魔法科高校の劣等生 お兄さま……深雪と結婚してくださいっ! |
魔法科高校の劣等生 お兄さま……深雪と結婚してくださいっ!
みなさん、こんにちは。司波深雪です。
今日はわたしと敬愛する司波達也お兄さまに関するお話をしたいと思います。
実は最近、わたしはお兄さまとの関係で悩んでいます。
みなさんもご存知の通り、お兄さまは眉目秀麗文武両道チート上等ハーレム主人公属性究極ブラコン完備と超絶完璧な方です。
お兄さまが完璧過ぎるがゆえに、どんな非常事態になってもお兄さまが出てくると簡単に解決できてしまいます。お兄さまに困難など存在しません。それは頼もしい限りですが、同時に緊張感には欠けてしまいます。相手の負けはお兄さま登場の瞬間に決まってしまうのですから。物語的にはいつも山場に欠けます。
話が逸れてしまいました。本題に入りたいと思います。
実は最近、お兄さまとの関係がマンネリ化してしまっている気がして不安なのです。
お兄さまは上述したように完璧な方です。完璧超人始祖と呼んでも差し支えないでしょう。ゆえに、お兄さまにとって恥ずかしくない妹になるためにわたしは日々精進することを欠かさないようにしています。
まだまだ未熟者のわたしですが、現在お兄さまとともに通っているホグワーツ魔法魔術学校で学年主席に就くに至りました。
友人にも恵まれ、クラスメイトの光井ほのかさんには毎日お弁当と午後ティーを差し入れています。お兄さまとは比べ物になりませんがわたしにも少しは人望と呼ばれるものがあるようです。
お兄さまは完璧超人で、わたしもそれなりの成績と地位を築く学園生活を送っています。とても安定した生活です。たまにテロリストが攻めてきたりもしますが、お兄さまの掲げるパックス司波は欠片も揺るぎません。
ですが、安定し過ぎて変化がありません。お兄さまはわたしにとても優しく、とても大事にしてくださいます。わたしもお兄さまの栄光に泥を塗らないよう精進に励んでいます。
そんな生活が長いこと続いて……わたしは、その、物足りなさを感じるようになったのです。
お兄さまともっと良き関係を築きたい。そんな衝動がわたしの心の奥より湧き上がってきたのです。
ですが、わたしは自分で言うのもなんですが世間知らずです。お兄さまとの良き関係というものが何であるのか知りませんでした。
そこで、種々の資料を集めて、理想の兄妹像を研究しました。
主に活用した資料は『お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ』と『お兄ちゃんのことなんかぜんぜん好きじゃないんだからねっ!!』です。
どちらも兄を想う妹の健気な日常を題材にした、日本のごくありふれた家庭像を描いた作品です。
ですが、この両作品の分析を通じてわたしはいかに自分が世間知らずなのか改めて思い知ったのでした。
妹が兄を愛するとはどういうことなのかを、です。
ですがわたしは自分で得た結論が正しいのかまだ自信が持てず更に文献を漁りました。
具体的には『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』という作品です。その結果、わたしは自分の仮説が正しいことに確信を抱きました。
「妹が兄を愛するとは一線を超えて結婚することなんですっ!」
感動のあまり思わず大声で叫んでしまいました。
ですが、わたしは世間知らずだったゆえに、こんな常識さえも知らずに15年と数か月の歳月を過ごしてきたのです。
自分が恥ずかしいです。顔に手を当ててイヤンイヤンしちゃうぐらいです。
ですが、真理に辿り着いた以上、わたしはお兄さまともっと良き関係を築くことに躊躇はありませんでした。
わたしは早速お兄さまの元へ向かうことにしたのです。
「ににんがし、にさんがろく、にしがはち、にごじゅう、にろくじゅうに、にしちじゅうし、にはちじゅうろく、にくにくにくにくにくたいは」
完璧の更にその上を目指すお兄さまは自己研鑚に余念がありません。わたしには理解できない高度な術式を研究しておられます。
「お兄さま、ちょっとよろしいでしょうか?」
お兄さまの研究が一段落するのを待ってからお声を掛けました。ちなみにお兄さまの元に辿り着いてから2時間46分が経過しています。正面の鏡に映っているはずなのにわたしの存在に気付かないお兄さま、研究熱心で素敵です♪
「どうした?」
世界一の美男子が振り向いたと思ったらお兄さまでした♪
「実はお兄さまにお願いがありまして」
「深雪がお願いとは珍しいな。どうした?」
大きく息を吸い込みながら、仲の良い“普通”の兄妹になるための提案を行いました。
「お兄さま……わたしと、深雪と結婚してくださいっ!」
思わず大きい声になってしまいました。でも、仕方ありません。
お兄さまにはこれまで散々甘えてきましたけど、結婚を申し込むのは初めてだったのですから。緊張もするというものです。
「……………………っ」
お兄さまから返事がありません。それどころか、わたしの話を聞く時の姿勢のまま固まって動きません。どうしたのでしょうか?
