義輝記 星霜の章 その壱
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【 策 の件 】

 

? 洛陽 宮廷内 颯馬室 にて ?

 

あれから……七日以上経過した。

 

異民族の軍勢の動きは、全くなかった。 

 

……が、街に暮らす者達にとっては、異民族の来襲が何時来るのか? 今日来るのか? 明日来るのか? と………脅える日々を送っている。

 

まだ、洛陽辺りは大丈夫だったが、辺境の村では家財道具を纏め、大陸の中心部に向かい、逃げだす者達も少なからず出ているようだ。

 

ーーーーー

 

颯馬「我慢比べか………。 取りあえず、三方から向かってくる敵陣営の道程は把握出来ているのかい?」

 

伯約「はい! 西涼は馬寿成様率いる西涼勢三万が待機! 月様と詠殿、翠殿、蒲公英殿達と共に出向しております!」

 

颯馬「策の準備は?」

 

伯約「はっ! 敵軍勢の通る街道に砦を築き上げ、全面に『幕』を垂らしております。 敵が近寄れば、直ぐに幕の端を、前方に打ち込んだ杭に掛けるようにしてあります!」

 

颯馬「幕を、砦と地面の高低差を利用して、『坂』を作りだすのは出来たんだな? 竹の動きもどうだ?」

 

伯約「はい! 『竹』も先を炙り(あぶり)、少し上向きに修正しました! そのため、幕に引っかかる事もなく、前方に飛び出します!!」

 

颯馬「後、水を大量に用意する事、『木の枝』も多いのに越した事はない!」

 

伯約「はっ! 申し伝えておきます!」

 

颯馬「…………っと、それから、伯約さんに伝えておこう。 絶対に死ぬなよ! 残された者の事を考えて、行動してくれ!」

 

伯約「あっ、ありがとうございます!」

 

颯馬「あの天水の戦いより……ずっと困難な任務を任せてばかり。 申し訳ないと思っているよ。 だけど……情報収集に頼れる者が少ないから………。 早く戦乱を鎮めて、御家族と安全に暮らせるようにするからな!」

 

伯約「きょ、恐縮です……! ではっ!!」──スッ

 

ーーーーー

 

小太郎「………颯馬様! 伯約ちゃんが顔を赤くして、嬉しそうに走って行きましたけど、どうしたんですか?」

 

颯馬「んっ? 日頃の労いと早急に平和実現に向けて誓いを述べたんだが。 

 

………そうか! そうだよな! 『早く戦の無い世を!』と言われば、熱望しているこの世界の者には、喜ばれるのも当然!! その期待を裏切らないように、頑張らないとな!!」

 

小太郎「……………」

 

颯馬「…………何か報告かい?」

 

小太郎「………颯馬様! 今回はどうか、お傍に控えさせて下さい! 何か嫌な予感がするんです! 北条の母様より頼まれていますし! どうか!!」

 

颯馬「あぁ、いいよ! 今回は小太郎をこっちに残すつもりだったから…」

 

小太郎「わぁ〜い!! ありがとうございます!!」ガバッ! スリスリ

 

颯馬「胸に擦り寄せて来なくていいから!!!」

 

ーーーーー

 

三太夫「旦那! 何進の旦那と御妾御一行、無事成都に到着したぜ!」

 

颯馬「おいっ!! とんでもない発言してると……矢が飛んでくるぞ!!」

 

三太夫「へっ! 忍びの俺を出し抜く技が出来るかってんだ! それより、銅鏡を更に三つ配置。 『牛、小刀、藁、模様が書いた赤い布』って……これも準備したけど、例の策の付属物かい?」

 

颯馬「これも策の内さ! 異民族なら、さぞかし驚く事になるだろう!!」

 

三太夫「天城の旦那も性格悪いねぇ………ムッ! よっと!」パシッ!

 

颯馬「どうした?」

 

三太夫「おいおい───本当に矢が飛んで来やがったよ! この窓が一カ所しかない部屋の中で、俺一人を狙ってかぁ!?」

 

颯馬「大変じゃないか! 早く謝れ!!」

 

三太夫「いや……これは俺への挑戦と見た! 犯人が、どこに隠れているか、一丁探ってやるぜぇ!!」──スッ

 

颯馬「おいっ! 三太夫! 三太───!!」

 

と、声を掛けたが……既に遅く……姿が見えなくなった。

 

心配したが、アイツも一流の忍びだ! 何とかするだろう!

