義輝記 星霜の章 その五 |
【 洛陽七不思議 の件 】
? 洛陽 宮殿内 通路 にて ?
蒲公英より…………不思議な話を聞いた。
つい最近になり、洛陽に伝わる七不思議。
『年を取らぬ童』
『月様の裏の性格』
『洛陽の《お猫様屋敷》』
『華雄の真名が無い』
『《とある人物》の年齢を語ると、どこからか射られる矢』
『風様が偶に見に行く《こめんと欄》』
『………………………?』
ーーーーー
始めは、新人である私への洗礼かと思っていた…………。
とある日、仕事の休憩中に、馬岱……蒲公英が教えてくれた内容も、この話題。 都では、この話題で持ちきりなんだという。
蒲公英「あぁ〜! 蒲公英の言うこと信じてな〜い! 顔で分かるんだよ? 顔でぇ〜!!」
西涼の錦馬超の従姉妹にあたると聞いていたが………よく喋る女の子だ。
私は、顔を触りながら、可笑しなところが無い事を確認して反論する。
愛紗「しかしだなぁ………このような話は、何かしら訳というか理由が付き物であってだな。 現実に起きている事は少ない………」
蒲公英「へぇ〜? 愛紗〜怖いんだぁ〜? 蒲公英達が怖い話してると、何時もは『怖い物なんかありません〜!』なんてぇ〜顔して、早足で去っていたけど………やっぱり怖いんだぁ!!」
愛紗「そ、そそ、そんな事は無い!! ただ、青龍偃月刀で処理出来ないから苦手なだけだ!! お、お化けには、足も実体も無いという話だぞぉ!?」
実体があれば、叩き斬るとか縄で捕縛するとか、抵抗出来るのだが………。
★・・・・・・☆・・・・・・★
お化け『………実体が無いから反撃無効。 でも、俺からは好き放題させて貰う! 勿論、お前に拒否権など無〜い!!』イヒヒヒヒッ!
愛紗『く、来るな、来るなあぁ〜!!』
★・・・・・・☆・・・・・・★
ブルブル! そんな不公平な輩など正直……相手に……したくない!!
蒲公英「………愛紗も『脳筋』って事だったの? ヤダよ、これ以上脳筋増えたら、蒲公英の担当事務処理が増えちゃうよぉ!!」
だ、誰が脳筋だぁ!! 春蘭よりは遥かに……っても、分からないかぁ……。
ーーーーーー
次の日、蒲公英から竹簡が手渡され、七不思議の確認をするように頼まれた。
『公務があるから駄目だ!』と断ったのだが、私の本日の仕事がコレだと申し渡されたそうだ!!
……………『晋』との戦が始まっているのに、私の仕事は……噂の解明か?
しかも、正式な命令書を蒲公英に預けてくるとは…………。
『 洛陽の住民からの、七不思議の解明要望が高まりつつある。 住民慰撫の大事な仕事、董卓軍で真偽を確認をし、速やかに公表しするように。
追記 天城颯馬からの要望により、関雲長が最も適しているとの奏上を受け、関雲長に調査を命ずるもの也 』
私が適任と奏上したのは…………『天城颯馬』様?
な、何故! 天城様が蒲公英の悪巧みに一枚噛んでいるのだ!?
思い当たる事を考えていたら………ありすぎた………。
や、やはり、私の事を憎んでおいでなのだ………ガクッ!
確か、朱里の机に置いてあった『指南書』に『………初めは生娘の如く接し、後は飢える獣のように!』と書いてあった!
うむぅ………きっと、この事を指すに違いない!! 流石……朱里が読むだけの物だ。 私でも分かるように図解入りで示してくれてあった………。
確か、男同士……半裸で格闘をしている絵だったな。 多分、相手を油断させ、隙をみて全力で襲い掛かれというのだろうな。
私は天城様を信用していた分、落ち込みつつ調査に向かった。
◇◆◇
【 真相は……… の件 】
こうして、洛陽七不思議の調査が始まった。
何故、調査する者は、私だけなんだぁ!?
せめて、書記とか連絡する為の要員ぐらい、必要なのでは!?
