義輝記 星霜の章 その六
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【 益州での戦い の件 】

 

? 益州 成都 謁見の間にて ?

 

焔耶「桔梗様───!! 敵来襲! 成都東方面にて?・羌族が百万の兵を引き連れて此方に!!」

 

桔梗「うむっ! 遂に来たか!! 我々の軍勢は───!」

 

紫苑「約八万程よ…………桔梗!」

 

桔梗「紫苑! 何故ここに!? お前には、民の誘導を主体して貰うよう閣下から命が下っておろう!! 万が一には、璃々を連れて逃げるように、言い含めると申しておられたが────?」

 

紫苑「………将として、民を守る力を持つ者が……民の誘導を理由に自分の幸せを守るなんて、前の宦官と同じに見られるわよ。 閣下が心配して下さるのは有り難いのだけど………その前に武人としての矜持が許さないの!」

 

焔耶「では……璃々は?」

 

紫苑「近所の夫婦にお願いしてきたわ。 いつも、長期の戦にはお願いして来たから信頼できるはずよ!」

 

桔梗「くくくっ! 儂の折角の見せ場が減ってしまうのぉ!! して……味方の軍勢は八万………か?」

 

焔耶「いつもは十万以上出陣するはずが、この体たらく………! 成都落城の危機に陥っているのに…………不甲斐ない輩らが多く………!!!」

 

桔梗「ふむ。 逆に考えれば、身命も惜しまない勇者の集まりよ! 

 

………余程の戦好きでなければ、このような大敵相手に、刃向かおうと思う奴も居るまいて!!」

 

紫苑「……桔梗。 鳳舞とその仲間達に、民達の護衛を依頼したけど……」

 

桔梗「それは構わん! 民達に何かあれば……儂等が困る!」

 

バタバタバタバタッ! バァン!

 

何進「儂が一番遅れて入ってしまったか……! 迷惑を掛けた!!」

 

桔梗「いけませんぞ閣下……。 成都の王が慌てて来られては、威厳や兵の士気が下がってしまい、勝敗に関わる事に成りかねますぞ!」

 

紫苑「桔梗の言う通り。 百万の軍勢に勝利するには、士気を高く保ち、我が軍が一丸となり戦い、相手を討ち滅ぼすものです。 それが、士気が下がれば疲労や恐怖が全面に現れ、被害が続出してしまいます!!」

 

年下の将達に小言を言われ……大きい身体を小さく縮める何進。 

 

そんな中、助けを出すように焔耶が言葉を挟む。

 

焔耶「何進大将軍! 牛を例の如く飾り立て、三カ所に配置しました! そして『塩樽』も十個を準備を! ………でも、あの者達もそうなんですか?」

 

焔耶が指を指す所には、太っ腹の男が七人。 何進と同じ甲冑を着込んで立っていた!! 正直『ふーふー、ふーふー』と暑苦しい!!!

 

何進「………あの者も、儂の大事な協力者なんだ!!」

 

桔梗達に謝罪していた何進は……顔を上げ、焔耶に向いて笑顔で応えた。

 

◆◇◆

 

【 西涼での戦い の件 】

 

? 西涼 西涼城付近 にて ?

 

馬寿成「ふぅーん! 『天の御遣い』の軍師さんがねぇ〜!?」

 

詠「腕は間違いなく一流よ! 虎牢関の戦い振りや赤壁の噂は知ってるでしょう───『白菊』!!」

 

馬寿成「自分の目で確かめ信じた物が、この世界の真実! 

