「真・恋姫無双  君の隣に」 第31話
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「季衣、貴女は正門を守りなさい、私の事はいいわ」

「でも、春蘭様が華琳様から離れないようにって」

「正門を突破されれば全て終わりよ。私は他の門の全ての指揮を執るわ、貴女がいるなら正門は安心して任せられるのよ」

「・・分かりました。絶対に守って見せます」

季衣が正門に向かい、私は兵に指示を出す。

油断したわね。

恭順した張?が反旗を翻し、親衛隊しかいない陳留を攻めてくるなんて。

濮陽に赴いた桂花も危険だわ、今の状況を待ち構えていた備えを感じる。

事の裏に麗羽の影が見えるけど、私の知ってる麗羽とは結びつかないわね。

小戦ばかり仕掛けて来る戦い方に違和感を覚えてはいたのだけど。

麗羽の意に沿わない策を実行する軍師がいるのかしら?

でも袁紹軍は良くも悪くも麗羽の意思が絶対の筈、それに私の知る限りそんな軍師に心当たりは無いわ。

これは、細作を強化したほうが良さそうね、情報戦の遅れが招いた事かもしれない。

・・その前に張?を退けないとね、兵力差は約10倍、籠城しかないわ。

袁紹軍と対峙してる軍は動かせないから、徐州に向かった春蘭達を待つしかないわね。

つくづくやってくれるわ、丁度徐州は戦が行われてる時機。

最速の霞の騎馬軍でも伝令が届くまでの時間も入れると、最低でも七日はかかるわね。

これも敵の計算通りだとしたら、私は完全に嵌められた事になる。

 

 

「真・恋姫無双  君の隣に」 第31話

 

 

「一刀〜、お帰りなのじゃ〜」

「ただいま、美羽」

飛び付いた美羽様を一刀さんが抱き止めます。

「お疲れ様です、一刀さん」

「お疲れ様でした、宰相」

「お疲れ様なの」

「ただいま、七乃、凪、沙和。留守の間をありがとう、安心して遠征に専念できたよ」

「ウチも忘れんといてや〜」

「「「「忘れてた」」」」

「ひどっ」

皆で笑って、真桜さんが一刀さんを攻めます。

ああ、やっぱり一刀さんがいると空気が変わりますねえ。

「やっほ〜、皆、久しぶり♪」

「蒲公英さん、お久しぶりです。月さんの名代ですか?」

「うん。領土も繋がって、いよいよ建国だからね。打ち合わせの為に一刀様に呼ばれたんだよ。準備は進んでるんでしょ?」

「蒲公英さん、内緒の話ですよ」

「う〜ん、こっちではむしろ建国しないと暴動が起こりそうな位に盛り上がってるからね〜」

それはこちらも似たようなものです、建国の話は瞬く間に広まって志願兵や協力を申し出る商人が後を絶ちません。

官吏には否定も肯定もしないように徹底していますが、最早無意味でしょう。

「兄様の国ですか、何かドキドキします」

「やれやれですねー。こうも機密が公然の事実と知られているようでは、華琳様への報告も意味がありませんよー」

「女関係はしっかり報告するけどな」

「止めて!」

あせる必要は無いですよ一刀さん、最初から分かってますから。

「真桜さん、程cさん。後でお話を聞かせていただけますか?」

「任せとき、言われるまでもないで」

「風は何も知りませんよー」

「フッ、俺は色々知ってるぜ」

はい、色々教えて下さい、最低その倍は愛して貰いますから。

「皆さん、お初にお目にかかります。この度、陣営に加わらせて頂きました、黄漢升と申します」

江陵の太守だった方ですね、幼いお子さんがいると聞いてます。

「紫苑には内政官として務めて貰う。領主としての実績と見識は相当なものだから国全体の政の一端を任せたい。七乃、しばらく指導を頼むよ」

「分かりました」

ありがたいです、ようやく首脳陣に内政を担っていただける人が増えました。

そして、もう一人。

「黄公覆じゃ。よろしく頼むぞ」

その場の空気が一気に変わって、私達に緊張が走ります。

 