天城様にお願いしたら……『皆、決戦準備で忙しい!』と断られた。
この調査は、苦渋と困難を極めるな。 ……纏める事が出来たら、自分を自画自賛したい。 褒めてくれる者も居ないだろうしな………。
ーーー
★『年を取らぬ童』☆
他の者に聞いて直ぐに判明。
天の御遣いの一人『山縣昌景』殿だった。
昌景「儂の齢かぁ? ふ〜む、六十越えてるのは覚えておるが……はっきりした齢となるとのぉ〜?」
信玄「えぇ、変わりませんよ? 私が物心付いた時から変わりません!」
信廉「皺も白髪も無いですからねー? 人魚の肉を食べたやら、不老不死の妙薬を飲んだとも言われてましたが……本人は、何もしてないと………」
あの容姿で六十を越えているだとぉ!?
私は、この事実に唖然とするしか…………なかった。
ーーー
★『月様の裏の性格』☆
あの、お優しい月様が………?
御本人には聞けず、周辺の聞き取りから始めたら……少し分かった。
禁裏兵「次の弾を請求されとき、いつもの董卓様とは違う……禍々しい存在が辺りを覆っていたんです!」
護衛兵「天城様の生死を賭の対象にした、トンデモナイ奴らが居ましたので、董卓様と風魔様が懲らしめる相談をされていました。 お二人共、剣呑な気配を示されましたが、俺も同じ思いだったので、咎める気はありません!!」
そんな時、西涼に居た詠殿が短時間だが………戻られた。
天城様に、策の指示を仰ぎたくて、急遽寄ったという。
詠「あの子は………何か限界を超えると、性格が反対になるというか嗜虐嗜好を好むというか………つまりね、『魔王』になるのよ!」
『魔王』になる?
信長様に関係があるか不明だ。
詠「いいっ!? ぜっっったいに!! 月の事や私が喋ったなんて漏らすんじゃないわよ!? あの子、颯馬にその性癖バレるのが……とても怖がってるから………。 だから、その内容も公開禁止!!」
………仕方ない。 今、仕える主の忠義に報いなければな。
私は、書き留めた竹簡を……人目に付かないよう、庭で焼いて処分した。
月様の部分だけ………適度に誤魔化すか。
ーーー
★『華雄の真名が無い』☆
詳しくは知らないが、華雄殿に真名が無い。
その件で聞こうと部屋を訪ねると………留守だった。
愛紗「また、鍛錬に出掛けたのか? ………あれっ?」
何時も自分の幸せより、主の守護を優先する華雄殿。 密かに尊敬の念を持っているのだが、何時も持って行く金剛爆斧が置いてある。
宮廷内の者に聞くと、川へ向かったと聞く。
胸騒ぎがしたので…………後を追いかけた。
ーーーーーーー
ーーーーー
? 洛陽 郊外 河川敷 にて ?
華雄「…………………」ポイッ ────ポチャン!
ハァ、ハァ、ハァー!
どうやら………華雄殿は無事だったようだ!
川岸に腰を下ろし、顔を川に向け……小石を投げている。
でも、様子が変だ……?
『声を掛けてみようか?』……と思い、足を踏み出そうとすると……
華雄「…………愛紗……か?」
顔を此方に向けず、声を掛けてきた!?
愛紗「………何故、分かったのです! 気配が漏れていました?」
華雄「後ろからの足音、呼吸を整えた時の声、それと……これだよ」
華雄殿の指した場所は、自身の左側。 そこに磨かれた銅鏡が置いてあった。
華雄「武人に取って左側は死角だから。 直ぐに誰が来たか分かるように準備してあるんだよ。 このような隙だらけの時でもな………」
私は益々感服して、傍に近付こうとした! この孤高の武人と言葉を交えてみたかったのだが………。
華雄「………すまん、愛紗。 今日は……誰とも会いたくない。 仕事なら別だが……。 とある事情があり、休みにして貰った!」
愛紗「どうしたのです? 貴女程の武人が……泣いている!?」
華雄「──────!」ガバッ!
