義輝記 星霜の章 その十壱
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【 星達が見たモノ の件 】

 

? 徐州 下? 晋軍陣営 にて ?

 

星「皆、気を付けろ! あの軍は……なにやら得体の知れない気配がする!」

 

斥候『はい──っ!』

 

夜の闇を利用して黄河を渡り、目指す陣営に偵察へと近付く人影。

 

己の疑問を解消させようと訪れた星、桂花の命を受け……再度の侵入を試みる斥候役の兵士三人。 ──────息を殺し様子を窺う。 

 

星「お主達の調べ物はなんだ………?」

 

斥候1「はっ! 荀軍師は疑っておいでです! かの『松永久秀』自身が、『洛陽軍の軍師』様と対決を熱望しているのは、周知の事実! それなのに、遠く離れた地で怠慢に動く……この軍勢。 かなり違和感を、覚えていらっしゃいます!」

 

星「そうか………私と似たような考えをお持ちだったか………」

 

斥候2「趙将軍も────!?」

 

星「………私は、『筒井順慶』を疑ったのさ! 最初に斥候として、この陣営に来た際は驚いてな……。 

 

煮え湯を飲ませて差し上げた将が、この陣営で『松永久秀』と共に、私を笑いながら見ているのだ! 生きた心地がしないのも………当然だろう?」

 

斥候2「──────!」

 

星「しかし………一向に此方に向かって来ない。 半里(約200b)しか離れていないのに、気付かない奴ではない! これは……何かある! そう感じて、再度ここまで来たのだ!」

 

斥候3「私達も……その件、調べてみたいと思います。 洛陽軍の忍びには到底及びませんが……私達も出来るだけ調査致します! では───!!」

 

星「また、必ず会おう!! 私も探れるだけ探って見るからな! ……月が真上に来る時が集合時間! それまで戻れよ!!」

 

斥候1「趙将軍も、御無理なされずに────!!」

 

星「………お互いにな!」

 

★☆☆

 

斥候達と別れ、先に進む星。

 

前は、昼間に少し遠くより眺めて終わらせたが、今回は忍び込んでの行動。

 

ーーーーー

 

夜は……視覚が闇に遮られる為、潜入し易いと考えられる方も多いだろう。 

 

しかし、聴覚がその分高まり、周りには騒がしい喧騒も消え、娯楽も少ない。

 

かなり神経を使うのが現実であり、その中で得た情報は貴重だったのだ。

 

ーーーーー

 

申し分のない程度の柵で囲まれた、幾つもの並ぶ天幕。

 

流石に四十万の軍勢だけあって、活気が溢れ深夜にも関わらず、人影が多数見える。 よく見ると、鳥丸の兵士らしき男が、美麗な衣装で飾り、美しく着飾った、若い漢民族の女性を連れて歩いている。

 

星「人が集まれば、深夜と言えど商売は成り立つか……。 あの娘は、花街柳港からの遊女かもしれ………むっ!?」

 

何やら甘い雰囲気が漂い、会話が聞こえ……その都度に、若い二人が唇を重ねる。 そんな甘い動作に驚いた……訳では無い。 

 

そのような事は……昔、勤めた花街柳港の用心棒時代に、見飽きている。

 

驚いたのは『会話』だ。 

 

正確には……声! 

 

会話の中身は分からない故に知らぬが、女の声が『余りにも野太かった』に違和感を抱いたのだ! 驚いた星は、再び念入りに女を見入る!!

 

顔は間違い無く小顔の美人! 胸も膨らみが、なかなかどうして魅力的。 

 

しかし、視線を中間に合わすと、天幕より漏れる明かりにより、鮮明に見えたのだ! 女性では分かりにくい筈の『喉仏』と『髭』がハッキリとぉぉ!!

 

得体の知れない正体は、これだったのか! と……口を抑える星であった。

 

★★☆

 

更に調査すると、似たような同伴者、寂しいお一人様達が彷徨いていた。 

 

結構な美人に見える者が多いのだが、中には漢女と称するのが似合いの男?も見てとれた!  

