義輝記 星霜の章 その十弐
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【 大乱の前の静けさ の件 】

 

? 徐州 下? 曹操軍陣営 にて ?

 

それからのち、晋軍に対陣する為、華琳達も陣営を構築! 大友勢、島津勢も華琳達を手伝い動いていた。 そんな時、道雪は……ある事を願い出た!

 

道雪「華琳殿! 僭越ながら……要望を叶えていただけませんか?」

 

華琳「私に出来る事ならね? ……で、何なの?」

 

道雪が頼んだ物は二つ。 

 

『 輿 』と…………。

 

華琳「どうして!? 本当に──それを望むの!?」

 

道雪「はい。 私の配下には弱兵を、どうか配置して下さいますよう……」

 

ーーーーー

 

春蘭「何ぃ!? 道雪は、弱兵を華琳様に所望しただとぉ!!」

 

秋蘭「あぁ! 流石に華琳様も驚いていらした! しかも、家族である二人は道雪殿を止めるどころか………満足そうに見ていたんだ! いったい、何の秘密があるのだろう……」

 

ーーーーー

 

雛里「道雪様………凄いね。 私達と同じく死を覚悟しているんだ……」

 

朱里「うん! 天の国は、ここよりも相当争いが酷かったんだよ。 きっと! ………もっと早く気付ければ良かったのにね、雛里ちゃん。 そうすれば……『ご主人様』を世に出せたのに!」

 

雛里「……で、でも! 松永久秀さんや筒井順慶さんに目を付けられて……あ〜んな事やこ〜んな事されたかも────!!」

 

朱里「雛里ちゃん! いつの間に……そんなイヤラしい子になったの!?」

 

雛里「あわぁ────! しゅ、朱里ちゃんに開発されたからぁぁ!!!!」

 

朱里「う、嘘は駄目ぇ!! もともと好きだったくせにぃ────!!」

 

桂花「……………アンタ達って………」

 

『きゃああぁぁぁ────────!!!』

 

★☆☆

 

俺が発石車の準備をしていると……島津四姉妹が来られた!

 

義久「こんにちわぁ〜! 貴方が『北郷一刀』君ねぇ〜? 妹達が世話になりましたぁ〜! 挨拶が遅れましたが……島津家現当主『島津義久』と申します〜!!」

 

一刀「あ、貴女が!? いえっ! ご丁寧に有り難う御座います! 北郷一刀です! 宜しくお願いしま───ムグゥ!!」

 

急に……腕を引っ張られてたと思うと、何か柔らかい物が顔を包み込む!?

 

義久「やぁ〜ん! 可愛いぃ〜!! お姉ちゃんの事は、お姉ちゃんって呼んでねぇ! 一刀君〜!!」

 

一刀「く、苦し───い!!」ジタバタ ジタバタ!

 

義久「あぁ〜ん! そんなに動いちゃ駄目ぇ〜!!」

 

家久「よしねぇ!! 早く離して! 一刀お兄さんが死んじゃうよぉ!!」

 

歳久「流石……北郷家の血筋ですね。 私の予想を上回る行動を起こさせるなんて。 あっ、もしかすると……一刀殿の魅力が加味している? そうであれば、実に興味深い………」

 

義弘「お、お姉ちゃん! ワザとやってないよね!? は、早く助けなきゃ!!」

 

ーーー

 

一刀「し、死ぬかと思ったぁ………」

 

家久「一刀お兄さん、大丈夫?」

 

義久「あらあら、ごめんなさいねぇ〜?」

 

義弘「もぉう!! 本当に気を付けてよ!! ここで一刀に何かあったら、私達は罰せられちゃうんだからぁ!! そうなったら、颯馬に頼まれた事なんか出来なくなるんだよ!!!」

 

歳久「……そうですね! 私達の目的は、曹操軍を無事に官渡に到着させる事。 些細な出来事で遅滞など、許されません!」

 

義久「えぇ〜ん! としちゃんとひろちゃんが怒るの! 助けてぇ! 一刀く〜ん!!」

 

一刀「ちょっと、某アニメの眼鏡が虐められて、ロボットに助けを求める台詞……ウホッ! せ、背中に………柔らかい双丘があぁぁぁ!!」

 

家久「駄目だよ! 仕事の邪魔しちゃ!! それこそ怒られるよ!!」

 

家久が一番上の姉を怒っていると───黒い影が現れた!