「…………自己修復術式オートスタート。魔法式ロードコアエイドスデータ、バックアップよリード修復開始……完了」
お兄さまの目が精悍に輝き、再起動が完了しました。暑いので熱暴走してフリーズしてしまったのでしょうか?
「回復なされたのなら丁度いいです。改めて申し上げます。お兄さま、わたしと結婚を……」
「…………自己修復術式オートスタート。魔法式ロードコアエイドスデータ、バックアップよリード修復開始……完了」
また再起動されてしまいました。夏ですし、やっぱり調子が悪いのかもしれません。
「あの、お兄さ……」
「深雪」
優しくも威厳に満ちた声でわたしの名前が呼ばれます。
「はい」
姿勢を正しながらお兄さまのお話を窺うことにします。
「民法第734条“1.直系血族又は三親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。ただし、養子と養方の傍系血族との間では、この限りでない。”だ」
「さすがお兄さま。法律にもご精通されているのですね」
本当にお兄さまは何でも知っておられます♪
「実の兄と妹は結婚できないんだ」
お兄さまはいつも凛々しい表情を更に凛々しくされながらおっしゃいました。
「つまり、戸籍を操作してわたしとお兄さまは義理の兄妹ということにすれば結婚できると仰りたいのですね♪」
さすがはお兄さま。常に深雪の1歩も2歩も先を行かれるお方です。
「俺は深雪をこの世界の誰よりも何よりも大切に思っている。だから、どんな法律の抜け道を探そうと結婚はできない」
「わたしはお兄さまをこの世界の誰よりも愛しています。だから、どんな違法な操作を行ってでもお兄さまと結婚いたします」
さすがはお兄さま。やっぱり深雪では足元にも及ばない深謀遠慮の彼方におられます。
「…………実はな、深雪」
「はい」
ついに、わたしのプロポーズを受け入れてもらえる時がきたのでしょうか?
胸がドキドキします。
「俺と結婚するには……好感度が足りないんだ」
「へっ?」
聞き間違いでしょうか?
お兄さまが今、とても恐ろしいことを言ったような。
わたしへの好感度が足りないなんて冗談ですよね?
「俺は深雪を愛している」
「そ、それではわたしをお兄さまのお嫁さんにっ!」
「だが、それはあくまでも妹としてだ。俺のパラメーターは深雪を妹として愛するように最適化されている。嫁の好感度パラメーターはまた別物なんだ。具体的には俺は足蹴にされて粗末に扱われたいんだ」
「そっ、そんなあ…………」
膝から床に崩れ落ちてしまいます。
生まれてこの方15年と数ヶ月。こんなにも深い絶望に陥ったことはありません。
目の前が真っ暗です。
「俺は深雪のことを妹としてしか見られない」
ラブコメ漫画の主人公が年下のサブヒロインを振る際のセリフを言われてしまいました。
このままだと絶望に心を塗り潰されて魔女になってしまいそうです。
でも、ここで挫けるわけにはいきません。
先行研究の資料は語っています。兄は一度の告白では簡単に落ちてはくれないと。
一度振られたぐらいで諦めてはいけないと。
折れかけた心に熱い血流を流し込み、不屈の闘志をもって立ち上がります。
「お兄さまっ! わたしは負けませんっ! 絶対に、結婚したくなる妹になってみせますっ!」
熱い魂の命じるままにお兄さまに宣言します。
「とにかくだ。深雪、お前はとてもいい子なんだからおかしな行動を取るのはよしなさい」
お兄さまが優しく頭を撫でてくださいました。とても気持ちいいです。全てのことがどうでも良くなってきます。でも、忘れてしまうわけにはいきませんでした。
名残惜しさを感じつつもお兄さまから離れます。
「いいえ。わたしたちが日本中に存在するごくありふれた兄妹になるために、絶対にお嫁さんになってみせますからっ!」
日本の普通のご家庭では、妹は兄と結婚、もしくはそれに準じた関係になるのです。それが普通なのです。なら、世間知らずなわたしもせめて“普通”の妹になろうと思います。
「そうじゃなくてだな」
「お兄さま……それではアイシャルリターンです。ごきげんよう〜」
はしたない行為と知りつつもわたしは一目散にお兄さまの前から姿を消しました。
「ハァハァ。お兄さまのお嫁さんになるためには……さらなる好感度の上昇が必要」
自室に戻り鍵を閉めてから先ほどのお兄さまとのやり取りを再度思い出して分析します。
「でも、お兄さまはわたしのことを妹としてしか見ていない。今までのわたしのままではもう好感度が上げられない」
分析結果を口にするのはとても恐ろしいことでした。でも、普通の兄妹になるためにはこの恐ろしい1歩を踏み出さないといけなかったのです。
