義輝記 星霜の章 その弐
[全1ページ]

【 山越兵反撃 の件 】

 

? 交州 南海郡 番禺周辺の干潟 にて ?

 

羽ばたく数十万の『渡り鳥』、今まで聞いた事がない『音色』、急に現れた敵兵───まだ目覚めて間もない山越兵達は戸惑い、周辺を探り、初めて自分達が襲われているのが分かる!!

 

しかも、三方よりの攻撃の為……前進、左右転進は不可! 後方も味方の軍勢が来ている為、下がる事も不可! しかも、全軍の意思統一も出来ない状態!

 

尤突「全軍……攻撃! 全面突破だ!!」

 

費桟「いや、干潟の敵は……水に近い分、身体が冷えて動きが鈍い! 今の内に攻撃して圧力を弱らせてやれ!!」

 

  『────???????』

 

大将が二人とも違う命令を出す為、混乱に拍車が掛かる!!

 

ーーーーー

 

戦闘に加わわる事が出来ない残りの山越兵達は、比較的冷静に戦場を俯瞰して見れる事ができたが……進軍がままならないため、仕方なく立ち止まる。 

 

だが、決して負けを認めてはいなかった。 

 

時間が経ち、頭も目覚めて周囲の情報が分かれば、三方から見る軍勢など、自分達より遥かに少ないのは明らか! さっきの『音色』、『羽ばたき』も正体は判明した! 

 

………………なら、どうするか? 

 

答えは……『数で押せば勝てる!』

 

相手が兵数が少ないから奇策を持ち込んだ! 我々はその戦いに耐えた! そして、敗走などせず……兵力を保持している! 

 

だから……更に待って、相手の疲れを誘い勝機を掴めば!!

 

そう、考えた! そして、普通の戦なら……それで逆転できたのだが!

 

孫呉の誇る軍師達は、そのような行動を許すわけがなかった。

 

◇◆◇

 

【 最終戦に向けて…… の件 】

 

? 洛陽 練兵場内 にて ?

 

董卓軍諸将兵は、赤壁の戦い後……更に訓練を積んでいた。

 

赤壁での久秀が残した将に、苦戦した事を踏まえ、武力の引き上げに掛かっていた。

 

ーーーーー

 

義弘「くっ! なかなかやるわね! 今度は私が!」

 

霞の模造飛龍偃月刀を避け、自分の得物を左右に繰り出す!

 

霞「おっ! おっとっと! やるやんか『鬼島津』!」

 

ちょっと……慌てながら避けて、言葉で反撃!

 

義弘「お、『鬼島津』言うなぁ!! 馬鹿ぁ─────!!!」

 

涙目で訴える義弘………。 

 

二つ名は何時の世でも名誉だが、義弘に取っては苦痛の種。 

 

ここなら、自分の二つ名を知られまいと考え、颯馬達に口止めしてあったのに、どこぞの誰かさんが叫んだので、大陸中に広まった。 

 

それを見て………『可愛い』と思った兵達が……何十人か居たという。

 

ーーーーー

 

華雄「いくぞぉぉぉ! でえぇいぃぃい!!」

 

模造金剛爆斧を頭上高く上げ、忠勝に斬りつける華雄! 

 

忠勝「あぁ〜! また力んでござるよ!? それだから、反応が遅れるでござる!」

 

模造金剛爆斧を、持っていた模造蜻蛉切りで左下に受け流し、その隙に後ろへと回り込み、華雄の肩を軽く『トン!』と叩く。

 

華雄「ま、参った!」

 

素直に負けを認める華雄。 通算八戦八敗……完敗の身。

 

忠勝「………筋も良し、鍛錬も日頃より積んでござるから、武器の間合いを考え、相手の行動を先に読むように努力を………!」

 

忠勝の説明に何度か首を頷きながら、それでも華雄は諦めない!

 

華雄「………そうか! だが、次の戦いこそは!! ───忠勝よ! もう一戦、相手を頼む!!」

 

ーーーーー

 

愛紗と義輝が双方構える………。

 

前の水関で無様に破られた事を思い、稽古をお願いすれば、快く承諾。

 

思いも寄らない対応に、嬉しかったのは………その時まで。

 

実際は過酷な鍛錬で、身体も心もふらついていた。 

 

愛紗「だが………これも私の身から出た錆! 必ず追いつく!!」

 

しかし、闘志だけは一向に折れていなかった!

