妖世を歩む者 〜3章〜 2話 |
3章 〜歩き出す者〜
2話「その矛先」
夜も深くなり、村の明かりもほとんど消えている。
ここはサクヤとアトリが住む家。
アトリはサクヤの隣でぐっすりと寝ている。
異世界からの客人である陽介も、与えられた部屋で寝ているだろう。
サクヤは、今日の戦いを思い出していた。
―――――
――― ガキィィィン!!
甲高く響く音。陽介が風斬を振ることで鳴った音。
しかしその相手は、サクヤの鎌ではなかった。
陽介が風斬を当てたのは、アトリの薙刀。
サクヤに薙刀を払われ、大きく振りかぶったような体勢のアトリ。
振りかぶった薙刀は風斬の攻撃を受け、来た方向へと戻り始める。
陽介が"流れ"を変えたのだ。
アトリの反応も早かった。
流れの変わった薙刀に身を任せることで体勢を戻し、自分の力を薙刀に乗せる。
「やぁーーーー!」
反応が遅れたのはサクヤだった。
思ってもいなかった方向へと振るわれた風斬、思ってもいなかった"アトリから"の攻撃。
陽介に向けて構えた"防御"の鎌から、その後の"反撃"に備えた鎌へと意識を向ける。
サクヤの判断は正しく、鎌は薙刀を捉えた。
だが、捉えただけの鎌には、陽介が流れを与え、アトリが力を加えたその薙刀を止める力がなかった。
「しまっ…!」
向かってくる陽介に対し、距離をとることもできた。
それでもサクヤは、"防御に次ぐ反撃"という手段を選んだ。
――― "勝つ"ために。
最後に手を抜くようなことをする気はなかった。
力に差があっても、数的不利が時間経過によって大きく影響する可能性はある。
体力がある陽介を先に戦闘不能とすることで、自分の勝利を確実なものとするはずだった。
しかし、それは叶わなかった。
弾かれる鎌。それでも薙刀の軌道を変えることには成功した。
それに気づいたサクヤは体勢を立て直そうとして、首元に風斬が突きつけられていることを知った。
「僕達の勝ちです、サクヤさん」
アトリの薙刀を撃ったそのままに、こちらへ向かっていたのだろう。
薙刀に気をとられていたサクヤはそれに気がつかなかった。
「そうですね。…私の負けです」
半月を経て、初めて聞くサクヤの敗北の言葉。
「やったーー!」
アトリは飛び跳ね、全身で喜びを表してる。が、
「あれ?」
ヘタリと座り込んでしまう。流石に体が疲れきっていたのだろう。
陽介も肩で息をしていた。攻防自体は少なかったが、その1つ1つに全力を注ぐ必要があったのだ。
勝ちを急がず持久戦に持ち込めば、サクヤが勝っていたかもしれない。
しかし、サクヤは攻撃を選び、陽介達はそれに勝った。
陽介とアトリが北へ向かうことが許されたのだ。
―――――
「私も、まだまだですね」
月を見ながらつぶやくサクヤの顔は、笑顔だった。
弟子達の成長を心から喜ぶ、そんな優しい笑顔だった。
――― 頑張って、2人とも。
―――――
旅へと出ることが決まったとはいえ、次の日にいきなり出発とはいかない。
「長い旅になります。しっかりと準備をしないといけませんよ」
食料はもちろん、向かう先に何があるのかという情報も必要だ。
ただでさえ異世界から来た陽介と迷子常習犯のアトリという組み合わせなのだ。
北の一番近くにある村には歩いて半日はかかるという。
多少の行き来があるようで、整備されてはいないがけもの道のようなものはあるようだ。
最初の目的地はその先にある町、((古里天町|こりてんちょう))。
その町で、北の大陸に関する新たな情報とそこまでの道のりを調べるのである。
陽介が風斬の手入れをしていると、サクヤがやってきた。
「少しお話があります」
陽介には、それが大切な話であることが分かった。
手入れを中断し、居住まいを正した陽介に、サクヤは問いかけた。
「陽介さんは、"人妖"とは何か、ご存知ですか?」
説明 | ||
これは、妖怪と人間、そして"人妖"の住む世界のお話です。 "人妖"の女の子の容姿等は、GREEのアプリ『秘録 妖怪大戦争』を参考にしています。 ※既にこのアプリは閉鎖となっています。 拙い文章ではありますが、楽しんでいただければ幸いです。 構成) ・1章毎の話数は不定 ・各章の最後にあとがきっぽいものを入れます |
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