・・やっぱり、こうなるよな。

七乃達が祭を無条件で受け入れるわけがない。

真桜が宥めてくれてたから遠征先まで直接言いに来る事はなかったけど、互いの報告の中には祭の事が必ず上がっていた。

七乃達の危惧している事は正解だし、俺も埋伏の事実は言えないしな。

「黄蓋、久しぶりなのじゃ。父上の葬儀以来かの」

「袁術殿、大きくなられましたな」

「そう言ってもらえると嬉しいのじゃが、妾はまだまだ子供じゃ。毎日のように学ぶ事が出てくるのじゃ」

「それでよいのです。学びなされ、全てが貴女を育ててくれましょう」

「妾も黄蓋のように大きくなるかのう?」

「なれますぞ。ならば秘訣をお教えしましょう。それはですな・・」

「祭、美羽に酒はまだ早い」

途中まではいい話だったのに。

「何を言う、酒ほど人生を豊かにするものはないぞ」

「妾は蜂蜜水がよいのじゃが、今度飲んでみるかの」

「うむ、儂が良い酒を選んで進ぜよう」

俺としては頭は抱える事だけど、美羽と祭の会話は聞いてて嬉しく思った。

師が教え子を導いているような、二人の会話は場の緊張感を取り除く。

七乃達は複雑な面持ちだけど、祭に対する印象は悪くはないだろう。

祭の事は、俺が決断する事だ。

でも安易な道は選ばない、俺は死なないし、祭も死なせない。

江夏で別れた思春も、力を貸してくれると約束してくれた。

「それで、一刀さん、黄蓋さんには何の役目をして貰うのですか?」

「儂は何でもかまわんぞ」

「そうだな、遠征では先陣の将を任せていたけど、建国の時に人事を一新する予定だから」

「役職に就いて頂くには微妙な時期ですねえ」

「よし、前から付ける様に言われてたし。祭、当面は俺の護衛をしてくれ」

「・・了解した」

 

とは言ったものの、一刀、お主馬鹿じゃろ。

張勲達が信じられないものを見る眼でお主を見ておるぞ。

時が来るまで全身全霊で尽くすと考えとるのは、あくまで儂個人の考えじゃ。

これほど危機意識が無いとは、買い被りじゃったか。

・・いや、そうとも言えぬか。

今の状況で儂が一刀を討てば、袁術軍は儂一人を討つだけでは止まるまい。

董卓軍も加わり、全力で孫家を討とうとするじゃろお。

それでは逆に儂は孫家を滅ぼす理由を作る愚か者となる。

改めて考えてみれば、儂にも縛りがあるのじゃ。

ふむ、一刀はその事も踏まえておるのか?

どうにも分からん、賢者なのか、愚者なのか、大きな徳を持つ者なのか、只のお人好しなのか。

穏に情報を渡すから定期的に明命に来させるように言ったが、関所が取り除かれ細作が入り放題の領地、建国という最重要国家機密ですら隠そうともしない、これほどに政が透明では意味がないのお。

隠すのが当たり前の考えである儂等とは違いすぎる。

冥琳や穏のような軍師にとって、天敵かも知れんな。

興味深いのお、一刀、お主の器はどんな形を成しているのじゃろうか。

 

