真・恋姫無双 〜新外史伝第129話〜
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一刀が雪風(馬良)らを義勇軍として出兵させたことは、呉並びに魏に滞在中の星を通じてそれぞれ連絡が

 

届いていた。そして雪風たちは晋の監視の目を避けるため、荊州南部から呉に入国する形を取り、居城であ

 

る武陵を既に出発していた。

 

そんなある日、蜀滞在中の雪蓮が不機嫌そうな顔で昼から酒を飲んでいた。

 

最初は意気揚々と蜀に乗り込んだのは良かった。冥琳や蓮華という監視の目や仕事から解放されのんびりと

 

していたが、しかし目的である一刀の子種を貰うということが全くできていなかった。

 

何度か一刀に粉を掛けたが、一刀は冗談だと思い相手にせず、そしてそれを聞いた璃々や翠、蒲公英らが雪

 

蓮を近付かせない様に夜は一刀の相手をしていたのであった。

 

自分の思う通りにならない事に雪蓮は苛立ちを隠せず、こうして昼から自棄酒を飲んでいた。

 

そこに一仕事を終えた一刀、紫苑と璃々が偶然やって来た。それを見た雪蓮は一刀を見ると

 

「ねぇ〜一刀。こっちで一緒にお酒飲もうよ〜」

 

「おいおい雪蓮。まだこっちは仕事中だぞ」

 

一刀からそう言われると雪蓮は怪訝そうな表情をしながら

 

「ふ〜ん、私の酒が飲めないというの」

 

「別に雪蓮と飲まないと言っている訳じゃないよ。ただ今は仕事中だから断っているだけだよ」

 

「面白くないわね〜。それに何時になったら私を抱く決心が付くのよ」

 

「どう思うかは雪蓮の勝手だが、男女の付き合いと言うのは簡単な物じゃないだろう?俺はまだ君の事をよ

 

く知らない。君の事を知ってからじゃ駄目か」

 

「ふ〜ん。それじゃ、これから私の事を色々話すけど、それを聞いて私の事を知ったら抱く勇気あるの?」

 

雪蓮は値踏みする様な目で一刀を見るが、傍に居た紫苑が

 

「それでは雪蓮さん逆に聞かせて貰いますが、私たちの秘密を聞いて、それでもご主人様に抱かれる覚悟は

 

ありますか?」

 

「秘密?どんな秘密なの」

 

「そうだね…話をしても良いけど、覚悟を持って聞いて欲しい話になるけど」

 

「少なくとも酒を飲んでいる今の雪蓮様ではお話はできませんわ。重大なお話になりますから…」

 

一刀と紫苑からそう言われると

 

「そう…」

 

雪蓮は手にしていた杯を一気に飲み干し、そして器に残っていた酒を地面に注いだ。そして

 

「少し酔いを醒ませてくるわ。その話、夜にでも話をしましょう」

 

そう言いながら、雪蓮は席を立った。それを見ていた璃々が少し不安そうな顔しながら一刀と紫苑に聞く。

 

「ご主人様、お母さん、雪蓮さんに話をしても大丈夫なの?」

 

「いつまでもこうする訳にはいかないから、丁度いい機会だ」

 

「そうですね。呉でもある程度の情報が入っているでしょうから、もし雪蓮様がこの事を聞いてもあちらこ

 

ちらに口外する様な軽薄な人物ではないから大丈夫だと思うわ」

 

「そうだな。この話を聞いて同盟を蹴って、晋と手を結ぶ様な事もしないだろうけど、ただ最悪の場合、俺

 

の節操無しの話が呉に広まりそうな気がするが…」

 

「あ〜それは今更だと思うよ、ご主人様。これだけ多くの人を娶れば、一人や二人増えても町の人の話題の

 

ネタにしかならないと思うよ」

 

璃々の最後の突っ込みには、流石の一刀は頭を項垂れしかなかった。

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そして夜になると雪蓮は一刀の元に訪れた。部屋に入ると現在魏派遣中の星と国境警戒中の黄忠(この世界

 

の紫苑)以外の一刀と結ばれた女性が集まっていた。

 

これを見て雪蓮も一言

 

「こう改めてみると貴方も節操が無いわね…」

 

「そう言われると思っていたよ。それで話だけど…今から言うことは嘘でも何でもないから。それと誓って

 

言うけど、別に気が触れた訳じゃないからね。後、この話は蓮華にも話はしていないので、他言無用にして

 

欲しい」

 

「分かったわよ。私も孫呉の女として、この約束を違わないわ」

 

「それじゃ…」

 

一刀は今までの事を雪蓮に話を始めた。それはまだ完全に一刀の事を知らなかった妻たちも驚きを内容で

 

