模型戦士ガンプラビルダーズI・B 第27話
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「違法ビルダー?」

 

「はい。昨日言われまして、聞いた事のない言葉だったんですけどコンドウさん知らないかなって」

 

ガンプラバトル、というバイト試験から翌日の日曜日、

アイとナナは模型店『ガリア大陸』にいつもの様に寄っていた。日曜日の所為か今日はいつもより人が多い。Gポッドはかなりの行列を作っていた。

行列から外れた横で昨日の話ついでにと、アイとしては軽い話題感覚でコンドウに話を振ってみた。

 

「さぁ?俺も聞き覚えがないな、サブ、お前は?」

 

「いや、俺も聞いた事はないよ」

 

コンドウと隣にいたツチヤが答える。ソウイチはまだ店に来ていない為、コンドウ達は二人だけだった。

 

「それはともかくとして、バイト自体は受かったんだろ?よかったじゃないか」

 

「勝負自体には負けちゃいましたけどね、実際にはもう結果決まってて、ただ私とバトルしたかっただけだって」

 

「なんか怪しいなと思ったらそういう事、でもアンタが負けるってそんな強かったわけ?」

 

最近強いビルダーは何度も目の当たりにしたナナだが、面接官までそれほど強いとはにわかには信じられなかった。

 

「そりゃあねぇ、正攻法じゃ本当歯が立たなかったよ。改造した旧キットのグフカスタムでもう大暴れしちゃってて」

 

「ほぅ!今時旧キットの改造か!どんなのか見てみたいな!」

 

コンドウが興味の反応を見せる。と、

 

「おぉ坊主!ワシのグフがみてぇってか!いいとも!存分に見てくれぃ!」

 

コンドウの目の前にその改造したHGグフカスタムが現れる。

 

「な!なんだ!?」

 

「あれ!?ブスジマさん!!なんでこんな所に!」

 

アイが驚きの反応を見せる。ブスジマが手に持った改造グフをコンドウの目の前に見せつけていたのだ。

 

「おぅアイちゃん!今日は休日だぜ!昨日バトルした所為かガンプラバトル魂に火がついてよ!プライベート来たってわけだ!」

「ブスジマ……?ヤタテ!もしかしてこの人とバトルしたのか?!」

 

コンドウが血相を変えてアイに詰め寄る。アイはしどろもどろに答える。

 

「え?そうですけど、知ってる人なんですか?」

 

「あぁ、俺がここで有名になる前、敵ナシと言われたビルダーだ。ここ1年姿を消してたんだがこの人とバトルしたとは……」

 

「あーあんときゃ忙しい時期だったからよ。趣味も出来る時期と出来ない時期があるってこった」

 

「へぇ、じゃあオッサンと戦った事はないんだ」

 

「そういう事になるな。この人がずっとガンプラバトルを続けていたら、俺は今の地位にはいなかっただろう」

 

「いやいや持ち上げてくれんじゃねぇの、もっと褒めてちょ」

 

と、ブスジマが上機嫌になってる頃、ソウイチがやってきた。アイ達を見つけるや否や駆け寄ってくる。

 

「どうも皆さんお揃いで、見ない人もいるッスけど」

 

「あ、ソウイチ君だ。こちらは私のバイト先の上司のブスジマさんだよ」

 

「あ、どうも。いやぁついに来たッスね!この時期が!」

 

「アンタは珍しくテンション高いわね。盛り上がる時期って何よ?」

 

ナナが問う。それを見たソウイチは意外そうに驚いた。

 

「ハジメさん、ヤタテさんに聞いてなかったんスか?ガンプラバトル選手権ッス!」

 

「あ!そういえばもうそんな時期だね」

 

「?ガンプラ選手権……ガンプラバトルの全国大会とか?」

 

言葉と二人の反応からして意味はナナでもなんとなく予想できた。

 

「察しが良いッスねハジメさん。その通り、全国からガンプラビルダーが集まり、そして、戦って!戦って!戦い抜いて!