「完璧なお兄さまに相応しい妹という自分像から抜け出せない限り……お兄さまはわたしへの見方を変えてくれない」
お兄さまの心を掴むためにはイメージチェンジが必要不可欠なのです。
「よしっ。お兄さまのために深雪はナウなヤングにチョベリグな感じでイメチェンをしてみせます」
わたしはベッドの上に置かれているお兄さまの人形に向かって誓いを立てました。
こうしてわたしの人生に新しい目標が生じたのでした。
わたしは自分という人間を変えるために秋葉原にやってきました。
お兄さまはわたしには内緒でよくこの街を訪れています。この街にはお兄さまほどの方を惹き付ける何かがあるのだと思います。
というわけで、わたしも自分が変われるための何かを探してみることにしました。
駅前をキョロキョロと見回します。
すると、世界で一番美しい声を持つ声優の早見沙織さんそっくりの声をした少女が2人、歩いているのが見えました。
2人ともわたしと同じぐらいの年で、前髪を切り揃えた可愛らしい女の子です。興味を惹かれたわたしは早速2人に話し掛けてみました。
「あのぉ〜すみません」
「「私と同じ声っ!?」」
ビックリした2人はすぐに振り返ってくれました。
そしてわたしたちは声が似ているという共通点もあってすぐに打ち解け、3人で駅横のガンダムカフェに入りました。
「私はサチ(CV:早見沙織)と言います。ヴァーチャルMMOが大好きです」
「私はユリン・ルシュル(CV:早見沙織)です。フリットが大好きです」
「私は司波深雪(CV:早見沙織)です。お兄さまが大好きです」
サチさんもユリンさんもとても優しい方で、わたしたちはすぐに仲良くなりました。
そしてわたしは相談に乗ってもらうことにしました。
「イメチェンしてお兄さまに異性として好かれたいんですが、どうしたら良いでしょうか?」
サチさんとユリンさんは顔を見合わせて小さく頷きました。そして、2人で同じ答えを出したのです。
「「死んでみたらどうかな?」」
お二人の意見は顔に似合わず過激でした。
2人とも、メインヒロインを張れるほどの美少女なのにあっさり退場させられた。そんな境遇だからこそ言える重みを感じさせるアドバイスでした。何の根拠もない話ですが。
「死ねば、愛する人の心にずっと残れるから……私はいつも、キリトくんといられる。途中でフェードアウトするシリカちゃんみたいなサブヒロインより扱いが全然いいよ」
「生きるのって難しいね。フリットはいつまでも私のことを覚えていてくれるから。最終回も奥さんじゃなくて私のことをずっと思い出してくれていたし。私ウィナー」
2人はとても澄んだ瞳をしています。生きている内に結ばれることはできなかった。けれど、肉体が滅んだ後にこそ、永遠の結合を果たすことができる。
そんな考え方もありだと思います。わたしとお兄さまのように、血縁が恋愛成就の妨げになっている場合には特に。
「わかりました。わたしも死んでお兄さまの思い出として結ばれることにしますっ!」
イメチェンの第1回目にしてなかなか過激なものが出てきました。でも、死んで添い遂げるというのは日本古来の伝統的な考え方でもあります。
お兄さまがわたしの死に心を痛めて生涯独身を貫きわたしへの愛を通してくださるのなら嬉しいです。
「本日はご相談にのっていただきありがとうございました」
お二人にお礼を述べてわたしは学校へと向かったのでした。
「おーい」
学校の正門前、電話番号もメールアドレスも知らないので校内放送で呼び出してもらった彼がやってきました。1年で一番小物臭がする男子生徒と頼んだら放送委員はちゃんといい仕事してくれました。
「お呼びだてしてしまい申し訳ありません。えっと…………もり、もり……SGGK(スーパー・ガンバリ・ゴール・キーパー)と同じ名字の方」
名前が出てきません。クラスメイトの名前は全員記憶したはずなのですが欠片も思い出せません。きっと無意識の内にクラスメイトとさえ認識していないのだと思います。
「何でそこまで思い出してるのに俺の名前が出てこないのっ!? しかも、SGGKって言ったらキャプテン翼に出てくる天才ゴールキーパーの若林源三のことだろ? 俺の苗字と違うっての!」
「いえ。SGGK(スーパー・グレート・ゴール・キーパー)の方ではなく、ゴールポストにも劣るセーブ率を誇る、ファミコン版ゲームではシュートの度にふっ飛ばされていたSGGK(スーパー・ガンバリ・ゴール・キーパー)の方です」
「森崎有三の悪口は止めてくれぇ〜〜っ! 奴は何気に日本代表を続けてスゴいんだぁ」
SGGKさんが地面に手足をついてorzな姿勢になっています。
もしかすると、SGGKさんではなかったでしょうか?