 

ーーー

 

二人とも互いの隙を探し、打ち込む場所を見いだす!

 

愛紗「行かせていただきます! どおおぉぉぉりゃああぁぁ!!」

 

先に隙を見つけ、模造青龍偃月刀を振り上げて、襲いかかる愛紗。 

 

そして、義輝の頭上に一気に振り下ろすものの──────!

 

義輝「ふっ!」

 

持っていた『ハリセン』で払いのけた! 勿論、ハリセンに直接重量を掛ければ、一応紙製の為、曲がって頭に直撃する可能性もある。

 

しかし、義輝は、ハリセンを持つ右手に左手を添えて受け流し、一歩踏み出し、カウンターで愛紗の頭を張り倒した!!

 

義輝「そこ! ────悪し!」 

 

パアァァァ────ン!

 

愛紗「痛ぁあああ!!」

 

愛紗が頭を抑えて、しゃがみこんだ。 

 

果たして、何度めの指摘による体罰か、覚えがない程叩かれている。

 

義輝「速さも力もある! ただ正確さが足りぬわ! ほれ、構えい!!」

 

愛紗「は、はいっ!」

 

義輝の叱咤に恐縮するも、再度構えて挑みかかる!

 

義輝「そこも─────悪し!」

 

パアァァァ─────ン!!

 

愛紗「きゃあああぁぁぁ──────!!」

 

再度、乾いた打撃音と愛紗の悲鳴が聞こえたのは………この後すぐだった。

 

ーーー

 

謙信「お相手………仕る!」

 

信玄「私も行きます!」

 

道雪「道雪の戦い振り、披露致しましょう!」

 

恋「…………恋も………いく!!」

 

世にも名高い『飛将軍』と『天の国』で名高い将達が、全力を持って対峙しているものの、全くの余裕綽々の『都の踊り子?』貂蝉。

 

貂蝉「ちょっっっと! その紹介、間違えているわよぉん! 『都の踊り子』じゃなくて『魅惑の踊り子』と変えてくれなきゃぁぁぁ〜!!」

 

公式に書いてある通りなんだが…………おかしいな? というか、説明文に文句なんて言うなよ。 

 

ザッザッザッザッ…………

 

信長「魅惑だか疑惑だか分からん怪人物だが、私達の武力を上げる為だ! ツベコベ言わせず、挑ませてもらうぞ!!」

 

紹運「このような豪華な顔ぶれの稽古、めったに無い! 私も加えさせて頂こう!!」

 

信長と紹運も参戦に名乗りを挙げた! 流石の貂蝉も嫌がるかと思えば……。

 

貂蝉「どふぅうん! 私はいいわよぉぉん!! こぉのぉぉ貂蝉ちゃんの華麗なる舞の相方が、貴女達なんてぇ嬉しいわぁん! 優美な舞に潜む豪快な武の刃! メロメロになるまで────楽しんで頂戴ぃぃぃい!!」

 

貂蝉本人より了解が出ると、六人は一斉に挑み掛かった!!!

 

ーーー

 

卑弥呼「………良きオノコ……吐息交え、汗飛び散り、熱き肉体同士がガチでぶつかり合う、この場所に儂が参戦を許されただとぉ!? だ、だぁりん!!

これは、人助けだぁ! け、決して浮気ではぁぁぁなあぁぁい!!!?」

 

華佗「あぁ!! 人助けなら仕方がない! 寧ろ大いに奨励する!! 卑弥呼や皆! 何かあれば、俺が全力で治療してやる!!! 安心して励め!!!」

 

卑弥呼「むふぅ───! 滾る! 滾るぞぉぉ!! だぁりんより応援されてしまっては……頑張るしかないではないかぁぁぁあ!!」

 

一存「昌景殿………。 本当に、この妖怪変化との対戦、武の稽古になるのか? 俺は、久々に久秀並みの嫌悪感を感じるのだが…………?」

 

昌景「………様態怪異、面貌異様。 されど、我らより遥か武の道を極めし者に間違いは無い! 一存殿、余計な詮索をしている前に────!」

 

卑弥呼「ぬふぅぅ────ん!!」

 

一存「なんだぁ───!?!?」サッ!

 

昌景との会話途中、嫌な殺気を感じて横に動く! 

 

ドドドドドド────ッ!

