紅と桜 プロローグリライト〜真姫とにこ〜
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   紅と桜 プロローグリライト

             〜真姫とにこ〜

 

              雨泉 洋悠

 

 桜色を燃やし尽くす、情熱の赤い炎、高貴な猫

 高くて、強い目線、長い、細い手足、綺麗、ああいう素敵な子が、きっとにこなんかと違って、本物のアイドルになっていくんだろうな、素敵な声で、歌うんだろうな、甘いんだろうな。

 にこと一緒に、あんな子がアイドルやってくれたら、きっと、一番の特等席で、ずっと眺めているのにな。

 

 微睡む意識、薄暗かった意識の底から、溢れた花びらを、振り舞わせ、光の中に、立ち戻る。

 

 瞼を開けば、視界に広がる、情熱の紅。

 同時に、意識を呼び起こす、その紅色から、私の心に触れてくる、彼女の匂い。

 

 その紅色に、私は顔を埋める。

 

 何時の頃からか、何度となく夢想した、彼女との、桜色の引き合わせ。

「ん、にこちゃん?」

 彼女も起きた、私の大切な、真姫ちゃん。

 私達を照らす光は、オレンジ色で、真姫ちゃんの紅色を、良く引き立てて、優しく撫でる。

 私もその匂いに、顔を埋めたまま、愛おしい紅色を撫でる。

「お目覚めね、真姫ちゃん。皆帰った後、二人で寝ちゃったみたい、もう夕方よ」

 こないだと同じ長椅子、今日はもう、真姫ちゃんは、あの日と違う、強い真姫ちゃんだ。

「うんん、そっか、どうしようにこちゃん、帰る?」

 眠たげなその高貴な瞳を私に向けて、目元を擦りながら、甘えたような声で言う。

 真姫ちゃん、可愛いな。

 私は今、凄い満たされてる、この溢れる想い、もう何時だって真姫ちゃんに、伝えられるんだ。

「真姫ちゃん可愛い。もうちょっとここにいよう。大丈夫、ちゃんと送るから」

 真姫ちゃん、また瞼を閉じちゃった。

「うん、解った」

 更に、私に身体を預けてくる真姫ちゃん。

 真姫ちゃん、背高いけど、軽いよね、スタイル良い、私の理想。

「真姫ちゃん、そう言えば、真姫ちゃんのママ、観に来てくれてたね。良かったね」

 そう、真姫ちゃんのママ、普通に観に来てくれてた。

「うん、にこちゃんのお陰、ありがとう」

 真姫ちゃんと、こう言う関係になれて、私はやっぱりいま、すごい幸せ。

「真姫ちゃん、私との最初の出会い、ちゃんと覚えてる?」

 それでも、ちょっと、真姫ちゃんに、私達の出会いについて、聞いてみたい。

「うん、覚えてる。にこちゃん面白かったし、変だった。でも、にこちゃんが心の奥に隠そうとしてた、不安に気付いた時、可愛いなって思った。見た目だけじゃないの、何て言うか、全部なの」

 今もまだ、二人の時だけに、見せてくれる、素直な真姫ちゃん。

 あの日の出会い、私にとっても、凄く大切。

「真姫ちゃんはさ、私と、どんな出会いをしたかった?出会えなかったとしたら、どうだった?」

 それでもね、少しだけ真姫ちゃんの気持ち、聞いてみたくなったの。

「えー、私はどんな出会いでも良かったよ、にこちゃんと出会えるなら何でもいい、会えないことなんて考えたくもない。どんな形であっても、にこちゃんに会えるならそれでいい……」

 そう言いながら、真姫ちゃんの、閉じた瞼の奥から、一滴、二滴。

「でもね、こうして出会えたこと嬉しいし、この関係で出会えて良かったと思っているけれども、それでもね、何度か思ったよ。私が、にこちゃんと同い歳で、同じ時にこのオトノキに入学して、ごく自然に、にこちゃんの色が溢れる季節に出会えて、二人で、最初から、一緒に歩いて行けていたらなあって、そうでなくても、もうちょっとだけ早く、春の陽射しの中で、にこちゃんに会えていたらって……」

 溢れ出す、真姫ちゃんの想い、私の心に、全部届く。

 真姫ちゃん、泣かせちゃうのは、胸が締め付けられて、辛いけど、真姫ちゃんが、にこと同じ、その事に泣いてくれること、嬉しいの。

「ありがとう真姫ちゃん、私も何度も思った、何度も夢に見たよ。私は、真姫ちゃんと過ごせる時間が、本当はもっと欲しかった」

 いつの間にか、私の頬も滴が伝ってて、真姫ちゃんの滴と、融け合って、流れていく。

 

 私達の縁を繋いでくれた、きっとそう女神様、最高級の感謝を、出会いを下さった貴女に捧げます。

 それでも、どうあっても、あなたの引き合わせに対して、私と真姫の、乙女の部分が、疼くんです、嘆くんです、どうかお赦し下さい。

 

 本当は、真姫ちゃんの誕生日、私がちゃんとお祝いしてあげたかった。

 私の誕生日を、来年は真姫ちゃんが、どう祝ってくれるのかなとか、楽しみにしたかった。

 二人の夏休みを、来年は何処に行こうかとか、話したかった。

 卒業したって、もう絶対に私達は離れないけれども、それでも、私は、この学校に、もっと、真姫ちゃんと一緒に、居たかった。

「にこちゃん、それでもね、やっぱり私は、にこちゃんとこの形で出会えたことも嬉しいの。だって私には、ミューズの皆とは別に、にこちゃんと二人っきりで、にこちゃんの卒業を、哀しむ権利があるの、惜しむ権利があるの。それは、他の皆にはあげない、私だけの、特別な想い出になるの」

