義輝記 星霜の章 その七
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【 益州での奇策 の件 】

 

? 益州 成都近辺 街道 にて ?

 

迷吾「左慈とか言う小僧に誑かされた(たぶらかされた)と思ったが、そうでもなさそうだな? ?の王よ!!」

 

阿貴 「その言葉、私が言いたい事だったぞ? 羌族の王!!」

 

二人の逞しい身体の男が、豪華な衣装を着け先頭を進む。

 

少し傾斜がきついが…道筋はかなり広い。 馬に乗った者達が横に四列で並んでも大丈夫な程。 街道は、それなりに整備されていたが、街道筋両側面は緩やかな上り斜面を描き、人の侵入を容易く許す表情をしていない。

 

まぁ、余程事情が無ければ………好き好んで入ろうと思う奴はいない。

 

そんな敵国の道を…………四列に別れた兵士が続く。 

 

各五十万の編成で………計百万。 しかも、全員騎馬での進軍!! 

 

広大な大陸を歩いていれば、疲労等が溜まり、普段の戦闘が差し支える恐れが出てくるので、最低限に抑える事が目的!! 

 

また、遊牧民族ゆえに馬の扱いは慣れているため、多少の山道も乗りこなし、迅速な進軍が可能だからだ!

 

◆☆◆  ◆☆◆  ◆☆◆

 

羌族の王……迷吾。 

 

年の頃三十代の若き肉体を持つ偉丈夫。 槍を片手に持ち、目を釣り上げて敵兵が有無を確認しながら進む。 身を包む革鎧から見える身体には、無数の傷跡が見え……先陣を好み武人の性格を伺わせる。

 

?の王……阿貴 

 

年の頃四十代の髭だらけの巨漢。 腰に立派な佩刀を付けて、畏怖堂々と道を行軍をするのは、王から醸し出せる威厳ゆえか?

 

迷吾のように力だけの王では無い事は、道筋に斥候を放ち、様子を窺うのを忘れていない慎重な態度からして、察する事ができた。

 

◆☆◆  ◆☆◆  ◆☆◆

 

迷吾「………兎に角だ! 先陣は俺が行かせてもらう! 腑抜けな父者や兄者は先に漢王朝に下ったようだが………俺は違う!! 家族や仲間達を踏みにじってきた奴らを皆殺しにして、大陸に羌族の独立国家を建国するんだ!!」

 

阿貴「………気持ちは分かる。 私とて?の独立国家を考えている。 しかし、今の益州は危険だ!! 太守が劉焉だった時なら攻める隙があったが、現太守代理は大将軍何進! 神に守護された将だと噂が流れている!!」

 

迷吾「ふんっ! どこかの臆病風に吹かれた奴の情報なんだろう!! 本当に守護されているのなら、その奇跡を俺達に見せつけてみろってんだ!!!」

 

阿貴が慎重論を展開するが、迷吾は………全く意に介さない。

 

 

??『…………では、奇跡を見せれば、漢王朝に服従するのか?』

 

 

───────誰かの声が聞こえた。 

 

★☆☆

 

迷吾「誰だぁ!」

 

阿貴「─────漢王朝の手の者か!!」

 

二人の将が怒鳴りながら、声がする場所を探るが………誰もいない。

 

何進『………漢王朝の臣 何進! お前達の相手をする者だ!』

 

しかし、声だけが聞こえてくる!!

 

迷吾「野郎おぉ〜! 早くも俺達をからかう気かぁ! 出てきやがれぇ!!」

 

短気な迷吾は、槍を振り回して辺りを突くが……反応がなく、二里(約850b)先に鎧を着用した男が一人現れる。

 

何進「どこを見ている! 儂は何進! 追いつけれると思うなら追いついてみろ! だが、儂は貴様達なんぞに討たれなどせん!!」ダッ!!

 

何進は、そう言い放つと……徒歩で逃げ始めた!!

 

迷吾「直ぐに追いついて……串刺しにしてやるぜぇ!!」

 

阿貴「待てっ!! 敵の罠だ!!」

 

迷吾は、自慢の馬捌きで、何進に直ぐに追い付こうと馬を進めようとするが、阿貴が手綱を抑え、動かさないように固定する。

 

迷吾「何しやがる! 奴が逃げるじゃないか! 早く放せぇ!!」

 

阿貴「頭を冷やせ! このまま行けば、お前が討たれるのは間違いない! そんな中で、残された羌族達はどうすればいいのだ!? お前の配下の兵士十数人で追撃を掛けて生け捕らせろ! 煮るのも焼くのも好きにさせてやる!!」

 

迷吾「──ケッ!! 分かったよっ! 野郎共! あの将を捕まえて、俺の前に引っ立ててこいやぁ!!」

 

羌兵『へいっ! お頭!!』ドドドドドッ!