 

詠! 噂ってもんは、時を経ると大魚になって、人を誑かす物だって知ってんだろ!? んだから、あたしは………自分で会って確認したいんだよ!」

 

馬寿成……真名『白菊』は、茶色の髪を靡かせて───ニヤリと笑う。

 

年の頃は、どう見ても二十台後半のお姉様。 出るとこ出てて、引っ込む場所は引っ込んでる、桔梗や紫苑みたいな体型。 

 

口に一尺三寸(約三十a)の喧嘩煙管(きせる)を咥え、旨そうに紫煙を吹き出す。

 

設定が雑なのは、出番が少ないから……と言うわけではなく、桔梗や紫苑のように分かりやすい人が居るからである。 決して手抜き……ではない………。 

月「白菊様! 天城様は決して……私達に仇なす事は!!」

 

白菊「ふぅ〜ん? あの大人しい月が……此処まで感情を露わにするなんてねぇ〜? あぁ、惚れてるのかい! お姉さんに正直に言ってみな!!」

 

月「へぅ─────//////////!!!」

 

翠「ほらぁ!! 恥ずかしい事してないで戦の準備しろよぉ!!」

 

白菊「ったく、堅い事言ってんなよ………。 もしかしたら、お前の旦那になるかもしれねぇんだから、心配してやってるのに。 そんなんだから、貰い手がつかねぇんだ………」

 

翠「おおぉぉーい///////////!!!」

 

蒲公英「叔母様、戦の準備終わったよぉ!! ………って、アレ? 二人して顔を真っ赤にしちゃてぇ………どうしたの?」

 

白菊「………蒲公英、天の御遣いの軍師ってのは、どんな奴だい? ここまで堅物と奥手を慌てさせるなんて、ちっとやそっとの野郎じゃないね……」

 

蒲公英「うん! 翠姉様と匹敵する武、詠に比肩する知の仲間達が、絶えず心配して傍に居るような方だよ! 武は結構な腕前だし、知に関しては大陸随一かも! 蒲公英も気に入ってるんだぁ!!」

 

白菊「ふぅ〜ん? ふむぅ〜う。 詠が手放しで褒め讃え、蒲公英がそう見えるっていうんなら……修羅場……結構潜っているねぇ………。 面白えから、こんな戦なんぞ、さっさと終わらせて見物しに行っか!!!」

 

蒲公英「叔母様! 敵は百万の匈奴達だよ!! それなのに……たんぽぽ達七万の味方だけで、勝てると思ってるの!?」

 

白菊「………お前達が自慢したがる男が企てた策何だろう!? どういう結果になる見極めるのも、いい女の器量ってもんじゃないのかい!!」

 

蒲公英「そりゃ〜気にはなるけど…………」

 

白菊「心配すんな! たかが百万の小童共が甘えてこようが、容赦なく鉄拳制裁の可愛がり信条の馬寿成様さ!! 何かあれば、あたしが引き受けてやんからよ!! 安心して、洛陽に尻捲って逃げなぁ!!!」

 

蒲公英「ちょっと! 叔母様──────!」

 

◆◇◆

 

【 于吉の秘密 の件 】

 

? ?州 鳥巣 鳥巣砦 にて ?

 

于吉「…………そうですね。 何から話せばいいのかぁ……」

 

于吉が勿体振って話すのを躊躇すると、久秀達は動き出した。

 

順慶「さて、私達も戦の準備に掛かりましょうか?」

 

久秀「そうねぇ……」

 

于吉「待ちなさい! 私の話を聞いておかないと、後で後悔しますよ?」

 

順慶「そう言われましても………ごめんあそばせ!」

 

久秀「久秀も暇じゃないの! さよなら!!」

 

于吉の制止も振り切り、それぞれの仕事に向かう久秀達。

 

于吉「わぁぁ〜んん! お願いだから聞いて下さいよ!!」

 

平身低頭して謝罪して、ようやく話を聞いて貰える機会が得られた。

 

………………………………☆

 

于吉は荒唐無稽な話をしだす。 普通の者なら……信じない与太話になるのだが、この二人は、その非現実的な話を実際に体験して、この世界に来た身! 