 

儁乂「北郷様! 至急お耳に入れたい事がございます!!」

 

 

◆◇◆

 

【 氷の策士 の件 】

 

? 西涼 西涼城付近 にて ?

 

劉宣「ははははっ! 日が大分上まで昇ったな!? あの忌々しい『凍った地面』も溶け出して動く事ができる! 今より攻めたてるぞ!!」

 

匈奴兵に命令を出し陣営より動き始める! その数は先程よりかなり減らされて五万を下回ったが、士気は旺盛であった!

 

ただ、目の前には竹槍、遺体が残り……馬が使えない。 その為、歩兵と化して攻めいるしかない! 

 

陣営に残っている者達には、今のうちに竹槍や遺体の処理を任せた。 待機中の集団だから、暇を持て余しているし……遺体処理中に金になる物があればちょろまかす事も可能。 決して損では無いのだ。

 

それぞれの役割を決めて、動きだした!

 

★☆☆

 

詠「敵が動き出したわね。 伝令兵! 兵士達に至急命じて! 前方で覆っている布の留め具を外す! そして、敵が近づいたら、急いで引っ張り上げて砦に収納させるように!!」

 

伝令兵「はっ!」

 

詠「他にもあるわ! 川より多くの水を汲んで頂戴! 何人か並んで梯子状態の運送で桶に水を溜めておくの! そうね……初めは百程用意して! 出来るだけ冷たい方が都合がいいのよ!!」

 

ーーー

 

白菊「敵さんは、やっと動きだしたようだねぇ………。 どうやら詠の計略が徐々に功を成してるようだし。 お前達! 馬達にも飼い葉を与えて、よく英気を養っておくんだよ! あたしらの出番は、あと少しだ!!」

 

翠「あぁ! こんな大戦を前に無様な真似してられねぇよ! 錦馬超の力、しっかり見せ付けて、二度と攻め寄せて来ないようにしてやるぜ!!」

 

蒲公英「お姉さまみたいな戦いは出来ないけど……うん! それなりに頑張るよ! 二人の足手纏いにならないように!!」

 

ーーーー

 

月「詠ちゃん! 私も……出るからね。 幾ら……詠ちゃんが止めても……」

 

詠「…………あのねぇ、ボクと月の付き合いって、何年経つか分かる? 十年以上……もう少しで二十年になるわよね? 

 

月が容姿の割りには、頑固で意地っ張り! そして、結構お茶目で……ボクをよく困らせるんだよ? 何時も、そんな顔して……ボクが一生懸命心配するのに、柳に風で受け流して実行に移すんだもの!!」

 

月「詠ちゃん………ごめんなさい。 本当にごめんなさい! だけど……私、私────!!!」

 

詠「月………。 一つだけ、絶っっ対に約束守ってくれる!?」

 

月「………………?」

 

詠「この戦いは必ず勝つわ! 白菊達の武勇とボクの軍略が重なれば、あんな軍勢なんて雨後の竹の子みたいな者よ! 

 

だけどねぇ…………月が重傷を負ったり、万が一でも死んじゃう事なんて事になったら………ボクは耐えきれない! 月の後を追うわよ!!」

 

月「詠ちゃん─────!!」

 

詠「だから……ボクに可笑しな真似させないように、必ず無事に帰ってくる事! 颯馬達と一緒に、ボクと月の親友二十年記念のお祝いしなきゃならないんだから!! 絶対に絶対に絶対にぃぃ守ってね!!!」

 

月「う、うん!! 絶っっっ対に守るからね! 大好きな詠ちゃん!!」

 

詠「…………うぅ、やっぱ駄目ぇ! 月〜可愛いもん!! あんな危ない所に行かせられないぃ!!!!」

 

★★☆

 

劉宣「無事に越えられたな。 この日差し、この暖かさ! 天は我々に復讐せよと告げているようだ!  

 

者共! 砦には、もう少しで到着する! こんな脆い盛り土で仕上げた砦なぞ、我々の敵ではない!! 簡単に打ち破りて、戦利品を奪いされ!! 我が南匈奴の恐ろしさを、最初に味わせてやるがいい!!」

 

歩兵と化した匈奴兵が砦に殺到する!