 

阿貴「我が精兵よ! 先程の場所を調べてみよ! 些細な事も見逃すな!!」

 

?兵『承知!』ガサガサッ!

 

◆◇◆

 

【 合流…そして混乱へ! の件 】

 

? 徐州 下?城 謁見の間 にて ?

 

曹兵「た、大変でございます!」

 

数日前より、国境付近に現れる敵兵対応にどうすればいいか、皆で相談していたところ、一人の兵士が駆け込んできた!

 

秋蘭「落ち着け! 曹孟徳様の御前だぞ! 慌てずゆっくりと話せ!」

 

曹兵「は、はいっ! 実は洛陽から『天の御遣い様方』が、お目通りを願い城門に来ていらっしゃいます! 如何いたしましょうか?」

 

華琳「『天の御遣い』は沢山いる! その者達は何と名乗ったか?」

 

曹兵「はいっ! 『大友』、『島津』と名乗られています!」

 

華琳「一刀! 島津は分かるけど『大友』なる将は知らないわ!? 新しい御遣いの一人なの!?」

 

一刀「………多分、立花道雪様を含む三人が来たと思う。 元々大友家の重臣だったから…………」

 

春蘭「何ぃ!! 鬼が二人も来たのか!? 華琳様、是非に勝負を挑ませて下さい!!」

 

秋蘭「姉者! 相手は洛陽側の側近達だ! もし、何か御怪我をすれば、我々との関係に亀裂が入る可能性があるぞ!!」

 

華琳「………まずは、お通しして。 失礼無きよう丁重にね!」

 

ーーーーーーー

ーーーーー

 

道雪「……お目通り許可して下さり、ありがとうございます! 曹孟徳様! 大友勢……立花道雪、高橋紹運、立花宗茂三名、ご挨拶申し上げます!」

 

義久「………妹達がお世話をお掛けしました〜! 島津家当主、島津義久と申します〜! 島津家も御尊顔を拝見させて頂き、感謝しております〜!!」

 

華琳「丁重な挨拶痛み入ります! 今回、この城に参られた理由は……天城颯馬様からの命令……という事で宜しいので?」

 

道雪「その通りです! 軍師殿は曹孟徳殿の援兵として私達を遣わせました。これからは、貴女の指揮下にて奮戦したいと、私達は望んでいます!」

 

華琳「それでは、我が軍の臨時の客将で対応させていただく!」

 

ーーーーーーー

ーーーーー

 

色々と話し合いがあり……謁見が終わり、道雪達は部屋を案内されようとしたが、華琳が呼び止める。

 

華琳「私個人で話をさせて欲しい。 配下の将を除き皆、人払いをお願い!」

 

…………将以外の者が退室した後、華琳は道雪達と義久達の前に跪き、顔を伏せつつ礼を述べる。

 

華琳「この曹孟徳、昨今より今に至るまで、天城颯馬や皆様に並々ならぬ配慮を頂き、今……この場に立つ事ができた! そして、是非とも話をしたいと思っていた将達が……ここに居る! 重ね重ね御礼申し上げたい!!」

 

………☆  

…………☆

 

義久「あらあら、どうしましょう? 本来なら颯馬君が受ける賛辞を、私達が受けるのには、理屈が合わない気がするんだけどぉ?」

 

道雪「いいではありませんか? 私達が証人となり華琳殿より礼を受け入たと伝えるのもよし、戦に勝って、本人へ直接申し上げて貰うのもありですよ?」

 

義久「それは駄目ぇ〜! こ〜んな可愛い子が、颯馬君の傍に来られたら〜、お姉ちゃん……見向きもされなくなっちゃうもん!」プンスカ!