 

当然……『実際にあった出来事』と聞いている。

 

久秀「于吉も、貂蝉を追って……この世界に?」

 

于吉「貂蝉が銅鏡を持っていたの知ってましたからね。 何とか奪えないかと追ってみたのですが……この外史が複雑な動きを見せた為、別の場所に落ちたのですよ………」

 

順慶「で? 韓馥とは………?」

 

于吉「ふっ……私の一時の気の迷いでした。 初めて降り立った地に、当時の韓馥が居て、稀な美少年でした。 左慈に冷たくされ続けた私は、つい食指が動き………韓馥を我が物にしてしまいました………」

 

久秀「………………順慶、左慈を呼んで!」

 

順慶「早急に!」

 

于吉「あぁ───待ちなさい! 最後まで話を!! 私の話を!!! 

 

コホンッ! …………その後、韓馥に捨てられたの私です! アイツは、私よりも『女』に興味があるといい、私を置いて消えたのですよ!?」

 

『…………………………』

 

于吉「────私が可哀想と想われないのですかぁ!? あなた方はっ!」

 

于吉が悲痛な顔で叫ぶが………『なぁ〜んだぁ』と言うような表情を見せる久秀と順慶。

 

久秀「全然! ………時間の無駄よ!」

 

順慶「老師に報告しても、呆れられるだけですわね? それに………」

 

于吉「なっ! 何という………非道! 鬼! 左慈ぃぃ!!!」

 

…………コツコツコツコツ

 

左慈「………………何がだ?」

 

順慶「……既に聞いているんですもの………」

 

今まで見た事もない憤怒の表情で、于吉を見下ろす左慈。

 

左慈「あれほど………外史の人間に不要に接触するなと伝えたはずだが!」

 

于吉「こ、これは……………!」

 

左慈「問答無用!!!」

 

ドオオオォォ────!  

 

バカアァァ────ン!!!

 

于吉「ぶほぉおお──────!!!」

 

于吉が……天高く舞う! 

 

左慈が本気で殴りつけた、二回目の出来事だったという。

 

◆◇◆

 

【 機、熟す  の件 】

 

? 洛陽 宮廷内 謁見の間にて ?

 

伯約「ご注進!! 西涼、益州において五胡勢と接触! 戦闘を開始!! それと同時に、徐州でも曹操軍と晋が対陣を始めました!!」

 

颯馬「よしっ! こちらも動く! 出陣準備を!!」

 

伯約「はっ!!」

 

ーーー

 

颯馬「まずは、皆に通達する! この戦いで………大陸の明暗が決まる! 俺達が、この地に降り立った理由であり、大陸中の多数が望む『恒久的な平和』を打ち立てる為だ!!」

 

『……………………………………』

 

颯馬「────だから、今まで名乗っていた『伏す竜』は、天へと飛翔する機会を得たため、名を『竜驤軍』と改める!!」

 

『!!!!!』

 

颯馬「今より配置を定める! 本隊! 総大将『足利義輝』 軍師『天城颯馬』!」 

 

義輝「久々に大将か! 異国の地で………面白い展開じゃな!」

 

颯馬「………将『明智光秀』『織田信長』『三好長慶』『十河一存』『島左近』『山中鹿介』『風魔小太郎』『周幼平』『呂子明』『楽文謙』『関雲長』」

 

光秀「………颯馬! 一緒に戦いましょう!」

 

信長「ふふっ! 腕の振るいがいがある!」

 

長慶「………久秀」

 

一存「よっしゃ! 良いとこ見せるぜぇ!!」

 

左近「次こそは………止めてやるぜぇ!!」

 

鹿介「………颯馬殿、命じられば、如何様な事でも実行致しましょうぞ!」

 

小太郎「頑張ります!!」

 

凪「はっ!!」

 

愛紗「……………はいっ!」

 

明命「孫呉の名誉の為、頑張りましょうね! 亞莎!」

 

亞莎「う、うん! 一緒にですね! 明命!!」

 

ーーー

 

颯馬「洛陽守備……『呂奉先』『張文遠』『本多忠勝』『陳公台』『華雄』

『程遠志』『郭奉孝』『程仲徳』」

 