 

詠「今よ! 布を引っ張り上げなさい!!」

 

詠が、号令を掛けて布を回収させた! 

 

匈奴『──────!!』

 

そこは、日差しの中でも……燦然と『凍りついた地面』、『凍りついた砦』が姿を見せ付けた!!

 

匈奴兵1「……うぐっ! あ、足が動かない!」

 

匈奴兵2「な、なんでぇ!?」

 

ーーーーー

 

詠「掛かったわね! アンタ達が、獣の皮より作った靴を履いているのは知ってるのよ!? だから、泥水の中を歩いてきたアンタ達を足止めするように、凍りついた場所を用意してあげたわ。 布で溶けないように、わざわざ覆いまで行ってね!! 感謝なさい!!!」

 

▼☆▼  ▼☆▼  ▼☆▼

 

詠、颯馬の合同奇計

 

『飛滑竹槍の計』『氷結地縛の計』

 

砦と地面の高低差を利用し布を張り『簡易な滑り台』を現出。 砦本体と砦の周辺にも水を撒き散らし、冬の厳寒を持って辺り一面に凍りつかせる。

 

敵が近付けば、砦から竹槍を滑り台から落とし、更に周辺に作った『凍りついた地面』を滑り込み、威力を増して被害を与える。

 

敵としては、竹槍や遺体、凍りついた地面を嫌がり、溶けるまで待つ結果になる。 ここまでが、颯馬の策。

 

その間、地面や砦に張った布を外さず置いておく。 日陰になれば凍りついた場所の溶けるのが遅くなる。 敵が動き始めれば、剥がす準備を行う。

 

敵兵は、溶けた地面を歩み近付くため、足には泥水を吸った靴を履く事になり、必然的に靴が地面に張り付いてしまう。 水に濡れた手で氷を持つと、張り付いて離すのに、苦労する事になるのと一緒で。 これが、詠の策である。

 

▲☆▲  ▲☆▲  ▲☆▲

 

詠「射てぇ!! 一斉に射てぇ!!」

 

匈奴1「ガハッ!」

 

匈奴2「グワァァ────!!」 

 

しかし、流石に、匈奴兵は勇猛であり、仲間の遺体を凍った地面に横たえて、遺体を足場にして攻略を始める!! 敵勢は四万以上!! 持ってきた矢も限度が見えてきた。

 

詠「次! 桶の水を浴びせなさい!!!」

 

西涼兵『はっ!!』

 

ブーン! バシャバシャ! バシャバシャ!

 

匈奴兵3「うわぁ!? なんだこりゃ!!」

 

匈奴兵4「つ、冷てぇぇ! 冷てえぇ───!!」

 

果敢に攻め寄せる匈奴兵達に、落とされたのは『水』! 普通に川から汲み出してきた水だ。 種も仕掛けもございません! 一応言っておく…………。

 

ただ、今の時期は冬。 日差しで氷が溶けようが……周りは凍った状態。 しかも、匈奴兵達は、防寒着として毛皮を着込んでいる。 その上から冷たい水を被れば………当然…………!!

 

匈奴3「ハ、ハクション!!」

 

匈奴4「か、身体が冷え切って!!」

 

体温が急激に下がり、末端部分である手足の熱は、身体の重要な部分に集められるので、動きは鈍くなる。 逃げ出したいたいが、後ろからも欲に駆られた奴らが近付く! 

 

詠の指示は、どんどん水を撒き散らすように、矢継ぎ早に繰り出す!! 

 

勝敗は─────見えた!!

 

劉宣「ぜ、全軍!! 退却!!! 退却だあぁぁ!!!」

 

更に減った軍勢を引き戻し、陣営に帰ろうとする劉宣!!

 

劉宣「不甲斐ない!! 不甲斐なさすぎる!! これが近年勇猛を馳せた匈奴兵の力なのか!?!?」

 

劉宣は、残りの軍勢の手助け全部を使い、西涼の軍勢を滅ぼそうと決意する! 南匈奴の面子なんてどうでもいい! ここまで、南匈奴をコケにした奴らを、殲滅するまで許されない!! 許せるものか!!!