 

俺は……そう思い直すと、決戦への策謀を練り直した。

 

 

◆◇◆

 

【 久秀の考え の件 】

 

? ?州 鳥巣 鳥巣砦 にて ?

 

左慈「久秀! 五胡の奴らが不満を漏らして、煩くなってきたぞ! 獲物を待たせてお預け状態だ! かなり荒くなってやがる!!」

 

久秀「そこを何とかするのが、貴方の役目でしょう。 観察して報告するのであれば、貴方じゃなくても出来るわよ?」

 

左慈「その慰撫も限界だと言ってるのだ!」

 

于吉「左慈の慰撫を受けながら、このような仕打ち! 憎き五胡共ですね……! 左慈に成り代わり、私が天誅を───!!!」

 

順慶「もしかしたら、老師の懲罰を受けたい為、再度反抗する可能性も!」

 

于吉「………と思いましたが、話せば分かり合える同行の士……の可能性もありますね!?」

 

左慈「言っちゃ何だが……そんな輩の中で……何故俺が無事だと思う!?」

 

順慶「于吉の考えは扨置き(さておき)、動かす頃合いに丁度良いのでは? このまま放置しても、勝手に動き出すのは分かりきっているのに、何か支障があるのですか?」

 

久秀「かの三人の調教が……思わしくないの……。 『カンウ』が出来たから『チョウヒ』、『コウチュウ』、『バチョウ』の玩具を作るつもりだったのに……自我が消えないのよ!」

 

順慶「もしかして、五虎将を作る気………って『チョウウン』は?」

 

久秀「作らなくても、既にいるじゃない!」

 

ーーー

 

于吉「………私ですか? いやぁー、困りますね!」

 

左慈「黙ってろ! 『混ざるな危険!』と言う格言を知らないのかぁ!!」

 

ーーー

 

順慶「………はぁ?」

 

久秀「コホン! ……………貴女よ、順慶! この世界の趙雲を倒せば、貴女を名乗らせてあげる。 …………因縁あるんでしょう、あの将とは?」

 

順慶「そうですが……別に名乗る気もありませんわ! 第一この世界は破壊されてしまうのに、何故名乗らなければいけませんの! 久秀の配下になど、なりたくも、なろうとも思いもしないですし!!」

 

左慈「………言うの忘れていたが、俺の氣の影響だろう。 俺の氣を分け与えてやったから、久秀の術に耐性が出来たんだ」

 

久秀「そういう事は早く言いなさい!! どうするのよ! 無駄に時間掛かった割に、全く成果が得られなかったなんてぇ!!」

 

于吉「大丈夫です。 自我は残りますが、久秀殿の命令を着実に実行するよう、術を掛けておきますので。 ただ、『カンウ』と同様な働きは、一切できません。 多少常人を上回る働きは出来ますが………!」

 

久秀「あぁ〜残念!! 劉備のように五虎将率いて、戦いたかったのに!」

 

順慶「意外ですわね? てっきり……董卓のように『酒池肉林』の悪逆非道な行いを目指すかと思ったのですが…………それに、統一してもこの世界は、破壊されますのよ? 分かっておいでですの?」

 

久秀「分かっているわよ───そんな事! だからこそ、この機会に行うのでしょう? それに、勘違いしてるようだけど……正史の劉備は久秀と同格かそれ以上よ? かの英傑は『厚黒学』……面の皮が厚い事で有名なの!

 

劉備のように、底辺から相手を見据え、己と玩具の才覚と知識でのし上がり、徐々に権力を掌中に握る! そして、相手が格下と油断した隙を突いて倒した時の快感!! 『下剋上』……あぁっ! なんと、甘美で良き響きかぁ!!」

 

順慶「はいはい………現実世界に戻りなさいな!」

 

久秀「くっ、于吉に毒されてきたわ!///// 

 

さて、戯れ言は此処までにして……。 それじゃ……進軍を開始させるのよ! 三方同時進行を命じて『西涼』、『成都』、『交州』への進軍を行いなさい!!」

 

◆◇◆

 

【 孫呉 対 山越 の件 】

 

? 江東 雪蓮居城 にて ?