恋「…………むぅ〜、ずるい〜!」

 

霞「まぁ……しゃあないか……」

 

忠勝「せ、拙者は納得出来ませぬ!! 拙者の『武』か恋の『武』どちらかがあれば──────!!」

 

華雄「これだけ固めてあれば! せめて……私だけでも連れて行けっ!!」

 

ねね「………わかりましたぞ! このねねに任せて貰えばいいのです!」

 

忠勝「ねね殿!? いくら何でも───酷いではござらぬのでは!!」

 

華雄「そうだぞ! これまでの借りを返すべし時に、除け者扱いなど……酷すぎるではないかぁ!! 月様がお聞きになれば!!!」

 

ねね「黙っているのは忠勝殿や華雄ですぞ! ツッコミ軍師……いや正式に『軍師』となり、役割を担う天城より命が下ったのです! その中で異議を唱えて、どうするのですか!?」

 

忠勝「しかし、敵は八十万近く……如何に颯馬殿でも!!」

 

華雄「万が一もある! 幾らなんでも────危険過ぎる!!」

 

颯馬「忠勝殿! 華雄殿! どうか任へ!! 俺の事は心配いらないから…」

 

忠勝「………わかり申した。 しかし! 如何に颯馬殿の命とはいえ、家康様に颯馬殿の守護を申し出て許可された身! 颯馬殿の危機とあれば、家康様の命を優先して行動を起こすでござるよ!!」

 

華雄「─────────!」ガンッ!!

 

程遠志「俺……黄巾賊から……都の守備に任命されるなんて…嘘みたいっスよ……」

 

稟「後の事は…………お任せ下さい!!」

 

風「……………………ぐぅ」

 

 

ーーー

 

颯馬「島津勢、大友勢は……曹操軍の援助!」

 

道雪「あの大軍を放っておく久秀殿ではないでしょう。 必ず、無事に合流させますので……安心して待っていて下さい! 」

 

義久「お姉ちゃんに任せて頂戴ぃ〜!!」

 

ーーー

 

伊達勢は……孫呉へ状況交換と救援要請 

 

政宗「あぁ! 孫呉の方は戦が終わったと報告が来ていたな! 早い内に準備して、颯馬達に合流するとしよう!!」

 

ーーー

 

上杉、武田勢は公孫白珪殿と一緒に幽州へ。

 

信玄「謙信と共に参らせるなど、魂胆は分かっています! ですが、颯馬や義輝公! 皆も………必ず、必ず! 死んではなりませんよ!」

 

謙信「………颯馬! 約束してくれ! 必ず生きて……また会おう!!」

 

白蓮「無理をするなよ! 私にとっても大事な戦友達が居なくなるのは……寂しいからな!」

 

ーーー

 

俺達は、準備を終え………明朝には旅立った!

 

久秀殿達が洛陽に攻め込み、司馬懿として自刃から……一月が過ぎていた。

 

◆◇◆

 

【 一刀 新たな誓い の件 】

 

? 徐州 下? にて ?

 

ドンドン! ガァンガァーン!

 

桂花「……そこの木材は、今ある建物の傍に運んで! ちょ、ちょっと!! どこへ運ぶ気なの!? 春蘭!!!」

 

一丈(約2b)の角材五本、肩に担ぎ上げて運ぶ春蘭が、桂花の示す置き場所を無視して、真っ直ぐに道を走り抜けようとしていた!

 

が………桂花に大声で止められ、渋い顔で振り返る!

 

ブゥ─────ン!

 

曹兵「うわぁ〜〜!!!」

 

曹兵「夏侯将軍!! お止め下さい!!」

 

当然、春蘭の木材も同じように……勢いをつけて廻ると、周りの兵士達も頭を抱え下に身を沈めた!!

 

春蘭「………か、華琳様の姿が見えたので、挨拶に向かっただけだ! 臣としては当然の結果だろう!!」フン!