 

しかし、劉宣のこの考えは………実行に移される事はなかった。

 

引き上げる匈奴兵の中に、数十人に服装の似た者達が、紛れ混んだ事を気付かなかったのだ………。 

 

◇◆◇

 

 

【 意外な結果 の件 】

 

? 徐州 下? 晋軍陣営 にて ?

 

真っ昼間の中……晋軍の中では、酒宴が開かれ兵士達が浮かれ踊っている! 横には、例の『漢女』や『美少女』達が横に付き、場を盛り上げる。

 

そんな浮かれた雰囲気の中、中央の天幕では……場違いの緊張した空気が漂う場所があった。 韓馥が籠もる天幕である!!

 

ーーーーーー

 

椅子に座りながら、韓馥は閔純と作戦を練っている。 

 

だが、その韓馥の横には、星が見た『女性の姿見をしている美少年』が二人、地面に腰を下ろし、左右の両手に撓垂れ掛かる(しなだれかかる)様子があった。

 

韓馥「曹操軍は、この二日間……何の音沙汰も無さそうじゃの! 今日もワザと宴会をして、隙を見せているが………陣中奥深く潜り込んだままとは! 呆れたものじゃ!! ほ──っほっほっほっ!!!」

 

閔純「足止め……と言う事なら成功だろう! だかな! 青州黄巾賊討伐では、久秀様や順慶様に恥を晒してしまった! 俺としては、曹操と北郷一刀を許してはおけん!! この手で葬り去ってやりたいのだ!!」

 

閔純の怒気を含む態度と対象的に、冷ややかな応対で返す韓馥。

 

韓馥「……行けば良いじゃろう!!」

 

閔純「本当に………か!?」

 

韓馥「協力は惜しまん、閔純よ! 五万の兵を預けてしんぜよう!!」

 

閔純「ご、五万も!!」

 

韓馥「…………しかもな、儂の持つ精兵部隊『念者衆』、『若衆』を連れて行け!! 復讐での……良き手助けになろうからのぉ!!」

 

★…………………★

 

韓馥が冀州牧の時より趣味で創設した部隊。 韓馥が認めた武と美貌を誇る者達を集め訓練した精兵達、しかも……身も心も韓馥に心酔して入る為、忠誠度も高いというオマケ付き。

 

因みに『念者衆』が漢女に似た者達、『若衆』が女性に似た者達である。

 

★…………………★

 

閔純「いいのか? アンタが手塩に掛けた、子飼いの精兵だろう?」

 

韓馥「人の欲に中には、我慢出来ない三大欲があると聞く。 その中で『色欲』を使い、異民族達を堕落させておいたわ! ぐふふふっ! 女とまた違うモノを味あえる……のが要諦でな? 三日も経たずに骨抜きよ!!」

 

異民族の手懐けさせる為に……子飼いの精兵を娼婦?にしただと? 韓馥の性癖に呆れつつ、更に話を進める事にした。

 

閔純「それとこれ、何の関係が………?」

 

韓馥「簡単な事! 禁断の味を体験して、更に求めているのだ! しかしな、コイツらの情交など無理な話! 儂はヤツラに申し渡してあるのだ! 『真面目に戦って勝たなければ、再度の情交など……許す訳にはいかぬ!』とな!」 

閔純「う……うむ?」

 

韓馥「………ただ、申し渡していても……儂の目を盗み密通を重ねる輩も居るかもしれん! 異民族もコイツらも、心底なぞ分からんからな!

 

そこで、閔純……お主の話だ! お主が曹操軍に一緒に連れて行けば、密通なぞ無理な話。 しかも、禁欲で滾る異民族達の力、どこまで高まるかのぉ? そして、儂の話は本当だったと信用される。 一石三鳥の策じゃ!!」

 

閔純「たがよ! 俺も…『若衆』の色気で引きずり込まれそうだ! なんだよ、あの妖艶(ようえん)な色気は……偶に順慶様達を忘れそうになるぜ……!」

 

韓馥の傍に居る若衆の一人と目が合うと、慌てて逸らす閔純!!

 

韓馥「……なれば良かろう? なって虜になれぇ! ホッホッホッホッ!」

 

閔純「………だ、誰が! ………失礼する!!」

 

閔純は、足早々に天幕より立ち去った!

