義輝記 星霜の章 その九
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【 意外な活躍 の件 】

 

? 益州 成都近辺 にて ?

 

山の傾斜を降りて向かってくる『火牛』!

 

多くの兵達が弾き飛ばされ、刺し殺され、蹄で蹴られたり踏み潰されたりと、阿鼻叫喚の地獄絵図が、ここに広がっている!!

 

しかし、この『真・火牛の計』を阻む者も………同時に存在した。

 

迷吾「おおおりゃあああぁぁ────!!」

 

暴れ狂う『火牛』の角を持つ迷吾!

 

迷吾「ふぅ! ふぅ! ふっ────!!」

 

メキメキ……メキメキ………!

 

迷吾「ふっっざけんじゃねえぇ──────!!」

 

バキッ! バキッ!  ブモォオオォォオオ!

 

牛の角をへし折り、『火牛』は痛烈な痛みで先程より凶暴化した!

 

迷吾「テメェは──とっとと、死んでろおぉぉぉ!!」

 

ガゴオォォーン!! 

 

『正拳突き』を牛の額に食らわす! 

 

グバアァ────! 

 

ドドドオォォ───ン!

 

牛は───声を挙げる事なく倒れた。 かの『牛殺し』で高名な空手の大先生が御覧になれば、手放しで誉め讃えたと思われる……見事な突きであった…!

 

ーーー

 

阿貴「………考えたな! だが、弱点を付けば………フッ!」

 

剣を鞘に入れ、腰を低めにして『火牛』が来るのを待つ……阿貴!

 

『火牛』は怒り狂いつつ、阿貴に目掛けて襲いかかる!

 

ガッガッ! ドドドオォォ────! 

 

ブホオォォオオオォ!

 

────シュッン!─────

 

飛鳥の如く、牛の進路方向に外れた部分へ避ける。 しかし、剣は既に抜き身になっており、血に濡れていた。

 

ドゴゴオオオォォ───!! ズザアァァァ───!!!

 

バタン! バタン!  ブモォ! ゴアアァァ!!

 

『火牛』の左前足は、膝から斬られ……後ろに落ちていた。 このを事を『火牛』が知ったのは、地面に倒れ、激しい痛みに襲われた直後。 

 

何故ならば……荒れ狂う『火牛』が、地面に倒れると、鳴き声が哀愁と怒りの

交えた鳴き声に変わったからだ。

 

阿貴「巨大な体躯の割りには細い足! 当たる直前で、相手の勢いを利用し斬れば、力を入れずとも簡単に切断できる!」

 

『火牛』を斬った後、すぐに血を払って体勢を直し、次の『火牛』へと向かって行った────! 

 

ーーー

 

? 益州軍陣地 山頂  にて ?

 

焔耶「はっ! 骨があって面白いじゃないか! ワタシが相手を──!」

 

紫苑「まだまだ駄目よ? ここからが、お楽しみじゃない!」

 

焔耶「あぁ──大将軍の見せ場ですね? ですが…武に秀でるとは到底思えないあの男……。 なんで、あんなに……前線に立ちたがるのでしょう?」

 

紫苑「焔耶ちゃん……。 人は見掛けで判断すると…痛い目に会うわよ?」

 

焔耶「しかし! あの男は……余りにも鈍すぎます! ワ、ワタシの事は別にしても……桔梗様、紫苑様が、あれほど御心配されていたのに………!!」

 

紫苑「………仕方ないのよ。 

 

前へ出るのを止めて欲しいと、私や桔梗が何度もお願いしたけど、聞き届けてもらえない。 

 

あの方には………あの方しか分からない、重い責任と固い意思があるのでしょうから。

 

だけど………そう言う焔耶ちゃんだって、口では『怒ってますよ状態』だけど、本当は心配しているのでしょう?」

 

焔耶「ワタシは……大将軍の地位にある者が、軽々しく出て行くなと、憤然としているだけです! た、ただ、大将軍が……怪我をされると……心配する者が数多くなる! ………それだけ……なんですよ!?」

 

紫苑「あらあら………ふふふっ」

 

◆◇◆

 

【 滑る竹槍 の件 】

 

? 西涼 西涼城付近 にて ?

