紅と桜〜TLC−女神の涙〜 |
紅と桜〜TLC〜
雨泉 洋悠
やっぱり、あの時の、あの声は、にこちゃんだったんだ。
あの時も、あの場所でも、私と同じ、きっと、憧れの眼で、一緒に見ていた。
だから、いま、にこちゃんを一番近くで支える、この役目だけは、私は誰にも、これだけは、真姫ちゃんにも、絶対に、譲りたくないんだ。
昨日は、凛ちゃんのお部屋で、今日は、私の部屋で。
「かよちん、昨日は元気無かったけど、今日は元気にゃ」
お布団の中で、凛ちゃんと、お話。
昔から変わらない、私と凛ちゃんの、お休みスタイル。
「えへへ、昨日はごめんね、凛ちゃん。私、凛ちゃん教室に置いたまま、どっか行っちゃって」
昨日、活動休止を決めた後、二人で教室まで戻ったけれども、真姫ちゃんに伝えたい事があって、凛ちゃんを教室に、置いて行っちゃった。
凛ちゃんは、私が戻るまで、待っててくれて、お迎えしてくれた凛ちゃんの、笑顔を見たら、何だか止まらなくて、凛ちゃんに抱きついたまま、泣いちゃった。
「気にする必要ないにゃ、凛はかよちんの泣き顔は見慣れているにゃ」
凛ちゃんが、悪気なんて一欠片も無い顔で言う。
「ひどいよ凛ちゃん、それじゃ私いつも泣いてるみたいだよ」
解ってても、一応批難してみる私、こんな私も、少しずつ凛ちゃんに見せられるようになってきた。
「違うよ、それだけ長く見てるからって事。それに、泣き顔だけじゃなくて、かよちんの気持ちが、表に出ている顔は、全部好きだよ。にこちゃんとアイドルの話をしている時の嬉しそうな顔とかも全部好き!」
凛ちゃんが屈託なく笑う。
良いな、凛ちゃんは、いつだって私に、元気をくれる。
それなのに、昨日の私はひどい。
凛ちゃんの胸で、泣かせて貰いながら、寝る時も、涙が出ちゃって、凛ちゃんに抱き締めて貰いながら、ずっと、初めて、凛ちゃん以外の人の事、考えていた。
「ありがとう、凛ちゃん。今日もごめんね、私、どうしても、あの時は、にこちゃんを一人にしちゃいけないって、思ったの」
今日、にこちゃんに、アイドル活動一緒に続けようって、誘われた。
今日のにこちゃんは、昨日の屋上で見た、にこちゃんとはもう違っていて、何時もの、強くて、決意を秘めた、格好良いにこちゃんに戻ってた。
私がしたこと、きっと無駄にならなかったんだと思う。
真姫ちゃんが、ちゃんとにこちゃんの支えになっているのを、感じたの。
それでも、まだ真姫ちゃんは、きっとまだ戻ってこれないから、にこちゃんは、真姫ちゃんの為、それだけじゃなくて、穂乃果ちゃんの為、それときっと、ことりちゃんの為にも、いつでも戻って来られる場所を、消さないでおきたかった。
だから、私達を、誘ってくれたんだと思う。
それは、私と凛ちゃんへの、裏表のない、嬉しい信頼感と、にこちゃんのそういった、背水の決意から、言ってくれたこと。
「気にしなくていいにゃ、凛もそう思うにゃ、にこちゃんがあんな風に凛達の事、買ってくれてるのに断る訳にはいかないにゃ、女が廃るにゃ」
凛ちゃんもやっぱり、にこちゃんが誘ってくれたこと、嬉しかったんだ。
私も嬉しい、でも、その決意をにこちゃんにさせる力を持っているのが、真姫ちゃんだけなのが、ごめんね凛ちゃん、私、少しだけ悔しかったの。
本当はね、凛ちゃん、私が、にこちゃんの事、真姫ちゃんみたいに、支えて上げたかった、そんな気持ちも、あったの。
でもこれは、きっと恋じゃないから、真姫ちゃんの、にこちゃんの、唯一絶対の恋の方が、ずっと大切な、想いだから。
「真姫ちゃんが居ない時に、にこちゃんを支えるのは、かよちんと凛以外にはありえないよ、これだけは、まだ絵里ちゃんと希ちゃんにも、譲れない役目だよ」
凛ちゃんが、拳を私の前に突き上げる。
