本編補足
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C1 意義

C2 見せしめ

C3 救出

C4 名付け

C5 決意

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C1 意義

 

アラタナ大陸アニアン国。黄色カラーをチームの色とするギャング団のローグェの経営するマリファナ農場。夕方。マリファナを収穫する隣国のオルレンジ共和国の解放奴隷達と武装したローグェのギャングスタ達。アサルトライフルを手に持つローグェのギャングスタAが解放奴隷Aを蹴り飛ばす。

 

ローグェのギャングスタA『朝から働いてこれっぽっちしかとれねえのか!?んんっ?』

 

解放奴隷Aに銃口を向けるローグェのギャングスタA。解放奴隷Aは震え両手をあげる。彼らの方を見る解放奴隷達。

ローグェのギャングスタBが空に向けて銃を撃つ。

 

ローグェのギャングスタB『何見てんだテメェら!そんな暇あったらさっさと働け!』

 

一斉に手を動かす解放奴隷達。少年解放奴隷のNo23はローグェのギャングスタ達を睨みながら収穫をする。彼の傍らに寄る少年解放奴隷のNo36。

 

No36『まったくあいつらいい身分なもんだよな。』

 

頷くNo23。

 

No36『銃持って俺達を蹴って、脅してはよ。』

 

響く銃声。

 

ローグェのギャングスタA『こら、そこ!無駄話するんじゃねえ!』

 

口を閉ざし作業を進めるNo23とNo36。

 

 

アラタナ大陸アニアン国。黄色カラーをチームの色とするギャング団のローグェの経営するマリファナ農場。深夜。月明かりに照らされる小屋の外壁にもたれかかり月を見上げるNo23。小屋の扉が開き、彼の隣に座るNo36。No23はNo36の方を向く。

 

No36『おいおい、寝ないと体が持たないぜ。』

 

ため息をつくNo23。

 

No23『オルレンジのほうがましだった…。』

 

No36『…脱走でも考えてんのか?』

 

俯くNo23。

 

No23『できればそうしたいよ。』

 

頷くNo36。

 

No36『四方にあみが張られてるから逃げようもないしな…。』

No23『オルレンジにのこれば元の農場に雇われ、国境を越えればギャングにこき使われる…。』

 

ため息をつくNo23。

 

No36『それにいざ、逃げれたにせよ。俺達には行く場所がねえからな。』

 

眉を顰めるNo23。彼は月明かりに照らされるマリファナの葉の方を向く。No23の方を向くNo36。

 

No23『このお草様の為に朝から晩まで働いて…。一生終えるんだろうか?俺、何のために生きてるんだろうな。』

 

マリファナの葉を睨むNo23。

 

No23『このお草様の為に…。』

 

No36はNo23の方を向く。

 

No36『確かにな…。こいつの栽培と収穫は大変だ。この広さだからよ。くっそ不味い飯。金が貰えるからって、買い物はギャングを通して…下手すりゃ借金だ。おまけに俺達はここから外にでれねえしよ。』

 

頷くNo23。

 

No36は後頭部に組んだ両手を当て、寝転がって月明かりに輝くマリファナの葉を見る。

 

No36『聞いたところによると…奴らこいつを高く売ってるらしいぜ。』

 

眉を顰めるNo23。

 

No23『本当か?…俺達がただ働き同然で汗水たらして作ったこの草を!』

No36『ま、作るより捌く方が金になるってことだな。』

 

歯ぎしりするNo23。

 

No36『

 

湧いた自由の美 桃源郷を夢見 もたらされた現実の味 進む先は闇

 

 

No23はNo36の方を向く。

 

No23『お、懐かしいな。それ。』

No36『これやっててオルレンジの奴らショットガンぶっぱなしてきたんだぜ。』

No23『深夜だからだろ。ははは。そんなこともあったな。』

 

No23の方を向くNo36。

 

No23『

 

流転 変転 暗転 

 

No36『

 

国境地帯を点々 ギャングに雇われ進展 揚句の顛末

 

No23『

 

辿り着いた未来は

 

No36『

 

賃金ピンハネ 銃で飛び跳ね 夜はうたた寝

 

 

No23『

 

解放 放浪 浪漫 

 

No36『

 

残れば 元の農場逆戻り 行けば ギャングの農場仲間入り 

 