 

韓馥は、閔純が出ていった後に、若衆と唇を重ねた後、それぞれの天幕に向かわせる。 今夜も需要が入っていたのだ………。

 

韓馥「ふふふっ……本当は一石四鳥の策じゃわい! 閔純の軍勢を囮に、我等が黄河を渡りて曹操軍と相対する! 曹操軍に知将多きと聞くが……まさか、このような異質の兵がいるとは、思い付かないじゃろう? 

 

驚愕の隙を付いて、閔純が敵を追い詰めれば良し! もし、仮に全滅しても異民族の情交への恨みを買い、我が軍が更に強くなる! どちらに転んでも、悪い事など無しじゃわい!!! 儂をこのように仕込んだ于吉には、感謝せねばな!!」

 

韓馥は一人ごちた。 自分の作戦の完璧さに酔っていたのだ。

 

 

 

そして………天幕より……影が一人………抜け出していった………。 

 

 

★☆☆

 

? 徐州 下? 曹操軍陣営 にて ?

 

華琳「発石車を利用して、壺の中身を敵軍勢に投げ入れて混乱。 その隙に御遣いの軍が横槍を入れる。 混乱を拍車を掛けた後、私達が攻める! ……なかなかの作戦ね………」

 

朱里と雛里からの献策を、華琳は吟味して考える。 

 

確かに、策としては悪くはない。 どちらかと言えば上策だ。

 

しかし、一点だけ気になる事がある。 それは…………!

 

桂花「───ですが、敵も同じような方法で襲ってきた場合、如何しましょう? 敵の人数は、私達より多いのは実情です。 もし、余分な軍勢を別働隊を率いて来られれば……二面攻撃で、我が軍は一溜まりもありません!」

 

桂花の言う通り、敵の進行方法が分かっていなかったのだ。 

 

この作戦は、『敵が動かない事』を前提とした策。 

 

もし、動いたら……! 最悪、同じ戦法を使われたら……数の勝る方が勝ちだ! その対応が出来ていなかったのだ!!

 

朱里「しかし! 敵軍勢に怯え過ぎていて、好機を逸する事態になれば、それこそ本末転倒でしゅ! 勇を持って決断すべきかと!」

 

雛里「敵が同じような攻撃を起こすかは、確証が無ければ、ただの妄想にすぎせん! 私達は、私達の命を掛けて進言しています! 桂花さん! 貴女の反論はわかりますが、何を掛けて訴えるおつもりですか?」

 

桂花「……………!」

 

朱里も雛里も、普段と違う気迫がある! 失敗した時は、自分達の命を奪われる!! 誰だって死にたくはないのだ………。 

 

それに描きかけの絵が多数。 勿論、長期連載大人気の娯楽本も抱えている身! そんなモノが、自分達の死後に出てきたら……後世に悪名を残す結果になるかも知れない!! そんな恥ずかしい事を許す訳にはいかないのだ!

 

鬼のような気迫の二人、唖然となる桂花達!

 

そんな中、北郷一刀が突然、天幕に飛び込んできた!!

 

一刀「待ったぁ! ────その策は駄目だぁ!!」

 

朱里「えっ────!?」

 

雛里「ご、ご主人様? なんでぇ────!?」

 

桂花「な、なんで……私の味方………するの?」

 

華琳「一刀! 理由を言いなさい────!!」

 

急に現れた新たな情報提供者に、皆の目が向く! 一刀は、呼吸を整え喋り出した!!

 

一刀「ハァハァ……! 儁乂から連絡が入った! 敵陣営より別働隊の出陣が確認されたって! あと少し経てば、敵が大挙して攻め寄せてくるぞ!?」

 

『──────────!』

 

朱里と雛里の顔は、真っ青となる! 桂花が先程心配していた事が、現実になったのだ! 『策を考えた時は、敗れた時の事を考える!』 その基本原則を忘れていたのだ!!