最後まで勝ち残った者が「最強のガンプラビルダー」の栄光を手にすることが出来るんス!」

 

「だから今日はいつになく人が多かったんだ」と言いながらナナは見回す。

 

「前は4チームごとのサバイバルだったんスけど、去年からはトーナメント方式になったッスからね、今のうちに特訓しておきたいって事ッス」

 

「去年は地区予選決勝で落ちたからな俺達、今年こそは全国へ行きたいもんだ」

 

コンドウは遠くを見る様に思い出す。去年はエデンに負けたのだ。

 

「大丈夫ッスよ!去年に比べて俺達のレベルもアップしてるッス!」

 

「お〜っと!そうは言うがな諸君!ライバルだって増えてんの忘れてねぇか?」

 

ブスジマが自分を指さす。

 

「ワシだってちょうどガンプラ魂に火がついた身だ。以前からのガンプラ仲間誘って大会にだって出るつもりだぜ!」

 

「そうですね。更に今年はヤタテもいる。更にビルドファイターズの放送で改造ガンプラの

ハードルも下がり、ルーキーのビルダーも増えてる事だ。きっと激戦な年になるだろう」

 

「かまいませんよ!その方がやりがいがあるってもんッス!」

 

望むところといった表情でソウイチは返す。以前より暗さの減ったそれは宝探しからの変化かもしれない。

 

「張りきってるなソウイチ、俺達も負けてられないな」

 

「ワシだって同じだぜ。折角来たんだし対戦してみないか?坊主」

 

感心するコンドウにブスジマが対戦を持ちかける。坊主といったその瞬間、コンドウの脳天に雷の様な衝撃が走った。

 

――坊主!?いつもオッサンオッサン言われてた俺が坊主?!そりゃ自分はオッサンじゃないと思ってたけどハジメの奴があんまり

オッサンオッサン言ってたから、自分でもやっぱりオッサンじゃないかとちょっと思ってたけど、やっぱりそれは若い奴から見た視点であって

世間的に見れば俺はまだまだ坊主!若いという事か!やはり俺はまだまだ若いんだな!!――

 

とコンドウは自分で勝手に感動していた。

 

「……なんかオッサン、様子が変だよ。プルプル震えて目ぇキラキラしてるし」

 

「……気にしないでくれ。コンドウさんも複雑なお年頃なんだ」

 

ツチヤは目を逸らしながら言った。コンドウの胸中を察したのだろう。

と、ソウイチが口を開ける。

 

「そういや皆俺が来る前なんの話してたんスか?」

 

「昨日の私の面接バトル関係だよ。後は名前だけだけど違法ビルダー」

 

それを聞いたソウイチが眉をひそめる。

 

「違法ビルダー?あぁ、都市伝説のあれスか」

 

「アサダ?アンタ知ってるの?!」

 

声を出したのはナナだ。だがその場にいた全員がソウイチの反応に興味を示していた。コンドウも感激の状態から覚めて興味を示す。

 

「よくある噂の類ッスよ。ネットではちらほらネタになっるッス。

ガンプラを使わずデータの入ったチップだけをスキャナーに通してバトルするって言う無法者の事ッス。

スキャナーさえ誤魔化しちまえばデータ上は問題なくバトルで表示されるって仕組みだとか、

中にはそれのテストプレイヤーもいるって話ッス。ま、要はガンプラのマジコンッスね」

 

「そんなビルダーがいるんだ……」

 

「マジかよ、知らんかったワシ……」

 

「俺も初耳だな……」

 

驚くアイとコンドウとブスジマ、ソウイチは呆れてそれを止めた。

 

「いや、何真に受けてんスか!?だからさっき言ったでしょ!?ネットの都市伝説だって!よくあるネタ話ッス!ただのガセッス!」

 

「どういう事だソウイチ」

 

「大概こういう人のたくさん集まったりするゲームにはガセ話が横行するもんッス。ネット対戦なんてあると尚更ね。

あるビルダーと対戦したら戦績カードのデータが消されるだの、

ガンプラにオカルトな儀式して真夜中にガンプラバトルすると死んだビルダーとネット対戦できるだの、

こういうネタや噂は尽かないッスよ。これだってどうせネット掲示板だかで誰かの流した類ッスよ」

 

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「噂や都市伝説か、『ビギニングファントム事変』もそれに含まれるんだろうか?」

 