No23『

 

なんて幻想

 

No23とNo36『

 

月明かり照らされ

 

No36『

 

求めてたのとは違う未来 手に入れた自由 煽って何の保障もない世界

 

No23『

 

漫吟 吟詠 詠唱 

 

No36『

 

無意味な抵抗 ばれたら速攻 奴らの激高

 

No23『

 

とりとめのない言葉

 

No36『

 

文句 俗句 たれながしながら 絶句

 

No23『

 

響かせながら放流

 

No23とNo36『

 

無意味な抵抗 逃れられぬ明日か

 

 

C1 意義 END

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C2 見せしめ

 

アラタナ大陸アニアン国。黄色カラーをチームの色とするギャング団のローグェの経営するマリファナ農場。早朝、小屋の扉が勢いよく蹴り開けられ、現れるローグェのギャングスタ達。

 

ローグェのギャングスタA『おい!起きろ!起きろ!』

 

ローグェのギャングスタ達は床に雑魚寝する解放奴隷達を次々と蹴る。起き上がる、または飛び上がる解放奴隷達。

立ち上がる解放奴隷達を見回すローグェのギャングスタA。時計の方を向く解放奴隷B。

 

解放奴隷B『あ、あのまだ起きるにはだいぶはやいような…。』

 

解放奴隷を睨み付けるローグェのギャングスタA。

 

ローグェのギャングスタA『てめぇらの中に不心得ものが居る!とっとと外に出やがれ!』

 

顔を見合わせながら小屋の外に出る解放奴隷達。最後列の解放奴隷の背をアサルトライフルの銃床で叩くローグェのギャングスタB。

 

ローグェのギャングスタB『並べ!』

 

横一列に並ぶ解放奴隷達。右端から順に彼らの顔を一人一人見ていくローグェのギャングスタA。顔をそらす解放奴隷多数。ローグェのギャングスタAはNo23の顔を見つめ、2、3回頷いた後、隣の解放奴隷の顔を見、再びNo23の前に戻る。No23に平手打ちをするローグェのギャングスタA。

 

ローグェのギャングスタA『てめぇだ!このクズが!!』

 

眼を見開き、瞬きするNo23。

 

No23『なっ!何のことだよ!!』

 

No23の背を蹴り、とばすローグェのギャングスタC。

 

ローグェのギャングスタC『とぼけんな!てめぇが脱走を考えていることなんざこちとらお見通しだ!』

 

倒れるNo23。

 

No23『げほっ!』

 

彼に暴行をするローグェのギャングスタ達。アサルトライフルを肩に置き、2、3回叩くローグェのギャングスタA。彼はNo23から顔をそむける解放奴隷達を眺める。

 

ローグェのギャングスタA『いいか〜。てめぇら。妙な考えを持つとこういうことになんだ!』

 

解放奴隷達を睨み付けるローグェのギャングスタA。

 

ローグェのギャングスタA『分かったか!』

 

眉を顰め俯く解放奴隷達。ローグェのギャングスタ達に暴行を加えられ、顔を歪めるNo23。

 

ローグェのギャングスタ『じゃあ、戻れ!変な考えを持とうとするんじゃねえぞ!』

 

下を向き、小屋に入って行く解放奴隷達。ローグェのギャングスタAはNo36を手招きする。No36はローグェのギャングスタAの傍らに寄る。暴行されるNo23の方を向き、No36の頭を撫でるローグェのギャングスタA。

 

ローグェのギャングスタA『よしよし、良くやった。』

 

眼を見開き、No36を見つめるNo23。彼に背を向けるNo36。

 

No23『No36!てめぇ!!うっ!』

 

No23は血を吐いて、突っ伏する。

 

C2 見せしめ END

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C3 救出

 

アラタナ大陸アニアン国。インリアビーチ。かすかな息をするNo23。

 

ローグェのギャングスタAの声『…いつの代わりならいくらでもいるからよ。』

ローグェのギャングスタBの声『じゃ、沈めますか。』

 

機械音。

 