少し近付いた時に、銅鏡に写し出された物。
…………目を赤くして、落涙数行が克明に分かる、華雄殿の泣き顔だった。
慌てて銅鏡を取るが、既に私に見られている。
顔を見せたくない華雄殿は、こちらを向かずだが、訳を話してくれた。
詳しくは言えないが………と前置きをして。
華雄「私が真名で呼ばれていた記録があったそうだ………」
ポィ───────ッ! ポチャン!
愛紗「───────!」
……『華雄殿の真名があった』と言う報告。
この大陸で真名が無い者など少数。
親より授けられる……自分の根幹になる名前。
それなのに、真名を受けた記憶が無いため名乗れず、署名な将なのに関わらず、『真名が不明の半端者』扱いされ続けたと言う………華雄殿!
どんなに喜んだ事か……多分、私の思っていた以上の喜びようだったのだろう! 真名を最初から知っている私には、とても考えれない気持ちだろうと察しられた。
でも、どうして……落ち込み………泣いて………………?
華雄「その後……詳しく……調査して貰ったら……………」グッ!
……その喜びも束の間。 結局は『誤報』だったそうだ…………。
ポイッ、ポイッ……シュシュシュシュッ!!
ポチャッ! ポチャッ! ポチャッ! ボチャボチャボチャ!
華雄殿は、一掴みして小石を拾い上げて、川面に向かい……滅茶苦茶に石を投げつけた……………。
華雄「………なぜなんだ! どうしてなんだよ! 今頃になって……私に希望を与え……また奈落の底に叩き落とすんだ!? 馬鹿野郎ぅぅぅ───!!」
華雄殿は、座ったまま………大声で叫んだ後、嗚咽を漏らす。
華雄「ううぅぅぅ─────────!!」
正直───声の掛けようがなかった。
『 真名が無い者の気持ちは、真名が無い者しか分からない! 』
私が何か言っても、慰めにもならない。
私は、短くも……ゆっくり想いが届くように……語る。
愛紗「…………それでも、『皆さん』待っています。 貴女の元気な姿を見たい為に。 私も…………待っていますので…………!」
私は、華雄殿に声を掛けた後、宮廷内に戻った。
いつか、時が解決してくれれば………そう想わずには、いられなかった。
ーーー
★『《とある人物》の年齢を語ると、どこからか射られる矢』☆
? 洛陽 宮廷内 愛紗部屋 にて ?
蒲公英より貰った竹簡を読み、中身を確認していた。
愛紗「その人物の名は…………こ『シュッーン! ガッ!』………」
一本の矢が、私の顔近くを通り過ぎて………壁に刺さる。
窓を開けて屋根を見た。 庭を見た。 天井も見た。
入り口も見た。 部屋全体を見た。
………………異常は無い。
・・・・・・☆
────よしっ! 調査終了!
ーーー
★『風様が偶に見に行く《こめんと欄》』☆
? 洛陽 宮廷内 風の部屋 にて ?
洛陽の三軍師と恐れられた風様が……すっかり怠惰な生活に陥ってしまっている。 原因は、敵の計略が……周到に動いてている為だ。
風様の真名を……松永が謀略を用いて汚したのが原因……だと。
☆★☆ ☆★☆ ☆★☆ ☆★☆
『真名』とは神聖にして─────その人物の魂を示す大事な物。
この世界は……自分達の魂を、他人にも伝わる手段として『文字』を利用した。 五感で伝える事が出来る、簡単で有効な方法。
『目』で見て、『口』で発音し、『耳』で聞く。
『鼻』と『手』は直接の接触は出来ないが、その魂の器である『本人』を知る事の手段になるため、副次な意味合いで利用できた。
☆★☆ ☆★☆ ☆★☆ ☆★☆
ーーー
風「お酒は……二日酔いが酷いから、もう呑まないんですー! 変わりに健康にいい牛乳にしたんですよ!!」
確認と様子を伺いに風様を尋ねると、机の上に………ヤケ酒……では無く、ヤケ牛乳を朝から飲んでいらっしゃる。 近頃は、牛よりも山羊の方が飲みやすいと、にこやかに語ってくれるが、仕事はどうしたんです、仕事は?