凛ちゃん、本当は、こう言う皆がバラバラになっちゃうような時に、一番皆の心を受け取っちゃって、苦しくなっちゃう筈なのに、私が昨日元気無かったから、無理して元気付けようとしてくれる。
凛ちゃんが、本当に元気だったら、今日みたいに、申し訳無さそうに家に泊まって良いかなんて、聞かないの。
本当に元気な時は、何も言わずに、当たり前に家に来て、一緒に寝てくれるから。
本当は、凄くか弱い、繊細過ぎるぐらいの、優しい心を持っている、私が、一生をかけて守りたい、私だけの、星のお姫様。
私は、拳を下ろした凛ちゃんを、自分の胸元に、抱き寄せる。
「ありがとう、凛ちゃん」
今日は私が、凛ちゃんを、抱きしめて寝る番。
「かよちんは、何時もいい匂いがするにゃ、気持ちが落ち着いてくるにゃ」
凛ちゃんも、真姫ちゃんとはまた違う、言葉にするのが苦手なタイプだから、私がちゃんと、凛ちゃんの気持ちを、感じ取って上げてないと、いけないの。
「昨日はごめんね、凛ちゃん。今日は、私が昨日のお返しに、凛ちゃん抱きしめながら寝させてもらうね」
私は、凛ちゃんが、いつでも、安心出来る場所でありたい、凛ちゃんを守る、王子様でいたい。
だから、昨日の私は、最初で最後、一方的に凛ちゃんに縋って、しかも凛ちゃん以外の人から受けた寂しさを、凛ちゃんに癒してもらう、そんな駄目な王子様。
「かよちんに抱き締められると、凛気持ちよくて、直ぐに寝ちゃいそうにゃ」
凛ちゃんが、本当にリラックスしてくれているのが、伝わってくるのが嬉しい。
昨日みたいなことは、きっともう無いけど、明日からも、皆がまた元に戻れるまでは、もしかしたら凛ちゃんがまた苦しくなっちゃうことがあるかも知れないけれども、今だけは、一緒に、にこちゃんの為に、頑張ってもらいたい。
きっともう、私がにこちゃんの為に、一番近くで頑張れることは、今しか、もう無いから。
「お休みなさい、凛ちゃん。明日からまた、にこちゃんと、三人で、頑張ろうね」
凛ちゃんを抱き締める手に、すこしだけ力を込める。
「お休みなさい、にこちゃんの為に、皆の為に、明日からまた頑張るにゃ」
真姫ちゃん、真姫ちゃんがいない間は、にこちゃんと、私と凛ちゃんが、頑張るから、元気になったら、戻ってきてね、私達は、四人で、一つだよ。
紅と桜〜女神の涙〜
人として生きよと、父は、そして、母は言った。
月に恋した、哀れなる者は、遂に太陽を取り戻しました。
月は言います、ありがとう、太陽の光があるなら、私は貴女の為にずっと輝きましょう、ずっと見ていて下さい。
月は、そう言いながらも、もう今までの太陽の方を、見てはいません。
月は、哀れなる者が持つ、尊い光に、それが何の光であったのか、気付いたのです。
今日の講堂でのライブ、沢山の人、観に来てくれたなあ。
にこっち、良かったなあ、穂乃果ちゃんも、ことりちゃんも、真姫ちゃんも、戻って来た。
もう、にこっち、一人じゃないよ。
にこっちと真姫ちゃん、今は二人っきりにしてあげたいから、皆、ライブの成功をお祝いした後、バラバラに部室を出た。
うちも、二人で、戻って来た、何時もの生徒会室。
えりち、用事があるからって、先に帰っちゃったなあ。
カードを引いて、自分の前に、一枚ずつ、並べていく。
あの日、にこっちを示していたカード、今のにこっちは、もう違う。
仕方ないやん、あの日、うちとにこっちの間に、示されたカードの繋がり、何度やっても、同じカードしか出ないんよ。
私じゃなかった、ただそれだけなの。
なんやろ、らしくないなあうち、にこっちのこと、一番喜んであげられるのうちな筈なのに、何でこんな、勝手に流れるん。
カードに落ちる、雫、一粒、二粒。
にこっち、何時だったか、冗談交じりにだけど、言ってた、真姫ちゃんの、最初のピアノ、私が聴けていたらなあって。