ローグェのギャングスタAの声『お、おう!そりゃ本当か?分かった。すぐに行く。』

ローグェのギャングスタCの声『どうした?』

ローグェのギャングスタAの声『獲物だ。どうやら外国の大型タンカーがこの辺りに来ているらしいぜ。』

ローグェのギャングスタDの声『おう。そいつはいい収入になりそうだぜ。』

ローグェのギャングスタBの声『おいおい。こいつどうするよ。』

ローグェのギャングスタAの声『…こいつ捨てる時間もねえしな。ま、このままで行こうぜ。』

 

エンジンの音と水飛沫の音がしばらく続く。

 

ローグェのギャングスタAの声『見えたぜ。ありゃでかいな。』

ローグェのギャングスタEの声『こりゃ期待できそうだ。けけ。』

 

エンジンの音と水飛沫の音。

 

ローグェのギャングスタAの声『ひっ!ひぃ!はは、話が違うじゃねえか!ロケットラ…おぐぇ!!』

ローグェのギャングスタBの声『ひっ!ひぃ!』

 

打撃音。

 

ローグェのギャングスタCの声『た、助けてく!ごへっ!!』

ザトゥの声『カノゥ。そちらは片付いたか?』

 

揺れるNo23の体。

 

カノゥの声『ううむ。まだ、息はある。』

ザトゥの声『カノゥ。』

カノゥ『はっ、ザトゥ様こちらへ来てください。』

 

 

アニアン国港湾都市トッチェ。港に停泊するユグドラシル大陸王国の大型タンカー。医務室。眼を開けるNo23。隣にはユグドラシル大陸王国の将軍で王弟のバトゥの側近のザトゥとカノゥが座っている。

 

No23『ここは…。』

 

No23の方を向くザトゥとカノゥ。

 

ザトゥ『気が付いたようだな。』

 

ザトゥの方を向くNo23。

 

No23『…俺、No36に裏切られて、暴行されて…んっ?』

 

起き上がるNo23。

 

No23『ここは天国なのか?』

 

ザトゥとカノゥの方を向くNo23。

 

No23『…てことはおっさん達は天使…天使がおっさん?』

 

眼を閉じ、眉を顰めるザトゥ。

 

ザトゥ『おっさんと呼ぶな!お兄さんと呼べ!』

 

笑うカノゥ。

 

カノゥ『ここは天国でもなんでもない。我がユグドラシル大陸王国の大型タンカーの医務室だ。』

 

首を傾げた後、下を向き、ザトゥとカノゥの方を向くNo23。

 

No23『そういえばあいつらは?ギャ、ギャングの奴らはどうなったんだよ?』

カノゥ『ああ。君のお仲間ならアニアンの警察に引き渡した。』

 

カノゥの方を向くザトゥ。

 

ザトゥ『しかし、お前、何かやらかしたのか?ギャングどもの仲間内のリンチが凄惨とは聞いていたが…。』

 

ザトゥを睨み付けるNo23。

 

No23『あんな奴ら、仲間じゃねえ!俺はオルレンジの解放奴隷なんだ!あいつらの手引きで国境を越えれたと思ったら、そこで草を育てるためにこき使われて…。』

ザトゥ『草?』

 

頷くNo23。

 

No23『良くわからないけど、でも高値で売れる草らしいんだ。』

 

顔を見合わせ、頷くザトゥとカノゥ。

 

No23『そこで俺、脱走を考えたってだけの理由で…。』

 

顔を覆うNo23。

 

No23『ああ…No36…No36!!』

 

彼の手の間から滴が毀れる。

 

ザトゥ『ところで貴様の名は?』

 

俯くNo23。

 

No23『…名前なんてねえよ。俺達元奴隷は番号で呼ばれんだ。俺はNo23。』

 

頷くザトゥとカノゥ。

 

C3 救出 END

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C4 名付け

 

アニアン国港湾都市トッチェ。港に停泊するユグドラシル大陸王国の大型タンカー。医務室。ベットから体を起こし、食事を摂るNo23。彼はパンを頬張り、スープを一気飲みする。

 

No23『うめえ!こんな美味い物今まで食ったことがねぇ。』

 

椅子に座りNo23を見るザトゥ。船医が彼の傍らに寄る。

 

船医『ザトゥ様。この分なら後数日で回復するでしょう。しかし…。』

 

ザトゥに耳打ちする船医。眼を見開きパンを置くNo23。ザトゥは船医の方を向く。

 

ザトゥ『うむ。まあ、致し方のない事だろう。そのまま頼むぞ。』

 