コンドウが呟くとソウイチがあきれる様に言う。

 

「コンドウさん、あれまだ信じてたんスか?公式でイベントバトルって言ってたらしいじゃないスか」

 

「いや、確かに公式からはイベントとあったが、そうじゃないと俺は……」

 

コンドウに呆れながら言うソウイチ、ナナはただ一つ内容の分からない事件名を不思議に思った。

 

「何?そのファントム事変って」

 

「それだったら俺も分かるよハジメさん、知ってる奴が近い所にいるからね」

 

ツチヤがナナに説明する。

 

「『ビギニングファントム事変』というのは数年前に行われた巨大なネットガンプラバトルのイベントの事だよ。

ステージの宇宙には宇宙を埋め尽くす程のCPUのザクが蠢き、飛び入りのビルダー含めて過去最大数のビルダーとガンプラが参加したと言われてる。

最深部の巨大要塞には黒いビギニングガンダムが待ち構えたって内容だったそうだ」

 

「イベントバトル?それがなんで噂?そしてオッサンが?」

 

「それだったらワシも分かるぜ。ワシの耳にも入る噂だったからな」

 

今度はブスジマが説明をする。

 

「……ちょっと変だったんだよそのイベント。普通イベントやるんだったら事前に開催予告するだろ?

それが無かった。それにさっき言った通り出てたビルダーとガンプラは過去最大なのにほとんどの参加ビルダーが途中参加だった。

参加申請とかの手続きもナシに」

 

「ん〜。かと言って疑う程不自然とも思えないけど」

 

「当然バトルの後にはそのイベントの問い合わせが殺到した。バンダイは『抜き打ちの自由参加型イベントバトル』と答えたが……

参加ビルダーの中に『あれはイベントじゃない』と言う奴が現れた」

 

「どういう事よ?」

 

「わからねぇ、だがあれに参加していた一部のビルダーは妙な違和感をバトルで感じていたらしい。

ほとんどの奴はイベントって事で納得してるらしいが、一部納得してないでイベントじゃないと言ってる奴もいるんだよ」

 

「でも根も葉もない噂って所ね。一部の人が信じてるってだけか」

 

「見てもいないのにそう断定するのは酷いじゃないかハジメ」

 

「?オッサン?」

 

いつの間にかコンドウがナナ達の前にいた。

 

「だってなにかしら証拠があって言ってるわけじゃないでしょ?ただ感じたってだけじゃ見切り発車も良い所よ」

 

「確かにそうだが……」

 

詰まるコンドウにソウイチがフォローを入れる。

 

「まぁそう言わないで欲しいッス。ハジメさん、コンドウさんはファントム事変の時、実際にその場に参加していたんスよ」

 

「え!そうなの!?」

 

「たまたまだ。その時俺だけがGポッドのある店にいただけだよ」

 

「ふーん、じゃあさ、そう言うんだったらその時信じるキッカケみたいなの見たとか?」

 

「あ、そりゃ俺たちも聞いた事なかったな。どんなだったんだ?コンドウさん」

 

五人の視線がコンドウに注がれる。コンドウは思い出す様な素振りを見せ言った 。

 

「キッカケか、そうだな……バトルを見た」

 

「は?それだけ?」

 

「まぁな、普通のバトルだったらこんな事思わなかったかもしれない。でも何か目を離さずにはいられないバトルだった」

 

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――その時、参加した俺は乗っていたゼクが原型を損なう程負傷し、半壊したまま宇宙を漂っていた。動く事も出来ず、

いつ撃墜されるかヒヤヒヤしていた……その時俺は見たんだ。『ZZガンダム』に登場したドック艦、黒く塗装されたラビアンローズの外壁、

そこで戦っていた二体のガンプラ……、黒いビギニングガンダムと赤いビギニングガンダム、何の変哲もないガンプラのハズなのだが、

黒いビギニングからは説明出来ないような禍々しいオーラを感じた。

対する赤いビギニングは燃え上がるようなオーラを放ち、そのまま炎状のフィールドを全身に纏っていた。見ただけでビリビリするような気迫だったよ。

赤いビギニングガンダムがそのまま迫る黒いビギニングガンダムを一本の剣で叩ききった。

その太刀筋は炎となり黒いビギニングだけでなく全長数キロに及ぶラビアンローズまで切り裂く程だった……まさに人機一体、

ビルダーとガンプラが最高までシンクロして初めて放つことが出来た技だって直観的に理解出来た。

俺は感動と鳥肌でずっとそれに見とれていた。撃墜されるかもという恐怖は一切忘れていたんだ。

気がついたらバトルは終了していた。そして何故だかこのバトルはイベントではない。そう俺は思えてならなかった。――

 

