ヤンデレ無双 九 |
アイツ、北郷に出会った時に「ソレ」は芽生えた。
そう、……確かに「ソレ」は私の心の中に芽生えた。
『北郷を誰にも触れさせたくない』
……狂気、その言葉が一番近いであろう「ソレ」が。
自分でも訳が分からない、仕事で立ち寄った并州の有り触れた街道で、なんの変哲もなくただすれ違う様に出会った初対面の男に、そんなものが芽生えた理由が。
いやっ、その時は確かに「初対面」ではあったが、私は北郷の「存在」自体は、私の客将を務める趙雲、星の奴から惚気の様に何度も聞かされていたから知っていた。しかし、私は北郷の顔は知らなかった。だから、私は星から聞いていた「北郷」と目の前の男を同一視することは無かった、つまり、私はただ目の前にいる初対面の男にそんな思いを抱いたのだ。……自分でも思う有りえない話だと思う。
だが、その有りえない事が実際に起きている。
北郷を私の部下へと勧誘し、半月ほど一緒に過ごした今でもその有りえない思いは増幅している。特に、顕著なのは「誰にも触れさせたくない」との思いだ、特に私にとって心置けない友である星に対しては、北郷に近づくたびに自分でも信じられない黒い思いが溢れる。
おかしい、おかしい、自分が壊れていく……、私の理性が潰れていく、そんな思いにさいなまれる。
私は本来常識的な性分をもつ人間だ、いやっ、桃香とか麗羽とか周囲が変わり者が多いためか、補う様に常識になるべく当たり障りのない判断をするように努力もしてきたつもりだ。
それなのに、なぜ今回に限ってはその性分と努力が全然役に立たない。必死に直そうと、まともに戻ろうと、そう頑張ってまともな元の自分に、周りから、いやっ、特に星や桃香からよく言われた元の私……、そう……。
「白蓮(ちゃん)殿は、相変わらずアレ(普通)ですな(だよね)〜」
って!おい!元に戻るってアレ(普通)なのか私!!
ちょ、ちょっと待ってくれ、こ、こんなに「狂気」だ「芽生えた」とか無駄に重重くした、この『北郷監禁したいぞー!そ、そしたら北郷も私の事を普通じゃなくて「監禁ヤンデレ」系っ思ってもう少し注目してくれるかも!!ビバ!マイ個性!!』っていう思い、その思いを封じ込めたら私また戻るのかアレ(普通)に!!
進も地獄く(狂気化)、引くも地獄(普通)じゃないか!!
く、くそっ、こうなったら、もう私は理性とかなくしてやる、もう狂気の女になって監禁とか(長期間は精神上問題なので北郷の了承のもと3日間ぐらいで)、北郷に回りにいる星を消毒(権限を使って他の部署に移動とか)してやる!!
と、というわけで……。
これからは私の、脱「普通」!!、そして「狂気(ヤンデレ)」化した雄姿をみせてやる!!
もう誰にも私の事を「普通」とはいわせんぞ……!!
「そうだ、もう誰にも私の事を普通とはいわせんぞ!!」
っと、白蓮が宣言していた時の自室の扉前。
「(コンコン)公孫さんさん、どうかしましたかー、中から獣のような雄叫びがしましたが」
「おやっ、主どうなされたのですか?」
「あっ、いやっ、 趙雲さん、公孫さんさんに話があったんだけど、中から変な声が」
「(普通とは言わせんぞ!!)」
「……そのようですな、まあ、白蓮殿も忙しくて疲れているのでしょうな……時々は羽目を外して発散したいのでしょう」
「そ、そうなのかな」
「そうですぞ主、まあ、白蓮殿はほっておいて、私と町でに向かいましょう」
「ちょ、趙雲さん引っ張らないで、それに俺は公孫さんさんと話があるんだよ」
「主!私の事は星と呼んでくれと何回いえばわかるのです!」
「えっ、あっ、いやっ、ごめん」
「謝ってすむ問題ではありませんぞ主」
「や、槍を俺に向けないで」
「真名を預けたのに呼んでもらえぬこの恥辱、」主の体で責を払ってもらうしかありませんな」
「体って!!、ちょ、ちょっと服を脱がさないで、やぁ、やめ」
「はぁはぁはぁ…、いやもいやよの…アヘアへの内ですぞ主」
「な、なにそのアヘアへって、てか、趙雲さん危ない目をしてる!、あっ、そ、そんな所はさわっちゃ、すぐそこに公孫さんさんもいるんだし!」
「(白馬義従の増設の暁には星など!!)」
「白蓮殿は別の世界に旅立っておりますのでご安心を、まぁ、主は気にせず天井のシミの数でも数えながらアヘアへしといてください」
「い、いやぁー!だ、誰か助けて!!」
「主、良いではないか!、良いではないか!」
当の北郷は星に襲撃されていた。
「北郷は私の物だぞーー!わっははははー!!」
白蓮さんのヤンデレ計画 ステップ1
〜北郷を監禁とか拉致とか犯罪するので、気づけれない様に変装するぞ〜
「……これだこれ、前に出店で気まぐれに買った覆面がこんな所で役に立つとは……、おっ、なかなか似合うじゃないか、ふむ白馬仮面とでも名乗ろうかな!うんうん、よしっ、では、早速北郷の前にいって、私と気づかれないか確認をしてこないとな」
「そこの御仁(zzz、zzzー)」
「んっ?な、なんだ星、奇怪な仮面をして」