 

冥琳「雪蓮、交趾郡太守『士燮』から報告だ! 山越を含む異民族各地で一斉蜂起し合流、そのまま南海郡番禺へ進行! その兵数───百万!!」

 

雪蓮「ふ〜ん? 颯馬の報告がこれを差していたようね………」

 

冥琳「間違いないだろう。 それに交趾郡太守『士燮』が『わざわざ』連絡を入れた………。 本来なら異民族から真っ先に攻撃を仕掛けられる官軍代表が、敵に見向きもされずに悠長に報告を送る………か」

 

穏「失礼しま〜す!! 冥琳様! 将の収集掛けましたので、直に皆さん集まってきますので、謁見の間にお集まりを願いますー!!」

 

小蓮「姉様! 大変な連絡が入ったのよ!!!」

 

蓮華「姉様! 冥琳! 大軍が此方に向かっていると!!!」

 

雪蓮「今、冥琳から報告を貰ったわ!!」

 

冥琳「………穏! この竹簡を読んでみろ!」バッ!

 

穏「はいはい! 失礼しますぅ〜! ………………………随分とのんびり屋な太守様ですね? 敵軍勢が領土を行き交うのに、竹簡へ詳細をこれだけ書ける余裕があるなんてー。 尊敬しちゃいますよー!!」

 

雪蓮「で……答えは?」

 

穏「孫呉と裏の人物を秤に掛けた両面外交ですねー!」

 

冥琳「やはりか………。 あの男も有能なんだが……面従腹背過ぎるのが玉に瑕だ。 周りが強国に囲まれているとはいえ、こうも日和見が多いと領国経営にも支障を生じりかねん! 何とかせねば!!」 

 

雪蓮「それじゃ……この機会を逆に利用して、交州を孫呉の領地に加えてちゃおうかぁ!!」

 

『───────────はぁ!?』

 

★☆☆

 

? 交州 南海郡 番禺周辺 にて?

 

東は獅子洋(川)が流れ、南は珠江と呼ぶ湾岸が広がる平野部。

 

バサバサッ! ゴワーゴワー! 

 

シュー! ギャギャギャギャ! ピシャン!

 

辺り一面が、丈の長い葦等の草が伸びつつ、干潟が一面に見渡せるために、野鳥や渡り鳥達が餌場にしたり、休みの場所として利用していた。

 

そんな長閑な場所に突如現れた『百万の人』!

 

初めは驚き、何十羽が飛び立った………。 しかし、自分達に危害が加えられないと知るや、少し離れた場所で羽を休める。

 

『脅かすんじゃねぇ!』と言うような………警戒の眼差しを見せながら。

 

ーーーーー

 

その軍勢から、二人の男が現れる。

 

一人が費桟……山越の首領。 尤突と比べると背丈が半分しかない小柄の男だが、割れ鐘をつくような大声を出す小太りの五十代男。

 

もう一人が尤突……同じく山越の首領。 八尺(約184センチ)の背丈を誇るが、かなりの痩せ型。 口数は少ないが、熱が入ると饒舌になる五十代の男。

 

費桟「左慈と言う小僧が言っていた事、端っから信じていなかったが……まさか、ここまでの軍勢が集まるとは………」

 

尤突「………アイツは強かった! 強き者に従うのは我らの作法!」

 

費桟「……孫呉、いや孫家は先代が戦死した事でケチがつきやがったぜ。 袁術様に取り込まれ、反董卓連合に加わるが、実質の負け戦! そして、新たな戦いには、洛陽勢の加勢あったお陰で、押し返したと言うじゃねえかぁ!!」

 

尤突「あの左慈が、今は亡き軍師『司馬仲達』様直属というのが不思議だが、我らに接したのも縁! ここで、山越の恐ろしさ思い知らせ、孫呉の領土を我ら『南越国』と建て替えてやろうではないか!!」

 

費桟「意気込むのいいが、この大軍! 動きが鈍くなって困るんだよぉ! 

 

それで…だ! 俺達は首領が二人いる。 少数精鋭で山場を越え、荊州桂陽から進行! もう一方の軍勢は、そのまま進行して交州を突ききり揚州東候官に侵入する!! 勿論、盗った獲物は自分達の者! ……悪くない話だろう?」

 

尤突「いいだろう! 俺が………山越えの軍勢か?」

 

費桟「お前が山側の山越の長、俺が海側の長! それぞれの利点を重んじたやり方じゃねえかぁな!? まぁ……はははっ! 決まったからにはこの辺りで野営しようか? 士燮の野郎も酒や肴を沢山用意してくれたからなぁ!!」

 

☆★★

 

? 交州 交趾郡 士燮屋敷 にて ?