「ファントム事変、名前は知ってたけどそんな事があったんですか……」

 

アイがポツリと呟く。

 

「見ただけでそう感じるなんて、余程気合の入ったバトルだったんでしょうね」

 

「まぁな、それを見て以来、俺もそれ位魂を燃え上がらせるバトルを目ざして腕を磨いたわけだ」

 

「あ!前にガンプラサバイバル大会で言ってた『あの時見た魂を震わすバトル』ってもしかして!」

 

アイはハッとした。コンドウがサバイバル大会の時アイに言った言葉だ。(12話参照)

 

「そう、それがそのバトルだ。今も忘れられないバトルだったな……」

 

「初耳だぜ、ワシもイレイ・ハルやボリス・シャウアーらガンプラマイスターも出てたっていうのは聞いてたが」

 

「黒いビギニングの正体は分からないけど、魂を燃え上がらせるバトル、私も……ハル君とそんなバトルがしたいです。

今度の大会、勝ち上がることが出来ればハル君と戦えるでしょうか……」

 

「お!少年ガンプラマイスター、イレイ・ハルと戦いたいとは大きく出たッスね!」

 

アイはここで言うべきじゃなかったかなと思った。イレイ・ハルに対しては憧れ以外にも感情がある。

 

「ちょっとした憧れよアサダ」

 

ナナがフォローを入れたその時だった。急にGポッドの方のビルダー達がどよめき始める。

 

「オイ、どうなってんだこれ!?」

 

「分からない!なんか変なのが出て来たぞ!」

 

「なんだアイツ!?強いぞ!」

 

「なんか騒ぎはじめたぜ?」

 

「なにかあったのかな?」

 

気になったアイ達は近くにいたビルダーの一人に問いかける。

 

「何かあったのか?」

 

「あ、コンドウさん。いきなりネット回線から対戦相手が割り込んできたんです!」

 

「いきなりか?」

 

「はい!いきなり第三軍として出てきて相手は見境なしに撃ってくるんです!」

 

アイはそのまま観戦モニターを見る。炎に包まれる都市のフィールド、その中で残骸になった機体を紫色に塗装されたジェノアスが踏みつけていた。確認出来たのは三機、

 

 

「三機とも同じ装備のジェノアス!?肩にスタークジェガンのミサイル、ライフルの前半分はスナイパーライフルとバズーカを括りつけて……ありゃ相当な攻撃重視ッス!」

 

ソウイチがジェノアスの改造機を分析すると同時に向こうから通信が入った。観戦モニターのスピーカーから声が入る。

 

『ヤタテ・アイはどこ?』

 

「!?」

 

ジェノアスのビルダーの声だろう。アイの名前を聞いた瞬間、ビルダーの人だかりは一斉にアイに向いた。

 

「私を呼んでる?」

 

「いつもみたいにアンタへの挑戦者って事!?随分派手な事するじゃない」

 

「どうする?ヤタテ」

 

「もちろん受けますよ。ちょっとこんな挑戦の仕方は気に入りませんけど」

 

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すぐさまアイはバトルに入った。機体はいつものアームドアーマーVNとDEを装備したユニコーン、デストロイモード

今回の場所はダブリン、『ZZガンダム』に登場したアイルランドの首都。

モビルスーツの身長より高い高層建築物は少ない。曇り空とマップ上真ん中を流れるリフィー川が特徴のマップだ。

 

「ガンプラバトルとは関係ねぇが世界的ビールメーカー、『ギネス』が有名だぜぃ」

 

「しかしダブルゼータのダブリンか……こりゃ早めに決着つけないと後でマズいッスよ……」

 

「?何があんのよ」

 

「見てれば分かるッス」

 