 

歳久「無いとは言えない………というのは、惚れた弱みですかね?」

 

華琳「はあぁ〜!? あのねぇ! 私は、颯馬の事は気に入っているけど、別に好みじゃないの! ちゃんと、他に好きな…………ゴニョゴニョ」

 

一刀「確かに凄いからなぁ…天城様。 あの活躍、的確な判断、何が何でも守り抜くという意志! ………俺が女の子だったら惚れてかも……」

 

??「(こ、これは!? ………脈ありだよ!)」

 

??「(う、うん! ……いい構図を考えなきゃ!)」

 

コソコソ喋る二人の後ろから……近付く人影が。

 

宗茂「わ、私も……こんな小さい可愛い子が来てくれたら〜〜」テレテレ

 

朱里「はわわわわっ!」ギクッ

 

雛里「あわわわわわ!」ギクッ

 

ーーー

 

春蘭「天のお使いよ! 私の頼みを聞いて貰いたい!」

 

秋蘭「あ、姉者! 御遣いだ! 御遣い!!」

 

義弘「あぁっ! え〜と………夏侯さん……だっけ!?」

 

家久「姓だけじゃなくて字も付けなきゃ! 二人いるんだから!!」

 

義弘「えっ? えぇ〜とぉ、げ、げ、元さん!」

 

春蘭「待てぇい!! 何だ、その職人みたいな名前は!! 夏侯元譲だ! 元譲! く、くそぉ〜! 私の名を辱めるとは───許せん!!」

 

義弘「ご、ごめんなさいっ!!」

 

ーーー

 

紹運「私も是非、この三国の英雄と手合わせを願いたい!」

 

星「フッ! 強者が集うのも何かしらの縁! 華琳様、是非参加の許可を!」

 

鈴々「鈴々もー!!」

 

季衣「チビッ子が参加するならボクも〜!」

 

ーーーーーーーー

 

その後の展開は…………想像にお任せする。

 

ただ、今回の事で道雪達の合力が入った。 兵数は僅かに五百だが、曹操軍に更なる力を与えてくれる事は間違いないだろう。

 

◆◇◆

 

【 種明かし の件 】

 

? 益州 成都近辺 街道 にて ?

 

羌兵「ヒャハァー! 俺達を侮る馬鹿を直ぐに捉えてやるぜぇ!!」

 

羌兵「大人しくしやがれぇぇ!!!」

 

ドドドドドドドドドド──────ッ!

 

数人の騎兵が、徒歩で歩く何進に近付く。 

 

もう少し近付けば、何進を容易く捉え、頭である迷吾より褒美を貰える! 全員が……そう考えていたところ、思わぬ事が生じた!!

 

七歩(約10b)まで近付くと同時に、左右の両側から……急に木の枝が目の前に現れた! ………その距離は「零」であり、避ける事など思いもよらない!!

 

ビョーン! バサバサバサッ!!

 

羌兵「グギャアアァァア!!」バシィン! ゴロゴロ!

 

先頭に居た羌兵達に当たり、落馬して転げ落ちた!!

 

そして、後続の馬は………………急に止まれない! 

 

羌兵「うわ─────っ!」

 

ドドドドドッ─────!

 

…………………間一髪、横に転がり難を逃れた羌兵達。 

 

後続部隊が戻ってきて無事を確認、直ぐ近くでいるであろう何進を探すと! 

 

何故か付近に居らず……ここよりも三里(約1,2キロ)先を進んでいる!?

 

あの豪華な甲冑、貫禄ある体型、まして、大軍を後ろに控えているのに関わらず、のんびり物見遊山のように歩く者など、普通は居ない!!

 

羌兵「…………どうなってやがる?」

 

羌兵達は、仲間の一人を報告に行かせ、残りの人数で追い掛け始めた!

 

★☆☆

 

?兵「阿貴様! 此方を!!」

 

阿貴「何か見付かったか?」

 

阿貴は、?兵に呼ばれた場所に近付く。 

 

阿貴「ふ〜ん? 迷吾殿! 此方に来て貰えないか?」

 

迷吾「何かおもしれぇもんでもあった………なんじゃこりゃ!?」

 

阿貴が迷吾に見せた物は、『底に穴が開いた中華鍋』と『竹筒』……。

 

阿貴「配下の者が見付けた時は、こうなっていたそうだ………」

 

中華鍋の底に竹筒を差し込み、その様子を見せる。

 

迷吾「それがどうしたんだよ!?」

 

訝しがる迷吾に、阿貴はやれ!と指示を出す。

 

『あー、あー、聞こえますか? 本日は晴天なり! 本日は晴天なり!』

 

迷吾「うぉっ!? 鍋が言葉を喋るだとぉ!? それに、この地域は霧が名物だろうがぁ! 見ろ! こんなに曇っているのに晴れは無いだろう!? 晴れはぁ〜! あぁ〜!?」

 

中華鍋にツッコミを食らわす迷吾。

 

『す、すいません! こういう時は、このように喋るようにと家訓で……』

 