 

 

例えば……その者は、顔が真っ白で、夜の闇の中でも驚く程、視認がし易い! 筋肉質なのが着物を着ていても、外見で分かる程に鍛え込まれている。

 

 

不思議なのは、その漢女の需要が多い事。 同伴者の半数以上が……漢女とイチャイチャしていた。 

 

星「…………いかん! これ以上、こんな風俗ばかり見ていると、頭がおかしくなりそうだ!! 精神安定薬を食し、回復に努めねば!!」

 

懐からメンマ壺を取り出し、急ぎメンマを掴み上げ、口に投げ込み咀嚼(そしゃく)して飲み込んだ。 普段は、決してしない緊急の不作法な食べ方。

 

普段の星ならば、最初に目でメンマ職人の技術を楽しみ、次に香りでメンマの熟成を感じ取り、ようやく口に入れて、メンマの歯応えを噛み締める! 

 

正しく、この道に精通した者しか分からない、食べ方しか行わないのだ。 

 

その星が……ただ……メンマを食べる。 今の状態は、それだけ緊急事態だった事を物語っていた!

 

星「ふぅ──危ないところだった! ………こんな事なら、朱里と雛里も連れてくれば……いやいや! 狂喜して動かなくなるかも知れぬな! それでは、私が危険を冒し、何を確認をしに来たのやら………」

 

星は一人呟いて……情報を集める為、暗闇にと消えて行った…………!

 

◆◇◆

 

 

【 颯馬の罪過 の件 】

 

? 司州 河南尹 鶏洛山付近 にて ?

 

《 星達の突入より二刻前 (約4時間前) 》

 

颯馬「もう少しで………対峙するんだな………」

 

ーーーーー

 

洛陽を出発して十日。 此処で夜営をする為、皆が準備にてんてこ舞いだ。 

 

ただ、俺は『軍師だから身体を休めろ!』と皆に心配され、夜営近くの木に寄りかかり、前方の平野部の遥か彼方を………望んでいた。

 

赤い夕焼けが……辺りを赤く染めていく。 左手に見える山が鶏洛山だったかな? 前方には、広々とした平原が見えた……………。

 

あの向こうに、日の本を出航する際、俺を泣いて引き止めた姫武将……『松永久秀』殿、『筒井順慶』殿が居るんだ! 敵として…………。

 

俺は、遠くの地平線に目を向け、日の本での出来事を…………回想していた。

 

★☆★  ★☆★  ★☆★ 

 

当時の俺は、軍師ゆえ将と接する機会が多かった。 そのため、軍師として将を立て、円滑な関係を望み奔走していた。 

 

しかし、幾ら相手は勇将、知将の名は高くても……花も恥じらう乙女達。 誠心誠意に付き合う内に、済し崩しに肉体関係を持つ事も………あったよ。

 

だが、日の本統一に近付くにつれ、一人の乙女に心を奪われたんだ! 

 

俺の足利学校時代の学友にして、足利家の重臣。 心許せる友、政務での相談役、そして………生涯、添い遂げたいと願うようになった『明智光秀』!! 

 

俺は……ある時、光秀に告白した。 

 

幾度もの戦いに挑んだが、この時ばかりは……俺の知も謀も……何も役に立たなかった。 ただ、自分の決めた覚悟だけを持って………!

 

結果……光秀も……俺を憎からずと想っていてくれた! 恥ずかしげに返事を貰った時の嬉しさは、今でも忘れられない───!!

 

その後………俺は……気付いた。

 

俺と身体を重ねてしまった姫武将は……どうなる? 

 

俺は……どうすればいい? 

 

俺は、この機を理由に……関係を清算するつもりだった。 

 

具体的には……三人の姫武将『竹中半兵衛』『筒井順慶』『松永久秀』。

 

半兵衛殿は、優しい笑顔で………許してくれた。 

 

多分、自分の寿命を知っていたのだろう。 余りにもあっさりしていたので……驚いたが……今では理由は、おぼろげながら分かる………。

 

しかし、久秀殿と順慶殿は………荒れ狂った! 俺も散々酷い目に合わされたが、二人の気の済むように任せた!