 

アイの機体、ビームマグナムを構えたユニコーンが周囲を見回す。周りは自分の腰程度の建築物だらけだ。

 

「自分から勝負を仕掛けておいて姿を現さないなんて……」

 

その時、警告音と共に複数のミサイルが飛んできた。

 

「!?こっちを狙って!」

 

アイはミサイルがホーミングと悟ると後退しつつビームグナムを上空に向け発射、ビームの濁流はミサイルをまとめて飲み込み迎撃する。

が、別方向からもミサイルは飛んでくる。ビームマグナムの再装填タイムラグは間がある。このままでは不利だ。

そうアイは考えるとアームドアーマーDEを上空のミサイルに向けビームを発射、ビームを受け爆発したミサイルは周りのミサイルに誘爆し

連続的に爆発を起こした。

 

「ようこそアイちゃん、受けてくれた事に感謝するわ。わたしなりの方法と、私の機体『ジェノアスK(キラー)カスタム』でね」

 

紫色のジェノアスが三機現れる。声がするのは真ん中のジェノアス。ビルダーの声から察するに女性だ。

 

「強引じゃないですか?ネット回線とはいえ出入りの店に割り込むなんて」

 

「ただのウォーミングアップよ。自分の機体は慣らした状態で挑みたいじゃない?」

 

「強引すぎます!それに三対一で言うセリフじゃないですよ!」

 

「大丈夫。ハンディキャップは用意してるわ、この二機は私の設定したCPUで動いてるわ」

 

「対戦で無人機?!」

 

アイが叫んだ瞬間、三機のジェノアスKが散開し各々で撃ってきた。ユニコーンは後退しつつアームドアーマーDEで迎撃する。

 

「くっ!」

 

一機のジェノアスKに放ったビームは軽くかわされる。同時に狙ったジェノアスKがバズーカで撃ちかえす。

シールドで防ぐアイ、その瞬間に後ろに回り込んだリーダー機がスナイパーライフルを撃ってきた。

 

「その綺麗な純白をフっ飛ばしてあげる」

 

「くっ!?」

 

アイはとっさに真後ろに身をひるがえしアームドアーマーDEでビームを受ける。

 

「まだですよ!伊達に今まで勝ってないんです!」

 

「強がり」

 

後ろを向いた所為か、背中を向けた方のジェノアスは遠慮なしに撃ってくる。

アイはユニコーンのバーニアを全開、真上へと大きくジャンプし退避、

追い打ちをかけようと三機は肩部のミサイルランチャーを一斉にユニコーンに放った。爆発がユニコーンのいた空域を吹き飛ばす。

爆発による黒煙が周囲を覆う。ジェノアスKのビルダーはこっちの目くらましになってしまったと舌打ちした。

 

「ユニコーンの残骸は……ないわね。チリも残さなかった?」

 

ユニコーンはもう逃げたと判断した挑戦者は再び散開しユニコーンを探す。

無人機の一機が川沿いに降り立ちユニコーンを探す。近くにユニコーンの姿はない。

その時だった。橋の下から発射されたビームが一機のジェノアスKを貫通する。

ビームマグナムだ。胴体に大穴を開けられたジェノアスKが倒れ込み、

同時に橋を崩しながらユニコーンが立ち上がった。橋の真下で待ち伏せていたのだ。

 

「よし!まずは一機!」

 

と、Gポッドに警告音が走る。背後から長距離でジェノアスが撃ってきたのだ。

 

「また後ろから?!」

 

ユニコーンは横にステップをかけて回避、川の水しぶきをあげながら身をひるがえし、ジェノアスKにアームドアーマーDEのビームを放つ。

アームドアーマーのビームは予想していたのだろう。ジェノアスKも横に回避、

その隙をついてアイのユニコーンは続けてビームを撃ちながら距離をつめた。左腕のシールドで頭部をガードするジェノアスK、

だが胴体はガラ空きだ。そのまま胸部にビームの直撃を受けて爆発する。

 

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「……何?あのリアクション?」

 

「どうした?」

 

観戦モニターでバトルを見ていたナナが疑問の声を上げる

 

「いや、今の敵、頭ガードしてたけどコクピットって頭にあるの?」

 