迷吾「チィ! 鍋の家訓じゃ………しかたねぇ!!」

 

盛大に舌打ちをした後、ふと……どうでもいいことを考えた…………。

 

( 鍋を喋らせるとは、何進……恐るべし! いや、それを簡単に再現できた阿貴も侮れねぇ────っ!! )

 

ブワッと顔から汗が吹き出し、滝の如く流れ落ちる……脳筋の迷吾。 

 

阿貴「……単純な細工だ。 遠く離れた場所で、竹筒に耳を寄せて声を聞く。 その後に竹筒を通じて返答をすれば、あたかも人が居るように勘違いを起こせる。 しかも、鍋を利用する事で、性能を倍増させるか………」

 

迷吾「……………」

 

阿貴「……かなりの知恵者が関わっているかもしれん。 油断は禁物という物だ………ん?」

 

羌兵「た、大変です!! 敵将『何進』が────!!」

 

 

◆◇◆

 

 

【 于吉の詭策 の件 】

 

? ?州 鳥巣 鳥巣砦 にて ?

 

 

左慈「ふんっ!」

 

于吉「…………そう来ましたか」

 

順慶「颯馬様が! 颯馬様が! やっとお会い出来ますわぁ!!」

 

久秀「……………………」

 

 

机の上に大陸の地図を広げ、状況を確認する四人。

 

左慈「山越兵………口先だけの弱兵か。 俺達のお膳立てしてやった事を、此処まで生かせなかったとは………つまらん!!」

 

于吉「ですが、時間は稼げましたよ? 大陸中の英傑が、我々の行動を阻めば……流石に、やりにくくて困りますものねぇ?」

 

左慈と于吉が交州を眺め、怒っていたり笑っていたりと様々。

 

順慶「……他には、西涼で百万の五胡と馬寿成率いる軍勢の戦いが勃発…!」

 

パチン! と置き石を置く順慶。

 

久秀「益州では、同じく五胡勢百万と何進勢との激突!」

 

パチン! と久秀が置く。

 

久秀「………これでは、颯馬といえど、後ろを気にしない訳にはいかないようね? それに、西涼では董卓、益州では何進と、主君と相方まで前線に出ているもの! …………精神的には、かなり辛い筈よ!?」クスクスクスクス

 

順慶「ふんっ! 颯馬様の隣に居るのは、この順慶ただ一人! 誰にも譲りませんわよ!?」

 

久秀「………………………」

 

順慶「勿論、久秀にも………! 久秀……どうかなさいまして? ボォ〜としていましたが?」

 

久秀「………何でもないわ。 アナタの言葉に呆れて返事が出来なかっただけよ! 颯馬は、久秀が手に入れるの。 だけど、そうねぇ……久秀が死んだら、順慶に譲ってあげてもいいわよ?」

 

順慶「その前に、私のモノだと宣言させて貰いますわ!!」

 

★☆☆

 

于吉「フフフフッ! とうとう天城颯馬が動きましたか! 最終の戦いに相応しい舞台に仕上げていただき、感謝しておりますよ!!」

 

左慈「于吉が仕掛けた陰険極まりない罠だからな。 天城も運が無い男よ…。だが、ここまで耐えた骨のある奴も久しぶりだ! たっぷり相手をして葬らせて貰うか!!!」

 

二人の道士は、嗤いながら地図の上を見ている。

 

順慶「颯馬様を……上手く罠に嵌めれば、私のモノにしていいのですねぇ?」

 

于吉「それは勿論! 私達の目的は、この世界の破壊! 北郷一刀共々始末したいのですが……貴女方に差し上げましょう!」

 

順慶「うふっ! うふふふっ! 颯馬様颯馬様颯馬様颯馬様颯馬様颯馬様颯馬様〜! この順慶が終生……貴方のお傍に居させて貰いますわぁ〜!!」

 

久秀は、配置を見て首を傾げる。

 

久秀「………颯馬の軍の動かし方を見ると、私達を包囲するように見えるわね? 颯馬の軍は、寡兵と言うのも気にかかるわ。 いったい狙いは何なのかしら………?」

 

于吉「心配には及びません! 天城の軍が十万足らず、曹孟徳軍が三十万、孫呉の兵が四万。 それに比べ、私達の軍勢が七十万以上、五胡の兵力が二百万! 五十万に満たない軍勢より五倍以上も多い我が軍勢!

 

そして、万が一となれば、この于吉の術で………傀儡兵を呼び寄せる! 