 

西涼兵「報告! 砦前方から砂塵確認! 敵騎兵隊、突撃してきます!」

 

詠「全軍!『竹槍』用意!!」

 

詠の号令に合わせ、西涼兵が準備した『竹槍』を準備! 砦から前方の地面まで張った『大布』へ『竹槍』を動かぬように手で押さえ………命令を待つ!

 

西涼兵「敵騎兵隊! 『凍結した地面』に近付きました!!」

 

詠「やれっ!!」

 

パッ! パッ! パッ!

 

詠の命令で布を華麗に滑り落ちる『竹槍』! 

 

長さは平均三尺(約70センチ)になる枯れた竹。 少し長短はあるものの、実際に竹槍として使えそうなぐらい、鋭く尖らせている。 

 

だが、このまま滑らせると、布に引っかかるため、少し先端を曲げて、布に掛からないよう加工してある。

 

シュ〜〜! シュ────ン! 

 

布を軽快に滑り、速度を増した竹槍の群は………こちらに向かってくる匈奴兵の大軍に、無慈悲に突撃していった─────! 

 

ーーーー

 

匈奴兵達が今進行している場所に、氷が薄く張っている。 別に普段から凍っているわけではなく、事前に西涼軍が水を撒いたためだ。

 

理由は二つあり、一つは……当然ながら匈奴兵の進行を遅らせるため。

 

そして、もう一つは……高低差と摩擦の減少で速度を上げ、勢いを増す竹槍達に、更に速度を上げて、殺傷能力を高めて貰う為である!!

 

 

 

布から飛び出した竹槍は、氷の上を滑って移動する。

 

シュッ────ン!! シュシュ───ン!!!

 

匈奴兵「た、竹槍がぁ!!──────突っ込んでくるぞ!!!」

 

匈奴兵「避けろっ! 避けるんだぁぁあ!」

 

こちらに向かっていた匈奴兵の軍勢に、竹槍が突っ込んで行く!!

 

シュ────ガコッン! ヒヒヒィ───ン! 

 

匈奴兵「うわあぁぁああ────!!」

 

ボコッ! ガタンッ! ガッガッ!!

 

ある者は馬を殺され、ある者は自分が、またある者は両方…………それぞれ被害を被る結果となり、騒然と化す!!

 

ーーー

 

例えば…………

 

匈奴兵「止まれ、止まれえぇ!!!」

 

ある者は、馬に停止の指示を出す! ……当然、馬も従おうとするが、氷に足を取られ完全に止まる事が適わず。

 

ガッ! ズズッ、ズルズルズル─────ッ!!

 

匈奴兵「と、止まらねぇ─────ッ!?」

 

ドカッ! シュシュ─────!!

 

グサッ!! ヒッヒヒィ─────ン!!

 

匈奴兵「ば、ばかなぁ─────!!」

 

こうして……竹槍の餌食となる運命になる者……多数!

 

★☆☆

 

? 西涼軍 陣営 にて ?

 

それを見ていた詠が、弓兵を動かし矢を放つ! 矢は反董卓連合攻めで、颯馬の策で集めた物。 今も充分在庫が残っている!

 

詠「今よ! 一斉に射てぇぇ!!!」

 

シュンシュンッ! シュバッシュッバ!

 

ーーー

 

? 匈奴兵側 布陣 ?

 

倒れ伏せている匈奴兵に容赦無く攻める西涼軍!

 

匈奴兵「グハッー!」

 

匈奴兵「ギャアァァ─────!?」

 

ーーー

 

劉宣「おのれぇ! 小細工などしおって! ………しかし、この地に竹が自生する事など少ない不毛の地! どのみち、攻撃など直に止むはず!!」

 

ーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーー

 

確かに………攻撃は止んだ。 攻撃は、僅かに三回だけ。

 

でも、辺り一面には『竹槍』だらけで、馬の進行は支障を来たす。 歩兵で向かったとしても、地面が凍っているため、攻撃を敢行できるか分からない。

 

やむを得ず、匈奴軍勢を引き上げさせ、陣営で待っていた他の五胡達が騒ぎ立てる!! 