 

桂花「木材の置き場所は……すぐ傍の家。 華琳様は、その家より更に半里(約200b)先にいらっしゃるじゃない! それなら、担いでいる荷物をそこに置いて行けば済む事じゃないの!?」

 

春蘭「あのくらいの距離、数回移動を繰り返そうが、私の体力に問題などない!!」

 

桂花「アンタみたいなに身体全体筋肉しかない武人は大丈夫でも、置いて貰わないと、次の段取りが出来なくなるの! 段取りが!!」

 

春蘭「そこを何とかするのが、華琳様の誇る知謀の軍師殿の役目だろう!?」

 

桂花「そもそも……アンタが、何回も足を引っ張るから遅くなるんじゃない!!」

 

春蘭「何を────『二人とも止めなさい!!』 華琳様ぁ〜〜っ!」

 

桂花「す、すいません!!」

 

華琳「………春蘭、自分勝手な行動は止めなさい! 貴女の持つ木の長さがどれくらいあるか分かっているの?」

 

春蘭「はいっ! 一丈程の大きさです! ですが、曹操軍にその名も高き夏侯元譲! これくらいの物で疲れる事など───!!」

 

華琳「桂花……この道幅は凡そどれくらいなの?」

 

桂花「確か………一丈三尺(約3b)です!」

 

華琳「そんな体勢で振り回し、兵士や復興したばかりの建物を、また破壊する気なの? そのような将では、曹操軍に在籍させる事など───」

 

春蘭「お、お許し下さい! 華琳様! 直ぐに置いて参りますのでぇ!!」

 

ブンッ! ブンッ!

 

曹兵「ヒイッ!!」

 

春蘭は平謝りに謝るが、その度に木材が上下に大きく動き、兵士達が急いで逃げる! 建物に当たらないのが不思議なくらい。

 

ダタダダダダダッ!

 

その後、急いでその場を離れる春蘭!

 

華琳「直ぐ傍の建物と桂花は言っていたのに……どこに持って行くつもりなのかしらね?」

 

桂花「あ、ありがとうございます! 華琳様!」

 

華琳「いいのよ、部下の騒動を収めるのも王の務めだから……」

 

華琳は、春蘭が走り去った方角を軽く眺めた後、桂花に軽く頭を下げる。

 

桂花「か、華琳様!?」

 

華琳「…………ただ、あれでもね? 春蘭自身は、一刻も早い復興を願い、がむしゃらに動いているの。 あの子だって戦闘を好みはするけど……争いより平和を願う者の一人よ。 

 

だけど、大雑把な性格だけは昔から変わらない。 秋蘭にも頼んでいるけど……ね。 私も気を付けるから……春蘭の事、気に止めて頂戴!」

 

桂花「分かりました!!」

 

華琳「………それから………一刀は……どうしたの?」

 

桂花「……はい。 仕事が一段落したという事で…………」

 

華琳「………そう。 私も後で寄らないと…………」

 

★☆☆

 

? 徐州 下?郊外 にて ?

 

鈴々「お兄ちゃ〜ん! 綺麗な花を摘んできたのだぁ!!」

 

麗羽「我が君、わたくしもですわ!」

 

星「主! 酒とメンマを供えないと。 これが無いと……アイツらに、化けて出てこられそうだからな……」

 

真桜「────アンタが食いたいんと違うかぁ?」

 

沙和「亡くなった人達に、メンマ供えるなんてぇ聞いた事ないのおー!!」

 

一刀「俺も、左校や大洪がメンマが好きだなんて聞いた事が無い……!」

 

俺は、徐州の下?で、華琳達と共に復興作業を行っている。

 

新たに現れた『晋』の国に対抗する名目で孫呉より独立し、徐州の復興をしながら『晋』の軍事行動を警戒していた。

 

数日前から、『敵の兵士達が国境付近で確認されている!』と連絡を得ていたので、俺は仕事の合間に準備を済ませ……実行に移したんだ。

 

だけど、何故か華琳達にバレてしまい……『一刀一人を行かして、万が一何かあったら……犠牲になってくれた者達に申し訳ない!』と怒られ、護衛付きで来たわけだ。 

 

ダタダダダダダッ─────!!!