 

卑弥呼「遅刻、遅刻、遅刻ぅぅぅ───!」ドドドッ!

 

 

卑弥呼の突進を辛うじて避けた一存! 

 

 

卑弥呼「恥ずかしいがるなど……ウブなオノコよぉ! しかし、儂の漢女四十八手の一手『朝寝坊の登校』を避けるとは。 やはり、食パンを口に咥えなければ、真の力を発揮できぬようだわぁ…………!」

 

 

昌景「あらゆる意味で…………苦戦は必至じゃのう………」

 

 

ーーー

 

長慶「二対二か? このような相方との相互補助も、戦いに重要だな!」

 

亞莎「はっ、はい! 一対一ですと戦い方は数通りの組み合わせしかありませんが、二対二でしたら戦いの幅が広がり、これを基礎として、更に複数人での戦い方を編み出しす事ができる筈です!!」

 

長慶「ふぅー、亞莎殿のように、しっかりした性格の持ち主が、一存の嫁になってくれれば……私も安心できるのだかな…………」

 

亞莎「えっ? えっ! ええぇっっ!?」

 

ーーー

 

明命が……長慶と鹿介を『ジィ──』と睨みつける。 正確には身体の一部。

 

明命「またしても───! ここは孫呉以上に確率が高いです!」

 

そして、自分の前で印を組み、呪を詠唱する!

 

明命「我が身体…既に貧○なり! 我が恨み…既に怒髪天なり!! 巨○覆滅!」 ─────────カッ!

 

長慶「──────何っ!?」

 

鹿介「むっ! 術を仕掛けるか! 油断がなりませんぞ!? 長慶様!!」

 

──────────!

 

亞莎「み、明命ぃ───!! 正気に戻ってぇ!!」バッ!!

 

 

とんでもない戦いが始まる前に、亞莎が双方の間に入り止め……事なきを得た。 因みに、明命の発動させようとした術は……不明。 二人を見て反射的

に出したそうで、本人も覚えていないとの事だった。

 

ーーー

 

義清「この米の粉を溶いて飲めば……強くなれるのかぁ?」

 

綱元「う〜ん、強くなる……って言うより、身体には凄くいいんだよ!?」

 

成美「………味は、あんまし美味しくないんだけどね……。 だけどねぇ〜身体の健康よりも、力とかバァーン!と上がってくれる方が嬉しいなぁー!」

 

宗茂「とんでもない! 戦において己の身体が健康な事、どれだけ大事な事か分かっていませんね!? いいですか? そもそも体調に変化が無い事は、攻守共々、此方が有利に展開できる要件を備えており──────」

 

成美「そんな難しい事を言われても……成美には全然分かんないのぉ!!」

 

ーーーーー

 

義久「私も〜皆に協力できる事は少ないけど〜、お料理ぐらい作らせて貰わないと悪いわよねぇ〜?」

 

ーーーーー

ーーー

ーー

 

ダッダッダッダッダッ! バァーン!

 

義久「あらぁ〜? 皆、駆け込んでどうしたのぉ〜?」

 

左近「───此処が異臭元の原因か!! 義久殿、早急に中止されよ! このままでは、董卓軍や禁裏兵の被害が拡大する一方だ!」

 

政宗「なんだぁ、この臭いはぁ!! 義久殿! 止めぇい! 止めろぉ!!」

 

家久「うわぁ───!! よし姉ぇ!! 駄目だよ! 止めてぇ!!」

 

義久「えぇぇ─────!? せっかく作ったのにぃぃ!!」

 

ーーー

 

景綱「………うむ〜惜しい。 あの料理を使えば、如何に久秀と言えども、壊滅できるような策が出来そうだが……」

 

歳久「止めた方が良いですよ? 味方の方にも被害が及び、対応に苦労しました。 ………両刃の剣ですね」

 

ねね「虎牢関で既に実地済みなのです! 恋殿ですら、顔を背け、近寄る事がなかった、神仙鬼神も避けざる得ない凶悪料理ですぞ!?」

 

景綱「そうか………。 既に実用化に成功しているのなら、久秀も対応策を立て易いだろう。 それに、味方にも被害が続出とは。 何とも恐るべき『料理』だ………………」

 

◆◇◆

 

【 孫呉 第二の策 発動 の件 】

 

? 番禺 干潟周辺 にて ?