 

鮮卑将「何を無駄に時を費やしていやがる?! 馬騰には恨みがあるんだ! この機会に報復できると聞いて、参加してやったのに────!!」

 

羌将「そうだ! 凍って滑るのが嫌なら、日が昇ってから攻めるしかない! だが、待てば野外に居る俺達が圧倒的に不利だ! 

 

大体、これだけの人数が居るんだ、迂回して攻める手もあるんだぜ!?」

 

劉宣「……わ、分かっておる! だかな、アイツらの砦は、右は川で迂回は困難、左は柵と逆茂木が設置してあり、容易に通れん!! 

 

貴様達が損害覚悟で迂回なり、柵を越えるなりするのは構わんが、わしらは動かないぞ! 

 

匈奴兵は、馬あってこそ力を発揮する! 馬が嫌う水を渡る事、柵で阻まれて力を発揮出来ない場所など───御免蒙る(ごめんこうむる)!!」

 

鮮卑将「俺達だって、同じようなモンだろうが! だが、損害を与えられてもつまらん。 謝礼だけでも充分だしな…………。 無理をせずに休むか!」

 

羌将「雇い主が言うなら、仕方ない…………長丁場になるぞ! ゲル(遊牧民の家屋)を作れ! 身体や馬を休めろ! 少人数の隊で、匈奴兵の大活躍を見せて貰え!

 

 …………後の為の勉強になろう!」

 

ーーーー

 

劉宣「(………アイツらが一番乗りすれば、我々の活躍が霞んでしまうではないか! それに、奴ら強欲だ! 手柄を立てれば立てたで、報酬の上乗せを要求するだろう! 誰が……そのような愚かな真似をするものか!!)」

 

劉宣は、辺りを見渡して……それぞれゲルを作り出し、思い思い休むのを見て歯噛みしていた。

 

◆◇◆

 

【 伊達勢と孫呉 の件 】

 

? 江東 雪蓮居城 謁見の間 にて ?

 

政宗「孫伯符………いや、雪蓮とお呼びしなければ失礼だったな! まっこと、我らの居た国とは違う不思議な風習だ………」

 

景綱「政宗……その話題、この場で申す事ではない! 『郷に入れば郷に従え』……我らの方が異邦人ゆえ、逆に指摘される立場になるからだ!」

 

冥琳「いや、貴女方は天城颯馬に連なる面々。 我らより高位になるため、その指摘は無いと言っても差し支え無いでしょう! それにしても、『天の御遣い』殿達は謙虚な者が多い事、私達も模範として学ばなければ………!」

 

蓮華「全くです! どこかの姉上にも、特に見習って貰いたいのですが!」

 

冥琳「蓮華様に賛同しますよ。 ………誰とは言いませんが、国主で親友でもある奴に、模倣でもいいから頼みたいのですが………」

 

雪蓮「………名前を隠しているつもりだけど、的確に私だってバレバレじゃない!? だけどねぇ! 私だって、真面目に仕事している時ぐらい…………」

 

祭「はて………儂の記憶にも、覚えが無いのじゃが……」

 

雪蓮「やぁねぇ〜! もう忘れちゃたの? 最近、祭は物忘れ激し……」

 

祭「ほぅ〜策殿は、政宗殿より贈呈品である『梅酒』を入らぬと見える。 策殿は、儂等に遠慮して取り分を開けてくれた故、儂等の飲み分が増えるな!」

 

雪蓮「きゃああぁぁぁ! ごめんなさい!ごめんなさい! 謝る、謝りますから、どぉ〜か許してえぇぇ─────!!!」

 

★☆☆

 

雪蓮が一騒動を起こしそうな緊迫感を生じたため、冥琳が雪蓮を連れ出しお説教をしている。

 

その間、話だけしておこうと、景綱が颯馬の狙いの一つを説明していた。

 

『孫呉の手勢で、荊砦の焼き討ち』を実行して貰いたい…………と。

 

景綱「颯馬から言い含められたのが、この話だ。 勿論、私達も助勢する!」

 

祭「じゃが……官渡の荊砦を攻略するには、普通の火矢では無理じゃぞ? 華琳配下の将達も申していた通り、荊砦の荊の成長は著しい。 それに分厚い壁の為、火を点火しにくいそうじゃが………」

 

元綱「だけど……それが何とか出来たから、この策を考案したんじゃないかな? 何か、颯馬が頼んでいった物ってないの?」

 

