【オリジナル】サプリメント【第13回フリーワンライ企画参加作品】 |
「サプリメント」
拾い上げた小さい小瓶には、黄色い怪しい錠剤が入っていた。
あなたの願望を叶えますとだけ書かれたラベルが貼られている。
「そんな都合のいい道具なんかあるか」
俺は吐き捨てるようにそう言うと、道ばたに落ちていたその小瓶を拾い上げ、ぽいっと無造作に後ろに放り投げた。
飲んだだけで痩せるとか、飲んだだけで奇麗になれるとか、そんな都合のいい道具なんてあるか。
まるでおとぎの世界じゃないか。
そんなんで奇麗になれるんだったら、この世の中、美人だらけになっちまう。
まぁ、別にそれはそれで、俺的には不都合なんか無いんだがな。
そんな下らない事を考えながら、夜のコンビニの前を通り過ぎようとした時、後方からカチャリと言う音が聞こえた。
俺が先程投げ捨てた小瓶を拾う音だ。
その音に俺は思わず振り返ると、そこには見知らぬ女がいた。
「な…!?」
俺は思わず声を上げた。
そこには、絵に描いたような絶世の美女が立っていたのだ。
俺が捨てた小瓶をカラカラと右手で振りながら、妖艶な笑みを浮かべている。
俺は思わず息を飲んだ。
真っ赤なドレスを着たその女は、本当に、今まで見た事も無いような美人だったからだ。
「本当、なんて都合のいい道具なのかしら……」
女はそう言いながら、俺と小瓶を交互に見遣る。
「じゃあ君は、この、サプリメントとやらを飲んで……?」
「そうよ、これは私の落とし物」
女は小瓶を握りしめながら、俺の目を真っ直ぐに見る。
……吸い込まれそうな艶かしい瞳だ……
「その辺にある安っぽいサプリと一緒にしないで…
これは痩せたり奇麗になったりするサプリじゃないわ…」
女はおもむろに小瓶を開け、その中にあった錠剤を一つ、俺の口の中に押し込む。
その瞳に見入られていた俺にはそれを拒絶する術を持たず、思わず押し込まれるままに錠剤を飲み込んだ。
「これは便利なサプリメント。
貴方の願望を手軽に叶えてくれるサプリメント……」
そう言う女の声が、徐々に遠ざかって行く……
ハッキリと聞こえていた声が、どんどんとぼやけ、聞こえなくなってゆく……
意識が遠のく……
願望……
俺の、願望……?
俺の、願望とは…何だ…?
何の、話だ……?
頭が働かない。
異様な眠気が俺を襲う。
そうだ……今はただ……眠りたい……
ただただ……眠りたい……
静かで温かい場所で眠りたい……
「静かで……温かい……
いいわよ……とっておきのベッドがあるの……
貴方の願望を叶えてあげる……」
★☆★
そして、その日の夜を境に男は行方不明になった。
そして、その日の夜を境に女は妊娠した。
誰とも交わる事も無く、処女のまま、彼女は妊娠したのだ。
「これは便利なサプリメント。
私の願望を手軽に叶えてくれるサプリメント……
そうよ…私は新しい家族が欲しかったの……」
身体の中から胎動が伝わる。
もがくように、暴れるように。
早くここから出せと言わんばかりに。
「あなたの出番はまだだから……
あなたが望んだ通り、今はただ眠るのよ……」
女は子守唄を歌う。静かで優しい子守唄を。
サプリメントの小瓶をカラカラと鳴らし、次の使い道を考えながら……
説明 | ||
https://twitter.com/freedom_1write/status/495192273420681216 こちらの企画に添って、1時間以内で書き上げたSSです。 強いて言えばホラーチックですが、こう言った「大人の作品」って俺的には珍しいのでレアな作品かも知れません。 |
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ショートショート SS 小説 深夜の真剣文字書き60分一本勝負 | ||
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