 

山越兵「旗が! 旗があんなに乱立している!! あぁ、また増えた!!」

 

山越兵「太鼓の音が大きくなっていく!!」

 

自分達より少ないと、高を括っていた山越兵達だが……孫呉の援軍が目に見えて、押し寄せるのが分かり、怯え出していた。

 

旗の数も最初は数十本だったのが、今は数百に増えた! 太鼓も軍の進退を決める大事な物であり貴重な品。 だが、数万単位の太鼓の音とは思えない程、乱れて打たれている!!

 

普段の平野なら、数で押せば勝てる要素など沢山ある。 

 

しかし、今回は……用意周到な奇襲! 

 

しかも、増援もある正規兵数万と烏合の衆百万の練度の差!

 

勝てる要素は急速に消えていくのである。

 

ーーーー

 

そして、後方からは………

 

??「前衛が敗走した! 俺は逃げるぜぇ!!」

 

??「頭が二人共、殺されたぁ!! 死にたくねぇ!!」

 

山越兵「こ、殺された!? 費桟様や尤突がか!!」

 

山越兵「…………逃げる、逃げてやる! こんな事やってられるかぁ!!」

 

後方もまた、大混乱を起こす結果になった。

 

★☆☆

 

冥琳は、本陣より戦場を俯瞰する。

 

干潟の部隊、山側の部隊、街道沿いの部隊が、優勢のままで攻撃を行う。

 

山越の後陣も、砂塵が舞い……慌てている様子が、手に取るように分かる。

 

冥琳「『旗』と『太鼓』の増援偽装、成功したようだな?」

 

冥琳は残り隊を一部残し、二部隊に分けて命じていた。

 

一方は、旗を少し離れた地より、誇示しながら棚引かせ本陣に付ける! そして、また旗を取りに行く事の繰り返し。

 

もう一つの太鼓の音は、残りの部隊が『足桶』の底を外し皮を貼り付けた、簡易的な太鼓を準備して、鳴らしていた! 片方だけ皮を付けた物だが、鳴らすだけなら充分間に合う。

 

颯馬の残した策に、冥琳と穏が加えた策だった。

 

ーーー

 

孫兵「甘将軍! 敵──かなり動揺! 更に揺さぶりを掛けます!!」

 

思春「うむ! 頼んだぞ!!」

 

孫兵「─────はっ!」

 

蓮華「………上手く言っているよね?」

 

思春「流言飛語………お見事な策でございます!」

 

思春は、その策を提案した蓮華を素直に褒め称えたが、蓮華は不定する。

 

蓮華「違うわ………私は私の出来る事を果たしたの。 姉様は戦闘と全体の鼓舞、冥琳は全体の戦術、穏は補佐。 シャオも……あれで士気挙げに貢献している。 思春………貴女も私の護衛兼兵の指揮!」

 

思春「では………蓮華様は?」

 

蓮華「私はね……! 皆の補助!」 

 

思春「─────────!」

 

蓮華の意外な言葉に驚く思春……………。

 

蓮華「私はね、次代の国主の座を恐れていた。 あの姉様の後に国主となった時、姉様に匹敵する王に成れるかと………」

 

思春「それは………」

 

蓮華「今、考えれば考え過ぎだった。 姉様みたいに成れるわけないのよ。 同じ姉妹でも……違う人なのにね? だから、私自身の力を見極めるの。 様々な事を学び、皆を助けながら!」

 

思春「では、命じられた後方の大混乱は……」

 

蓮華「これは、穏と冥琳が話をしていたのを偶然……聞いたの。 『後方に混乱を起こしたい』って。 だけど、両翼が王族で固めているから、万が一何かあると困ると言って諦めていたけど……。 

 

だから、付近の安全を確かめ、代わりに指示をだしたのよ! 戦を長引かせず、早く勝敗が付くように!」

 

珍しく力説する主君を見て、思春は溜め息を吐いた。

 

思春「………ですが、雪蓮様や冥琳様に叱咤される事、覚悟して下さい!」

 

蓮華「…………やっぱり?」

 

思春「戦術を勝手に変えたのてすから……当然です!!」

 

蓮華「うぅ……………」

 

正式に命令が出てないのに、戦術を変更したのだ!