穏「う〜〜ん、もしかして………『あるぞ!』……冥琳様〜!」

 

冥琳「……遅れてすまんな。 駄々っ子みたいな君主を持つと、非常に疲れる………」

 

雪蓮「ぶぅ───! 充分大人だもん! 出るとこ出てるし!!」

 

冥琳「身体だけ成長して貰っても困る! 自分の受け持った仕事は、最後までやり遂げろ! 嫌になって脱走しようなど、下々に示しがつかん!!」

 

雪蓮は、両手で自分の口を左右に引っ張り、冥琳に嘲りの声を向けた!

 

雪蓮「いいぃ───だぁ!!」

 

冥琳「はぁ──! その態度が子供だと言っているんだ!!」

 

雪蓮「痛い痛い痛〜い!! 耳引っ張らないでぇ!! 耳ぃ〜!!!」

 

ーーー

 

政宗「ふっ!『義同断金』か。 私達も……そうありたいものだな、景綱?」

 

景綱「ふふっ、私は生涯……政宗の傍に居るつもりだ。 離れる気など毛頭無いぞ? 例え───颯馬と結ばれてもだ!」

 

景綱の爆弾発言に、血相を変えて詰め寄る二人!!

 

雪蓮「ちょっと! 貴女達────!?」

 

蓮華「ど、どういう事ですか! 是非、詳細を───!!」

 

成美「それはねぇ〜!」

 

『────────?』 

 

丁度、少し離れた場所で意気投合した成美と小蓮が、颯馬の事を喋っていた。

 

成美「───政宗はねぇ〜颯馬を婿に欲しいんだって!」

 

小蓮「へぇ〜モテモテのいい男ねぇ! シャオに相応しいかも!!」

 

『───────────!!』

 

政宗「い、いや、それよりも………颯馬の預けた策の話を………」

 

政宗は、必死に話を変えようとしたが、孫呉の筆頭軍師が阻む!!

 

冥琳「その通り! まずは策の事で集中するべきだ! 颯馬の話は、出発した行軍中でも聞けるだろう!!」

 

政宗「…………結局、語らせるのか………」

 

景綱「………やれやれ、『傾国の美女』ならぬ『傾国の軍師』か。 後にも先にも颯馬だけだ……そんな二つ名が付きそうな軍師は……」

 

ワザと話を出した張本人は、溜め息を吐く政宗の様子を、皮肉な笑いをしながら眺めていた。

 

◆◇◆

 

【 徐州防衛戦 にて 】

 

? 徐州 下? にて ?

 

桂花「華琳様ぁぁぁ───!!」

 

街の復興を見学していた華琳の下へ、桂花が息を切らせて走ってきた!

 

華琳「桂花! その道は、まだ整備されていないか『キャアァ──!! ドタンーッ!』……ら気を付けて! ………遅かったようね」

 

大分復興してきた下?だが、道は後回しにしたため、デコボコ状態。 多くの人が働き動くので、整備が追いつかないのも理由である。 

 

桂花「か、華琳様ぁ〜!!」

 

華琳「────情けない声を出さないの。 私達の一挙手一投足は、将兵や民達の目が注目しているのよ?」

 

桂花「はっ、はい……。 申し訳ありません………」

 

愛しの華琳様の前で、盛大に転んだ桂花! 服や猫耳、顔に泥が飛び散り、惨い状況だ!

 

華琳「でも、桂花の可愛い顔が泥塗れでは品が無いわね。 少しジッとしていなさい! 確か……一刀から贈ってくれた『はんかち』がここに……」

 

桂花「か、一刀からですか!?」

 

華琳「そうよ? 女の嗜みだからって一刀が……ね。 『華琳に邪魔にならず、ちょっとした手助けが出来る俺みたいな物』って言っていたけど。 本当

に役立ったわね……ふふふっ!」

 

華琳が一刀から贈って貰った小さい布は、主の覇王としての情熱を示すのか……時折、一刀の関係で赤面する事が増えたのを知ったのか、『赤色のハンカチ』だった。 角に一輪の花が刺繍してある。

 

桂花「………………………」

 

華琳「ところで、桂花! 私に用があるのでしょう!?」

 

桂花「はっ!? そ、そうでした!! 華琳様! 急ぎ城にお戻り下さいませ! 敵の姿が……郊外の黄河の対岸で、見つかったそうです!」

 

華琳「そんな大事な話、早く言いなさい!! 直ぐに戻るわ!!!」

 

桂花「────はっ!!」

 

★☆☆

 

? 徐州 下?城 謁見の間 にて ?