 

交趾郡太守『士燮』……交州に地盤を持つ豪族だったが、若き頃洛陽に遊学するなど勉学をし、数々の役職を経て、交趾郡太守の役職を命じられた。

 

だが、この男の持つ領土の利点《 貿易による多額の利益 》が、他の強国より狙われ、有名な話では……劉焉でさえ思い腰を上げて動いたという。

 

狙いは利益と共に『動物の耳』だと噂が一時流れたが…………。

 

ーーーーー

 

士燮「いやいやいや、本日も冷えますなぁ〜! あぁ! 例の献金! ご用意しておりますに! ささっ、どうぞどうぞ!!」

 

恵比寿顔でにこやかに対応、いつ何時訪れても揉み手擦り手で、愛想が良い。

 

本日も『金が必要だから、融通を利かせろ!』と申し込んできた山越兵に、腰を低くして対応。 その良さに、何時ものしかめ面も笑顔になる。

 

だが……この男。 献金しても………ただでは転ばない! 

 

士燮「ほぅ!! 二手に分かれて攻め寄せる! それは大変おますな! ささっ! グイッと呑んで呑んでぇ!! それで、皆さん大変でしゃろが……どちらへ向かうんどす!?」

 

山越兵「………これは秘密だがぁ………お前だけに漏らすが、誰にも言うなよ! 『えぇ!! そりゃ口避けても喋りませんよぉ!』………よし! 行き先は……………………」

 

こうして、山越兵の進路方向が、その日の内に雪蓮へと伝わる。

 

士燮………別名『揉み手擦り手で指紋を消した男』

 

この男が笑顔で迫る時、得をしたように見えて、大損をするが決まった……兆候だという。

 

◇◆◇

 

【 策の準備 の件 】

 

? 交州 南海郡 番禺周辺 にて ?

 

《 昼過ぎ (午後3時) 》

 

今、雪蓮達は……居城より軍勢を進軍し、番禺周辺の小高い山の上より、山越の軍勢を様子見していた。 士燮の所には、既に場所を知らせている。

 

冥琳が反対したのだが、雪蓮は強硬に命じた。

 

勘が『大丈夫』と告げているそうだ………………。

 

時期が冬の為、火が焚きたいのだが、敵に見つかる恐れがあるため、厚手の服を重ね着する事で対応。

 

兵達には焚き火を許可してあるが、分散して遠くで暖を取るように指導していた。

 

ーーーーー

 

雪蓮「『揉み手擦り手の士燮』より伝令が来たわよ!」

 

冥琳「その異名……何とかならないのか?」

 

雪蓮「無理よ! 本人が名乗ってる訳じゃないんだから! 周辺の者達が名付けるんだから仕方ないの!」

 

小蓮「でもぉ……本人次第だもんねぇ………」

 

蓮華「そんな話は後にして、山越の軍勢は……どう行動するそうですか?」

 

雪蓮「あの干潟寄りで野営するんだって。 これって好機よね、冥琳?」

 

冥琳「これ以上、颯馬の策を最大に活用出来る場所は無い!! 雪蓮! すぐに軍勢を三部隊に分ける! 戦闘開始時刻は早朝! 場所は左の干潟に一万、右の山中腹に一万、中央に一万五千! 残り五千は別の策を申しつける!!」 

 

蓮華「分かったわ!」

 

穏「お任せ下さい!!」

 

小蓮「まっかせてぇ!!」

 

雪蓮「思春! 頼むわね!!」

 

思春「はっ!」

 

ーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーーー

 

? 番禺 干潟周辺 にて ?

 

《 夜 (午後8時) 》

 

 

焚き火を数カ所で燃やし、暖を取りながら呑み交わす。

 

山越兵「前祝いだ! 英気を養わなければ、先が持たんぞ!!」

 

山越兵「金もたんまり貰ったしになぁ!! アハハハハハッ!!」

 

尤突「俺達も………乾杯!」

 

費桟「それぞれの勝利を祝ってな!」カン!

 

ガヤガヤガヤガヤ! ドンチャンドンチャン!

 

ーーーーー

 

? 番禺周辺 山上 にて ?

 

雪蓮「私も呑みたいな…………」

 

冥琳「呑むなら勝ってからにしろ!!」

 

ーーー

 

蓮華「ひゃ、百万の大軍……うぅぅ…………人、人、人と(掌に人文字を書く)……ペロッ!」

 

穏「蓮華様〜? その呪いなんですか〜?」

 

蓮華「緊張した時に行えば、緊張が解けるって颯馬から……」

 

穏「へぇー! 良いこと聞きましたぁ!! 穏も後でやってみます〜!!」

 

蓮華「穏に緊張なんて……あるのかしら?」

 

ーーー

 

小蓮「ZZZZZZ………」

 

思春「シャオ様! 寝ている場合じゃありません!!」ユサユサ

 

★☆☆

 

? 番禺 干潟周辺 にて ?