 

叱咤されるのは目に見えていた。

 

思春「始めだけ叱られ………その後、絶賛されるでしょうが…………」

 

ーーーーーーー

ーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

 

リアルが忙しいのと疲れから、なかなか作品が出来なくて申し訳ないです。

 

今度も、少し遅れるかもしれませんが、また、宜しければ読んで下さい。

 

下のオマケは、時間軸がズレた話です。 詠がまだ洛陽に居るところと思ってくれるとありがたいです。

 

 

◆◇◆

 

【 風弄りは続く の件 】

 

? 洛陽 宮廷内 とある部屋 にて ?

 

カチャカチャ! 

 

(  ^-^)_旦~ 旦~ 旦~

 

詠「………………っと! お茶の準備も出来たわ!」

 

ーーー

 

スッ──! ススッ───!

 

( ._.)φ 

 

稟「ここを………こうして………指示を出せば………」

 

ーーー

 

( ̄∇ ̄)

 

風「……………うふっ! うふ、うふふふふふっ!!」

 

ーーー

 

『─────────!?』

 

ガタン!!! 

 

稟「あーっ!」 ポチャ!

 

ーーー

 

詠「きゃああぁぁぁ──────!!」ガチャン!

 

ーーー

 

稟、詠「「 風━━━━━!!! 」」

 

風「どうしたんですかぁー?」

 

ーーーーー

 

原因を作り出した張本人は、何知らぬ顔で座っていた。

 

果たして……ワザなのか? 天然ボケだったのか?

 

風の様子を二人して覗いたが、全く分からない状態だった。

 

★☆☆

 

稟「何を急に、笑い声を出すんですか! あぁ〜! せっかく書いた竹簡に、墨がこんなにも…………!!」

 

詠「私だって! 皆で休憩しようと、お茶を入れたのに……! 茶器を落として割っちゃたじゃないの!! ………結構、お気に入りだったのに〜〜!!!」

 

二人が文句を言い出すと『すいませんね〜! じゃあ………』と風がトテトテトテと稟の傍に走り寄り、墨の付いた竹簡を眺める。

 

風「ふむふむ、成る程。 この程度、風の悩みの前には……塵屑同然! 稟ちゃん、筆借りますよぉ? そぉれぇぇ─────!!」

 

シャシャ、シャ──! ピタッ!

 

風は、新たに書き上げた竹簡を、稟に渡す。

 

風「これでいいですかー? 『晋の軍勢に追われた避難民の対応』を明記した指示の竹簡はー?」

 

稟「わ、私の物より、詳細に示されている!?」

 

稟が唖然とするのを確認し、次は………詠に近付く!

 

風「さぁ〜て、次は詠たん……ですねー?」

 

詠「へんな呼び名で言うな!! それに、い、いくらアンタでも、割れた物を直せるわけ───!?」

 

風「………え〜とぉ……」ゴソゴソ

 

風は、詠の言葉を風のように流し、懐に手を突っ込んで、何かを探す。

 

詠「───────!」ドキドキ 

 

風「…………弁償しますが、おいくらですか〜?」 

 

詠「はぁ………?」

 

風が出したのは────財布。 詠の身体から力が抜けた瞬間である。

 

風「……………ん? もしかして、もしかしたら……何か……期待してましたぁ? 例えば〜割れたお茶碗が、元通りになったり………」

 

詠「……………」プィ! 

 

風「もぅ! 駄目ですよぉー!? 幾ら風でも、出来ない事だってあるんです〜! そんな過度の期待されちゃうと……困っちゃいますよー?」

 

詠「───そもそも、アンタがぁぁ!! ………はぁ、もういいわよ。 そ、そんな事より、笑い出した理由って何なのよぉ!!!」

 

詠は、自分の好奇心を恨みながら、怒りを鎮める。 どうせ怒鳴っても、煙に巻かれるのは見えているから。 

 

それなら、相手を上機嫌にさせている物を聞き出し、そこを突いてやった方が無難だと、考えたからだ。 

 

───のちに、後悔するのだが。

 

風「うふふふふっ! そうですねぇ……聞きたいですかー? 聞きたいですよねー? 聞きたくなくても教えて上げますよー! うふ、うふふふふっ!」

 

稟「はいはい………では、拝聴しましょうか?」

 

詠「ボ、ボクも〜!? 簡単に理由だけ話して貰えば……」

 

風「簡単だぁー? 聞いてきた本人が、何をほざいているんでしょうね? もう! この癇癪玉は!!」

 

