艦これ Shoot record Story |
- パプアニューギニア ブイン基地・鎮守府 -
日本本土から離れた地にある、極東・日本海軍前線基地。
世界各地に現れた『深海棲艦』に対するべく生まれ変わった『艦娘』たちが住まう場所である地だ。
其処には多くの艦娘達も居ており、今日もその一日が始まろうとしていた。
カッカッカッ・・・
木材で出来た廊下を黒い靴で歩く音がする。規則正しくリズムが鳴り、足の動きも健全だ。
セーラー服に黒いタイツと言う服装だが、それが彼女の制服といってもいい。
その服をなびかせ、彼女は片手に資料の束を持って歩いていた。
行き先は一つ。彼女の上官の居る所だ。
「・・・。」
行き先にたどり着いた彼女は右手を出して手の甲で木製の扉を二回ノックした。
しかし中から返答は無い。だが、そんな事はお構いなしに彼女は扉を開け中に入ったのだ。
それは彼女が中に居る上官が返答しない事を解っていたからだ。
「・・・はぁ・・・」
部屋に入ると其処は執務室だった。
戸棚や客人相手の為のソファ。テーブル。一通り揃っていたこの部屋に一つだけ不似合いのがあった。
それは、その部屋の主がデスクの下に足を出し、帽子で顔を隠して寝ていたのだ。
見て呆れた彼女はため息を吐き、そのままズカズカと寝ている者の所に近づく。
そして。
「ほら!さっさと起きなさい!何時だと思ってるのよ!!」
「・・・・・・・・・・ん・・・」
「全く・・・私室に居ないと思ったらやっぱりココだった・・・寝るのだったら自室で寝なさいってアレほど言った筈よ!」
「っ・・・・・・その声・・・叢雲か・・・」
薄い青髪をなびかせ赤い瞳を持つ艦娘。
特型駆逐艦。その五番艦、「叢雲」。その艦が人となり少女となって其処に居たのだ。
その叢雲が怒鳴った相手。それが彼女の上官でありこのブイン基地の提督だ。
彼は制服である白い海軍服を着たままココで寝るというのが時折あり、それを良く秘書である彼女に注意されていた。
それがまた今日も行われていたのだった。
「・・・・・・。今何時だ?」
「・・・午前七時四十分。」
叢雲は腰につけていた懐中時計を開けると其処に刻まれていた時刻を読み上げた。
もうとっくに朝日は上がり、本土よりも少し熱めの日差しが差し込んでいる。
それを聞き提督は帽子を被りなおしながら時間を聞いていた。
「もうそんな時間か・・・」
「そうよ。貴方が居ない間にこっちで朝礼と朝食は終わったから。」
「・・・そうか。」
「・・・・・・。ほら、さっさと顔洗って食堂に行きなさい。後、昨日渡した書類は?」
「其処に置いてある。持っていってくれ。」
「・・・はぁ・・・仕事は出来るのにどうして貴方は他の佐官と違って私生活全く駄目なのかしらねぇ・・・」
私生活全く駄目を強調して話した叢雲だったがその言われた相手は眉一つ動かさず動じない顔をしていた。もう彼女の言い方に慣れたという顔だ。相当何度も言われたのだろう。
無言のまま提督は椅子から立ち上がりそのまま一直線に扉に向かい、ドアを開ける。
そこで改めて帽子を被りなおすと、その場を後にしたのだった。
- 鎮守府 大浴場付近 -
鎮守府内の大欲所。艦娘達の入渠もこの辺りでするのが常である。
その近くに大洗面所なるものが存在し、そこで鎮守府に居る者達は手を洗ったりする。
其処にたどり着いた提督は白いタオルを首に掛け、蛇口から出る冷たい水を手に集めて顔に浴びせていた。顔を水と共に滑らせると顔に付いていた汗が取れていく。
今は一人だけなのでこうして誰の目も気にせず大雑把に顔を洗ったり頭から水を被ったりする事が出来る。
筈だったが。
「くあぁ〜・・・・・・あれ・・・提督?」
「・・・瑞鶴?」
薄い黒のツインテールの髪をして迷彩柄の胴をつけた艦娘『瑞鶴』。叢雲の話では艦娘達は先に起きていた筈なのに彼女だけはどう見ても今お起き立てと言う顔をしていた。
(やっば〜・・・)
「・・・瑞鶴。どうした。」
「い、いえ!少し手を洗おうと・・・」
「・・・・・・また寝坊か。」
「ってバレてる!?」
隠そうとしたのに一発で寝坊したというのがバレ、瑞鶴は思わず声を上げた。
提督も何も言っていないのに唯の当てずっぽうでそんな反応をしたのでため息を吐いていた。
「・・・。遅くまで何をしていた?」
「ゴメン、ちょっと艤装の整備を・・・今回はマジで・・・」
「・・・それなら別にいいが・・・お前は第一艦橋のメンバーだ。それにこの鎮守府に居るのも長い。それでは後から来る者達に示しが付かんぞ。特にゲームではな。」