「いや、ジェノアスのコクピットは胸のハズだが……確かに妙だな」

 

 

ナナが感じていた疑問はアイも感じていた。

 

「今のジェノアス……頭を守ってた?」

 

「あっという間に二機、本当に伊達じゃないね」

 

「!?後ろから!」

 

後ろから残りの一機が左の盾に装備されたビームサーベルで斬りかかる。アイも左腕からビームトンファーを発生させ受け止めた。

 

「所詮は無人!今までの挑戦者の方がよっぽど手ごわいです!」

 

「でしょうね。わたしが操作すればこんな事にはならなかったのに……」

 

「何?!」

 

「でもわたしはあの二機とは違う、あなたは勝てない」

 

「決めつけないで!!」

 

だが挑戦者が大口を叩くだけの事はあった。普通に彼女は強い。アイのユニコーンのビームトンファーを軽く捌く。

 

「くっ!強い!」

 

「当然よ、あなたを倒すと言った以上相応の実力は必要だもの」

 

「尚更ワケが分かりませんよ!なんで無人機なんかつけたんですか!」

 

「ちょっとした実験ね」

 

「何?!」

 

と、その時だった。Gポッドが突如激しく振動する。ダメージの物ではない。そしてアイはその正体を知っていた。

 

「!?時間が!」

 

すぐさま空を、フィールドの中心部の空を見上げる。巨大なシリンダー型人工衛星、スペースコロニーが都市中心部に今まさに落ちようとしていた。

 

 

「な!何アレ!?」

 

モニターを見ていたナナが画面の異様な状況に驚いていた。

 

「コロニー落とし……ガンダムでダブリンはコロニー落としが行われた街なんス!」

 

「あれが落ちたらどうなんのよ!」

 

「街を吹き飛ばして衝撃波がフィールド全体を襲うッス。出来るだけ離れればダメージも軽減できるんスが、ヤタテさんのあの位置だと……」

 

「そんな……アイ!逃げて!」

 

 

「早く終わらせないと!!」

 

アイの顔に焦りが見え始める。ジェノアスKを仕留めようとビームサーベルを一層振るう。

 

「頑張るね」

 

挑戦者のジェノアスKは急にその場から背を向け離れる。

 

「逃げる!?でも自分から背を向けるなんて迂闊すぎる!」

 

チャンスとばかりにビームマグナムをむけるアイ。だが次の瞬間だった。

 

「大丈夫、信頼してる仲間がいるもの」

 

「!?」

 

ワイヤー状の何かがビームマグナムに巻きつく、直後、電撃がユニコーンを襲った。激しい光にユニコーンは包まれる。ハンブラビの装備、海ヘビだ。

 

「う!ああああああああああ!!!!!」

 

「この場でとどめをさしたいけど……放っておいてもわたしの勝ちは確定同然ね、さようなら」

 

挑戦者のジェノアスKはそのまま離脱する。

 

「一体……何が……!」

 

誰が海ヘビを放ったのか自機の顔だけでも向けるユニコーン、それを見たアイは目を疑った。

 

「嘘……!」

 

 

最初に破壊したジェノアスKが胸部の破損部をベキベキと音を立て、勝手に元に戻りながら右手で海ヘビを握っていた。

次の瞬間、コロニーが地表に激突。ホワイトアウトするGポッドと観戦モニター、ユニコーンはジェノアスKごと衝撃波により吹き飛んだ。

 

「間に……合わなかったぁぁあああああああああああああああ!!!!!!!」

 

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しばらくして視界が元に戻る。フィールド中心部には巨大なコロニーが突き刺さり、コロニーや建築物の破片が黒い雪の様に空を舞っていた。

廃墟に変わったフィールドに倒れていたユニコーンは……まだ生きていた。

 

「く……破損率は……」

 

操縦桿を動かすもユニコーンはギギギ……と音を立てるだけで動けない。全身酷い損傷でギリギリ生きてる状態だった。

 

「動け……!動いて!」

 

「しぶといね。まだ生きてるなんて」

 

「!?」

 