詠「ぐっ!!」

 

風「いいですかぁー? 颯馬お兄さんは、室内に籠もりきりで、策を練ってますー。 他に、この事知っているのは、風達軍師しか知りません。 って言うか、バラしたら………ふふふふふっ!!」

 

詠「アンタ………松永に似て来たけど………?」

 

稟「安心なさい、大丈夫ですよ。 軍師の弱みを外に流して、わざわざ敵に有利になる情報を知らせる……策でもない限り、無駄な行為ではないですか?」

 

風「流石、稟ちゃんです! どこぞのツンツンツン子の的外れな意見とは、大違いの大人の発言ですよー!!」

 

詠「変な呼び方止めえぇぇぇぇ────!!」

 

稟「どうどう!」

 

詠「馬の怒りを宥めても、ボクの怒りは収まらないのよ!!!」

 

風「ツッコミ不在ですのでスルーですー」 

 

稟「………では、早く話して下さい」

 

風「……やっと……やっとなんですぅ! かの『お二人』が、風の存在を認めてくれたんですよぉぉぉー!!!」

 

詠「はぁはぁ! ふんっ! 其処まで言うのなら、見せてもらうわよ!!」

 

『 (._.) _(._.)_ 』

(コメント欄 確認中)

 

ーーーーー

 

 

詠「……………褒めてんの? これ?」

 

稟「さぁ……。 私にも、返答のしようがありません」

 

風「誰が何と言われましても、風は認めさせたのですー! 『……風? 誰?』『風が風と共に去りぬ』と言う酷評にも耐え、宝ャに八つ当たりしながら苦節……うぅ〜ん……と、三十年と数日!!」

 

詠「…………二十日も経ってないわよねぇ?」

 

稟「すいません……聞き流して下さい………」

 

風「祝・勝利なのですー!!!」

 

詠「だけど………、噂じゃあ、松永が手を回したんでしょう? 枝を切れても、根元を切り倒さなくちゃ……意味無いわよ?」

 

稟「だ、駄目です!! せっかく納得しかけていたのに!!」

 

風「ガァーン! そうでしたー! おのれぇ〜! 松永めぇ〜〜!! 風を、風を! よくも侮辱しやがってぇぇ────ですよー!!」

 

説明
義輝記の続編です。 宜しければ読んで下さい。
7/30、十四時にちょっと細部変更しました。
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
917 822 6
コメント
禁玉⇒金球様 再コメントありがとうございます! えーと、風に意見を………えっ? 酔っ払ってる? じゃあ……また次回に。 でも、ジョジ○は多分無理かと。(いた)
数名は洛陽の修練で一名が実戦で成長してますね、褌猫娘は…許す。先の洛陽動乱で『影の薄い人』に出来た事が君には出来なかった以上↓の台詞が君自身の栄光を貶めている…そんな君を認めてます。(助言:君の壊れっぷりはジョジ〇に就職した方が良さそう)(禁玉⇒金球)
禁玉⇒金球様 コメントありがとうございます! 白蓮「いやぁ………照れるなぁ!」 風「………風が、今まで築き上げた栄光を『影の薄い人』みたいに耐えろとー!」 (いた)
風ちゃん…君は弄られ名を忘れられ更には真名を間違われる苦痛を経験と共に理解する稀有な二人目の人物となったのだよ…ブチ切れる前に耐えなさいかの白蓮さんの様に!(助言:弄られる事に快楽を覚えろ!!) (禁玉⇒金球)
風「ふっ………ふっふっふっ! はぁーはっはっはっ! 風は、風はぁ!! 完全にブチ切れまし……うぐうぐぅ!!」 か、確保ぉ!! 誰か、このコメント欄より離れさせてぇ!!(いた)
naku様 コメントありがとうございます! 因みに長慶と鹿介の○の大きさは『F』だそうで。 しかも『G』に近いと。 蓮華の活躍は次回も続きます。 明日頃には見えるかも。   (いた)
mokiti1976-2010様 コメントありがとうございます! 蓮華には更に頑張ってもらうつもりです。 風は………今後のコメント次第で変化するかも?(いた)
蓮華さんの成長が見られたのは何よりです。そして、風の壊れっぷりがなかなか…このまま暴走モードか?(mokiti1976-2010)
タグ
戦極姫 真・恋姫†無双 

いたさんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。

<<戻る
携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com