「えっと……SBJKさん。何があったのかわかりませんが、元気を出してください」
「俺はSBJK(しっと・ぶかい・じょし・こうせい)でもねえっ! 森崎駿って名前があるんだよぉ〜っ!」
SGGK改めSBJK改め森崎さんが涙を流しています。
「失礼しました。そしてはじめまして、森崎さん」
「俺と君はクラスメイトだぁ〜〜〜〜っ!」
森崎さんは情緒不安定な一面があるようです。お兄さまを馬鹿にしては相手にされずに遠巻きに敗北を繰り返すだけの方なので仕方はないと思いますが。
森崎さんが落ち着きを取り戻すのにしばらく時間が掛かりました。
「それで、俺に用ってのは? も、もしかして俺のこと……」
ようやくSGGKさんが落ち着きを取り戻してくれました。その割に頬を赤らめてドキドキしているようですが。やっぱり、普段から情緒不安定なのでしょうか。きっとそうなのだと思います。顔がそんな感じです。三下ですね。
「実はですね……」
「うんうん♪」
「私を……殺していただけないでしょうか?」
「ああ、わかってたぜ。俺も前から君のことが好……ホワット!?」
SBJKさんが口を半開きにしたまま固まりました。わたし、何かおかしなことを言ったでしょうか?
「実は、どうしても死なないといけない事情ができたんです。でも、わたしには自殺するような勇気なんてなくて。殺人罪に問われる可能性を考えるとお友達にわたしを殺してなんて頼めるわけもなく。その点、お友達でも何でもなく、逮捕されても一向に心が傷まない、ううん、逮捕されたらざまあみろって思える知り合いの方は森崎駿さんしかいなくて。森崎駿さんだけなんです。捕まって欲しいのは! 死刑になって欲しいのは!」
「何でこのタイミングだけ俺のフルネームをスラスラ口にするのっ!?」
「そういうわけなんです。是非、わたしを殺してください」
SBGK(しっと・ぶかい・ゴール・キーパー)さんに90度腰を曲げる礼をしてお願いします。わたしを殺していいのは、この方だけなんです。
「ちょっ、ちょっと待ってくれっ! そんな無茶苦茶な願いを叶えるわけには……」
「お願いします。あなたじゃなきゃダメなんです!」
「じゃ、じゃあ、俺の望みを叶えてくれたら、君の望みを叶えてあげなくもなくもないような今日このごろ」
「本当ですかっ!?」
SBGKさんの態度が軟化しました。これで、深雪はお兄さまの永遠の一番に……。
「じゃあまず、これから俺とデートをしてくれたら、君の望み通りに殺してあげなくもなかったりなんちゃったりして」
「ほほう。妹を弄んだ上で殺すと言うのか、貴様は」
「あっ。お兄さま」
いつの間にかわたしの前にお兄さまが立っていました。
お兄さまは無茶苦茶怒っています。今来られてしまうと目的が達せられないので困ってしまうのですが。
「しっ、司波っ!?」
「我・愛・妹。深雪を害そうとする輩は何があろうと俺が排除するッ!!」
わたしの計画は失敗に終わりました。
森崎さんは怒ったお兄さまによって高次元の物体へと昇華してしまったのですから。
何と表現すれば良いのかわかりません。何しろ高次元ですから人の形はしていません。
森崎さんを失ってしまいましたが、わたしの心は痛みませんでした。
だって、SGGKでSBJKな森崎さんですから。
「深雪、帰るぞ」
お兄さまの声は普段より少しだけ高圧的な響きを含んでいました。
「は、はい」
わたしはお兄さまと並んで帰宅し始めます。
お兄さまからは不機嫌オーラが続けて飛んできており、わたしは肩身が狭いです。
お兄さまはSGGKさんに会ったことを怒っているのだと思います。はしたない淫乱娘だと思われてしまっているのかもしれません。
不安が、とても大きな不安がわたしを包み込みます。
そんな時でした。
お兄さまはわたしの頭に手を優しく乗っけてくださったのです。
「どんな理由があるのかは知らないが……死を願わないでくれ」
お兄さまはわたしの頭を優しく撫でてくださいました。
「俺にはお前が……深雪が必要なんだ。いなくなったりしないでくれ」
「………………はい」
私は死んでお兄さまの思い出として結ばれる作戦を中止にすることにしました。