 

完璧! 完璧ですぅ!! あはははははは──────っ!」

 

左慈「……于吉! 忘れるなっ! 俺達のもう一つの狙い、董卓所持の『銅鏡』完全破壊! いくら北郷達を倒しても、世界の破壊は実行できん!!」

 

于吉「………ふふっ! 妬いてるのですか? さ・じ『ドゴオォォン!!』 ブベラハァアァァ────!!!」ゴロゴロ!

 

左慈「─────それを行う為にも、お前達には頑張って貰わないと……非常に困るんだ!! 久秀! 順慶!」

 

順慶「お任せを……老師! 颯馬に寄り付く虫達共々、私が始末してあげますわ!!」

 

久秀「…………………………」

 

 

◆◇◆

 

 

【 奇門遁甲? の件 】

 

? 益州 成都近辺 街道 にて ?

 

阿貴「『縮地の術』か…………」

 

羌兵からの報告を聞いて、一瞬に悟る阿貴。 

 

『なんだそりゃ?』と顔に表情を浮かばす迷吾。

 

阿貴「昔……読んだ竹簡の中に『仙人』なる者が使う術があった。 我らが一足踏み出せば、彼らは一里(約400b)を進む。 遠くの道を、術で手前に持ってきて、一足踏み込めるようにする。 これが縮地の術だ!」

 

『─────────────!』

 

羌兵、?兵共に驚く! 

 

敵は仙人!? ならば、我らが何十万集まろうが、者の数には入らないではないか! 仙術でドーンとやられば、あっと言う間に倒されてしまう!

 

迷吾「………ふん! そんな物は所詮イカサマに過ぎん! 俺が追い掛けて………『待て! 私に任せろ!!』 何か出来んのかぁ?」

 

阿貴は、付近の叢より枝を数本持ってきて、井桁状の小さい『祭壇』を作る。

 

その後、近くに居た自分の配下と迷吾の配下を十名並ばせ、祭壇に火を点ける。 枯れた枝の為、簡単に火が点き……勢いよく燃え上がった!

 

阿貴は、腰の剣を抜き上段に構え、呪文を唱える。

 

阿貴「…………何進なる者の妖術に従う者よ、阿貴の名において命じる! 我ら同朋を惑わす不届き者、疾くと去ね!!!」

 

─────ザッシュ!!  バサン!!

 

剣は、井桁状の祭壇を………真っ二つに切り裂かれ、左右に崩れる。

 

阿貴「これで、何進の術は破れた!! もう、奴に術など使えぬ!!」

 

これを信じた方がいいのか、疑った方がいいのか……それぞれが話し合っていると、何進の後を追っていた羌兵の一人が戻ってきた!

 

羌兵「で、伝令! 敵将何進! 急に山の上に登り、見晴らしのいいところで飯を食べ始めた模様! 至急、応援を求むと!!」

 

この伝令から話を聞き終わった阿貴は、すぐさま大声を上げた。

 

阿貴「うむっ! 私の術が何進の妖術を破ったようだ! 者共! 好機到来である!! 直ぐに向かうのだ!!」

 

『おおおぉぉ────!!!』

 

ドドドドドドドドドドッ!!

 

迷吾「?の王よ! 驚いたぜぇ! まさか……あの術を破る方術が出来るなんてな!!」

 

阿貴「気にするな! 何進の術など、ただの惑わしの術、仙術でも方術でも有らず! 兵の士気を落とさないように、偽方術を偽方術で打ち破ったまでよ!!」

 

迷吾「…………………………」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

ーーーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

 

最後の話は、某三国志と似ていますが、終わりは全く違いますので。

 

それと、この小説にコメントを頂いた方が、他のサイトで投稿デビューされたようです。 名前が一緒ですので、その方だと思いますが、もし違ってましたらごめんなさい。

 

ですが、この小説より出来はいいです。 面白いですもの!

 

作者も応援していますので、是非、完結目指して頑張って下さい!!

 

また、次回もよろしければ読んで下さい!

 

下の話は、一刀と大友勢の再見話です。

 

 

ーーーーーーーー

ーーーーーー

 

◆◇◆

 

【 悪いのは………の件 】

 

? 徐州 下?城 謁見の間 にて ?

 

立花道雪……斜陽の大友家を支えた名将の一人。 俺の知ってる立花道雪は、入道姿の男性なんだが……何故、美小女になって目の前に居る。

 

道雪「貴方が……宗茂の佩刀を切り落とした方ですか?」

 

涼やかな瞳で、此方をみつめる道雪様。 

 

稀代の豪傑と言うより、深窓の令嬢のようなたおやかな姿。 久しぶりに着物姿の麗しい女性に、直視されると体が固まってしまう!!