No23は掛布団を握り、中に潜り込む。眉を顰め、彼の方を向くザトゥ。

 

ザトゥ『どうした?』

No23『いたい!いたたたた。』

 

掛布団を取る船医。ベットの上でもだえるNo23。

 

船医『どうした?』

No23『き、傷口が…。いたっ!』

 

立ち上がるザトゥ。

 

ザトゥ『猿芝居は止めい!』

 

No23はザトゥを見上げる。No23を見下ろすザトゥ。震えるNo23。

 

ザトゥの方を向く船医。No23は起き上がりザトゥの袖を掴み、目を潤ませる。

 

No23『お願いだよおっさん!お、俺。もうあそこには戻りたくないんだ!い、行く場所もねえしよ。頼むよ!ほら、お、俺何でもするから。お願いだからここにおいてくれよ。』

 

ザトゥはNo23を見つめ、咳払いする。

 

ザトゥ『そのことについてだが…我々からも貴様に話がある。』

 

眼を見開くNo23。

 

ザトゥ『それから、おっさんではない。お兄さんと呼べ。お兄様でも構わんぞ。』

No23『わ、分かったよ。それで話って?』

 

ザトゥはNo23を見つめる。

 

ザトゥ『この話にのればお前は二度とこの地へ戻れなくなるぞ。そして、お前はお前ではなくなる。それでもいいというならば…。』

 

勢いよく立ち上がるNo23。

 

No23『構わないよ!』

 

船窓からトッチェの街並みを見つめるNo23。

 

No23『俺、ここにいい思い出なんかないから。』

 

頷くザトゥ。

 

ザトゥ『ならばついて来い。しかし、途中で引き返すことはできんぞ。それでもいいのか?』

 

ザトゥを見つめ深く頷くNo23。

 

 

アニアン国港湾都市トッチェ。港に停泊するユグドラシル大陸王国の大型タンカーブリッジ内部。特別室の前に立つザトゥ。その後ろにはNo23。ザトゥはNo23の方を向く。

 

ザトゥ『この扉を開ければ、もう後戻りはできんぞ。』

 

頷くNo23。

 

No23『ああ。分かってる。』

 

特別室の扉をノックするザトゥ。

 

ザトゥ『ザトゥでございます。かの者を連れて参りました。』

バトゥの声『入れ。』

 

No23の肩に手を当て、扉を開けるザトゥ。特別室内部。椅子に座り彼らの方を向くユグドラシル大陸王国の将軍で王弟のバトゥ。隣にはカノゥ。No23はバトゥを見て、眼を見開く。

 

No23『…あ、ああ。』

 

No23はバトゥを暫し見つめる。立ち上がり、No23の傍らに寄り、顔を覗き込むバトゥ。No23はザトゥの方を向く。

 

No23『お、俺?これ…俺が…俺が居る。』

 

No23を見るザトゥ。

 

ザトゥ『お前ではない。このお方はユグドラシル大陸王国の将軍で王の弟君であらせられるバトゥ様だ。』

 

眼を見開くNo23。

 

No23『バ、バトゥってあのなんたらどうたらこうたら国の名将の…。』

 

蹲って泣き出すNo23。

 

No23『俺、まだ十代なのに三十路過ぎのおっさんと同じ顔なんて…。』

 

一歩前に出るザトゥ。

 

ザトゥ『な、何を言うか!我が主は、容姿端麗頭脳明晰であり、年齢よりだいぶ若く…。』

 

笑い出すバトゥ。

 

バトゥ『よいよいザトゥ。』

 

バトゥはNo23の顎を上げる。

 

バトゥ『しかし、まことに瓜二つだな。』

カノゥ『は。ギャング団の船で虫の息のこの者を見つけたときは目を疑いました。』

 

バトゥはNo23を見つめる。

 

バトゥ『ここまで似た者はそうはいない。そこで、君に私の影武者として働いて欲しい。』

 

眼を見開き、首を傾げるNo23。

 

No23『影武者…。』

 

No23を見つめるバトゥ、ザトゥ、カノゥ。バトゥを見つめるNo23。

 

No23『よ、よくわからないけど俺、やるよ。ここに居させてくれんなら!』

 

頷くバトゥにザトゥ、カノゥ。

 