 

だが……その狂気が……光秀に向かう気配を感じ、俺は恐怖した! 

 

光秀まで惨い目に合わされる! もしかしたら……俺よりも………!?

 

そう悩み思案していた時、ある知らせを受け取る!

 

日の本統一後、義輝が大陸に渡る為、俺に誘いを掛けてきたのだ。

 

天から助けと思い、俺と光秀は義輝の誘いに乗り、他の仲間達を伴って出航したのだ! 順慶殿と久秀殿の懇願を……冷たく払いつつ。

 

でも、まさか……こんな何十人も付いてくるとは、想定外だったけど………。

 

★☆★  ★☆★  ★☆★ 

 

 

そして、その禍根となる二人は、月様の大陸平和を阻み為、力を付けて、再度現れた。 日の本に居た当時とは……段違いに強くなった二人が…………。

 

颯馬「……………身勝手だな………俺は……………」

 

久秀殿や順慶殿の懇願を……にべも無く払いのけた挙げ句、敵対すれば容赦なく討たなくてはならない! 出来れば助けてあげたいが……余りにも兵や民の犠牲が大きい! どう考えても『死罪』にしかならない!!!

 

やるせない気持ちが……再び込み上げる! 胸が痛む! 呼吸が苦しい!!

 

原因は……俺にある。 俺にもあるんだ────!!

 

愛紗「どう……されましたか? 天城様?」

 

ふと、後ろから愛紗から……声を掛けられる。  

 

振り向けば、艶やかな黒髪を夕日に染め上げ、俺を覗き込みように眺め、急に俺の額を片手で当てた。 一瞬の出来事で、何をされたのか分からなかった。

 

愛紗「熱は………無いようですね? ですが、顔色が悪く、呼吸が荒い…。

 

───はっ! も、もも、申し訳ありません! ご、ご主人様と同じように気安くして触ってしまい────!!」

 

颯馬「………ありがとう! 心配してくれたんだよね?」

 

愛紗「うぅぅぅぅ……………はぃ………//////////」

 

消え入りそうな声と朱に染めた顔を見て、このオナゴは、あの『関雲長』なのだろうか……と思う。 

 

この世界は、三国史の別世界。 

 

銅鏡が平和を望み、俺達と月様達を結びつけた異世界。

 

有名な武将が、オナゴばかりと言うのは驚きだが、北郷殿も俺の世界の将はオノコばかりだったと言っていたな。 一度、見てみたいものだ………。

 

愛紗「あ、あのぉ………天城様?」

 

泣きそうな顔で、此方を見ている愛紗。 

 

ふと、その顔が我が主君である月様の顔に重なる。 

 

颯馬「大丈夫だよ、大分楽になった!」

 

いかんな……。 采配を預かる身で、将を心配させるとは………。

 

俺は出来る限り、優しく微笑むと……愛紗の顔に笑顔が浮かぶ!

 

愛紗「そうですか! 良かったぁ!!」

 

………今は、私心で考えて行動してはいけない。 義輝の『上善如水』の行動、月様の大陸平和の総仕上げ……! 必ず勝たなければならないんだ!

 

…………戦乱の源が……俺を恨んでの行為であろうとも!!

 

 

★☆☆

 

 

長慶「……また、一人で悩んでいるようだな。 いい加減、私にも相談をして欲しいものだ! 素直に頼らないと拗ねてしまうぞ………!」

 

一存「もう少し、楽に考えればいいのに……。 それにしても羨ましいなぁ! ───おいっ! 颯馬!!! 俺とそこ替われぇぇぇ!!!」

 

小太郎「私が愛紗さんみたいに看病したいですよぉ〜〜!!!」

 

凪「…………………天城様、最後まで……お供致します!」

 

左近「颯馬! お前は……友としては誇りに思い、オナゴとしては……慕っている。 私は、お前がどのような決断を下そうが付いていくぞ!!」

 

信長「人生五十年………その短い一生で、己の天命を如何に達成するか……難しいものである。 颯馬よ! 今、この時、この場所こそ、己が天命への岐路! 行けぇ! お主の為さねば成らぬ事を突き進むのだ!!」