 

華琳「……どう? その後の情報は?」

 

朱里「はい……その後、斥候を放ち様子を窺ったところ、敵兵は凡そ四十万程、烏丸、匈奴の兵達も、混じっているように思われます……ふぅ〜」

 

雛里「わ、我らの軍勢は、騎馬隊の編成が出来る程の騎兵は居らず、歩兵と弓兵を展開させるのが精一杯ですぅ!」

 

ーーー

 

一刀「真桜……『発石車』はどうなった? 何台か出来たかい?」

 

真桜「隊長ぅ〜! ウチの腕舐めて貰ては困りまんがな? 久々の大舞台での出番! きっちりと五台用意してまっせ!!」

 

沙和「た、隊長、真桜ちゃ〜ん! また、あの地下室に入って来なくちゃ行けないの!? 沙和、これ以上あの変な匂いを嗅ぐのは嫌なの!!」

 

一刀「だけど……アレがあれば、戦局を変える事が出来るんだ! 頼むよ!」

 

沙和「隊長の頼みなら………仕方ないの!」

 

ーーー

 

星「………華琳様、私も斥候と共に参ったのだが………」

 

華琳「どうしたの? 星にしてはハッキリしない口調ね?」

 

星「私の見間違いでなければ……敵の大将は『松永久秀』! それに『筒井順慶』の姿も………!!」

 

春蘭「何ぃ!! 青州兵達の仇である『筒井』がか!? 華琳様! どうか私に先陣を申し付けて下さい! アイツらの仇を討てる好機! 逃すわけにはまいりません!」

 

秋蘭「待ってくれ、姉者! 相手は、華琳様、私、麗羽、一刀を四人相手にして圧倒した化け物だ! 幾ら姉者が強くとも、勝てる要素が無さ過ぎる!!」

 

春蘭「しかし、星は勝ったではないか! なら、星と互角に戦える私が行けば、勝てるはずだ!!」

 

華琳「春蘭……貴女では勝てないわ………」

 

春蘭「ど、どうしてですか!? 私の武を信じられないと………!」

 

華琳「考えてもみなさい! 道雪殿に後塵を拝した貴女が、『筒井』に勝てると思って? それに、星の話では……二戦して何れも(いずれも)仲間の手助けがあったり、機転を利かせて逃れた話ばかり! 

 

単独でやり合えば、ほぼ負ける事になる程の持ち主なのよ!」

 

春蘭「……………くっ!!」

 

桂花「………華琳様………その件で、私も晴れない疑問があります! もう少し、斥候で再調査させて下さい!」

 

星「私も、是非同行させて貰いたい。 些か腑に落ちぬ事があります故……」

 

華琳「いいわ、桂花と星にもう一度任せます! 全軍、出陣して黄河の沿岸部に布陣なさい! 大友隊、島津隊も同行を願う! 

 

後、意見があれば、いつ何時誰でもいいから、私に申し出る事! 

 

今度の戦は私達だけではなく、戦乱より立ち直った徐州の民達に、再度塗炭の苦しみを味あわすハメになりかねない! 是非とも敵を押し返し、徐州の民を守り抜くのだ!!!」

 

『ーーーーーはい!!!』

 

 

◆◇◆

 

 

【 何進の策 の件 】

 

? 益州 成都近辺 にて ?

 

 

粗方の火牛が倒された後、静かに霧が……流れ込んできた。

 

味方は、二人の活躍で半分程残った状態。 

 

それでも、目の前の何進を倒すには充分だろう。 この山の上にも付近にも、多数の兵を置くような場所は無い! 普通、山頂周辺は狭く、大軍を置くには不利な場所。 この数万の軍勢で抑え込めば、易々と何進の首が取れる!  