 

《 夜中 (午前2時) 》

 

山越勢天幕内

 

山越兵「ヒック! 呑めねえぇ! 呑めねえぇよぉ!」

 

山越兵「うーん! ムニャムニャムニャ〜!」

 

費桟「ゴガァァァ───────!!!」

 

尤突「スゥ─────────!!」

 

ーーーーーー

 

? 番禺周辺 山上 にて ?

 

冥琳「そろそろ頃合いか! 蓮華様、思春! 干潟へ移動! 小蓮様、穏は山側へ向かえ!! 法螺貝も忘れず持っていけ! 雪蓮! お前は合図があるまでここだ!! ここにいろ!!! 」

 

雪蓮「私、これでも王よ! そんな事……命じなくたって!」

 

冥琳「一度は、男の為に投げ出そうとしたお前が───何を抜かす? それから、皆、焚き火より焼け石を持って行く事。 布に巻きつけて、身体に付けておけ!」

 

穏「これって冥琳様の判断ですー? 凄いじゃないですかぁ?」

 

冥琳「颯馬に教えて貰ったのだ!」

 

ーーー

 

思春「蓮華様! こちらです!」

 

蓮華「ありがとう! 思春!」

 

ーーー

 

小蓮「───ほらぁ! 穏! 急ぐ急ぐ!!!」

 

穏「ま、待って下さい〜い!!」

 

ーーー

 

? 番禺周辺 街道沿い 移動中 にて ?

 

《 夜中 午後3時 》

 

雪蓮「さぁ! やるわよぉ!! お酒呑めなかった分──存分に!!」

 

冥琳「まだだ! 後方部隊! 『旗』と『太鼓』は用意したか?」

 

孫兵「はぁ……白い布を三十枚、桶の底を抜いて、革を貼り付けた物で宜しいのですか?」

 

冥琳「充分だ。 合図があれば、旗を一気に押したて、太鼓を打ち鳴らせ!」

 

孫兵「はっ!!」

 

◆◇◆

 

【 源氏の戦い の件 】

 

? 番禺周辺 干潟 にて ?

 

《 朝 ( 午前6時 )》

 

朝日が……………顔を出した。

 

まだ、気温が低く、吐く息も白いが………身体は熱い。

 

私達が、音を立てないように、干潟をゆっくり移動して配置についた。

 

敵軍勢………百万! 対する孫呉の軍勢は四万。 

 

祭が私達の勝利を信じて、守備兵力を数千しか居城に残さなかった。 しかし、近くに華琳が、三十万の兵を準備して………万が一に備えてくれている。

 

 

『私に独立を許可しておいて、出たら孫呉が滅びました! そんな風評が流れると嫌だから……守るのよ!!』

 

 

顔を赤くして、説得力が余り無い話を早口で喋る覇王。 確かに信じていいかも……と心で笑うのだが……目の前の敵を見ると、そんな余裕も無くしてしまう。 

 

 

『颯馬……………私に力を!』 

 

 

私は先程、行った呪いを……もう一度してから、相手側を見る。

 

殆どが……緊張感なく……だらしなく寝ている様子! 見張りの姿も見えず、隙など有りすぎる程! 

 

私は、前代未聞の……この戦いに……勝利の確信を得た!!!

 

★☆☆

 

ドオオオォォォーーーーーーーン!

 

ドオオオォォォーーーーーーーン!

 

 

太鼓の音が二度響く!

 

山越兵「ん? なんだぁ?」

 

何人かの山越兵が寝ぼけ眼で顔を上げる!!

 

 

 

ブオオオオォォォォ━━━━━━!!

 

ブオオオオォォォォ━━━━━━!!

 

ブオオオオォォォォ━━━━━━!!

 

 

 

干潟から、山側から、街道からーーーー聞いた事がない『音』が聞こえる!!

 

山越兵「て、敵? な、なんだぁ!!」

 

山越兵「か、怪物! 物の怪!? ────あ、あれは!?」

 

 

 

バサバサバサバサ!!! バサバサ────!!

 

バサ━━━━━━━━━━!!!!!

 

 

 

干潟で羽を休めていた渡り鳥が、法螺貝の音に驚き飛び立った!!

 

山越兵「なんだぁ━━━━━!! 何があったんだあ───!」

 

費桟「ごがぁぎゃあああああ━━━━━!!!」ドスドスッ!

