Summer Greetings 2014 海のおもいで
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これはとある方から聞いた話です。

 

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 遠い昔の事です。私の住んでいた所は四方を山に囲まれた田舎で、そのせいか取り分け海には憧れの様なものを抱いていました。

 毎年、親友のみっちんと蝉の抜け殻を集めて積み上げる(蝉塚と呼んでいました)のが楽しくて、山にはよく遊びに行ったものです。親に海に行きたいとおねだりもしたのですが、なかなか忙しく、そのような機会もありませんでした。

 

 やがて数年が経ち、蝉塚造りも飽きた(みっちんはライフワークにすると言ってました)とある夏の事、行動範囲の広がった私たちは、夏休みに入ると隣町の海に海水浴に出かけました。バスで六十分程度の所で、都会から来る人も少なく、地元では穴場と言われている所です。というのも昔からUFOやUMAを見たと言う噂がたえず、当初はそこそこ盛り上がっていたようなのですが、海中に黒い大きな影を見た、漁師が行方知れずになったという噂は海水浴には向いていないようで、訪れる人は減ってしまったそうです。

 この日は晴天に恵まれ絶好の海水浴日和でした。人も散歩をする人や私たちを含め数人しか居なく、地元の人ばかりの様でした。私たちは多分地元の人には見えなかったと思います。

 一通り泳いだ後、砂浜を散歩していたおばあちゃんに私たちを撮ってくれるように頼みました。快く承諾して頂けました。でも撮影した後、おばあちゃんが怪訝そうな顔で私たちを見るのです。やっぱり地元じゃないから浮いてるのかな?と思ったのですが、おばあちゃんの視線は私たちを通り越して海の方を向いていました。

「海面に何か浮いとる!」

 急いで海の方に振り向き目を凝らしましたが、水面に何かを見つけることは出来ませんでした。

「またぁ、おばあちゃんったら、知ってるんですよ、ここの浜辺の噂…」

 そう言うと、おばあちゃんはニッカリ笑って、私の知ってるとっておきの話をしてあげるから付いておいでと小さなお店に入って行きました。

 まぁ、そのとっておきの話も今までに聞いた事のある話でこれと言って目新しい所も無く、ちょっと退屈だったのですが、(おごってもらったかき氷がものすごく美味しかった)みっちんは目を輝かせて食い入るように聞いていました。毎年巨大化するアンタの胸の方が不思議だよと思ったのを覚えています。

 すっかりおばあちゃんと話し込んで日も傾き始め、ふただび海に入ろうとしたのですが、もう海月がいっぱいで入る事は出来ませんでした。みっちんは海月を桶ですくって防波堤の焼けたコンクリに揚げて観察してました。干物にして持って帰りたかったようですが、帰りのバスの時間には間に合わなかったようです。

 

 帰りバスの中で人が少ない理由が分った気がするとみっちんに話しました。

「なんで?まこちん(わたしはまこちんと呼ばれてた)」

「あのおばあちゃんが噂流してるのよ、あまり浜に人を近づけない為にね」

「えー私はまた来たいと思ったけど」

「管理された海水浴場じゃないからね。私たちみたいに子供だけで来るのはやっぱり危ないと思ってるのよ」

「あーなるほど」

 とお互い、それぞれの胸になにげなく視線を移してしまった事で取っ組み合いになってしまったけど、「あーなるほど」の「あ○る」の方がスルー出来ず、そっちで盛り合ってすぐに仲直りしました。あの頃の私たちはお互いの言葉にどん欲に食らいついていたものです。もちろん、他人の前では下ネタなんて話しませんけど。(私のあだ名を呼ぶ時には必ず頭の中で復唱するそうです。間違えそうなスリルがたまらないとよく分らない事を言ってました)

 折角の夏の思いでが、まさに、あ○るで締める。というオチに私たちはまんざらでもないと家路に着いたのです。

 

 しかーし、夏の思いではそれだけでは終わりませんでした!

 数日後、みっちんの家で現像に出していた写真(世間ではデジカメもありましたが当時はまだフィルムでした)を見ていたのですが、おばあちゃんに撮ってもらった写真に変なものが写っていたのです。それは二カ所ありました。一カ所はアダムスキー型の飛行物体。白飛びしていて雲のようでした。もう一カ所は海面にネッシーのような首と背中に尾っぽらしきものが写っていたのです。もうふたりとも大騒ぎしました。UFOのみならずUMAも写っていたのですから。私はおばあちゃんに心の中で何度も誤りましたし、みっちんは「もう蝉塚やめる!」と宣言したのをはっきり覚えています。(後日そんなことは言っていないと、また山で抜け殻集めです…)

 それで、この写真は私たちだけで見るのは勿体ないと、当時やっていたTV番組(スペシャルもの)に投稿したのですが、残念ながら採用されませんでした。しかも返却希望と書かなかった為、その写真も手元から無くなったのです。

 わざわざネガからプリントするテンションは既に無く、ちょっと飽きてきた頃、なんと私たちの造った「蝉塚」の方が、謎の怪現象として地元のローカルTVで取り上げられたのです(笑)。

 数年間集めた蝉の抜け殻は尋常ならざる大きさに成っており、異様な雰囲気を醸し出していたようです。私たちは毎年見てましたのであまり変化に気付きませんでしたが、確かに客観的に見るとそれはもうえげつない大きさでした。それでしばらく山は控えようという事になりました。ここで名乗り出ようとなど言い出したら、本気で殴るつもりでしたが流石のみっちんもそこまでではなかったようです。余談ですが古文の授業で松尾芭蕉のおくのほそ道のくだりで「せみ塚」が出てくるとみっちんはおもいっきり吹き出してました。私は腹筋の動きを止めるのに必至でした。

 

 あれから何度か、その浜辺に遊びにいきましたが、そのおばあちゃんにもUFOにもUMAにも会えませんでした。今となっては本当にあのおばあちゃんも居たのか、本当に写真があったのかさえ不確かな記憶となりました。でも、みっちんが干していた海月が無くなり、私が取ったなどと、とんでもない言いがかりを付けられたことや(そんなものくすねてどうする!)、ふたりで泳いて遊んだ事は楽しい思い出として残っています。

 

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以上、私が聞いた話です。この様子を絵にしてみました。

もはやUFOやUMAとかどうでもいいです。

みっちんと「蝉塚」の方が気になって仕方がありませんw。

 

 

 

 

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これはとある方から聞いた話です
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エッセイ    水着 女の子 

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