 

明命「大丈夫です! 私達の掛け替えのない孫呉の将を救い、国や民の危機を回避させた天城様なら………きっと!!」

 

亞莎「わ、私は…………信じています! 貴方の目指す先は、平和な世の中である事を!!!」

 

鹿介「三日月よ……ご照覧あれ !! この天城颯馬、世でも稀有な英傑と存じる!! このような傑物を捨て置いて──我が悲願! 成就など出来ようか!!!」

 

いつの間にか……将達が俺の後ろに並び、口々に思い思いの言葉を投げかける! 俺を励ます者、冷やかす者、それぞれだが…………。

 

 

 

義輝「お主が悩む必要なぞ無いぞ……颯馬。 

 

よぉく考えてみよ! あの者達の狂気、今更では無い! それに、もし颯馬と光秀の関係を、あの二人が知られていたら、どうなっていたと思う!!」

 

光秀「颯馬………………」

 

 

 

義輝と光秀が……俺の前に立つ。 夕日が、もう僅かで地平線に隠れるため、輝きは更に増して……二人を神々しく照らし出す!! 

 

颯馬「えっ!? 義輝……まさか……知っていて!?」

 

義輝「お前達の男女の仲など……わらわの目でも丸分かりじゃ!! つまり、久秀や順慶も察知していた可能性が高かったのでな! だから、誘いを向けたのじゃよ!! 勿論、軍師としての手腕も期待しておったがな!!」

 

颯馬「……しかし、久秀殿達の狂気の原因は、間違いなく俺にある! 俺が、もう少し……上手く説得出来れば………」

 

義輝「……やれやれ。 人が良すぎるぞ、颯馬よ! 考えても見るがいい! 

 

久秀は……わらわの暗殺まで企んだ将ぞ!? 光秀を殺害し、後釜に座る事、何とも思わない奴じゃ! 

 

順慶も、可憐な容姿に騙されるでない! 嫉妬深さと自己中心的な考え……何度も経験しておろう! 光秀が害される可能性は大じゃぞぉ!!!

 

それとも───颯馬! 

 

お前は───光秀を捨てる気か!? 

 

光秀を捨て、久秀や順慶に乗り換える気か!?」

 

 

颯馬「─────────!!」

 

 

光秀「……貴方が、複数の姫武将と関係を持っているのは、知っていました。

 

 

半兵衛殿の颯馬を仰望する──眩しそうな顔!

 

順慶殿が時折見せる……輝くばかりの笑顔!

 

久秀殿の……稀に見る無邪気な寝顔!

 

 

全部、颯馬が傍に居た時、見えた顔ばかり………。

 

だから……私は……心配していたんですよ。 いつか、私を捨てて……二人の下に行ってしまうのでは、ないかと───心配ぃ!?」

 

 

慌てて駆け寄った俺は、光秀を力強く抱きしめる!! 光秀の話が途中だが、後でたっぷり聞かせて貰う! 今は……ただ……光秀を感じていたかった。

 

 

颯馬「すまん! 光秀に心配掛けたくなかったんだ! 光秀を傷つけたくなかった! 光秀を………失いたくなかったんだぁぁぁ!!」 

 

光秀「颯馬ぁ……! 颯馬ぁぁ! 颯馬あぁぁ!!!」

 

互いに手を背中に回し、抱きしめながら泣く二人。 

 

愛紗「…………………………」キュッ

 

静かに見守る将達。

 

夜の帳は…………静かに降りていく。

 

颯馬と久秀達を巻き込んだ、大陸最後の大戦。 

 

遅々と、だが確実に……すぐ傍まで近付いていた…………。

 

◆◇◆

 

 

【 命運を担うモノ の件 】

 

? 徐州 下? 城内 謁見の間 にて ?