 

桃香「一刀さぁ〜ん!!」

 

一刀「桃香は終わったのか?」

 

桃香も………陶謙さん達を忘れられなくて……華琳に許しを貰い、途中で別れていたのだ。 後ろから桃香の護衛である季衣、流琉が走って来ている。

 

桃香「うん…………」

 

ズザザザザサアァァ──────!!!

 

季衣「あっ! 兄ちゃんっ!」

 

流琉「兄様!!」

 

一刀「二人共………ご苦労様!!」

 

俺は、二人の頭を労いの言葉と共にユックリと撫でた。

 

季衣「へへへへへっ!!」

 

流琉「───────///////////」

 

桃香「むぅぅ─────!!」

 

二人は喜んだり恥ずかしがっていたが、拒否される事がなくてホッとした。 

 

桃香が……何故か膨れっ面しているのかは………分からないけど。

 

一刀「俺も後で陶謙さんの墓に参らせて貰うよ。 まだ……俺の用件が済んでいないから……………」

 

『……………………………………』

 

★★☆

 

桃香達も加わり、行列は長く賑やかになるが………俺の頭の中は後悔の念で一杯だった。 あの時、俺に力があれば───左校、大洪、青州兵の皆は、全滅せずに済んだはず。 ……………俺が……弱かったばかりに!!

 

ーーーーー

 

俺が行こうとしている場所は、筒井順慶に殺されそうになった俺と華琳達を逃し、その身代わりで亡くなった……戦没者達の供養塔だ。

 

華琳から『戦で亡くなった者を弔うに、どのような事をしたのか?』と問われたので、俺の知っている供養塔を教えた。

 

今は、まだ………戦の最中。 

 

遺骨も拾えず……葬る事も出来ない身の俺は、供養塔建立に参加。 

 

一丈以上の長さがある平らな石を墓石に。下を丸型の石で敷き詰めて、立派な碑が出来上がったよ。

 

それから、用が済んだ後や仕事の無い時を見計らい、俺は毎日参ったんだ。

 

その度に、あの時の弱さを反省して、剣術の稽古や天城様に教えて貰った兵法を、自分なりに考えてみたりして、四半刻(約15分)程過ごすのが日課になったよ。

 

偶に、誰かと重なる事もあった。 

 

秋蘭が何も言わず付いてきたり、桃香や季衣、流琉達が泣きながら、お礼を供養塔に言っていたり、星が神妙な顔で拝んでいたりとかもあったよ。

 

他の皆も………感謝の念を捧げる事は、忘れなかったが……特に…… 

 

春蘭『仇はなぁ!! 必ず、この私が討ってやる!! ……必ずな!!!  だから───安心して眠っているがいい!!』

 

麗羽『わたくしの《玉》である我が君が害されていれば……わたしくも後を追う覚悟でしたわ………。 本当に………ありがとう!』

 

桂花『………男に礼なんか言わないけど…………華琳様やアイツを救ってくれて………感謝するわ』

 

俺は、そんな様子を泣きながら見ていたよ。

 

ーーー

 

…………中でも華琳は………

 

『私は貴方達を忘れない。 私を……いえ、私だけではなく、私の大事な者達も救ってくれた貴方達を………。 私の真名『華琳』を貴方達に預け、生涯忘れない事を……この場で………誓いましょう!!!』

 

と、膝まで付いて祈ってくれたんだ!!