眼の前に三機のジェノアスKが集まっていた。こちらも三機とも衝撃によりダメージをおっていた。

アイのユニコーンと一緒に吹き飛ばされたジェノアスKはもはやボロボロの状態だった。だが三機とも再生していた。

外れたパーツは勝手に戻り、割れたパーツは生える様に埋まり、空いた穴は時間を巻き戻したかのように戻る。異様で不気味な光景だった。

 

 

「どうして……なんなの!あんなガンプラ!」

 

ナナは今の状況が受け入れられないでいた。アイが負ける以上にルールを無視した敵が理解できない。

 

「い・違法ビルダーッス」

 

「え?」

 

ソウイチが信じられないといった表情で言う。

 

「ネットで見た通りッス!ありえない!あんな現実味のない物が実在してたなんて!」

 

「マ!マジで存在してたのかよ……」

 

ブスジマ以下、他の全員も似たような表情だった。

 

 

ジェノアスKのバイザーの中心部が赤く不気味に光る。アイをあざ笑うかのように。

 

「まだ私の心は死んでないのに!動いてよ!」

 

「ごめんねアイちゃん、あの人からの依頼だから……わたしもこうしないとスランプから立ち直れないの」

 

スランプという言葉、それにアイは聞き覚えがあった。それに関連する人物は……

 

「まさかあなたは……フジミヤ・レムさ」

 

 

アイの言葉を遮るようにジェノアスKがビームサーベルを振り上げる。ここまでかとアイは目を閉じた。だが次の瞬間だった。

 

「そこまでです!!レムさん!」

 

一機のガンプラがアイのユニコーンの前に立つ。そのガンプラは右腕にある大きな剣を掲げ、振り下ろしたジェノアスKのビームサーベルを受けた。

アイはその機体に、ビルダーの声に見覚えがあった。

 

「パーフェクトストライク!?ヒロさん!?」

 

「ボクだけじゃありません!」

 

直後、右にいた無人のジェノアスKの頭部が真っ二つに両断された。そのまま頭部を破壊されたジェノアスKは動かなくなった。

青い、先端の割れたGNソード、そして半壊した顔に左腕に布をまとった機体。『ガンダムOO』に登場したエクシア・リペアだ。

十分な設備もなしに修理した機体という設定の為、ボロボロな外見になっていた。

 

 

「エクシアリペア?!あれを作成するなんて!」

 

「その機体……ヒロ!」

 

ジェノアスKに乗ったビルダー、レムは驚いた風に言った。

 

「レムさん、どうしてこんな事を……」

 

「こちらのセリフよ。ヒロ、せっかく勝っていた勝負だというのに!」

 

「勝負!?違法ビルダーに手を出したあなたがいう事ですか!?」

 

「……何度言わせれば気が済むの?それでも勝ちたいの!」

 

その会話を絶つかの様にエクシアリペアがレムのジェノアスKに斬りかかった。とっさにバックステップでかわすジェノアスK。

 

「所詮言い訳だよ!かのフィリップ・マーロゥは言った!『撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ』と、

君は対等の勝負をしていない時点でそんな資格はない!」

 

「その言い回しと声はマスミさん?!」

 

エクシアリペアに乗ったビルダー、フクオウジ・マスミは割れたGNソードでジェノアスKに斬りかかる。

 

「深夜アニメからの引用かと思ってたよ!」

 

レムが叫ぶ中斬り合う二機、それを残った無人のジェノアスKがエクシアリペアに海ヘビを放つ、海ヘビはGNソードに巻きついた。

そのまま電撃を受けたところを切り裂くつもりだろう。

 

「マスミさん!」

 

見てる事しか出来ないアイは叫ぶ。

 

「心配ご無用!」

 

「!?」

 

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バッ!とエクシアリペアが左腕の布を翻す。布の下からはガンプラシステムウェポンのガトリングの銃身が出てきた。電撃が来る前に無人機の頭部を撃ち抜く。

 

「布を下に武器を隠していた……?!」

 

「本来のエクシアリペアは左腕がない。故に腕がないと思い込ませて不意打ちするわけだね」

 

驚くアイにヒロが説明した。その横でエクシアリペアはジェノアスKに突撃。スピードを載せたGNソードの突きを放った。

 

「終わりだ!」

 