 

朱里「じゃ、じゃあ! 私達の策は………無駄……」

 

歳久「…………無駄ではありません!」

 

家久「そうだよ! この作戦、とても面白〜い!! 止めちゃうなんて、もったいないよぉ!!!」

 

義弘「…………私には、よく分かんないけど……必要だと思うの! 更なる策の布石に!!」

 

天幕に、更なる将達が入ってくる。

 

雛里「………どういう事……ですか? あっ!」

 

??「…………………」スタスタスタ

 

そんな雛里を無視し、威厳を醸し出しながら華琳の前に進み、膝を付き顔を向ける将は『島津義久』その人! いつものほのぼの気分は、まったく見当たらない為、居合わせた華琳達は驚く!

 

義久「華琳殿! お願いです! 少しだけ島津勢に、全軍指揮を委ねて頂きませんか? 策の内容が詳らかに出来ませんが、必ず勝利に導きますので!!」

 

華琳「もし、負けたら───?」

 

華琳も全軍の将兵達の責任を持つ王である! 幾ら御遣いだからと言っても、責任を果たし貰わないと困るのだ!! 

 

義久「私の首でも身体でも、お好きになさって頂ければ結構です!!」

 

並々ならぬ決意を聞き、即断する華琳! 

 

華琳「全軍、一時だが……島津勢の指揮下に入る事を命じる!」

 

義久「ありがとうございます! それでは────!」

 

★★☆

 

 

? 徐州 下? 曹操軍陣営 にて ?

 

 

閔純「行けぇぇ!! ここが曹操軍の陣営だ!!!」

 

閔純は、付近の長く続く森林の中を通り抜け、曹操軍の陣営を発見した。 対岸からは、よく見えるのだが、左右両側は森林で塞がれた場所。 軍の動きを読ますせないように、設置したため!

 

閔純は、気付かれないように迂回して、曹操に奇襲を掛けたのだ!!

 

だが、予想に反して陣営内には………人影が無い!

 

食事の途中だと思われる食いかけの料理、手入れ途中の道具、干しっぱなしの洗濯物………と、何もかもが中途半端な有り様だった。

 

閔純「な、何故だ! 何故、誰もおらん! 奴らはどこへ消えた!!」

 

??「どこにも消えない……此処にいるわよ!」ヒョッコ

 

見たこともない衣装を着用した美女が、天幕の陰から現れる!

 

近くに居た『念者衆』や『若衆』が、閔純の周りを囲む!

 

閔純「何者だ!! 名を名乗れぇ!!!」

 

義久「島津家当主『島津義久』……天の御遣いの一人」

 

閔純「はっはっはっ! 天の御遣いが只一人で、こんな場所にだと!? 笑わせてくれる! 俺は誠の『神の御遣い』にお仕えする閔純だ! 貴様のような似非の御遣いなど、俺達に囲まれて死んじまいなぁぁ!」

 

馬鹿笑いをし、義久の言葉を不定する閔純を────睨み付ける!

 

義久「私も……貴方なんて大嫌い! 私のお気に入りの子を困らせ、小さい子達に悲壮な決意をさせ、特に………私の大事な人を苦しめる原因を……崇拝する考え無しの貴方なんてぇ!!!」

 

閔純「あぁ! 構わないぜ? 負け犬の遠吠えにしか聞こえねえぇからな! 長話も無駄だから、そろそろ……死んで『その前に……』──ん?」

 

義久「その前に、私が言う事が出来るかしら? 『俺を殺せる者が居るか!』と三度叫ぶ! 出来たら、この身体……好きにしても……いいわよ!」

 

義久が唐突に言い出した『 賭事 』……。

 

閔純は……ちょと考えた。 

 

今の自分の立場、味方の数、逃走路の確保。

 

大丈夫だ! 心配なぞ無用! 

 

誰が、この俺を殺せるのだ……?

 

俺を殺すと言う奴の顔を……見てみたいもんだぜぇ!!

 

閔純「ははっ! 言ってやろう! 三度だな! 三度だけでいいのだな!?」

 

閔純は、息を吸い込み──────大声で叫んだ! 

 

 

 

『俺を殺せる者が居るか─────ぁ!』

 

 

 

 

 

『…………お望みのままに』

 

 

 

 

─────────────!?

 

 

 

────ゴロン! ゴロゴロゴロ………

 

───────ドサッ! 