 

ーーーーーー

 

俺達は、綺麗に掃除をして花を供える。

 

水と酒も供えたが…………流石にメンマだけは勘弁してもらった。

 

だって、本人達から聞いてないんだよ! 変な物供えて、罰当たったなんてあったら嫌だし…………。

 

ーーーーー

ーーーー

ーー

 

一刀「………この墓参も最後になるかもしれない。 だから、女々しいけど、謝らせてくれ!! ………皆! ゴメン! 本当にゴメン!!」

 

皆で、最後に祈りを捧げた時、感極まった俺は──涙を流しつつ、そう叫んだんだ!!

 

幾ら先を見ようと、幾ら鍛錬を重ねても………失った命は戻らない。

 

分かっていたつもりだった、理解していたつもりだった。

 

だけど………俺には…………!

 

桃香「…………一刀さん。 後ろを見て下さいませんか?」

 

桃香の静かな声が、俺の頭を冷やす。 

 

そして……振り返ると───!

 

万単位の青州兵達が、俺に向かい膝をついて臣下の礼を取っている!?

 

青州兵「天の御遣い様! いえ、『北郷一刀』様!! 俺達は、改めて貴方に心服した!!」

 

青州兵「俺らのような農民上がりの傭兵に、斯様な情けを掛けて下さる方は………ただお一人!! 左校、大洪達の目は間違いなかった!!」

 

最前列の中にいた青州兵が一人立ち上がり、俺の下へ歩みより膝をついて俺を見上げる! まだ、若い二十代の日に焼けた若者だった。

 

??「青州兵の新たなる将を拝命した者です! ですが、我々は北郷一刀様に改めて心服し忠誠を誓う者達。 …………どうか、将になる我に新しき名を与え……完全に北郷様直属の部隊として下さい!」

 

一刀「………はっ!?」

 

麗羽が俺に近寄り、理由を語る。

 

麗羽「………我が君。 多分、青州兵は……『天の御遣い』の肩書きをつけた我が君に忠誠心を誓っていたのを、『北郷一刀』個人の魅力に心服した無二の忠誠心を示す為の儀式ですわ!」

 

き、急にそんな事を言われても………戸惑う俺に、青州兵の将は期待に目を輝かせ、周りの視線も注目されて緊張する!!

 

ど、どうすれば………あっ! 三国志で有名な人物の名を!!!

 

確か………袁家の将だから聞けば分かるはず。

 

一刀「麗羽! この名前の武将が配下に居なかった?」

 

麗羽「いいえ? わたくしの配下では、聞いた事ございません!」

 

麗羽は、顔を左右に振る。

 

一刀「…………ならば、君の名は、姓は『張』、名は『?』、字は『儁乂』と名乗るように!!」

 

儁乂「『張儁乂』ですか!! ありがとうございます!! これで、我々は正式に北郷一刀様を主とする青州兵となります! 一同、身命を尽くし従わせていただきます!!」

 

儁乂は、俺に向け宣誓を誓うと後ろの兵士達も再度頭を下げた。

 

不意に…………供養塔より二人の声が………聞こえた気がした。

 

ーーー

 

左校『あの方は、俺達を導く方だ!!』

大洪『旦那!! 後を頼みましたぜぇぇ──────!!!』

 

ーーー

 

そうだ…。 俺は、命を助けて貰った代わりに、大きな『責任』を背負ったんだ! 青州兵やその家族達を幸せにするって!!

 

たがら、ここで後悔に最悩まれている場合じゃない!!

 

戦いに勝って!! 約束を実行しなきゃ!!

 

意外な話に唖然とする中、桃香だけ……にこやかに微笑む。

 

桃香「………だって、私は何時でも一刀さん……うぅぅん、ご主人様を信じていたもん。 天の御遣いかの是非だけじゃなくてね。 最初にあった時に、一目でご主人様が……この世を平和に導いてくれるって…………」

 

俺は、青州兵を解散させた後、張儁乂と皆を連れて華琳に報告をして………呆れられた。 不幸中の幸いは……将が男だったぐらいかな?

 

ーーーーー

 

この数日後だった。 

 

国境付近で戦が開始されたのは………………!