自宅に帰ってしばらくしてわたしは気付いてしまいました。
イメチェン作戦を中止にしただけで、わたしのポジションがお兄さまの妹のままであることに。このままでは一生妹のままです。兄と結婚できない妹はただの妹です。
そこでわたしは翌日また秋葉原へと出掛けました。
すると、駅前でモデルさんかと見紛うばかりの美少女と遭遇しました。そしてその人の声は何とまた偶然にも早見沙織さんそっくりだったのです。
「あの、ちょっとよろしいでしょうか?」
「わたしと同じ声?」
モデル(仮)さんとは、声が似ているという共通点があってすぐに打ち解け、2人で駅横のAKBカフェに入りました。
「わたしは新垣あやせ(CV:早見沙織)と言います。お兄さんが大好きで大嫌いです」
「私は司波深雪(CV:早見沙織)です。お兄さまが大好きです」
あやせさんはとても親切な方で、わたしたちはすぐに仲良くなりました。
そしてわたしは相談に乗ってもらうことにしました。
「イメチェンしてお兄さまに好かれたいんですが、どうしたら良いでしょうか?」
あやせさんは少し考え込んでから答えました。
「死、というのはどうでしょうか?」
綺麗な顔からとても物騒な単語が出ました。でも……。
「わたしが死んで永遠にお兄さまの中に生き続けるという案は既に却下しました。お兄さまに止められてしまいました」
せっかくの案ですが、既にお兄さまに禁止されています。
「いえ、そうではありません」
あやせさんは首を横に振りました。
「では、どういうことでしょうか?」
「深雪さんのお兄さまを拉致監禁してタップリ堪能した末に残虐に殺せば、一生深雪さんの中に残るのではないかと。体の一部をホルマリン漬けにして保存することも可能ですし。わたしもお兄さんの生首をギュッとしたいです」
「なるほど……」
あやせさんのご意見を検討してみます。
「でも、やっぱり無理ですね」
「どうしてですか? 永遠に自分のものにできますよ? 毎日キスし放題ですよ」
あやせさんの提案は魅力的です。すぐにでも賛同したいです。でも、無理なんです。
「どう考えても実力差から言ってわたしにお兄さまは斃せません。ましてお兄さまは即死なさらない限り瞬時に全回復する能力の持ち主なので」
どんなに想像の翼を広げても、わたしがお兄さまを殺すという可能性が見いだせません。
「なら、どんなに痛めつけても問題ないってことですよね♪」
あやせさんは世界一の美少女ではないかと思ってしまうぐらいの朗らかな笑顔を見せました。
「罵倒しましょう♪ 蹴りをかましましょう♪ スタンガンで打ち据えてあげましょう♪ 怒りに任せてお兄さんの尊厳をぐちゃぐちゃに踏み躙ってやってください♪ どうせ治るので問題なしです」
「それでわたしへの評価が変わるのでしょうか?」
「お兄さんも新しい歓びに目覚め、兄妹でフレッシュな関係を築けますよ♪」
あやせさんの意見は優等生として歩んできたわたしにとっては含蓄の深いものでした。
「結婚式には呼んでくださいねぇ〜♪」
あやせさんは、自分で話していて興奮したとかで意中の男性を早速罵りに行きました。
わたしも負けていられません。
とはいえ、わたしは人を罵ることに慣れていません。
お兄さまに実際に試す前に練習をしたいと思います。
わたしは実験相手をみつけるべく学校へと向かったのでした。
例によって名前を忘れてしまった男子学生を放送で呼び出してもらいました。
「お呼びだてしてしまい申し訳ありません。えっと…………もり、もり……ぬらりひょんさん?」
名前が出てきません。クラスメイトの名前は全員記憶したはずなのですが。きっと無意識の内に人間とさえ認識していないのだと思います。だって森崎駿さんですから。
「どこをどう弄ると“もり”からぬらりひょんに飛ぶのかわかんねえけど、俺の名前は森崎駿だからっ!」
「そうでした。SGGKの方ですよね」
「もうそれでいいや……」
SBJKさんは何故かとても疲れた瞳をしています。どうしたのでしょうか?
というか、この方は昨日人間から別のものに進化したはずなのに、どうして今日もうピンピンしているのでしょうか?