No23『で、その影武者ってのは何すればいいんだい?』

バトゥ『要所要所で私の身代わりとなってほしい。』

 

眼を見開いてバトゥを見つめるNo23。

 

No23『あんたの身代わり…そんなたいそうなこと。だって俺、奴隷だぜ。学もないし…ボ、ボロがでちまうよ。』

 

バトゥはNo23の眼を見つめる。

 

バトゥ『心配するな。』

 

バトゥはザトゥとカノゥの方を向く。

 

バトゥ『ここにいるザトゥとカノゥから学べばよい。時間は十分ある。』

 

ザトゥとカノゥの方を向くNo23。

 

バトゥ『ザトゥ。カノゥ。頼んだぞ。』

 

頭を下げるザトゥとカノゥ。

 

ザトゥ『はは。』

カノゥ『はは。』

 

バトゥにひれ伏すNo23。バトゥはNo23の方を見つめる。

 

バトゥ『ところで君の名はNo23だったな。』

 

頷くNo23。

 

バトゥ『名前がNoなのは不便だ。』

 

No23を暫し見つめるバトゥ。

 

バトゥ『うむ。No23これよりジョトゥと名乗るがいい。』

No23『ジョトゥ…。』

 

バトゥの傍らに寄るザトゥ。

 

ザトゥ『よろしいのですか。それはクセルクセス様が溺愛し、早世してしまった聡明な末子の名…。』

 

バトゥの傍らに寄るカノゥ。

 

カノゥ『そのおかげでクセルクセス様の狂気は悪化した。よろしいのですか?』

 

頷くバトゥ。

 

バトゥ『良い。彼を見ていると赤の他人であっても…そうは思えない。』

 

No23は自身の体を見つめる。

 

No23『ジョトゥ…。それが俺の新しい名前…。』

 

C4 名付け

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C5 決意

 

アニアン国港湾都市トッチェ。港に停泊するユグドラシル大陸王国の大型タンカー。ザトゥの部屋の前に立つバトゥ。

 

ジョトゥ『いいじゃん。だって、手で取った方がやりやすいし。』

ザトゥ『駄目だ!もう一回。できるまで、それは食べてはならん。』

ジョトゥ『嫌だ。食べるの俺。それ!』

ザトゥ『こら、そのものいい。なんとかせんか!』

ジョトゥ『ええ!だって俺これで今まで来たんだぜ。』

 

扉をノックするバトゥ。

 

バトゥ『バトゥだ。入るぞ。』

 

扉を開くバトゥ。バトゥの方を向くジョトゥにザトゥ。ザトゥはため息をつく。

 

バトゥ『大変そうだな。』

 

頷くザトゥ。

 

バトゥ『少しジョトゥを借りる。いいか?』

 

頭を下げるザトゥ。

 

 

アニアン国港湾都市トッチェ。港に停泊するユグドラシル大陸王国の大型タンカー。廊下を歩くバトゥ。その後ろに続くジョトゥ。

ジョトゥはバトゥの背に目くばせする。

 

ジョトゥ『あ、あの…。』

バトゥ『…我々は明日、出港する。』

 

眼を見開くジョトゥ。

 

バトゥ『今日でこの景色を見るのも最後になる。』

ジョトゥ『…俺、ここにいい思い出なんかないし。』

 

一歩前に出るジョトゥ。

 

ジョトゥ『出るんなら早く出てくれよ。その方が…。』

 

港町を埋め尽くす群衆。アニアンの軍隊に連行される大勢のローグェのギャングスタに白をチームの色とするロザリオンのギャングスタ達。窓に駆け寄るジョトゥ。

 

ジョトゥ『あれは…。ローグェの奴らだ!軍につれられてらあ。』

 

ジョトゥの傍らに寄るバトゥ。バトゥの顔を見るジョトゥ。

 

バトゥ『国軍による麻薬カルテルの公開処刑だ。統括官が変わり、国軍が本腰を入れ始めた。』

ジョトゥ『へ〜。それなら、ここからギャング団はいなくなるんだ。じゃあ、あの農場の奴らも…。』

バトゥ『表向きは。』

 

眼を見開くジョトゥ。

 

ジョトゥ『えっ?表向きってどういうこと?』

 

バトゥは群衆の中に混じる青をチームの色とするカルナンデスのギャングスタ達を指さす。

 