ええ、知ってますよ、知っていますよ、こういう人だって。

黄蓋さんが刺客だとしても、簡単には手を出しては来ないと報告にも書いていましたしね。

ですけどね、一刀さん、人が理屈だけで動くわけじゃないのは貴方が一番良く分かっているでしょう。

要は貴方が黄蓋さんを信じてるからの結論なんですよ。

ああ、もう、どうしてこんな厄介な人を好きになってしまったんでしょうか。

私の両肩に凪さんと沙和さんが手を置かれます、同じ結論に達したんでしょう、首を振って諦めてる顔です。

「そうだ、蒲公英がお土産を持ってきてくれたんだ。月が五胡との交渉で薬を提供したら、向こうからお礼にと駿馬を千頭も贈ってくれたそうだ」

「千頭も!それは素晴らしいですね。月殿の外交が順調な事もですが、良い軍馬はなかなか手に入りませんので」

「うん、たんぽぽと一緒に連れて来た兵達も絶賛してたよ。馬を見る眼の厳しい西涼騎馬兵のお墨付き♪」

軍馬千頭ですか、急いで予算を組みましょう。

黄忠さんにも手伝ってもらって力量を見せていただきますか。

帰ってきたばかりの一刀さん達には休んでいただく事にして、私達は政務に戻ろうとしましたら、急報が入ってきました。

曹操さんの本拠地である陳留が昨日から攻撃されていると。

しかも主力は徐州を攻略中で、落城は時間の問題との事です。

報を聞いて典韋さんは青ざめてますが、程cさんは変わりありません。

怖い人ですね、出来ればこの人を敵にしたくはないですが。

「蒲公英、連れて来た騎兵一千を貸してくれ」

「一刀様の意のままに、たんぽぽもお供します!」

「凪、今すぐに動かせる騎兵は?」

「二千、私も参ります」

「祭、風、流琉、急いで準備を!」

「応」

「はいっ」

一刀さん達が一斉に動き出します、私も動こうとしましたら程cさんはまだその場に居たままです。

「程cさん、どうされたんですか?」

「おや、張勲さんなら気付いていると思いますがー」

やはり怖い人ですね、そうです、気付いていますよ。

「報告が早すぎて、内容が詳しすぎる事ですね」

「はいー、情報が確かなら徐州への救援伝令すらまだ届いてはいないでしょう。明らかに不自然です」

「つまり、一刀さんを釣り上げる為の罠ですか」

「そう考えるのが自然でしょうねー。お兄さんの性格を見抜いた狡猾な策です。気付いているのに行かせるんですかー?」

「止めて行かなかったら、一刀さんじゃないでしょう?」

そんな一刀さんに惚れるわけないじゃないですか、皆がそう言いますよ。

だから私達がいるんです。

あの人があの人でいられる為に、私達が支えるんです。

「むー、惚気られてしまいました。口惜しいので風はとびっきりの策でお兄さんを助けて、風に夢中にさせてみせましょー」

 

 

「おいっ、本当に奴は来るんだろうな?」

「ええ、間違いないでしょう。それが、北郷一刀ですから」

何だ、その信頼は、忌々しい。

「こんな城、三日で陥ちるぞ」

「それは困りますね。まあ、曹操なら五日ぐらいは持たせるでしょう。ですから貴方は大人しくしていて下さい。北郷一刀が来るまでに陥とされては困りますので」

「チッ、まどろっこしい。術が使えればとっくに殺しているものを」

「そうですか?私は今の状況を結構楽しんでいますがね。貴方もその様に見えますよ。なにしろ今の私達は管理者とはいえない、只の人と変わらないのですから」

確かにな、この従来とは違う外史に渡ってきたら、術は使えなくなるわ、この外史から出られなくなるわ、一体どうなってやがる。

ありとあらゆる意味で普通の人間と変わらなくなった。

お陰で奴の事を耳にしても、生きていくのが先で放置せざる得なかった。

ふざけやがって、いきなり宰相だと?

一般市民の位置付けで、術もなしに襲えるかっ!

「出番が来たら呼べ、どんな手を使ってでも殺してやる」

 

ふふ、可愛い人ですね。

どんな手でもと言うのでしたら、火薬でも使えばいいでしょうに。

気付いているのでしょう?管理者ではない自分に戸惑いながらも、内心で喜んでいる事を。

幾多の外史を渡り歩き、破壊のみしか考えられなかった私達が、何故か解放されたのです。

今更に北郷一刀と仲良くしよう等とは露程にも思わないのでしょうが、今の貴方は憎しみだけではなく、好敵手として同じ条件で戦いたいと思っているのですよ。

断固として否定するでしょうけどね。

さて、私は張?のお守りでもしていますかね。

袁紹軍の軍師として。

 

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あとがき

小次郎です。読んで頂いて有難う御座います。

あの二人が登場です、色々活躍してもらう予定なので応援してあげて下さい。

あと、今迄の投稿作品ですが読み返して何箇所か加筆修正しています。

何行もという訳ではありませんが、言葉が足りないかな、漢字が違うかな、区切りが違うかな、というところを修正しました。

申し訳ありませんでした。

では次作が出来まして、また読んで頂けましたら嬉しいです。

説明
隙をつかれ窮地に追い込まれる華琳。
寿春に戻り新しい仲間を紹介する一刀。
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コメント
袁紹軍にこの2人がいたかー 神仙ではなくただの人での登場となると向こうも制約がきつそうですね(はこざき(仮))
あらら、袁紹軍に于吉が軍師ですか…確かに頭使うことには強そうだな。次回も楽しみにしてます!(レヴィアタン)
宇吉って術つかえないとくそよわそうですがw軍師なのか?(nao)
今まで読んでて気になったんですが「!」は使わないんでしょうか?(牛乳魔人)
うわっ!袁紹軍に管理者がいたのか…期待してます。(エドガー)
管理者急に出てきたな、次回も期待(地球ジェット…)
今度飲んでみるかの→では間を取って蜂蜜酒はいかが?(XOP)
げえっ、否定派管理者!?管理者じゃなくなったみたいだけど、これは嫌な相手……まあチート無しだからいいのか?しかしいよいよ建国か。これはどんどん華琳の先を行くなぁ。今回華琳は一刀抹殺のためのダシにされただけだけど……華琳のやり方もちょっとマズってるように思える。(Jack Tlam)
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于吉 左慈 華琳  七乃 北郷一刀 真・恋姫無双 

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