あったが、紫苑や璃々は勿論、勢力を築き上げる切欠を作った翠や蒲公英は表情を変えずに聞いていたので

 

あった。

 

「……と言う事だけど、何か聞く事がある?」

 

「ちょっと待って、流石に想像も出来ない事を聞いて少々頭が痛いわ…」

 

全てを聞き終えて、流石の雪蓮も気持ちを整理するのに少し時間が掛かった。そして喉を潤すのにお茶を飲

 

んで漸く一息入れて漸く気持ちが落ち着いた。

 

「貴方たちが別の世界から来たやら。紫苑や璃々が実は親子だとか、死んだと思っていた劉備が生きてい

 

る、それに敵である夏侯淵を助けたり、貴方ら一体何を考えているのよ!?」

 

雪蓮は呆れながら言うと、一刀は

 

「俺が動いたら、何故か結果的にこうなってしまったとしか言い様が無いけど…」

 

「まあ普通じゃ考えられないけど、貴方だったら納得してしまうわ」

 

「それにこんな秘密を私に話したの…誰かに口外する事を考えなかったの?」

 

「もし、雪蓮が他人に言いふらすのならば、それは俺の眼鏡違いだったということだけど…」

 

「雪蓮と俺が本当に一つになる気で身を捧げてくれるのなら、俺はその誠意に応えたまでの事、もし雪蓮が

 

俺たちの事を異常と思い、身を捧げるのが嫌だとしてもこの事を決して口外しないと思っただけさ」

 

「……」

 

雪蓮は一刀からそう言われると悪い気がせず女冥利に尽きるという物だが、まだ何か引っ掛かるのか返事が

 

できずにいた。

 

そんな中、雪蓮はある人物に質問をした。

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「ねぇ、翠に桃香。貴女たちそれぞれ当主や王の座を失った時って、その時ってどうだったの?」

 

二人は雪蓮から質問されるとは思わなかったが、反論することなく素直に答える。

 

「確かにご主人様と勝負して負けた時は悔しいというのはあったけどさ。ただ、私が勝負に勝って当主に

 

なっていたら、ここまでの勢力にはなっていていない可能性は高いかな。そういう意味ではご主人様が上に

 

なってくれて正解だと思うぜ」

 

「お義姉様ってそんな事言っちゃって。本当は当主になったら政務とかするのが嫌だったから、ご主人様に

 

任せて助かったと思っているんじゃないの」

 

「蒲公英!」

 

蒲公英の突っ込みが図星だったのか、翠が大声を上げるも皆は笑いの声を上げていた。

 

「私の場合、負けて全て失って、それに徐州であんな事(降伏しない反対勢力者を殺害)をして、死刑を覚

 

悟していたんだけど、ご主人様から『皆に償いたいのなら尚更生きろ』と言われて、こうして生きているけ

 

ど、あの時死なないで良かったなと今は思えるの」

 

「本当です、桃香様!あの時どれだけ頑固だったのか…」

 

その時の桃香が愛紗の説得に応じず、頑なに死を望んでいた事を思い出し愛紗は桃香に愚痴を零し始めた。

 

雪蓮は退位するとは言っていたが、実際に退位した場合、自分の居場所があるのかという不安を感じてい

 

た。だから雪蓮は上に立つ立場にいた翠と桃香にこのような質問をぶつけたのであった。

 

(「この優しさが一刀の無自覚の武器で、そして皆が嫉妬しない様に大らかに纏めている紫苑の存在がある

 

からこそ、これだけ雰囲気がいいのだろうな……」)

 

何故、その出会いが最初に自分には訪れなかった事か残念だと思っていたが、ただこれからそれを挽回すれ

 

ばいいと切り換えできるのが、雪蓮の強みでもある。

 

そして雪蓮は

 

「貴方だけの話を聞いても不公平でしょう。ちょっと私の話を聞いて欲しいの…」

 

そう言いながら雪蓮も自分の事を話し始めた。

 

今までの自分の生い立ちから始まり、母孫堅の死、そこから孫呉の復興への苦闘などを話した。

 

「まあ湿っぽい話はここまで!」

 

雪蓮はこの話はここまでとばかりに無理やり話を止めた。

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話を聞き終えた紫苑は

 

「雪蓮さん、単純な話だけど一つだけ聞かせて欲しいの」

 

「何よ」

 

「もし万が一、蜀と呉が争う事になった時、貴女はどうしますか」

 

紫苑は穏やか表情をしているものの、目は真剣な物であった。それを見た雪蓮は

 

「私の目が黒い内はそのような事はさせないわ。そうね…」

 

持っていた南海覇王で自分の左の手の平を切る。

 