 真姫ちゃんの訴えは、子どもじみたように見えて、でも私達の関係、全てを受け入れる強さを感じて、私は思う、それでもやっぱり、私は真姫ちゃんで、良かった。

「ありがとう、真姫ちゃん。また明日から、一緒に頑張って行こう。残りの半年間、二人でちゃんと、楽しんでいこう」

 二人だけの、時間、皆との時間、ちゃんと、楽しもうね、真姫ちゃん。

 

 にこちゃんに送ってもらいながらの、帰り道、にこちゃんが唐突に言った。

「真姫ちゃん、私これから、皆の前では、真姫って呼ぶからね」

 にこちゃん、また変な事言っている。

「何それ、意味わかんない」

 つまり、二人だけの時はちゃん付けのままだってことだ。

「良いの、私はね、真姫ちゃんとの先輩後輩の関係も大好きなの、それにほら、少しは対外的なアピールも必要なのよ」

 ついさっき、二人で、これからも皆の前での関係は変わらずに行こうって話したのに、やっぱり意味わかんない。

「真姫ちゃんには、自分の魅力に最低限もうちょっとだけでいいから、ちゃんと気付いていておいてほしいのよね、本当は。ほら出待ちの件とかもあったでしょ?あれだって私の中じゃ気が気じゃなかったんだから」

 私の魅力とか、何だか良く解かんないけど、それはきっと私のこだわりと同じで、にこちゃんの中で、譲れない部分なんだろうな、きっと。

「はいはい、好きにしなさいよ。これからも皆の前での態度、私多分変えないからね」

 ここらへんとか、私の中で譲れない部分。

 いきなり皆の前でベタベタするとか、柄じゃないし、にこちゃん以外の人が見てるところでなんて、第一……恥ずかしいじゃない。

「うん、それがいい、これからだって、喧嘩もしたいし、意見もぶつけあいたいし、ただ単に真姫ちゃんと仲良く過ごすんじゃなくて、色んな真姫ちゃんをきちんと見て、受け止めて、これからを過ごしたいの」

 もう、こう言う時だけ、大人な顔して、大人な事言って。

 本当にもう、にこちゃんは可愛いし、格好良いし、素敵なんだから。

 

 そうやって、私の気持ちを、どれだけ止まらなくさせるつもりなのかしら。

 もう、止める気なんて無いからね、私。

 

「にこちゃん、今日も、家に泊まって行きなさいよ。こんな暗い時間に一人で帰したくないし、ママも喜ぶから」

 そう言うとにこちゃんは、きょとんと子供みたいな顔した後、桜の花が咲いたように、華やかに笑うの。

 私達の物語、またここから始まるの。

 

 にこと真姫、二人の物語。

 

説明
にこちゃん誕生日おめでとう!記念A

紅と桜、真姫ちゃんからにこちゃんに捧げる25の物語、終わりました。
当初思っていた以上に、沢山(多分トータルで、各話1000人以上)の方に読んで頂けて、良かったです。
やっぱり、ラブライブ、にこまきが持つ、とてつもない魅力と、大きな力を感じます。

4月に桜の下で、5分で組み上げた主な部分は、二つのプロローグと、
そこにりんぱな、のぞえりの話を絡ませた、序盤と終盤の部分です。
まこちゃんの話とか、ことほのうみ、うみまきの話とかを後から付け加えていきました。
ことほのうみの活躍の場が少ないのは、単に三人はアニメ本編で、
ちゃんと色々なものをしっかりと乗り越えていく描写があるので敢えては書かなかった感じです。
本当は海未ちゃん視点でもっと書きたかったのですが、
これから書くことにして紅と桜には余り加えませんでした。

始まりと終わりは日付も含めて最初から決めていました。
今回の話は真姫ちゃんの誕生日に初めて、にこちゃんの誕生日に終わる。
で、その間に25(にこ)の話を書く。
25の捉え方は、そのまんま25本と、
タイトルを連名にした2本を取り外して252、
もしくは加えた27から各プロローグを外して252、
そんな感じになるようにしました。
一番の山場を昨日までに上げたのも、
にこちゃんと真姫ちゃんの物語はこれで全然終わりじゃ無いので、
終わりは誕生日より先に書いて、
誕生日にまたにこちゃんと真姫ちゃんの新しい物語が始まる感じにしたかった感じです。

今まで評価して頂くのとか、あまり気にせず書いていましたが、
この紅と桜を書いている間、評価やブックマークして頂ける度に嬉しかったです。
これからまだまだ、2期の分の話とか、その先も書いて行きます。

とりあえず今他にも色々考えていることもあるので、
暫くそっちに集中します。

今後は紅と桜として続けるか、別のシリーズにするか、まだ未定です。
紅と桜は即興で勢いを優先で書いた面が強いので、
読み直して整合性の取れないところとかを適宜修正して行くか、
もしくは加筆修正してどっかでまとめようかなと思っています。

真夜中の文学23時は続けますし、
一生にこまきしますので、
今後ともよろしくお願いいたします。
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