バアァ──────ン!
詠「アンタねぇ───!! いい加減に仕事しないよ!!」
風「ぐぅー」コクコク ゴクン!
稟、詠「「寝るなぁ────!」」
三軍師の二人が部屋に突然入り込み、風様に怒鳴りこむ!
しかし、どこ吹く風か………器用に寝ながら牛乳を飲んでいる。
稟「風ぅ! 何時までも策として、仕事をしないんですか!? 松永の策が上手くいっているように見せかける為、風が部屋に閉じこもっていましたが、此方が限界です!! 早く仕事を始めなさい!!」
稟様の言葉を受けて、目を覚ました風様。
風「まぁまぁ……イライラは鼻血の元。 南蛮より手に入れた『混ぜると色が変わるお菓子』を食べれば……怒りも収まりますよ?」
風様は、机の上に乗っていた二つの菓子を混ぜて、捏ねだした。
詠「何やってんのぉよ!! 『練るな!』」
風「起きてますよぉ〜?」
ニヤリと笑いつつ、そのまま菓子をこね回していた。
★☆☆
愛紗「良かった! 松永達を嵌める為、演技をしていたのですね!?」
詠様達が怒りながら帰られた後、私が安心すると……風様は力無く笑った。
風「………演技はさっきの態度ですよー。 本当は……精神的にヘトヘトなんです……」グラッ!
愛紗「あっ!!」
倒れそうになる身体を……急いで支える! 思ったより軽い身体だった。
慌てて寝台に寝かすと………息が荒くなり、此方を潤んだ目で見る。
風「ハァハァ………風だって、この世界の人間なんですー。 真名を弄られるのは、極度の精神的負担になるんですよ〜。 ……ですが、真の軍師は、逆行をも我が力に変えちゃうんです! 颯馬お兄さんのようにー!!」
愛紗「そ、そんな! 貴女程の軍師が……それ程までの負担を負っていたなんて……!! 申し訳ありません!! 全然気付きませんでした!!」
私は、急いで謝罪して……風様の手を握る!
くっ! こんな細い手で、あんな重圧に耐えさせるとは………!
『松永久秀』なる謀略家の手腕は、風様より上手だと認めざるえない!
しかし、この世界の真名の意味を知りながら……その弱味を突くとは!!
おのれぇ〜〜!! 松永あぁぁ!! ただではすまさん!!!
風「あ、愛紗さん……。 風は、どうなってもいいんですー! ただ……他の皆さんには、風のような思いをさせたくない……。 だから………力を貸して下さい……。 お願いします…………!」
愛紗「もう、何も言わないで下さい! 必ずや、この関雲長! 松永等を討ち取り───皆を守り抜いて、ご覧にいれます!!」
風「……あ、ありがとうです………ぅ」ポテッ
眠られたか………。
私は、風様の手を優しく布団の中に入れる。
そして、涙が零れ落ちる寝顔に、改めて誓った!
愛紗「風様! ご安心されよ!! この関雲長が、逆賊『晋』を倒し、再び風様の名誉を回復させてみせる!!!」
そう、小さい声で宣言し…………私は、静かに部屋を退出した。
ムッ? 私の役目を忘れてないかって!?
その前に───風様の無念を晴らすのが先決! 無念を晴らせば、その悪意ある掲示も自然に消えるだろう!!
天城様も、話せば分かってくれるさ!!
ーーーーーー
シ────ン
風「……………行っちゃいましたか?」
寝ていた風が、辺りに人が居ないか確認して、寝台から起き出す。
ゴソゴソ ポン!
風「…………えーと、これで十一人目……っと!」
寝台の下から取り出した竹簡に、『風に協力してくれる人』の名前が書き加えられた。 兵士から官僚と色々、この応対で風に同情したり、久秀に対して怒りを覚える者で協力を申し出た者達である。
勿論……風は健康体。 多少?は悩み苦しみもした。 酒を飲んで二日酔いになったのも間違いない。
だが───何時までも弄られたままで、終わる風では無い!!