「うっ・・・・・・流石に痛い所をビシビシと・・・」
「兎も角。さっさと顔を洗って食堂に来い。間宮が残り分はあると言っていたからな。また赤城に食われるぞ。」
「はーい。」
適当な返答をしていた瑞鶴を横に、提督は顔を拭いて帽子を被る。
そしてタオルを返却口に返却するとその場を後にして大浴場からそう遠くない食堂に向かって行った。
瑞鶴も頬を膨らませて子供の様に剥れていたが、ココである事に気が付いた。
「・・・来い?行って来いじゃなくて?」
行って来いならまだ話はわかる。だが、『来い』と言うことは・・・
「・・・今日ばっかりは提督に言われたくなかったわ・・・」
- 大食堂 -
「はい!遅い朝食セットよ。」
「すまんな間宮。」
「いえ、時折あるので慣れましたよ。」
艦娘達が全員以上入るスペースの大食堂。
その一角に調理場と受け取り場があり、其処には糧食班担当の『間宮』が割烹着を着て調理場に立っていた。調理場から渡された和食の朝食定食を貰い、提督は適当な席に座る。
すると、その彼の姿を見て、また一人の艦娘が彼に寄って来た。
「おう。遅い朝飯だな。」
「ん、木曾か。」
金のディテールが入ったパッチを右目に付け、少し短めになったセーラー服を着ている。
そして後ろ腰に一本の軍刀を刺している。
普段はマントを着用しているが鎮守府内なので外しているのだろう。
球磨型の五番艦『木曾』だ。
「また昨日も徹夜したのか。」
「・・・まぁな。」
湯のみを持って木曾が近くの長テーブルに付けられた繋がった長椅子に座り、提督と世間話を始めた。
上官なのに話の目線が同じなのはどうかと言われる事もあるが提督は特に気にせず木曾に対して何も指摘はしなかった。
その木曾としばらく話をしていると提督はある事を思い出し、木曾に尋ねた。
それは他のメンバーの事だ。
「木曾、そういえば今日『蒼龍』と『比叡』。後『陸奥』を見てないか。後で用事がある。」
「・・・あー・・・その事かぁ・・・」
「・・・?」
木曾が歯切れの悪い言い方をして頭をかしげる提督。
すると言いたくないが言うべきかと決心し、木曾が思い切って提督に三人の居場所を打ち上げたのだ。
「・・・比叡と蒼龍は・・・陸奥に喰われかけてる。」
「・・・そうか。」
「・・・。」
直ぐに納得した提督。最早何時もの事と知っていたからだ。
「んふふ・・・さて今日はどっちを食べようかしら・・・」
「ひええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!ぜ、全力で逃げますよ蒼龍さん!!」
「わ、解ってますって!!!」
「・・・提督。あの欲求不満女、一度斬って良いか?」
「却下だ。陸奥は何時もの事だし色々と面倒だ。それに、そう言う関係で恐ろしいのは間宮だけで・・・」
ガスッ
刹那。木曾が飲んでいた湯飲みに突如一本の包丁が付き刺さっていた。
其れを見て二人は無言となり『二メートル』離れた調理場を見た。
「ふんふ〜ん・・・今日も、良い日だ♪○○○の日だ〜♪」
※○については自己判断でお任せしていますので責任は自分でとったりしてもいいです。
「・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
無言で食べ終えたトレイを持つ提督。そのまま無言で歩いて返却口に行き、木曾と二人でその場を後にしようとした、のだが・・・
「あ、提督。」
「・・・・・・・・・・何だ、間宮。」
「さっきの包丁、戻しといて下さい。アレ、使い勝手が『色々と』いいので♪」
「・・・・・・・・・ああ・・・」
地獄の蓋を開けるべきではなかったなと内心後悔した提督だった・・・
色々な性格の面を持つ娘達。ある者は真っ直ぐに彼を慕い。またある者はその本音をテレ隠す。慕うというよりも尊敬、敬っているという者も無くは無い。
そんな彼女達と過ごす日々のも一興。
しかし。彼女達は軍艦。戦うのが使命だ。
『提督。今すぐ通信室に来てください。繰り返します・・・』
用件だけを言った放送に提督や鎮守府一帯に居た娘達は顔を放送スピーカーに向ける。
通信室からの呼び出しとなるとただ事ではない。提督は何があったのかと走っていき、木曾もその後を付いて行く。
- 通信室 -
基地の通信室は装備が近代式でありレーダーなども備わっている。しかし、未だに電報などもしようしておりそれがこの基地から基地外に対しての手紙代わりになっていた。(黒電話などもあるが。)