 

………そう思っていたのだが。

 

天然の煙幕は、何進達の味方をするように、その者達の視界を全部遮りつつ、厚い白い幕を辺り一面に閉ざした。

 

視界には見えぬが、鉄錆の匂いが充満し……人の呻き声、動物の鳴き声等が響き渡る。 ここが間違い無く、先程の自分達の居たところだと、教えてくれている。

 

迷吾「今度は霧か………この辺り霧が名物だとか聞いたが、本当に間近の物が見えねぇな!! 誰かに鼻を摘ままれても、全然分かんねぇぞ!?」

 

阿貴「…………だが、仕掛けてくるなら、丁度いい間───だ!?」

 

シュウゥ────────ン!

 

阿貴が喋る途中で、後ろを斬りつけた! だが………何も手応えは無い。

 

『おおぉ〜! 危ない危ない! 儂を斬ろうとするのか?』

 

背後より………ノンビリとした声が聞こえた。

 

迷吾「卑怯だぞ!? 出てきて正々堂々勝負しろ!!」

 

『はっはっはっはっ! 儂等より多人数集めて………喧嘩を売りに来た者が、卑怯者呼ばわりされようとはな!』

 

次は、迷吾の横より聞こえてくる。

 

『仕方がない。 あまり、からかうと後が困る。 では……行くぞ!』

 

★☆☆

 

 

△迷吾視点△

 

あ…ありのまま、今起こったことを話すぜ!

 

奴が、何進のヤローが、俺の横で何か喋ったと思ったら……目の前にヌッと出て来たんだわ! 

 

あの高そうな鎧、太り過ぎた身体、見覚えある髭面!

 

いつの間にか剣を構えて、こっちを睨んでやがった! 

 

も、もちろん、俺も挑みかかろうと思ったさ!

 

ポンポン!  ポンポン!

 

ところがよぉ………背後より、俺の肩を叩く奴が居るんだ。 この忙しい時に何しやがるって払うんだが、しつけぇぐらい叩くんだよ! 

 

─────あんまり叩くから、どこの馬鹿だ!って思い振り返ると…………何進だったんだよ!!! 

 

 

み、見間違えじゃねぇ!! 本当だ!! 

 

 

………だって、コイツが後ろに居るのによぉ? 

 

 

俺の目の前では、何進が……剣を構えて立っていやがるんだぜぇ………!?

 

最初に出てきた時、そのままで……………。

 

 

な………何を言っているのか、わからねーと思うが、俺も何をされたのか、わからなかったんだ………。

 

 

▲阿貴視点▲

 

………おかしい? 確かに気配はするのだが………。 

 

『何進、此処に居るぞ!』

 

左側より声が聞こえたのに、気配が右側?

 

どういうわけだ!?  頭を軽く混乱させながらも、左側に防御を取った!

 

しかし、敵はあざ笑うが如く右側から攻撃を仕掛けて、私は直ぐに剣で防御して防ぐ! その後、剣で突こうとすると、霧の中に消えた………。

 

だいたいの種は分かったぞ!? 

 

影武者が何人か潜んでいるなぁ? このような子供騙し! 私には通じなどせん!! 

 

私は気配を頼りに、隠れている者に近付いて行く。

 

『ほぅ? 見破るか……。 では、コレなら……どうだ!?』

 

またしても、気配の感じない所から聞こえる! あそこには何も無かったのだぞ!?  

 

………何進は、本当に仙術を操れるのか………。

 

私の背中から、冷たい汗が流れ落ちる…………!

 

そんな私の混乱を見定めたのか……霧の中より、立て板が突然現れた! 剣で両断しようとしたが、何か書いてある。 

 

気配を確認し、動く様子が無いため、立て板に書いてある『文字』を読んだ!

 

《 『この中の言葉は、我が領内に置いて、《禁句》とされている言葉である! 

 

お前が……この言葉を最後まで言えたら、儂は漢王朝大将軍何進の名において、全面降伏してやろう。 

 

だか、最後まで言えない場合は……お前達が全面降伏してもらうぞ? 

 

もし、言えないのなら戦いは継続しても結構。 しかし、状況はお前達の方が不利である事、忘れるではない…………』 》

 

私は驚いた! 百万近い軍勢がいるのに、それを敗走させたのか? いや、そんな馬鹿なと頭を横に振る。 

 

されど……こういう時に悪い知らせが!