…………………伊達に面の皮は厚くないのである。
風「ふふっ! 久秀さんに目にモノを見せてあげるですよー!!」
人の義理人情を逆手に取って、駒と扱う……風の人心操作術。
風「おぉー! 今回は関雲長将軍ですねぇ! 頼りにさせて貰いますよ!!」
風が何を考えているのか………知る者は居ない。
◆◇◆
【 猫屋敷の怪 の件 】
? 洛陽 宮廷内 謁見の間 にて ?
『洛陽の《お猫様屋敷》』
元宦官十常侍『張譲』の屋敷だった。
もはや、誰も住んで居なかったのに…………いつの間にか、多数の猫達と管理人が住み着くようになった。
ところが、つい最近………夜中まで明かりが灯り、人の話声が聞こえる……と噂が立っていた。 その調査のため、私が向かう事になっている。
ーーー
愛紗「………う、うら若き乙女を……しかも、夜に……一人だけで猫屋敷に向かわせるなんて……な、何を考えているんだぁ!!」
猫屋敷に向かっているが……刻は既に夜遅く (午後10時頃) の時間帯。
★☆★ ★☆★ ★☆★ ★☆★
私は、天城様へ報告と同時に、今から猫屋敷を探索する事を伝えた。
颯馬「……それなら、正体を確かめる為、夜に行かないと駄目だよ?」ニヤニヤ
な、何ですとおぉぉ───!!
わ、私に…………『化け猫の餌食になれ!』っと言われるのかぁ!!
流石の私も天城様の笑顔に腹立ち、反論しようとしたが…………
義弘「アンタねぇ! 戦場で何十何百何千の敵兵を斬ってきたのでしょう? それなのに……なんで、お化け如きに怖がる訳ぇ?」
ご主人様の本家と言う『鬼島津義弘』殿が私に向かい、罵声を放つ!
義弘「ちょっと! なんで『鬼島津義弘』なんて、私限定にするのよ!?」
愛紗「北郷一刀様が申したのだが!?」
義弘「………この世界、ア、アイツの所為(せい)で『鬼』の名が広がたんだよ………うぅぅぅ!!」
歳久「ひろねぇ……異名を伏せる事など無理ですよ? 遅かれ早かれ『鬼』の名は広まるのですから。 『大人しい楚々としたひろねぇ』など……とても思い浮かびません!」
義弘「としちゃんっ!! ひどっ!!?」
鬼島津……いや、義弘様の隣に居た人物が、義弘殿を制し名乗り出る。
歳久「孫呉で紹介されましたが、念の為、再度名乗らせて頂きます。 島津四姉妹の一人、島津歳久。 『天の御遣い』なる大袈裟な異名が噂されていますが……気にされないように願います」
愛紗「はっ、はいっ! ………こちらこそ、宜しくお願いします!」
うぅっ……嫌みを言われてしまった。 気落ちしてしまう………。
いやいや、こんな事では駄目だ。 誠心誠意、お仕えしなければ!!
歳久「天城颯馬より、申し渡されました件ですが……」
★☆★ ★☆★ ★☆★ ★☆★
その後、結局……言い包めら(いいくるめら)れて、向かう事になった。
ーーーーー
トボトボと……夜道を歩いた。
この道が……今後の自分自身の末路に重なって見える。
そのため、夜空の月を見ながら……最後の別れの言葉が紡ぎ出された。
愛紗「 姉上、鈴々、元気で……。 朱里、雛里………皆を頼む。
星……お前の忠告、もっと早く耳を傾けていたらなぁ………。
…………ご主人様、もう一度……お会いしたかった…………」
教えてもらった暗い通路を……月明かりを頼りに進む。
松明を持てば明るいが、猫屋敷の『何か』に気付かれると不味い。
震える足を、無理やり進めさせ………門まで到着する事ができた。
★☆☆
愛紗「此処がそうか………」
大きな門から見上げると……三階建ての大きな屋敷。
かの……十常侍筆頭の張譲が住んでいた屋敷だけある。
庭は、手入れが行き届けられていて、綺麗に掃除がしてあり、窓も壁も廃屋とは思えないほど新しい。 管理を任されている人物は、余程しっかりした人物なんだろう。
しかし、大きいだけに辺りが暗く、光が殆ど分からない状態。
愛紗「こ、この中を……入って、か、か、か、確認しろ………か」
私の頭の中では、『無理! 無理! 無理!』と単語が飛び交い、足は竦んで動けない。 で、でも、任務だ! 入らなければ───!!