ごめんなあ、にこっち、あの時、真姫ちゃんと、会わせてあげられなくて。
あの時は、何時か九人が揃うためには、穂乃果ちゃんじゃないといけなくて、でも、にこっち乙女だもんね、あの場所に、本当はにこっちが居たかったよね。
ごめんね、うちも、あの時はまだ、どうやって、にこっちを真姫ちゃんに会わせてあげたら良いか、解らなくて、何とか繋がりを、作ってあげたくて。
でも、それが結果的に、にこっちの乙女の部分に切なさを残して、あの日一人で居たにこっちは、ずっと消えないのに、ごめんなあ、私がもっと、どうにかしてあげられたら、良かったのに。
真姫ちゃんとの、最初の出会いも、格好悪いって、拗ねてたね。
うち、そんな出会いも、素敵やんて、言ったけど、解ってたよ、にこっちが本当に、真姫ちゃんとの、もっとロマンチックな出会いが、欲しかったこと。
あの日からずっと、にこっちに、ずっと傍に居てくれる人と、会わせてあげたくて。
「うっ、ふっ……」
もう駄目、溢れそう、止まらないの。
「希、まだ居たのね」
うちの心、決壊寸前で、聴こえて来る、うちの、一番大切な人の声。
「もう、希ったら、何で一人で泣くのよ。私が知らない所で希が泣くなんて、私が絶対に許さないんだからね」
えりち、そう言って、当たり前のように、その胸に、私を、抱き締めてくれた。
「良いのよ、希、私は今、希が誰の為に泣きそうなのかなんて、解ってるから、泣きなさいな、思いっきり」
えりち卑怯やん、そんな事言われたら、もう止まらんよ、うち。
「辛かったよね、苦しかったよね、希。貴女はずっと、にこの為に心を、時間を捧げてきて、私はそんな貴女の、唯一の、心安らげる相手でしょ。だから、幾らでも、受け止めるわ」
何年ぶりかで、うちは、声を上げて泣いた。
ごめんな、えりち、今日だけは、えりち以外の、にこっちのための涙を、えりちの胸で流すうちを、赦して。
「貴女の心を、歯を立て、爪を立てて、私に刻みなさい。私にとって、そんなのはなんでもないわ、貴女の心を受け止めるのは、いつだって、私でいたいもの」
あの日添い遂げてあげられなかった自分と、あの日世界から消えようとしていた、にこっちの為に、うちの涙を、捧げた。
「一年生の時のにこっちな、うちが出会ったばかりの頃のにこっち、凄い可愛かったんよ」
想い出すのは、にこっちのあの日の、純粋で、無垢な笑顔。
「うん、私はまだ会えてなかったけど、そんなにこの事、ずっと見てたのよね、希は」
えりちは、少し落ち着いてきたうちを、その胸にずっと抱きとめながら、うちの言葉を聞いてくれる。
「うん、少しずつ、色んな事に傷付いて、心が少しずつすり減っていくにこっちを、ずっと見てた」
多分、えりちが居なかったら、留まれなかった。
「にこっちが、全部諦めてしまいそうになった時、うちは、もう全部投げ出して、にこっちの為に、削れちゃったにこっちの心を抱き留める為だけに、生きようかなって、少しだけ、考えた」
でも、にこっちに会う前に、えりちに会えていたから。
「でも、希はそうしなかったのよね。それは、私が居たからかなって、自惚れているけれど、もう一つ、にこを、そんな抜け殻になんて、したくなかったのよね」
そう、にこっちに強くいて欲しかった。
何時かにこっちが出会える、うちじゃない、他の誰かの為に、真姫ちゃんの為に。
「でも、それは同時に、にこっちに凄く辛い道を、たった一人で歩かせる事で、長い時間、にこっちを一人に、私はしてしまったの。えりちが居て、そっちの道を選ばなかったこと、後悔はしてないけど、ずっと、にこっちをひとりぼっちにしてしまったこと、心に引っかかってた」
どっちかしか選べなかったけれども、それでも、うちは、にこっちと二人だけで生きる道も、選んであげたかった。