 

 

 

閔純の得意気な表情を浮かべた首は、肩からユックリ落ちる! 途中……驚愕な表情に変えて……地面を転がっていった。

 

そして、噴水のように血飛沫を飛び散らせ、両膝を付き地面に倒れ臥した。

 

 

ーーーーーーーー

ーーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

 

前回でネタを少しバラしたので、少し複雑にしようかなと考え……考え……考えてましたが……余り浮かびませんでした。

 

特に閔純の部分どうすればいいかと思い……こうなりました。

 

どこかで見たようなシーンですよ。 名場面の一つですから、分かる人はご存知ですね? この後も、大体予測通りですので。

 

また、よろしければ読んで下さい。

 

説明
義輝記の続編です。 宜しければ読んで下さい!
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コメント
この作品は、他の恋姫作品と一線を画す物を……としたら、エラい事になった作品ですw  キチンと最後まで終わらせて、笑いを誘うかな……とも思っています。 そうですか……丸一日寝てた人は知ってますが……身体に気をつけて下さいね?   (いた)
禁玉⇒金球様 コメントありがとうございます! ここや他の作品にもコメントが無かったので心配しておりました! 確かに叱ってくれるのは主に愛紗や星ぐらいですからね。 だから年長者キャラが居るんだ!と納得。(いた)
取り敢えずこの腐軍師は駄目だ、もっとも原作の劉備達は出発点から失敗と言えばそれまでだが八〇一作家として隠遁生活なさい。臭道いや衆道が出るとは一体何処の黒い外史ですかw。PS人間って43時間寝続けられるんですよ仕事で困憊してると。(禁玉⇒金球)
一刀を世に出したくば…八〇一本にしたしめる以外は無いだろう、というか抑々が一刀は他人を頼らなきゃ生きてけなかったんですから利害関係こそが全てだったのです、それを理解してない上に全員に甘やかされたら駄目男なんです劉√一刀は。(禁玉⇒金球)
朱里も雛里も………本職よりも副業が忙しいようで…………。 他の外史とは違い、ココの世界はネタが大量にあるため、仕方無いのかもしれませんが………。 少しは活躍する場面…作って上げなきゃ……。(いた)
Jack TIam様 コメントありがとうございます! 『身を捨ててこそ、浮かぶ瀬もあれ』と言う言葉もありますので、一刀も似たような心情だったのではと。 その分、恋姫達の手助けをして、結果が付いて来たんじゃないかなと思っています。 ここの朱里と雛里は、まだまだ軍略の勉強が足らず、その内、戦場内の解説役になるかもしれません。(いた)
mokiti1976-2010様 コメントありがとうございます! ココだけですよ……恋姫に衆道持ち込んだのは。 二人のネタ提供には充分なります。(いた)
naku様 再コメントありがとうございます! 連絡係が今回……実行犯役でも活躍しております。 朱里、雛里「…………………………」 (いた)
策の失敗を考えてなかったというのは世に聞こえた天才軍師とは思えない失態。そりゃ、颯馬という優れた軍師とその仲間達が御遣いとして活躍している状況では焦りもするでしょう。敬愛する人物と同じ御遣い、そして自分達とは同業者。でもさ〜……理由がいかん。欲をかいた人間が損するのは世の摂理です。(Jack Tlam)
うーん、気付いたところで果たして世に出せたのかどうか。いやそもそも一刀の事情なんて誰も考えてなかったんだから無理でしょう。一刀が自己主張しないタイプだったのもあるけど、その時点で家臣と主君の心情に大きな隔たりがあったような気がしてなりません。原作の劉備陣営もそんな雰囲気がありました。まず恋姫達は一刀の本心を知るべきだったと思います……それでも一刀は本心を隠せる強さを持っていますけどね。(Jack Tlam)
念者衆だと…それはきっと、はわあわにネタを提供する為に存在しているに違いない(マテ。(mokiti1976-2010)
覚悟は決まっていたのですが……方向が……。 バイブルが孫子じゃなくて八百一だったのがいけないのですよ。 どこかで活躍出来るよう考えてますが、出番がほとんどない状態。 主人公が軍師ですからね……。 (いた)
naku様 早速のコメントありがとうございます! 二人の関係からしてこのような話に。 詠の月離れは、当分無さそうです。 一刀に………その関係は無いですよ……。 この作品は漢女の比率が異様に高いので。(いた)
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