ギャグキャラだからでしょうね。すぐに復活するギャグキャラを滅するなんて労力の無駄をするなんてお兄さまほどの方がらしくないです。
「で、何の用?」
「はい。実はですね……」
大きく息を吸い込みます。変な女って思われないかちょっと不安です。
でも、愛するお兄さまのために躊躇していられません。
「罵る練習台になっていただけないでしょうか?」
「オーケー。その話、引き受けよう」
即答されてしまいました。
「俺は罵るのが好きだが罵られるのも好きだ」
……わたしがお願いしようとしたのはとんだ変態でした。まさにキングオブ屑です。
罵るには打って付けの人材のはずです。でも、わたしはSではないので少しも気分が良くありません。嫌悪感が頭痛となるだけです。
「さあ、早くっ! 俺を罵倒してくれっ! この頬を思い切りぶん殴ってくれっ!」
SGGKさんがわたしにグイグイ近寄ってきます。
おぞましいです。生理的に無理です。
「さあ、早くっ! 生まれてきたことを後悔するぐらい俺を口汚く罵ってくれぇ〜〜っ!」
制服を脱ぎながら変態が近寄ってきます。わたしの精神はもう限界でした。
「きゃぁああああああぁっ! 助けて、お兄さまぁ〜〜〜〜っ!!」
「俺の妹に変態行為を働こうとはいい度胸だな、貴様はっ!」
いつの間にかお兄さまが現れました。
「しっ、司波ぁっ!?」
「妹に害なす存在を俺は決して許さないっ!」
わたしの計画はまた失敗に終わりました。
森崎さんは怒ったお兄さまによって黄泉平坂の国に送られてしまったのですから。
森崎さんを失ってしまいましたが、わたしの心は痛みませんでした。
だって、SGGKでSBJKな森崎さんですから。
でも、罵る実験台になってくれなかったのは痛手です。
ぶっつけ本番になってしまったのは心もとないですが、頑張ってみます。
「お兄さま……よろしいでしょうか?」
「何だ?」
大きく深呼吸しながら覚悟を決めます。
深雪は今、お兄さまと新たな関係を築くべく無理矢理Sキャラになります。
先ほど知り合ったお友達のあやせさんをイメージしながら敬愛するお兄さまに言葉の弾丸を浴びせることにします。
「喋るな変態! 大っ嫌い! ぶち殺しますよ! セクハラです! エッチ変態! 汚らわしい! ウルサイっ! 通報しますよっ! 気持ち悪い。エッチ馬鹿変態死んじゃえっ! お兄さまは大嘘つきです。スケベで変態シスコンドMでその上セクハラばかりしてわたしを怒らせて、いつだってお人好しでお節介で時々優しくてわたしを迷わせて……そんなあなたのことが……大っ嫌いですっ!」
お兄さまをこんな風に罵ったことは生まれて初めてです。あやせさんではないですけど、ほんのちょっぴり他の世界に目覚めてしまいそうです。わたしってこんなスムーズに罵れる人間だったなんて知りませんでした。
さて、お兄さまの反応は?
「……………………っ」
何も言わずに地面にうつ伏せに突っ伏しています。自己修復術式も起動しません。どうしたのでしょうか?
お兄さまを覗き込んでみます。
「あっ。白目剥いてる」
救急車で運ばれたお兄さまはその後3日3晩生死の境を彷徨いました。
お兄さまにはわたしに罵られることに極端な拒否症状を見せたのです。
その後、退院したお兄さまは仰られました。
「どんな理由があるのかは知らないが……そんなに酷く罵らないでくれ。お前に否定されると俺はもう生きていけない」
お兄さまはわたしの頭を優しく撫でてくださいました。
「俺にはお前が……深雪が必要なんだ。いつも深雪には朗らかに笑って欲しいんだ」
「………………はい」
お兄さまを罵って弄ぶ作戦を中止にすることにしました。
?
「どうしましょう?? このままじゃお兄さまのお嫁さんになれません」
あやせさんに教えていただいた罵り作戦もお兄さまの好感度を上げることはできませんでした。このままでは世間さまのスタンダードである兄妹婚に辿り着けません。
それどころか現状は大ピンチな気がします。何故そう思うのか自分でもよくわかりませんが。
「最近深雪の様子がおかしい。やはり、兄一人で年頃の妹を育てるには無理があるのか………」
「大丈夫よ、達也くん」
「七草先輩、何か名案が?」
生徒会長である七草先輩がうちに見えています。わたしもお兄さまも呼んだ覚えはないのですが。
「お姉さんのこと真由美って呼んでくれたら教えてあげるわ」
「…………真由美」
無言の内にドヤ顔を見せる先輩。何でしょう?