「なんと、私の仮面の美しさが分からぬとは哀れな、同じ仮面を被る同志と思い声をかけたが間違いであったか、あと星ではありませんぞ、私は華蝶仮面!!(zzz、zz、ん〜…)」
「あ、哀れって、仮にも客将であるお前が、依り親の私にいきなりなんてことをいうんだよ……」
「まあ、そもそも……、白馬仮面っというネーミングセンスからちょっとアレな気はしていたが(!!……んーーーー!!)」
「白馬仮面のどこがアレだ!!って、ちょっとまて、さっきから気になってたんだが、お前が抱えている麻袋はなんだ!!中から、なにか音がするぞ!!」
「んんんんん〜(さっきまで趙雲さんとお茶してた筈なのに、なんだか声が出ないし何も見えない、だ、誰か、たすけて〜!!)」
「……、はっはははは、〜それではさらばする、白馬鹿面!」
「白馬仮面だ!!だれが馬鹿だ、てか、その中にいるの北郷だろ!!ちょ、逃げるな!!」
「馬のくせに人の恋路を邪魔するとは無粋ですぞ!!言うではないか、恋路を邪魔するものは馬に捌かれて死んじまえと……」
「それを言うなら馬に蹴られてだーー!!てか、逃げるなー!!」
結果報告
星に拉致・監禁を先にされちゃいました。
ステップ2
〜急にヤンデレ率アップで、ハンニバル?だっけ、まあ、彼に自分の体の一部を食べさせちゃうぞ。〜
「ふんふんふん(ポト、ポト)、よーし、これで特製の煮物料理の出来上がりだ、これで北郷の一部に私が…ふっふふふー、では早速」
「この煮物美味しいよ、公孫さんさん」
「そうだろ、この煮物は良く煮込んだおかげで味が中までしっかり染み込んでいるからな」
「そうなの、こんな暑い日にそんなに煮込むなんて大変じゃ?」
「そりゃあ、汗がボトボト流れて大変だったが、そ、その北郷の為だから苦ではなかったぞ」
「ありがとう公孫さんさん」
「た、大した事じゃないぞ、(といより、私の汗を入れたくて煮物を、いやっ!!、わざとじゃないんだぞ!!こんな真夏に煮物なんてしたら、嫌でも汗の一滴や二摘、鍋の中に落ちてしまうのは仕方ないだろ!!)」
「……(ドン!!)」
「「へっ?趙雲(星)さん?」」
「白蓮殿の料理は随分お気に召されたようですな主?なら、私が用意したメンマラーメンも是非ご賞味いただきたいものです、是非に……」
「あっ、はい、頂きます!!って」
「おい!!星!今は北郷は私の煮物を食べてるんだ!お前のメンマラーメンなんて後で!!、って」
「「(このラーメン、麺の一部が細くて青いんですけど)」」
「どうぞ、主、私の主への思いが詰った、メンマラーメンをお食べください……」
「星、お前かみきった?」
結果報告
一応成功したけど、星がドン引きするレベルの事したので、負けた気分。
ステップ3
〜嫉妬にくるって、ライバルをやっちゃうぞ!〜
という事で、鍛錬の名のもとに星の奴に痛い目にをしてもらおう。
「って、ちょ、ちょっと待て、こ、これは鍛錬だぞ!!な、なんでお前いつもの武器を持ち出してるんだ!ちょ、ちょっと当たっただけで死ぬぞ」
「いやっ……死んでくださっても結構ですぞ」
「無邪気に笑いながら言うな、てか、ひ、瞳に何も映ってないーー!!」
「私の主に色目をつかう白蓮殿など、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ!!」
結果報告
鍛錬とはいえ星に勝負を挑んだ私が馬鹿だった……ぐふっ!
最終ステップ
〜ヤンデレ最後の手段、無理心中をしちゃうぞ。〜
「ま、まあ……本当にやったらドン引きだし、他にも迷惑かけるな、という事で、三日ぐらい有給をとって北郷と二人っきりで温泉旅行にでもいこう。部下たちにも連絡済みだし準備も完璧だ、まあ、あとはちょっとだけ、急ぎの事務仕事を終えて……。うん、有給の許可書?星の奴か?めずらしいな」
『主と、永遠の有給とります。星』
「……はっ?」
「てか、白蓮殿の客将やめます、以上。追伸、白蓮どのは天下の乱をおさめる才が……」
「って!な、なに偉そうなこと言いながら!!北郷拉致してるんだー!!」
少女の叫びが木魂す……まるで獲物を奪いあう虎のような叫びを。
「趙雲さん、何処に向かってるの」
「さぁ、気が向くままに…まあ、メンマの匂いにつられた道楽旅でも」
「本当にいいのかなー、公孫さんさんの所から勝手に出てきちゃって」
「私は主とメンマさえあれば満足、それ以外はいりません」
「いやっ、そういう話じゃ…」
「主、メンマ、主、メンマ、主、メンマ、主、メンマ、あるじめんま、 あるじめんま、あるじめんま、 あるじめんま、あるじめんま、 あるじめんまあるじめんまあるじめんま、…めんまじる(メンマ汁)!!!」
「最終的に俺(主)がメンマに飲み込まれたよ!!」
次回(かもしれない)
「へっ……」
俺の腹に槍が……。
「あるじーーーーーーーーー!!」
あれ、なんで趙雲さん……泣いてるの?
「ようやく見つけましたよ……ご主人様ぁ!!」
笑ってる君は だ…れぇ?