 

星達が斥候を果たした次の日、『下?城内、謁見の間』において、調査報告を桂花達軍師が行っていた。 

 

華琳「………斥候や星は?」

 

桂花「………はっ! 無事に帰還できました! しかし、些かおかしな様子で私としても……どう対策を立てればいいのか……戸惑っていまして……」

 

華琳「…………どういう事?」

 

桂花「敵本営に存在を明らかにしていた、松永久秀、筒井順慶の両人! 木の板に描かれた、精巧な絵であることが判明!」

 

華琳「──────!」

 

桂花「ですが……敵本営の中に、警備な厳重な天幕があり! 人影を確認しましたが……かの二人であるか……正体が分かりません!!」

 

華琳「……知謀の将、一騎当千の将。 両人が、陣営内に居るか分からないのね……。 小賢しい策謀……だけど、私達は攻めなければならない!! 」

 

桂花「………このまま座していれば、洛陽の軍勢が押し潰され、私達は滅亡! かといって、下手に攻めれば……松永の術中に嵌まる──!?」

 

朱里「か、華琳しゃま! はっ!? はわわわわぁ───!」

 

雛里「お、落ちついて……朱里ちゃん。 あ、あの……華琳様! 唐突ですが申し上げさせて頂きます! 私達に、指揮を任せて貰えないでしょうか?」

 

華琳「貴女達に……? 勝敗の見通しは出来ているの? 相手は颯馬でさえも仕留めれなかった知謀の士。 荷が重いと思うけど………」

 

桂花「雛里、朱里! 貴女達が、私よりちょっと劣るけど優秀な軍師なのは、承知してるわよ! だけど……」

 

朱里「………もし、この戦が負けになれば……私達の首を晒して貰っても構いません!! ですので………どうか!!」

 

雛里「コクコク!」

 

桂花「ア、アンタ達!?」

 

華琳「────その訳を聞きましょう! そこまでの決意を固めた理由を!」

 

朱里「……天城様は、先の孫呉の戦で……不慮の事故で策が不完全だったのを、御自分の責任として背負い……苦しんでいました。 また、策を実行するに、己の身体を省みず、前線へと赴きました!」 

 

雛里「それなのに……私達は、軍を思うがままに指揮するだけしか……考えていなかったんです! 天城様の策に取り組む姿勢を見て、策の成功は、自分の命を投げ出す覚悟が必要だって………!」 

 

朱里「─────私達は、そう学んだのです!!」

 

雛里「わ、私達は直接戦う事は無理です! しかし、命を掛ける事は出来ます! ですから、私達の命を掲げ、策の後押しを行いたいでしゅ!!」

 

華琳「……成る程。 朱里達が命を張れば……将や兵は奮起して戦ってくれる! 天の御遣いの軍も居るから、勝率はかなり上がるわ!!」

 

桂花「し、しかし、黄河を渡るとなれば、古来より、川を渡りきる途中を狙うのが定石!! 我が軍勢が渡る前に全滅する危険も────!!!」

 

朱里「そこは、一刀さん達が作成した『兵器』があるため、ある程度対処が出来ると思います!」

 

雛里「はいっ!! 敵も絶っ対に嫌がる強力な『兵器』ですぅ!!」

 

華琳「そこまで言うなら、貴女達に任せます!! 戦は明朝! それまでに準備を整えるように、各自に伝令を送りなさい!!!」

 

桂花「はいっ!!」

 

ーーーーー

 

朱里「やったね! 雛里ちゃん!! 一刀さんに急いで連絡しなきゃ!!」

 

雛里「で、でも………あの匂いは………勘弁して欲しいぃよぉ………」

 

朱里「……私達の命運が掛かってるんだから! アレくらいじゃないと!!」

 

雛里「…………………コクッ」

 

★☆☆

 

? 徐州 下? 民家の地下室 にて ?

 

沙和「蛆虫共ぉ!! お前達が好む臭いが充満する所で、仕事を与えた得てあげたのぉ! 歓喜に身を震わせながら、沙和に感謝しろぉ────!!」

 

曹兵『サー・イエッ・サー』ゴホッ ゴホッ!