 

一刀「は、はいっ! そうです! 俺が……やりました!!」

 

後ろでは剥れて(むくれて)いる宗茂様、慰めている高橋紹運様が並んでいる。

 

道雪「そうです……か。 私も宗茂より……話は伺っていたのですか……」

 

道雪様は、可愛く首を傾げて、こちらを見た。

 

ーーー

 

あの時、黄巾賊討伐戦で御息女の宗茂様と対峙、結果は……俺の負け。 

 

闘氣の刃で体調を狂わされ倒れたが、こちらも薬丸自顕流の意地にかけて、宗茂様の佩刀『波斬り』の剣先を切り落とした!!

 

今から半年以上も前の話だが………大事な御息女の佩刀を、切り落としたんだから、文句の一つも言いたくなるよな。 いや、鬼道雪だから一つじゃすまない、百か千ぐらい来るかもしれない!!

 

ーーー

 

道雪「お名前は、北郷……一刀殿で宜しいですか?」

 

一刀「はいっっっ!」

 

こんな返事をするのも、学校に通っていた時以来。 

 

道雪様の氣が少し高まり、目が細くなったと思うと……意外な言葉を発しられた!!

 

道雪「一刀殿! 誠にありがとうございます! この立花道雪、感謝に堪えません!! よくぞ、あのような素晴らしい技を御披露下さいました!」

 

一刀「すいませんでし────はっ?」

 

腰を九十度に曲げて、謝罪姿勢をとる俺の頭に、感謝の言葉が掛けられた!

 

様子を見ていた曹操軍の将達も………唖然としている。

 

道雪「宗茂は、私が厳しく教えながら育てた娘ですが、その……何ですか……殿方を蔑むところがありまして………」

 

宗茂「義母上! それは私より技量の高い者が少ない為、仕方が無い……」

 

道雪「お黙りなさい! 時と場合によっては殿方を立てる術も必要です。 特に……この世界では、殿方の力量不足が目立ち、些か増長するところがありました。 …………誠にお恥ずかしい話です」

 

一刀「………えっと、それでは……刀を斬った事の苦情申請ではなく……」

 

紹運「………天狗の鼻を叩き折ってくれて、御礼を申し上げたい! と言う話ですな! 姉上?」

 

宗茂「わ、私は天狗なぞなっていません! 強いからそれなりの態度を示しただけで!!」

 

道雪「その態度が、天狗の鼻のように増長しているのです! 御覧なさい! 貴女の嫌う殿方が、努力と鍛錬で貴女を一時的にも上回った! それが、刀の捌き方に現れたのですよ! 反省なさい!!!」

 

宗茂「そ、そんなぁ〜!!」

 

一刀「は、ははは、はぁ……! 良かった…………」

 

道雪に再度怒られる宗茂を横目で確認し、心底安心したと………のちに語ったそうだ。

説明
義輝記の続編です。 よろしければ読んで下さい。
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コメント
風「………ムフッ」 朱里「……ムカ#」 雛里「………ブツブツブツブツ」(いた)
naku様 コメントありがとうございます! 風「…………分かりましたか?」 雛里「………コクッ!!」 朱里「…………三人で話し合いましょう! 如何に私達が目立てるか!」(いた)
mokiti1976-2010様 コメントありがとうございます! もちろん、あれで封じられるようなものではありません。 次回の手は、作者が温存していた策を披露したいかと。(いた)
何進の術があの程度で破れるはずは無さそうですし…次なる手に期待します。(mokiti1976-2010)
Jack TIam様 コメントありがとうございます! 道雪は半身不随になっています……。 なんとかしたかったんですけどね。 宗茂の場合は勝ち気な面と佩刀を斬られたて家族に叱られた事で怒っている事も原因です。 義久達とは絡ませるのは別のオマケで行う予定。 け、決して忘れていた訳では………。(いた)
道雪かぁ。半身不随になる人……まだなってないっけ?確かに、恋姫世界は女性が有力な世界で、宗茂が増長するのも仕方ないかもしれませんね。男嫌いの女には生きやすい世界ですから。とはいえ、敵を侮る者は武士に非ずということで、一瞬でも上回った一刀には敬意を表していただきたい。曲がりなりにも島津の家系ですし。そういや義久と絡まないなぁ。(Jack Tlam)
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