「鳥海。何があった。」
「あ、すみません急がせてしまって。」
青いセーラー服と眼鏡と言うこの鎮守府では珍しい服装をしている艦娘。髪が長いのも特徴か。高雄型の四番艦『鳥海』。主に通信系を担当もする艦娘だ。
「別にいいんじゃね?其処まで息切らしてねぇって事は近かったんだろ?」
「摩耶。提督に失礼よ。」
「・・・へん。」
その隣には鳥海の妹で五番艦の『摩耶』が立っており、彼女は姉とは真反対の態度で提督に喰いかかった。しかし、電探系に強いのは姉譲りなのは確かである。
「構わん。それより何があった。」
「はい、此方に・・・」
「って何で木曾が居んだよ。」
「偶々一緒でな。ついでだから付いて来てみただけだ。」
「・・・ホントかよ。」
「・・・試してみるか?」
「・・・・・・。」
「今から六分前、北方のキス島を調査中だった舞鶴鎮守府の第二艦隊から撤退支援の要請。どうやら北方の敵艦隊がかなりの数で本土からの増援だけでは苦しいとの事です。」
「舞鶴・・・しかもキスとはな。」
「確か・・・第四艦橋の子達が北方方面の艦隊に弾薬と燃料の補給に向っていましたね・・・」
「電たちと連絡は取れるか?」
「先ほどからしてはいますが・・・」
「・・・よし。舞鶴に打電。こちらからは第一艦橋を行かせる。」
「了解しました。」
「木曾。」
「はいよ。全員を・・・第一作戦室でいいか?」
「ああ。直ぐに頼む。」
提督の言葉に木曾は以心伝心でもしたのか直ぐに何をするべきかを理解し、放送用のマイクを使って第一艦橋の面々に召集をかけた。
それによって鎮守府は慌しくなり、工廠は特に大騒ぎになっていた。
「やれやれ、北とはな・・・・・・・・・第一艦橋の艦は直ぐに第一作戦室へ!繰り返す!」
「・・・召集・・・!」
「って私まだご飯がぁぁぁぁぁぁ!!」
「アレ?私達呼ばれてます?」
「みたい・・・ね。」
「・・・残念。」
「陸奥さんいい加減諦めてくださいって!!」
召集を呼びかれられた叢雲・比叡・陸奥・蒼龍・瑞鶴は急いで駆け出し、集合場所である第一作戦室に集まっていく。其処は艦娘達が出撃前に作戦会議を行う場所で最初期から使われている場所でもある。其処に集まって作戦会議をする。それがこの鎮守府での決まりだ。
「総員集まったか。」
「って、何で木曾さん提督と居るんですか?」
「偶々だ。」
比叡の鋭い一言を入ってきてから提督が直ぐに軽くあしらう。
既に第一艦橋の面々は一つの地図が張られたテーブルの周りに立っており、提督がテーブルに手を置くと地図を北方の拡大図に取替えて直ぐに作戦会議を始めた。
「今回の任務は現在撤退を始めている北方の調査艦隊、舞鶴第二艦隊の撤退支援。現在位置はキス島から南西に十キロ。撤退開始から既に四十分が経過し現在も舞鶴艦隊は撤退している。」
「って事は、私達は舞鶴の所の艦達が逃げる為の囮になれと。」
「そうは言わん。各方面からも支援艦隊が出ている。どうやら相当の数が出てきたらしくてな。現在撤退中の舞鶴艦隊は壊滅状態に近いらしい。」
「・・・つまり、私達は後詰って事かしら?」
「ああ。」
陸奥の簡潔な説明に彼女達も納得の表情となる。どうやら囮は流石にゴメンだったらしい。
だが、彼もゴメンだ。大事な者達を囮に使う気はサラサラ無い。あったとすればそれは唯の悪夢だ。彼はそう言うのだ。
「また、現在北方艦隊に補給物資を届けていた第四艦橋とは現在通信が途絶えている。」
「それを先に行ってくださいよ提督ッ!?」
「・・・すまん。兎も角。お前達には撤退する艦隊の支援と第四艦橋の面々の安否。この二つが今回の任務だ。」
「あの子達・・・大丈夫かしら。まともに装備持っているのって確か二人だけよ・・・」
「だからこそ急ぐ必要がある。工廠の整備班には寒冷地仕様にするように伝えてある。直ちに艤装周りの換装後、各自準備完了を旗艦に伝えろ。完了次第出撃だ。」
「「「「「「了解ッ!!」」」」」」
さて。今回はこれにて幕閉じとしよう。この先彼女達がどうなるのか。
これまで何があったのか。それは其処に居る者達だけが知る。
そしてココとはまた別の場所で新たな物語が始まるのも然り。
貴方達の海の戦いは、果たして何処に行くのでしょうか。
それは貴方達でご覧になってください。
「フフッ・・・いよいよ戦場ね!」
説明 | ||
ちょっとしたショートストーリーです。 出るのは主に自分の所の艦娘達+αです。 |
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