「希、嬉しそうだったもんね、にこに二人っきりで勉強を教えている間、流石の私も、ちょっと妬けたわー」
えりちが腕の力を少し強める、ちょっとだけ苦しい、でもこの苦しさこそ、えりちに嫉妬して貰えた証やね。
「もうその頃には、にこっち真姫ちゃんにメロメロやん、はっきりとはしてなくても、のろけ話、乙女話、色々聞いたわ」
えりちの嫉妬、その頃のにこっちの様子、どっちも可愛くて、ニヤニヤが止まらんよ。
「そんなにこっちがなあ、ある事についてだけ、少しだけ寂しそうに話すんよ。真姫ちゃんとの出会い、もっと格好良く、ロマンチックに出会えていたらなあって」
寂しそうな、にこっちの顔、それはにこっちの、ずっと変わらない、乙女の部分の、横顔。
「にこと真姫の、出会いって、雨の日の部室の話?希に前に聞いたけど、コミカルではあるけど、充分に素敵な、忘れられない出会いだったと、思うんだけどなあ」
えりち、裏表なく、素直にそう言ってる。
その素直さが、うちの救いや。
「にこっち乙女やからなあ、コミカルな出会いは、お気に召さないんよ、きっと」
本当は解ってる、乙女なにこっちだからこそ、そんな真姫ちゃんとの出会いも、凄く大切に、胸に仕舞っていて、何時だって、抱き締めてる。
それでもなお、やっぱりにこっちの乙女心は、真姫ちゃんとの、ロマンチックな出会いを夢想するんやろな、きっと。
「私と希の出会いだって、きっとにこの乙女心から見たら、多分そんなにロマンチックじゃないと思うけど、私には充分に素敵な、忘れられない出会いだけどなあ」
嫌やえりち、あの日の話は、私には少し恥ずかしい。
「まあ、うちもそう思っているけどね」
恥ずかしいから、やっぱりまだまだえりちの胸の中にいる事にする。
「ねえ希、にこの誕生日の日の、マグダラのマリアの話、覚えている?」
ああ、あの日の、懐かしい話や。
「覚えてるよ、にこっちは、マグダラのマリアさん。真姫ちゃんはキリストさん」
真姫ちゃん、えりちが言ったとおり、ちゃんとにこっちを、救ってくれた。
「私ね、昔からずっと考えていたことがあるの。イイスス様は、復活した時、どうしてマリヤ・マグダレナの前に現れたのかなって」
それはやっぱり、真姫ちゃんと同じで。
「キリストさん、マリアさんのこと好きだったんやないかな」
真姫ちゃんが、復活する前から、にこっちのこと大好きだったのと同じ。
「そうよね、やっぱり、イイスス様は、復活する前は、自分以外の誰かの為にずっと生きてて、お父様である神様、お母様であるマリア様は、人として生きられなかったイイスス様に、人として生きる日々を、もう一度与えてあげたんじゃないかなって。こんなこと言うと、色んな人から怒られるから、希にしか言わないけどね」
えりちの言いたいことは、何となく解る。
「うちは、二人に、もう一度始まりをあげられたってこと?」
うちは、にこっち一筋やし、誰かの為にずっと生きてきたのは、にこっちやから、立場が色々ひっくり返ってる所はあるけれど、えりちが、うちを励ます為に、この喩えを出してくれたのは解る。
「そうね、希は私達を一つにしてくれた、女神だから、希の場合は、にこに誰かの為にじゃなくて、自分の為に歩く道を与えてあげたくて、一緒に歩く相手、真姫を、にこのもとに、復活させた。って解釈になるかしら」
えりち、女神って、照れるやん。
「アイドルであり続けるにこにだって、アイドルでない、人としてのにこを、ただ当たり前のように、無償の愛で、愛してくれる人が、一人ぐらい居てあげていいと思う。それが、真姫よね」
それはうちには、無理だった。
それが出来るのは、真姫ちゃんだけ。
「うん、にこっちに、たった一人でいい、歩き続けて、もしかしたらいつの日にかまた倒れてしまうかも知れないにこっちに、一緒に歩いて傍らに寄り添い支え、最後まで見届ける存在を、与えてあげたかった」