「雪蓮!」

 

「一刀、心配しなくていいわよ」

 

雪蓮は血が出ている手の平を紫苑に見せながら

 

「この血に誓うわ。呉と蜀が争わない事を」

 

正直、雪蓮がここまでするとは思っていなかった紫苑は素直に頭を下げ

 

「貴女がここまでするとは思いませんでしたわ。ここまでされたら認めない訳にはいきません」

 

すると一刀が横から声を掛け

 

「璃々、朱里、酒と杯と薬を持ってきてくれるかな」

 

「わ、分かった」

 

「は、はい!」

 

二人は直ぐに用意して一刀は杯の中に酒を注ぎ

 

「俺も蜀と呉が争わない事に誓うよ」

 

一刀は懐に入れていた短刀を取り出し、左の親指の指紋部分を切ると血を杯の中に垂らす。

 

これを見た雪蓮が

 

「へぇ…血を持っての盟約の儀式ね。私たちに相応しいかもしれないわね」

 

そう言いながら一刀と同じ様に血を杯の中に垂らすとお互いそれを飲み干した。

 

「これで形式は終わったわね。紫苑、今晩一刀借りるわよ」

 

「雪蓮さんご主人様を物みたいに借りるとは言わないで欲しいですわ。貴女も妃の一人ですから堂々とすれ

 

ばいいだけの事ですから」

 

紫苑は先程の表情と違い笑みを浮かべていた。

 

(「これが正妻の貫録という物かしら。私がその域に達するにはもう少し時間が掛かりそうね……」)

 

紫苑の言葉を聞いた流石の雪蓮も返す言葉も無く感嘆したのであった。

 

「これは徹夜覚悟かな…」

 

「覚悟決めた方がいいよ、ご主人様。骨は拾ってあげるから」

 

璃々もすっかり慣れてしまったのか、こうして一刀を送り出したのであった。

 

そして翌朝にはすっきりした表情の雪蓮と対照的に疲れ切った表情の一刀の姿がいた……。

 

説明
今日の台風でほぼ引きこもり状態だったので、何とか仕上げる事ができました。

来月、旅行が控えているので何とか今月中にもう1つ書き上げたいところですが、できるかどうか微妙なところです。

もし今月中の投稿がなければ、次回の投稿は来月中旬か下旬になると思いますので、その点よろしくお願いします。

では第129話どうぞ。
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コメント
陸奥守さん>一刀の場合、持久力より回復力がとんでもなく凄いからねw。ここでは回復力重視にしていますww。(殴って退場)
nakuさん>それは今更というものですよ。一刀のあれで国が持っているというのは、恋姫の定番ですからww。(殴って退場)
たっつーさん>あと桃香あたりも愛紗に引きずられ、更に被害が拡大?(殴って退場)
きまおさん>その流れが目に浮かぶww。あと激励ありがとうございます、何とか頑張ります。(殴って退場)
たっつーさん>そこで更に鈴々も加わって一緒に勉強タイムという感じですねww。(殴って退場)
ohatiyoさん>脱線が多いこの物語、取り敢えず次回から事態は進みます。(殴って退場)
雷起さん>強行手段も考えましたが、流石にそれは止めましたw。蓮華の場合、どうなるか自分でも楽しみですww。(殴って退場)
naoさん>雪蓮も紫苑までとはいきませんが、性欲が高そうですからw。(殴って退場)
Jack Tlamさん>軽い気持ちというよりは、恋愛を知らないがゆえにという感じです。何せ王ですからハードルが高い。(殴って退場)
一刀が疲れ切っているってことは、もしかして雪蓮とした後紫苑としてたりして。それくらいしないと疲れ切らないんじゃないかな。(陸奥守)
↓ちょっと違うなたっつーさん、そんな翆をみて「にしししし」と笑う予定だった蒲公英も巻き込まれて「こんなはずじゃなかったのにぃぃぃ!」って感じになるんだよきっとw後何度も書くようですが、ほんとご自分のペースで頑張ってくださいね。(きまお)
続き待ってました!呉蜀の絆は硬い物になりそうですね。晋との戦いはどうなっていくのか気がかりです(ohatiyo)
雪蓮が真実を受け入れる形で結ばれて良かった。雪蓮ならシビレを切らして強硬手段に出る事もありそうでしたしw蓮華の時がどうなるのかとっても楽しみです♪(雷起)
種馬の一刀が雪蓮一人に疲れるとは情けないwこれで呉とは安泰かな!(nao)
雪蓮そんな軽い気持ちでいたのかよ。まあ雪蓮だし理解はできるが……好ましいことではないですね。愛を得るってそんな簡単なもんじゃない。(Jack Tlam)
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