──────スッ!
??『まどろっこしい方ですねぇ! サッサと入って下さい!!!』
う、後ろで……声が!?
??『───問答無用! お猫さま方が待ってます!!』
どんっ!!
愛紗「な、何ぃ───っ!?」
後ろを押された私は、暗闇の道をヨタヨタと歩き、扉に張り付く。
ギイィィイイィィイ!! バッ!!!
愛紗「うわあぁぁぁ!!」
扉が急に開いて、前にのめり込み……四つん這いでの状態で倒れた!
何がなんだか分からないが、これで、私の最後だぁ─────!
★★☆
??「………目、開かない?」
??「少し……怖がらせたか?」
??「美以に任せるのにゃ!」
プニプニ! プニプニ!
か、顔に柔らかい者が当たる? な、何んだ!? この気持ちいいのは……。
美以「これでもダメにゃのかぁ! 美以の『肉球』に反応しにゃいなんてぇ───!?」
あぁぁ…………柔らかい物が………遠退いていく………
美以「フゥ───! カプッ!!」
いっ? いっったあぁっっい──────!!
急に青天の霹靂如し展開に、私は付いていけず……転げ回る!
ドタンバタン! ドタッバタッドタッバタッ!
??「止めなさい! 暴れると猫ちゃん達が怖がるでしょう!」
慌てて起き上がり、噛まれたお尻をさすりながら、目を開く……。
もっと客間だったのだろうか? 人が二十人ぐらい寝る事が出来る広間に、猫が二十も三十………沢山いる!!
色々も白、黒、斑目、焦げ茶。 大きさも様々な猫が……寛いでいた。
??「やっぱり遅くなったようねぇ……怖がり屋さん」
??「余りにも遅いので、門まで迎えに出れば………震えながら立ち止まっていました!!」
??「猫……怖い? 可愛いのに…………」
美以「全く失礼にゃ!! 美以は美以なのにゃ!!」
??「……人間、誰でも弱みは有るものさ!」
??「それを克服できるのも……また人間ですからね」
あ、あれ? 聞いた事のある声が…………!!
颯馬「ようこそ……猫屋敷へ!! 歓迎するよ、愛紗!!」
愛紗「………へっ?」
私は事態が掴めず、間抜けな返事で応じる。
そこには、天城様や島津の二姉妹、恋、明命、美以や配下の将が立っていた。
歳久「どうでしたか? 洛陽勢の将達とは……接する事が出来ました?」
歳久様が……私に近付いて……今回の件を説明する。
歳久「今回のコレは、名目は『調査』になっていますが、実質上は『貴女に洛陽や将に馴染んで欲しくて、颯馬が提案した事なんです!」
愛紗「………………………はっ?」
颯馬「君は……責任感が強くて我慢強い。 それは素晴らしい事だけど、何か息抜きはしているのかい? ここには、君の知り合いは殆どいないんだ。 そのまま、緊張ばかりしていると……何時かは倒れてしまうぞ?」
愛紗「そ、そんな事は────!」
明命「私が見ていた限り、会った方にはガチガチでしたね。 もぅー、見ているのが気の毒な程………」
トラ「トラも思う!!」
シャム「シャムも!!」
ミケ「……………zzz」
愛紗「───────!」
恋「警戒心強いのは………自分に自信が無いから。 普段と変わらずボォーとする………皆、集まってくれる……」
義弘「そ、そうよ! さっきは、あんな事言ったけど………お化けを怖がるのは……謝罪の意識が強いからって、聞いた事あるしぃ!
…………颯馬に対して、散々嫌な思いさせたアンタだけど……当の颯馬が許しているのに、外野の私達が恨むのも変だしねぇ。 だから、許してあげる!」
歳久「…………今の敵は『晋』なのに、内部抗争していては、勝てる戦も負け戦になってしまいますから! だから、一時休戦にしてあげます!