そして、あの子はそうなるためには、歯を食いしばって立ち上がって、自らの足でにこっちの元に行ってもらう必要があった。
そして、その手助けは、うちじゃなくて、花陽ちゃんがやってくれた。
「希は、にこが望むような出会いを、与えてあげられなかったかもしれないけど、それでも、この二年間、にこの為にずっと、殆ど全部を捧げて、ちゃんと、真姫という、にこにとっての、掛け替えの無い存在と、出会わせることが出来たと思うわよ。後は私達が二人にできるのは、過ぎて行った過去を振り返ることじゃなくて、残されたここでの日々を、二人が後悔のないように過ごすことが出来るように、手助けして、見守ることだけよ。ただでさえ少なかった二人の時間は、後もう半年しか無いんだから。希も、過去を振り返って、涙するのは、今日で終わりよ」
えりちはもう、未来を見据えている。
「だからあの時の希の言葉を、私も希にあげるわ。仕方ないのよ、希。希にも私にも、あの時期はあれ以上出来なかった。今回の件もそう、私達はほんの少し道を違えただけでも、またこうして集まることは出来なかった。だから、これから先を、大切にしましょう。皆で、忘れられない日々を、これからも刻んでいきましょう」
やっぱり、うちにはえりちなんや。
えりちの胸の中で、頷きながら、もう一度だけ、にこっちの乙女心のために、涙を流した。
「やっぱり希、今日はちょっと、寄り道していきましょう」
帰り道、えりちが唐突にそんなことを言った。
「どうしたん、えりち、今日は用事あるって言っていたのに、戻って来ちゃったし、大丈夫なん?」
不満そうに、ちょっとだけ不機嫌そうなえりち。
「用事の方は大丈夫よ。さっきは希のために、ちょっと聞き分けのいい事言っちゃったけど、やっぱりだめ、希は私ののぞみなの」
そう言って、唐突に手を握って引っ張っていく。
「今日だけは、にこのものにって、思ったけど、やっぱりやだ、私ののぞみに戻す」
えりち、顔怖いし、手痛いんやけど。
「まずは、ハンバーガー食べに行くわよ、今まで希がにこに捧げた放課後の時間の分、これから取り戻していかないといけないんだから」
えりち、さっき言ったこと、ひっくり返って、また過去振り返っとるよ。
「今まで知らなかったこと、我慢していたこと、もっともっと、私だって希とやっていくんだから」
えりち、そんな我慢してたん、うち、全然気付かへんかった。
うちよりもずっと低めの体温、えりちの手から伝わってくる。
えりちは、いま、クールに怒っとる。
「今日は、久々に希の家に泊まるからね、これだけは今はまだまだ、私だけの特権なんだから」
今夜のえりちが怖い。
うち、哀しみに任せて、今日とんでもないことしてしまったんじゃないやろか。
「こら希、私は怒ってるんだから、ニヤニヤ笑ってるんじゃないの」
いややん、えりち。えりちの本心からの感情ぶつけられて、うちが嬉しくないわけないやん。
「えへへ、えりちのお泊り嬉しいな」
自然と顔がにやけてしまうんよ。
「だからもう、希が喜んじゃったら、今日のお仕置きにならないでしょ」
ああもう、えりちったら、怒ってるとか言いつつ、膨れつつも、ちょっと口元笑ってるし、耳赤いやん、今日もごちそうさま。
えりちのお陰で、やっぱり今日も、うち幸せ。
次回
プロローグ
説明 | ||
にこちゃん誕生日おめでとう!記念@ にこちゃんと真姫ちゃん、直接出て来ませんが、 にこちゃん誕生日おめでとう記念です。 次で終わります。 TLCはThree Leaf Clover にこりんぱな |
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