とても嫌な予感で胸がいっぱいです。
「思春期の女の子のデリケートな心を理解して解きほぐすには同じ経験を持つ女性からのアドバイスが必要よ。具体的には深雪ちゃんにはお姉さんが必要なのよ」
「しかし、深雪には姉がいません」
完璧超人のお兄さまでも叶えられない難問。けれど、問題を出した方は満面の笑みを浮べています。
「お姉さんが深雪ちゃんのお義姉さんになれば万事解決、万々歳よ♪」
「幾ら真由美とはいえ、さすがに姉になるのは不可能かと」
お兄さまの反論に対して更にニヤリと笑う生徒会長。わたしの嫌な予感が最高潮に達しました。そして、恐ろしい瞬間が訪れたのです。
「達也くんがお姉さんをお嫁にもらってくれれば、私は深雪ちゃんのお義姉さんになれるわ♪」
七草先輩は史上最悪のテロリストだったのです。わたしとお兄さまの2人きりの静かな生活を破壊しようとする極悪人だったのです。
「結婚、ですか?」
「そうよ。感情に乏しい達也くんでは深雪ちゃんは救えない。深雪ちゃんのためを思えば私と結婚するしかないのよ。深雪ちゃんのためにね♪」
「なるほど。考慮に値しますね」
「そうでしょうそうでしょう。もうこの際、お姉さんを嫁にもらうって宣言しちゃえばいいのよ。深雪ちゃんのために♪ 全部深雪ちゃんのためなのよ♪」
七草先輩はやたら楽しそうです。反対にわたしの心は今にも折れてしまいそうでした。
「う〜〜っ」
唸り声を上げながら家を飛び出て行くしかできませんでした。
「深雪っ!」
お兄さまの呼び止めにも応じられません。
「達也くんが早く私を深雪ちゃんのお姉ちゃんにしてくれないから行っちゃったわね」
「俺は兄失格だ…………深雪」
ガックリと膝を落とすお兄さま。そこには完璧超人の面影は見られませんでした。
わたしはそのまま秋葉原へと出掛けました。
誰かに救いを求めていました。
すると、駅前で背中から大きな翼を生やした天使のような少女と出会いました。そしてその人の声は何とまた偶然にも早見沙織さんそっくりだったのです。
「あの、少しお話してもよろしいでしょうか?」
「……わたしと同じ声?」
天使(仮)さんとは、声が似ているという共通点があってすぐに打ち解け、2人で駅から少し行ったメイド喫茶に入りました。
「……わたしはイカロス(CV:早見沙織)と申します。マスターのエンジェロイドです」
「私は司波深雪(CV:早見沙織)です。お兄さまが大好きです」
イカロスさんはとても優しい方で、わたしたちはすぐに仲良くなりました。
そしてわたしは相談に乗ってもらうことにしました。
「お兄さまとの愛を永遠のものにしたいのですが、どうしたら良いでしょうか?」
イカロスさんは少し考え込んでから答えました。
「……エターナルマイマスター。マスターとの絆を永遠のものにするには……これが必要です」
イカロスさんは自分の首に嵌められた鎖を触ってみせました。イカロスさんの首には犬のように首輪、そして鎖が繋がっていたのです。
「……マスターに鎖で繋いでもらう。永遠の愛はこれしかありません」
「鎖が永遠の愛っ!? 真実の愛は過激なんですね」
わたしは自分が男女の色恋沙汰に全く初心であることを認めています。でも、お兄さまの手前、いい子でいるためにその手の知識は得ないようにしていました。
まさか、愛の証がこんな風に鎖だなんて知りませんでした。
「……深雪さんも、意中の方に鎖で繋いでもらいマスターになってもらえば愛は永遠」
「お兄さまに鎖で縛られる……」
その光景を想像すると、わたしの胸は得も言われぬほどに高鳴るのでした。
冷たい瞳のお兄さまが裸に首輪だけを嵌めたわたしを見下すんです。そして一晩中家に上げてもらえず、庭に放置されるのです。
そんなお兄さまとの近未来を考えると、深雪は深雪は……。
「これから首輪と鎖を買いに行ってきます!」
もう、居ても立ってもいられませんでした。
「……頑張ってください」
イカロスさんに別れを告げて全力でペットショップへと向かいます。
とはいえ、わたしもお兄さまもペットを飼ったことがありません。
首輪の付け方もよくわかりません。
お兄さまに嵌めてもらう前に練習をしたいと思います。
わたしは実験相手をみつけるべく学校へと向かったのでした。
何度呼んでも名前を覚えられない男子学生を放送で呼び出してもらいました。
「何度もお呼びだてして申し訳ありません。ポチョムキンRXさん」
どう頑張っても名前が出てきません。クラスメイトの名前は全員記憶したはずなのですが。きっと無意識の内に虫けら以下の存在だと認識しているからだと思います。だって森崎駿さんですから。
「この際ポチョムキンなのは諦める。一字も被ってないけど。でもな、RXってどっから来たんだっ!?」
「RXと言えば仮面ライダーですよね♪」
「SGGKですらなくなったのかよっ!」
「失礼しました。SGGKさん」
やはりSBJKさんで間違いなかったようです。もう名前を覚えるのは諦めて通称だけ覚えることにしましょう。
というか、この方は何度でも蘇るタイプのようですね。さすがはギャグキャラです。