ですが……私は……貴女を許してなんかいませんから。 颯馬の受けた苦しみは、まだまだ、こんなモノではないはずですよ?」
颯馬「ま、まぁ……なるべく穏便に………」
愛紗「で、では! 最後のここは!?」
明命「星さんからお聞きしました! 可愛い物が大好きだと!」
★★★ ★★★ ★★★ ★★★
『愛紗の好きなモノ……それは当然、一刀殿だ! クククッ! いやいや真面目に答えるとしよう。 小さい動物なども…よく見ていたな。 猫や犬、小さい子供……やはり、日頃から弄られるから、癒やしが欲しいのだろうよ!
んっ? 私が原因じゃないかって? それは違う! 私は愛紗が心配でな? 誰か達に弄られて、心が弱くならないように、鍛えてあげているのだ! 礼にメンマを私へ贈ってくれても、罰は当たらないぞ!?』
★★★ ★★★ ★★★ ★★★
愛紗「あぁぁのぉ! メンマの遣いは!!!」
明命「……ですから、お猫さま達で、疲れた身体を癒やしては、如何かと!」
愛紗「………………………」
★★★
猫「ミュウ! ミュウ〜!」 猫「にゃ〜にゃ〜!」
ゴロゴロゴロ ゴロゴロゴロ
明命「あぁ〜天の国に勝るとも劣らない幸せ王国ですー!!」
義弘「天の国にも、こんなとこ……無いわよ。 それに、お父さんも居ないし! はぁ〜極楽、極楽っと!!」
愛紗「………………………」
美以「ん〜? 何を固まっているのにゃ?」 ポンポン!
愛紗「………そうか。 私は確かに固かったようだ……。 ご主人様や皆に迷惑を掛けないように、体面を気にして自分を抑えていた。 そうだな、此処なら、羽目を外しても苦情は無いだろう! ならば…………!!」
美以「こ、こらぁ!! 離せ、離せなのにゃ!!」
愛紗「あぁ〜猫、猫、猫ぉ! う〜ん! 和む、和むぅぅ!!」
美以「シャム、トラ、ミケ!! 美以を助けるのだぁ!!」
ーーー
ミケ「みぃー様………ミケも……」
明命「お猫さま! やはり、お猫さまは、この大きさが最高ですぅ!!」
ミケ「ウニャ───ン! そこ駄目にゃ〜!!」
ーーー
トラ「だいおー、トラも………捕まった………」
義弘「あぁ〜可愛い可愛い可愛い〜〜〜えへへへ!!」
トラ「ふにゃ〜!! ふにゃ〜ん!!!」
ーーー
シャム「みぃしゃま…………zzz」
歳久「寝姿を観察するのが………最高ですね!」
ーーーーー
颯馬「楽しんで貰えて良かった。 さて………俺も宮廷に戻り………」
グイッー! ドサッ!
颯馬「お、おいっ!!」
恋「恋も眠い………颯馬も寝る……」
颯馬「恋! 俺は仕事があるから!!」
恋「颯馬も……お疲れ。 だから……早く休む。 皆……心配するから……」
颯馬「いや、まだ仕事が残ってるから………」
恋「駄目!!」
颯馬「…………しょうがないな。 それじゃ、横にさせて貰うよ」
他の将達が騒ぎ立てる中、恋と颯馬は仲良く寝た。
ーーーーーーーーー
ーーーーー
ーーー
洛陽七不思議の一つ 『猫屋敷』
多数の猫達だけが住む屋敷であるが………夜になると……若い女性達が狂喜乱舞する声が響き渡る……得体の知れない場所として、恐れられている。
ーーーーーーーー
ーーーーーーー
あとがき
最期まで読んでいただき、ありがとうございます。
オマケが長くなったので、別にして出そうと軽く考えたのが運の尽き。
文字数が二千文字しかない、短い物でした。
これでは、話としてつまらないって事で、足しに足しまくり、一万文字数を超えました! 一昨日か昨日に投稿するとほざいてしまい、申し訳ない!