 

?兵「しょ、将軍! 後陣で待機していました軍勢が、牛と人の軍勢に襲われ敗走! しかも、周りの軍勢も……弓矢に囲まれ身動きが取れません!」

 

色々と疑問が湧くが、声で位置を把握して向かえば、間違い無く我が兵の一人。 身近で世話をしてくれた信頼できる兵だった。

 

顔を傷だらけ、鎧にも幾つか矢が打ち込まれ、それでも私の為に知らせに来てくれたのか……!

 

私は、不利な賭事と思いながらも、それに乗った!

 

このままでは負けるのは間違いない。 しかし、私の命は別として……最後まで残ってくれた兵達だけでも救いたい! 

 

この賭事で勝てば、その恩に報いる事ができよう! だが、負けてしまえば、我が身命と引き換えにしてでも………その一心だった!

 

阿貴「……………………………」

 

 

─────ざっと見た。 全部で『七つ』の『文字』が並ぶ。

 

どうして『禁句』になっているのか、些か疑問が浮かぶが……仕方ない!

 

 

阿貴「……垂れた」

 

──────!  バッ!

 

ヒュ──ンヒュンヒュン! カッカッカッ!

 

殺気がしたので、即避けたが……今まで居たところに数本の矢が!? 

 

馬鹿な───!? この霧の中で弓を射れると言うのか………?

 

阿貴「………まさか、私の言葉で反応したと言うのか。 流石に、それは無いだろう。 たかが言葉…………」ゾクッ!!

 

うっ! ほ、本当に言葉か? しかし、や、やらねば………

 

阿貴「と、年増、行かず後家……、皺、年甲斐も無い………」

 

ま、まわ、周りの空気が……い、一挙に低くなった。 

 

な、なんだ………? 尻に氷柱でも、差し込まれたような気分だ──!

 

それでも………だ!!!

 

阿貴「年寄りの冷やみ─────!」

 

───更に重圧は高まり、霧の中に潜む強大な恐怖が、私を縛り上げ………気が付けば、身動きが何も出来ない状態になっていた!

 

だが………負けるものかぁ!!! 最後の一つ!

 

これは漢字一文字! 簡単に言えるはずだあぁぁぁ!

 

ゆ、勇気を持って叫んでやるぅぅぅ!!!

 

阿貴「ばぁb──────」  

 

この瞬間………私の意識は……いつの間にか刈り取られていた。

 

 

ーーーーーーーーーー

ーーーーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

 

最後近くですから、策に力を入れようとあれこれやっているんですが、話がなかなか進まなくて申し訳ないです。

 

更新が遅くなっていますけど、なんとか完結まで行いますので。

 

また、次回も読んで下さい。

 

 

説明
義輝記の続編です。 宜しければ読んで下さい。
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コメント
禁玉⇒金球様 久しぶりのコメントありがとうございます! 身も蓋もございません……。(いた)
このBBAネタって実は過剰反応している人こそが「私はまごう事なきBBAだぜーー!!」って言ってるようなものなんですけれども…所詮残念ババアは残念ババアと言うお話(禁玉⇒金球)
naku様 再コメントありがとうございます! 今出来る台詞は……こんなんで。 風「レロレロレロレロレロ」 (いた)
naku様 再コメントありがとうございます! 気が付かれましたか! 迷吾の台詞の最初と最後はその通り。 因みに阿貴の台詞にも入れました。《 ケツの穴にツララを突っ込まれた気分 》を少し変えて。(いた)
恋姫の一部過剰反応を策に応用しました。 これらの言葉に反応する方は、間違いなく該当の方だと思われますね。 さて、あんまりこんな事を書いてると、読んでる女性(居ないと思うけど)を敵に回し兼ねないので……これにて。 (いた)
naku様 コメントありがとうございます! リアルもバーチャルも皆さん考えていらっしゃるでしょうね。 この話も例外ではありません。 救済処置とやらを作ってあります。(いた)
mokiti1976-2010様 コメントありがとうございます! 益州は、特に将の平均年齢が高い………グサッ(いた)
確かに恋姫界でその言葉は禁句ですね…特にある一定の界隈においては。(mokiti1976-2010)
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