 

ーーーーーーーーーー

ーーーーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

 

今回は、遅くなりましたのは……仕事が忙しいのと……今後の展開どうしようかなと考えていた結果です。

 

また、何人か話の内容的にオリキャラ出さないと、いけなくなったので出してみました。 ついでに、内容も前回と同じく長話になりました。

 

うぅ………疲れた。

 

また、よろしければ読んで下さい。

 

説明
義輝記の続編です。 よろしければ読んで下さい。
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コメント
naku様 再コメントありがとうございます! いた「……だって」 風「………うっ、うっうっ、うえぇ〜ん!」───ダダダダッ!(いた)
naku様 コメントありがとうございます! 風「ふふふっ! そんな戯言は『馬耳東風』『柳に風』なのですよー!」(いた)
とんでもない! 突っ込まれて良い案が浮かぶ事もありますので、気にしないで下さい。 勿論、作者に後ろから突っ込まれる趣味もありませんが。(いた)
↓なんかすいませんでした。兎にも角にも応援しております。(Jack Tlam)
Jack TIam様 再コメントありがとうございます! 痛いとこ突かれましたw。 確かに漢女達ぐらいになりますが……相談してくれれば熟j……熟成したお姉様達が相談に乗ってくれますよ。 悩み事には、的確なアドバイスをいただける事でしょう。 桃香と愛紗は………どうなりますか………。(いた)
↓未亡人いますからね、といいつつ、そういう年長者が今回一刀の陣営に居ない。というか年少者が多い華琳陣営といっしょくたになってるからますます平均年齢が低くなっている。もうこれは漢女の出番だ。貂蝉も真面目な場面では人格者だし……桃香や愛紗が納得して諦めるかどうかは果てしなく疑問だけど。(Jack Tlam)
 風「でもですねー! 風は真名のように一カ所に立ち止まらず、様々な場所に向かうから風なのですー! そこで得た知識を活用し新たな軍略を編み出す為なんですよ? それに、風が止まれば『無風』、逆に言えば『風無し』となり存在まで危ぶまれちゃいますからねー。 だから『存在感』も欲しいのですよ!」(いた)
Jack TIam様 コメントありがとうございます! 結末はどうなるか……まだまだ考え中なんです。 想い人の一人は立ち去り、別の想い人は残る。 こんなんでハッピーエンドが出来るのかと問われますと………何も言えません。 まぁ……絶望は、経験豊富なおば……ゲフン…お姉様方や漢女が居るから大丈夫かと。 (いた)
目立とうとするほどに目立てないし、日頃目立ってない人が目立つのは有名な死亡フラグ。風の年齢では「存在感」なんてものがそんなに気にするほど価値が無いことには気付けないか……「風」ってどこにでも吹くんだから、大切な人の近くにそっと寄り添ってるだけでいいんじゃないのかな?(Jack Tlam)
まあ皆色々と思うことはあるだろうけど……悲恋フラグが立っているのは気のせいなのか、それとも実際立ってるのか……そうだとしても精進してもらいたいところ。恋が悲恋に終わったからといってこの世のすべてが終わったわけではないし。残ったものから幸福を探し出そうとするものが勝者。でもなあ……みんなして小娘だし、絶望してしまうだろうか。(Jack Tlam)
naku様 コメントありがとうございます! 最後も近いですからね。 なるべく全員出したいところ……。 風「ふっふっふっ! 風に対しての数々の暴言ー! 忘れてなんかいませんよー? 今から風の復讐の刃が火を吹く……」 稟「か、確保して下さい!!」ドタバタドタバタ!(いた)
mokiti1976-2010様 コメントありがとうございます! 勿論そうなりますので自重しました。 どのみち一刀の周りには、一時的ながら女性の数が増えますので。 (いた)
なるほど…つまり儁乂さんが女性だったら華琳さんが怒り心頭になっておられたという事ですね?(mokiti1976-2010)
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