 

尤突「いつまで寝てやがる! 敵が来たぞ!!!」

 

山越兵「敵だ!! 干潟から数万の軍勢がぁぁ───!!」

 

山越兵達は大混乱に陥った!! 酒の壺を数人で取り合ったり、槍の穂先と石突きを間違えて構えたり、果ては同士討ちまで!!

 

★★☆

 

? 番禺 近辺の山腹 にて ?

 

穏「法螺貝! もう三度! 吹いてぇ!!!」

 

ブオオオオォォォォ━━━━━━!!

 

ブオオオオォォォォ━━━━━━!!

 

ブオオオオォォォォ━━━━━━!!

 

穏「私達は突撃です! えぇ〜と『逆落とし』でぇすー!!」

 

小蓮「シャオの力! 食らいなさあぁぁぁい!!!」

 

穏、小蓮達が山の中腹より駆け降りる!!

 

ーーーーー

 

? 番禺周辺 干潟 にて ?

 

蓮華「思春! 私達も!!」

 

思春「はっ! 法螺貝! 二度だ!!」

 

 

ブオオオオォォォォ━━━━━━!!

 

ブオオオオォォォォ━━━━━━!!

 

 

蓮華「私に続けぇ!! 行くぞぉぉぉ!!!」

 

思春「この鈴音と共に──あの世へ渡れ!!」 

 

ーーーーー

 

? 番禺周辺 街道沿い にて ?

 

雪蓮「こっちも法螺貝! 一度! だけど、大きく長くお願い!!」

 

 

ブオオオオオオオオオオオオ━━━━!

 

 

雪蓮「孫呉を侮りし憎き者共!! この孫呉の力、思い知るがいい!!」

 

『ウオオオオオ━━━━━━━━!!!』

 

 

孫呉四万! 

 

百万の敵に奇襲を仕掛けた、乾坤一擲の戦いであった!

 

ーーーーーー

 

後世、この話を聞いた学者が、『ギャラルホルンの言い伝えは、この戦を元にしている!』と発表し、諸説紛々で……今でも決着が付かないらしい。

 

 

ーーーーーーーーーー

ーーーーーーー

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

 

まずは、本文で登場します《交趾郡太守『士燮』》は、同じTINAMIの作者様である赤糸様のキャラとは、モデルは同じでしょうが、中身は全然違いますので、ご理解をお願いします!

 

『天馬†行空』は作者も好きですので、応援しております!!

 

策は、ご存知の方ならわかると思いますが『富士川の戦い』を元に、こうなりました。

 

この話は、もう少し続きます。

 

また、宜しければ読んで下さい。

 

説明
義輝記の続編です。 よろしければ読んで下さい。
7/25 加筆訂正しました。
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コメント
くれぐれも体調だけは、お気を付けて下さいね! 体調崩して病気通いで稼ぎが消えたなんて困りますから。 次回作は、リアルが忙しくて間が開きますが一週間以内に投稿しようかと。 オマケで、風のその後の話を書く予定です。 (いた)
禁玉⇒金球様 コメント及び激励ありがとうございます! それと、風イジリのコメントを利用しまして、久秀の策に取り込ませていただきました。 お礼とお詫び申し上げます! 蓮華の件は安心して……颯馬の件は……同意見です! 作者でも羨みますよ?(いた)
この作品い限らずコメント自体が久々ですのでちょっと下ネタコメですみません、7月〜10月は私は基本的に恐ろしく稼ぎ時の職種でしてねw3から4徹はデフォなのですよ(給料もモロに上がりますが)応援してます頑張って下さい。(禁玉⇒金球)
颯馬の野郎が小太郎のおっぱいをすりすりされているとか羨ましいとうか怨めしい…いや隠さず言おう禁球爆ぜろと(この作品で二度目のモゲロ的発言ですw)、↓で蓮華ファンがどうこう言ってますが私は基本的に巨乳と巨尻と普乳と熟女の信望者です安心しなされ(禁玉⇒金球)
mokiti1976-2010様 コメントありがとうございます! 『白旗』じゃないのでインパクトに欠けると思い、法螺貝を追加しました。 緊張を解すやり方は、他にも多数あるそうですが、よく見掛ける物を採用。 蓮華ファンが増えれば上々です! (いた)
そうか、やはり富士川でしたか。そして掌に人という字を一生懸命書いている蓮華さんの後継が微笑ましい。(mokiti1976-2010)
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