 

ーーーーー

 

とある民家の地下室に、『ある物』が壺に入って、所狭しと置かれている。

 

これは、『徐州 下?』での名物………の副産物。 本来は塵で捨てる予定だったのを、一刀が見つけて壺に封印して地下に封じ込めた。

 

地下室の中は、強烈な悪臭が漂い……何人かの兵士が気分が悪くなり倒れる!

 

因みに……名誉の為に言えば、とある料理の失敗作では無い! ただでさえ貴重な食料を、そんな事に使われたら『勿体ないお化け』に襲われてしまう。

 

………そんな恐るべき壺を地上に解放させるべき、一刀達が動いていた!!

 

ーーーーー

 

一刀「うぐっ! た、耐えられない! ちょっと空気を吸いに!」

 

真桜「隊長〜! 早う戻って来ておくんなはれよ? ウチだけ兵の中に残されるのは、なんぼ何でもきついわ!!」

 

真桜の悲しき叫びを背に受けながら……外に飛び出す一刀。

 

麗羽達も手伝うと申し出てくれたが……今の麗羽は、華琳並みの活躍が出来る将ゆえ、斗詩達と一緒に軍師の補佐や訓練へと出向いていた。

 

★☆☆

 

一刀「ふうぅ─────! 空気が旨い!!」

 

あんな環境の中で、久しぶりに吸う空気は旨い! まだ、四半刻(約15分)しか経っていないのに……このように思うのは、それだけキツイ環境だった為か?

 

それとも、一刀の仕事が、主にデスクワーク中心に行っていた為なのか? 

 

 

??「………貴方が、この世界の北郷一刀……ですか?」

 

一刀「────誰だ!!」

 

于吉「私の名は、于吉。 しがない道士……ですよ」

 

眼鏡を掛けた白い道士服の少年、『于吉』が背後より現れる!!

 

ーーーーー

 

一刀は、驚きの余り、少しの間だが動けなかった。 

 

しかし、動かなければ負けだと、この世界で身に付いた教えを思い出し、身体を動かす。 そして、冷静に于吉を観察しながら対峙する。

 

一刀「いや……その身体から滲み出る……得体の知れない感覚! お前……」

 

于吉「なかなか鋭いですね! 多分、貴方の想像通り───」

 

『───敵ですよ!』と于吉が、応えようとした時、予想外の言葉が返ってきた。 

 

一刀「やはり、お前も貂蝉と同じ────『漢女』か!!」

 

于吉「───────はぁ!?!?」

 

一刀「近付くな! どうも雰囲気が、貂蝉と似ていたから、おかしいと思ったんだぁ!! 俺は普通に、異性に興味ある健全な男子だ! 同性を恋愛対象で見たような覚えなんか───無い!!!」

 

心外である! 誠に心外である!! 私を貂蝉のような化け物と一緒にするなんてぇ─────!! 

 

于吉は、一刀の過ちを指摘するため、説明した!!

 

于吉「お待ちなさい! 誤解! 誤解ですよ!? この于吉、興味があるのは相方の左慈だけであって、北郷一刀……貴方はタイプではありません!」

 

一刀「どこが誤解だ!! ……いや、それより俺じゃないとなると──狙われるのは儁乂か! ヤバい! 誰か、誰かぁ────!!」

 

曹兵「はいっ!」

 

一刀「張儁乂将軍に緊急連絡! 男を好む変態が狙っているから、気をつけろと伝えろぉ─────!!! 念のため、皆も用心するんだ!! こいつ、こいつだからな!? よく覚えておくんだ!!」

 

曹兵「はっ、はいっ!!」ダッ!

 

────更なる誤解が、誤解を生んでしまったようだ!

 

于吉「……やってくれますね、北郷一刀! この外史の鍵となる男だけあります! ──────しかし、覚悟しておきなさい! 

 

貴方は、天城颯馬と同じ、この世界の運命を握る者。 天城共々殺害し、この世界を破滅へと導きましょう!!!」

 

そう告げると、于吉の姿は消える! 

 

誤解を残したままで去ったが、いいのだろうか? 