「あっ!!」

 

レムが対応しようとするも遅かった、ジェノアスKの頭部に深々とGNソードが突き刺さる。

粉砕された頭部の中からは一緒にICチップの様な物が落ちた。そしてジェノアスKは全て爆発、結果的にはアイの勝利となった。

 

 

 

「ではこれで失礼するよ」

 

バトルの終わる直前、その場を離れようとするヒロとマスミ、アイは納得できない事が多すぎた。

 

「待って下さい!何が起きてるんですか!?なんであんな物が!あれ乗っていたのレムさんでしょ!?マスミさんとヒロさんの仲間の!!」

 

黙っていたマスミが口を開ける。

 

「アイちゃん、答えることはできない。ただ……」

 

「?」

 

「この件には関わらないで」

 

そう言い残し、二人は去って行った。ガンプラバトルの終わったGポッドでアイは思った。

チーム『エデン』のビルダー、フジミヤ・レム、彼女が違法ビルダーと呼ばれる者に所属していた。

そしてそれを追うチームメイトのハガネ・ヒロとフクオウジ・マスミ……

 

「一体何が起きているの……?」

 

 

そして違法モデラー達のいるとあるゲームセンターのGポッド

 

「これだけ離れてるのにあの二人が邪魔にはいるなんて……」

 

Gポッドからヘルメットを脱いだレムが出てくる。彼女を黒髪の少女が出迎えた。

 

「残念でしたね。後少しだったのですが」

 

「マスミにわたしを止める権利なんてないのに……」

 

苦々しい顔でレムは呟く。

 

「ですがいいデータは取れたハズです。無駄にはなりませんよ」

 

「そう……では一応の成功は収めたという事ね」

 

「あら?とんでもない。まだヤタテ・アイに完全な屈辱を与えてません」

 

「?!アイちゃんに勝つまでやれって!?」

 

「その通り」

 

――この人……アイちゃんに恨みでもあるの?――

淡々という黒髪の少女にレムは眉をひそめた……

 

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登場オリジナルガンプラ

ジェノアスK(キラー)

※友達が作ってくれました。ありがとー!!

使用ビルダー『フジミヤ・レム』

 

これにて27話終了です。コマネチです。

今回からホビー物お約束の悪役「違法ビルダー」が登場します。

決戦に向けての準備となりますが中だるみしない様にしたいですね。では

説明
第27話「違法ビルダー」
面接試験、それはアイのバイト先の工場長、ブスジマ・シンジがアイとガンプラバトルがしたい為に流した嘘であった。その折でアイは『違法ビルダー』という奇妙な言葉を知る。
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燈さん 有難うございます!その言葉を励みに、もっと盛り上がれる様気合を入れて続きを書いてます!(コマネチ)
楽しいですねぇ…大満足です!(燈)
コマネチさん、コメントへのご返事ありがとうございました。ああ、そういえばそんなのいたなと今思い出しました。既存の設定通りだと同時に弱点も設定通りになるとかありそうですしね、フェイントも重要でしょうね。(双子辰)
双子辰さん 有難うございます。元ネタは北斗の拳のボルゲです。…嘘です。特にイメージはしてません。単純にフェイントで「これあったら面白いかな?」と思いつけました。、(コマネチ)
飛鳥さん 読んで頂き有難うございます。そのつもりです。それに見合った機体も出せるよう頑張って作ってます。(コマネチ)
お疲れ様です、謎の少女もですがレムの動向も気になりますね、以前からスランプとは言ってましたが…。ジェノアスKも良いですがエクシアリペアに左腕とは…普通は油断するでしょうね、別にABCマントという訳ではありませんし。もしかして元ネタはビルドファイターズのマントを付けたまま左腕を付けていたアメイジングエクシアでしょうか?(双子辰)
無人機が出てきましたか〜(´▽`)これからwktkが止まらなくなる展開になるわけですね!!(飛鳥)
mokiti1976-2010さん 見て頂き有難うございます。黒幕にとって、ある出来事があってその関係で…、とだけ言っておきましょうか。(コマネチ)
何故黒幕の少女はアイにそこまで拘るのか…なかなか根が深そうな気がしますが。(mokiti1976-2010)
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