作品中の華雄の話は、なかつきほづみ様の情報を目にしまして、小説で華雄の無念さを表せないかなと思っての事。
作者様に御許可を得るべきか悩んだのですが……情報の元が閲覧可能な場所なので、いらないのではないかと、示唆する者がいましたので……御許可無しでおこないました。 もし、御不快でしたら、削除するつもりです。
こんな話ですが、また、よろしければ読んで下さい。
説明 | ||
義輝記の続編です。よろしければ読んで下さい。 | ||
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↓↓naku様 すみません。 書いた部分が消えたようで。 詠「三度も弄られるボクって……」 月「へぅ〜///」 風「風の胸は……成長しないのですかー?」 稟「言っている意味が……よく分かりません………」(いた) 風「ふむふむ………ぐぅー」 詠「寝るなぁ!」 稟「私達がですか……。 確かに望めば手に入るかもしれませんが……」 月「私は……天下より愛しい方と静かに暮らしたい。 その方が私が一番私で居られますから………」(いた) 貂蝉「唐代の李白は現世にその身を置きながら、酒仙と化して幽玄で遊んだそうよぉん!」 卑弥呼「儂等……漢女と一緒じゃな!」 詠「月を一緒にするなぁ! でも、一考の余地はありそうね?」(いた) ↓正悪正邪倫理道徳に囚われない可能性を提供しているだけです、自由な魔王月と壊れた風の紡ぐ物語とそれを好きに支える詠と稟…素晴らしいじゃないですか望むまま自由に生きるなんて、不要な思想が無ければ我欲は願望に変換出来るのです。私は君達4人の敵ではなく導き手です…枠を取り払い型に嵌るな(禁玉⇒金球) 禁玉⇒金球様 コメントありがとうございます! 詠「ちょっっと待ちなさい! アンタがそう煽って、月と風が素をさらけ出したらどうするのよ!? 混乱と後始末でボクと稟はボロボロになるわよおぉぉ!!」 風「………『風に対抗する人』……もう一人追加……」 (いた) 愛紗の初めてのお使い成功もっと頑張れ甘えんなよ。月と風の共通点=裏というか本性に黒い部分多いしかし隠さずに表に出そう、助言=風が吹き風が心に囁く風に乗ってありのままの姿見せるのよと、何も怖くないさ。風弄りの最初のコメって自分だったんですね…後悔してますもう止めます、謝る気はない。(禁玉⇒金球) naku様 ありがとうございます。 風「え〜と、……………『風に対抗する人』………追加っと!」(いた) Jack TIam 様 お疲れ様です。 風は表裏定まらず、ときたま本音を見せる、そんな子と……作者は勝手に想像しています。(いた) う〜ん、三極姫では殴られる人は数人いましたが、殴った人は一人だけの気が………。(いた) 天龍焔様 コメントありがとうございます! 猫の王様「ふふっ、姿を見せぬだけで……どこかに潜んで居るかもしれんぞぉ?」」(いた) 風「風の心は、『風』の向くまま気の向くままー、どうなるかなど分からないのですー!」(いた) naku様 コメントありがとうございます! お待たせしました。 これが例のオマケが五倍以上膨れた物です。 風篇では、愛紗が立ち去って終わりだったのですが、風らしくないので付け足しました。(いた) ↓↓↓↓ちょっと待て私は別に風ェ(かぜェ)とは言ってない。でも別に、風はこういう扱いでもいいんじゃないかと思う。そもそもつかみどころのない風みたいなキャラクターだからそういう固有名をスタッフから貰ったんでしょ?真名に反することばっかりやる人とかいますけど……存在感なんて、気にしたら負けなんですよ!(Jack Tlam) Jack TIam様 コメントありがとうございます! 誤字報告感謝致します! 風も別の話を考えていたのですが、こんな風に。 ここの愛紗は、反省はするんですが…………。 (いた) 重箱の隅をつつく様で申し訳ないんですが、いつも眠そうなのはシャムでは?風ェ……はまだいいとして、愛紗ェ……後悔先に立たず、っていう言葉を知らないのかい?君には落ち込む資格すらないんですよ?(Jack Tlam) |
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戦極姫 真・恋姫†無双 | ||
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