 

一刀「……天城様と……この俺が………?」

 

一刀は、于吉の残した言葉を頭の中で反芻しつつ、唖然とするのであった。 

 

 

ーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

 

天城の過去が若干『戦極姫4』と変わってしまいました。 

 

話の都合上という事で、お許し願います。

 

金曜日にいろいろと忙しくなりそうでしたので、急ぎで投稿。

 

よろしければ、また次回も、読んで下さい!!

 

 

説明
義輝記の続編です。 颯馬の日ノ本での過去が若干変わってます。 よろしければ読んで下さい!
8/27 誤字訂正、朱里と雛里の台詞を少し修正しました。
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コメント
禁玉⇒金球様 コメントありがとうございます! 初耳です! 学校ではありませんが、銀行の金庫の中が臭いと本で読みました。 比喩では無くて、人の手垢で臭うとか。 まぁ……責められませんね。 逆に言い寄られる可能性は……あるかも?(いた)
うきっつぁんに真剣で尻から犯られなさい!!と思った私を一体誰が攻める事が出来ようか…いや出来ない。臭いモノの代表と言えば女子校の教室なんですけれども知ってましたか?つまり恋姫達が集まる処は…(禁玉⇒金球)
ねね「うぐっ! な、何やら複雑な気分ですぞぉ────!!」(いた)
 風「おぉ──! 風を弄りまくって虎馬を作った一人が……何か言っていますよ〜?」 朱里「正論言われちゃた……ね」 雛里「……うん」 桂花「な、何が悪いのよ! ア、アンタなんかに華琳様の (長いので省略)」  (いた)
朱里「はわぁ! 兵法に勝ち負けは常でしゅ!」 雛里「実戦と授業とは……違いますよ!」 桂花「ふ、ふんっ! 私だって……む、昔の私じゃないんだから…………」 (いた)
naku様 コメントありがとうございます! 策で使えれば採用したいのですが……牛乳でも厳しいかな。 颯馬には、一人で考える暇がなかなか。 基本的に『遠山の金さん並み』の御節介焼きが多いので。(いた)
Jack TIam様 コメントありがとうございます! 作者は小学校しか思い浮かばないというか、其処しかなかったんです。 偶に投げ合いも………したかな? ○ん○に似た臭いには辟易しました。 あれから……ン十年、現物を見た事も嗅いだ事もありません………。 ちょっとは……嗅ぎたいかな? (いた)
なるほど、あれは臭いですね。壺なんかで熟成(腐敗)させたらもう化学兵器。私の場合、寧ろ近所の神社でしたね。もう時期になると近寄ることさえ憚られるレベルで臭い。学校の方は主事さんが掃除してくれてたから大丈夫でしたが……食通は近づけない方がよろしいかと。嗅覚が死んだら飯が不味くなる。(Jack Tlam)
mokiti1976-2010様 コメントありがとうございます! 正解ですよ。 現在の『徐州 下?』内では、名産品だそうです。  (いた)
日本の…しかも学校に植えられているとなると、あの茶○蒸しに入っていたりするアレなのでしょうか?あれが腐ったら確かにきついですが。(mokiti1976-2010)
于吉は……似て非なる者ですから。 一刀の兵器の元は……日本にも植えられています。 例えば……学校とか? 時期が時期でしたので、貯蔵したら、余計腐って臭くなった代物です。(いた)
Jack TIam様 コメントありがとうございます! その通りです。 色々関係を持ってしまうと、どうしても人情的に傾いてしまいます。 桂花は華琳の古参という事でこんな具合です。 そのうちに『足下掬われ、仰向けに転ぶ』かもしれません。(いた)
さて、一刀が作っている物凄く臭う兵器とはなんなのか。何やらよくないガスを大量に生成してやしないか?そして于吉、哀れ。(Jack Tlam)
まあ、一刀もいざ誰か一人を選ぶとなると大変な事になる人なので……そこらへんは恋姫では暈されていますがね。一度肉体関係を持ってしまうと重いですよね。それと桂花、君は本来政治家でしょう。朱里とは同格だろうけど、軍略ではほぼ確実に雛里に負けるぞ?慢心してるし。(Jack Tlam)
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