立花響だよ!」
未来「私は小日向未来。未来でいいよ。」
ニュー「えっと・・・ひびきとーみくー♪」
響(アカン未来・・・お持ち帰りしていい?)
未来(それは犯罪だからやめようね、響・・・)
果たしてニューはアルトと合流できるのか。
そして響はニューをお持ち帰りせずに出来るのか。
そんな三人がニューを中心に手を繋ぎ、アルトを探し始めたのだった。
だが。その頃、街のとある塔の上に一人の男が姿を現す。
レリウス「・・・行くか・・・」
レリウス=クローバー。
自らはあまり動こうとしない彼が自ら、それも早く動き出す。
この世界で一体何をしようとするか。
それはまだ彼意外誰も知らない。
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