ジョトゥ『青いのが混ざってる…まさか!』

 

頷くバトゥ。

 

バトゥ『ここの統括官になったヘヴィンヴィという蛇男はギャング団のカルナンデスとの黒い噂がささやかれている。

ローグェ、ロザリオンが締め出され、この地区はカルナンデスの独占になるだろう。』

 

眉を顰めるジョトゥ。

 

ジョトゥ『そんなの…何も変わらないじゃないか。』

 

頷くバトゥ。ジョトゥは船窓からローグェのギャングスタ達を見つめる。ジョトゥの目に映る黄色い衣服を着たNo36。ジョトゥは一歩前に出る。

 

ジョトゥ『No36!…あいつ…ローグェのギャングスタに…。』

 

港に並ばされるローグェ及びロザリオンのギャングスタ達。青ざめ震えるNo36。顔を歪めるジョトゥ。No36を見た後、バトゥの方を向くジョトゥ。

 

ジョトゥ『バトゥさん…バトゥ様!』

 

ジョトゥの方を向くバトゥ。

 

ジョトゥ『と、友達が居るんです!助けてください!』

 

眉を顰めるバトゥ。

 

ジョトゥ『あいつは俺と同じオルレンジの農場出身で、友達なんです。そりゃ、俺あいつに裏切られたけど俺だって、あいつと同じ考えを持ったらそうしたかもしれない。根はいい奴なんです!魔が差しただけなんです。だから…。』

 

下を向くバトゥ。

 

バトゥ『すまない。』

 

眼を見開くジョトゥ。

 

ジョトゥ『…そんな。だって、あなたは名将で王族なんでしょ。俺を助けてくれた時のように…。』

 

ジョトゥに背を向けるバトゥ。

 

バトゥ『私はこの国の王族ではない。』

 

眼を見開くジョトゥ。バトゥの前に駆けていくジョトゥ。

 

ジョトゥ『そんな。だからって!』

バトゥ『これはこの国の問題だ。君はたまたま我が国のタンカーをギャング団が襲ったから助けることができた。』

 

眉を顰めるジョトゥ。

 

ジョトゥ『そんな。』

 

銃声。

 

窓に駆け寄るジョトゥ。港を埋めるローグェとロザリオンのギャングスタの死体の群れ。倒れているNo36を目に映し、崩れ落ちるジョトゥ。

 

ジョトゥ『No36!No36!!』

 

泣き出すジョトゥ。俯くバトゥ。

 

バトゥ『本当にすまない…。』

 

 

アニアン国港湾都市トッチェ。港に停泊するユグドラシル大陸王国の大型タンカー。夕方、ザトゥの部屋。ナイフとフォークを使うジョトゥ。彼を見つめるザトゥ。ジョトゥは瞬きしてザトゥの方を向く。

 

ジョトゥ『どうしました?』

 

眉を顰めるザトゥ。

 

ザトゥ『…いつもなら手掴みでものを食べ、汚い言葉を使うお前が。』

 

ナイフとフォークを置くジョトゥ。

 

ジョトゥ『…ザトゥのおっさん。』

 

眉を顰めるザトゥ。

 

ザトゥ『おっさんではない。お兄さんと呼べ。』

ジョトゥ『おっさん…俺、運が良かったんだよな。』

 

俯くジョトゥを見つめるザトゥ。

 

ザトゥ『そうだな。ところで、さっきの話は聞いてたか?』

ジョトゥ『俺、影武者になれば貴族と同じ生活ができるんだって甘ったれてた。』

 

頷くザトゥ。

 

ザトゥ『そうだろうな。』

ジョトゥ『でも、あんたらに拾われ、折角拾った命なんだ。』

 

ジョトゥはザトゥを見つめる。

 

ジョトゥ『俺、影武者の仕事、頑張るよ!だから、色々教えて欲しいんだ。』

 

ジョトゥを見つめ頷くザトゥ。

 

C5 決意 END

 

END

説明
・必要事項のみ記載。
・グロテスクな描写がございますので18歳未満の方、もしくはそういったものが苦手な方は絶対に読まないで下さい。
・心理的嫌悪感を現す描写が多々含まれておりますのでそれういったものが苦手な方は絶対に読まないで下さい。
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