お兄さまの高速回復も目じゃない凄技です。欠片も格好良くありませんし、お兄さまにこうなって欲しくありませんが。
「それで、何の用?」
「はい。実はですね……」
大きく息を吸い込みます。また変な女って思われないかちょっと不安です。
でも、愛するお兄さまのために躊躇していられません。
「鎖で繋がせていただけないでしょうか?」
「オーケー。今すぐ俺を鎖で縛ってくれ」
即答されてしまいました。
「俺は縛り付けるのが好きだが縛り付けられるのも好きだ。むしろ縛り付けられたいんだ」
……わたしがお願いしようとしたのはとんだ変態でした。まさにキングオブ犯罪者です。
鎖でつなぐには打って付けの人材のはずです。でも、わたしはSではないので少しも気分が良くありません。嫌悪感が吐き気となるだけです。
「さあ、早くっ! 俺を鎖で繋いでくれっ! 裸で外に放り出して朝まで放置プレイしてくれっ!」
SBJKさんがわたしにグイグイ近寄ってきます。
おぞましいです。どう考えても生理的に無理です。
「さあ、早くっ! その鎖で拘束して俺が人間であることを全て否定してくれぇ〜〜っ!」
変態が一瞬にして裸になって近寄ってきます。わたしの精神はもう限界でした。
「きゃぁああああああぁっ! 助けて、お兄さまぁ〜〜〜〜っ!!」
「俺の妹にまたまた変態行為を働こうとはいい度胸だな、貴様はっ!」
いつの間にかお兄さまが現れました。
「しっ、司波ぁっ!? またか、またなのかっ!?」
「妹に害なす存在を俺は決して許さないっ! 何度でも消え去れっ!」
わたしの計画はまたまた失敗に終わりました。
森崎さんは怒ったお兄さまによって別の世界線に送られてしまったのですから。最初からいなかった世界線になりました。
森崎さんを失ってしまいましたが、わたしの心は痛みませんでした。
だって、SGGKでSBJKでポチョムキンRXな森崎さんですから。
でも、鎖で繋ぐ実験台になってくれなかったのは痛手です。
ぶっつけ本番になってしまったのは心もとないですが、頑張ってみます。
「お兄さま……よろしいでしょうか?」
「何だ?」
大きく深呼吸しながら覚悟を決めます。
深雪は今、お兄さまと新たな関係を築くべく無理矢理Mキャラになります。
先ほど知り合ったお友達のイカロスさんをイメージしながら敬愛するお兄さま、もといご主人さまに哀れみを乞います。
「お兄さま……深雪を、この卑しい深雪をこの鎖で縛り付けてご主人さまの愛の奴隷にしてください。深雪はお兄さまが望むのなら何でもいたします。だから、どうか、ご主人さまの寵愛を一片で良いので深雪にお与えください」
まるでお兄さまのペットになった気分です。イカロスさんではないですけれど、ほんのちょっぴり他の世界に目覚めてしまいそうです。わたしってこんなM体質な人間だったなんて知りませんでした。
「俺が至らない兄であるばかりに……深雪がおかしくなってしまった……ウッ!?」
お兄さまはバッタリと倒れました。今回もまた自己修復術式も起動しません。
「あらあら。これは救急車を呼ばないと駄目ね。達也くん以外なら霊柩車なのだろうけど」
七草先輩はお兄さまの脈を計りながら微笑みました。
救急車で運ばれたお兄さまはその後7日7晩生死の境を彷徨いました。というか、この世になかなか帰ってきてくれませんでした。
お兄さまにはわたしにM化に極端な拒否症状を見せたのです。
その後、退院したお兄さまは仰られました。
「どんな理由があるのかは知らないが……自分を貶めるような真似は止めてくれ。お前が気高く生きてくれないと、俺はもう生きていけない」
お兄さまはわたしの頭を優しく撫でてくださいました。
「俺にはお前が……深雪が必要なんだ。いつもの優しく明るい深雪でいてくれ」
「………………はい」
お兄さまの思い出として結ばれる作戦を中止にすることにしました。
「達也くんがこんな目に遭うのも、深雪ちゃんにお姉さんがいないからなのよ。達也くんは1日も早くお姉さんをお嫁さんにもらうべきだわ」
「………………熟慮します」
そしてわたしとお兄さまの平穏な生活を脅かすテロリストは着々と侵蝕を進めています。お兄さまから結婚に対して熟慮という言葉まで引き出してしまいました。
「くっ! でも、わたしは負けませんっ! 必ずごく一般的な兄と妹の関係を築いてみせるんですからぁっ!!」
兄と妹による結婚。
スタンダードな兄妹を目指してわたしはこれからも頑張り続けたいと思います。
「もう、法律とか無視してお姉さんと今日から一緒に住んじゃわない? 達也くんならきっとイエスと言ってくれると思ってもう荷物運んじゃったんだけど」
「駄目ぇええええええええええええええぇっ!!」
司波深雪の本当の戦いはこれからなのでした。
お兄さまに抱きつく生徒会長に向かって大絶叫するわたしを、雲の上から森崎さんが笑顔で見守ってくれるのでした。
了
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深雪はお兄さまと”普通の”兄妹を目指します。 | ||
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