超次元ゲイムネプテューヌmk2BURST |
少女を誘拐した下っ端を追いかけて十数分。向かった先はルウィ―国際展示場。ここもラステイションのリゾート同様、モンスターが活発化するまでは様々な発明の発表場所として利用されてきたのだが、活性化してからはそれどころでは無くなってしまった為、今ではコンテナや良く分からない設置物が置いてあるだけの、言ってみれば倉庫と同じような施設となってしまっていた。
「……アイツ、本当に逃げ足だけは速いわね!」
アイエフが忌々しそうに呟きながら下っ端を追いかける。現在はルウィ―国際展示場の入り口を入って少し進んだ所で、下っ端は左に曲がった。
「待てー! 下っ端ー!」
日本一が叫ぶが下っ端は振り返らずに走り続ける。
「ヘッ、誰が待つかよー!」
日本一に言い返しながら下っ端は考える。
「(クソッ、アイツ等まだ追いかけてきやがる。特に銀髪の男がクソ速ェ……このままじゃすぐ追いつかれちまう)……おっ、ちょうど良い所に」
と言って下っ端が目にしたのはモンスターの群れ。
「オイお前等! アイツ等の相手をしてやれ!」
「グッ……グギャァァァァァァァ!!」
下っ端に命令されると、すぐ近くに居たモンスター達が一斉にシンヤ達に襲い掛かる。
「チッ!」
シンヤは舌打ちをしながらモンスターを斬り伏せ、懐に入れてあるNギアでこの場所の地形を確認した。下っ端が向かった先は、大体百数十メートルほど先で行き止まりらしく、その付近にはコンテナが幾つか積まれているようだ。
「(この先は行き止まりか……下手に追い詰めると何されるか解らん……更に急いで追いかけてきたから何も考えてなかった……となると、今思いついた方法で行くとすると、先回りして抑えるって方法か)ネプギア! アイツの逃げた先は行き止まりだ! だが下手に追い詰めると何するか解らん! だからお前達はコイツ等の相手を頼む!」
「シンヤさんは!?」
ネプギアもモンスターを斬り裂きながら尋ねてくる。
「先回りしてアイツを捕まえてあの子を助ける! 後は頼むぞ!」
そう言って道を阻むモンスターを斬り捨てながら後を追う。
(……数が少ないしダメージ負うからあまり使いたくないんだがな)
そんな事を考えながらポーチから強制活性剤を取りだし口に放り込む。直ぐに体に痛みが走るが、それと同時に体から力が溢れ出してくる。
バーストが発動されたのを確認すると、コンテナの上に跳び移り、そこからまた別のコンテナに猛スピードで跳び移り、下っ端の先へ回り込む。ある程度移って適当な距離を稼げたと判断したシンヤはコンテナから神機を投擲し、下っ端の若干前に突き刺し、自分は背後に着地する。
「ウオアッ!?」
突然の事に驚いた下っ端は急ブレーキをかけ停止、その時生じた慣性により前に倒れそうになり、倒れまいと後ろに下がる。その瞬間、背後から接近したシンヤがすれ違いざまに下っ端が脇に抱えていた人質の少女を奪い返した。
「あっ、テメッ!?」
人質を奪い返された下っ端は手を伸ばす。
「フン!」
「グヘェッ!?」
しかしその手は届くことなく、逆にシンヤに蹴り飛ばされ、数メートル吹き飛ばされることとなる。吹き飛ばされたのを確認すると少女を地面に下ろす。
「ふぇ……?」
一瞬の事だった為何が起きたか分からない様子だったが、吹き飛ばされた下っ端を見て自分は解放されたと理解したらしい。その隙に下っ端は立ち上がろうとするが、蹴りのダメージが大きいらしく、中々起き上れない。
「……よし、人質の救出を確認。後はネプギア達と合流してアイツを警察に突き出すだけかな……さて」
と言葉を切り、片膝をついて少女の目線に合わせる。
「大丈夫か? それとゴメンな。俺達のせいで危険な目に合わせてしまって……って、おっと」
「うわぁぁぁん……!」
言葉を繋げようとした時、少女が泣きながら抱きついてきた。突然誘拐の対象にされたのだ。その体験は誰であろうと恐怖以外の何物でもないのだ。泣いてしまうのも無理もない。
「……本当に、ゴメンな……」
シンヤは、泣いている少女を優しく抱きしめ、謝るしか出来ないのだ。そうしていると漸くダメージから回復したらしい下っ端が起き上った。
「痛ッテェ……クソ、よくもやってくれやがったな」
回復したと言っても、まだダメージが残っているらしく、蹴られた場所をさすっている。立ち上がったのを確認したシンヤは少女の頭に手を乗せ、優しく宥める。
「後ろに隠れてな。そうすれば少なくともここで誘拐される事は無いだろうから」
「は、はい……」
少女は泣くのを止め、シンヤに言われた通りシンヤの後ろに隠れ、少し顔を出し下っ端を見ている。一方のシンヤは手を後ろに回し、神機を手に持ち、地面から抜き下っ端に向ける。
「さて、人質もいなくなった訳だし、これで容赦なくお前を倒す事が出来る……それに、俺一人じゃなく、全員でな。もう直ぐ来るだろうぜ」
ニヤリと笑うと計ったかのように複数の足音が下っ端の後ろから聞こえる。そこから現れたのはもちろんネプギア達だ。
「シンヤさーん!」
「ネプギア、人質はもう救出した。これでもう容赦する必要はない。一気に叩きのめすぞ」
「もちろん、そのつもりよ」
「今回ばっかりは、アタシも容赦しないからね!」
「人質を取る相手に、容赦はしません!」
「覚悟するです!」
皆、武器を構え下っ端に歩み寄っていく。
「ひ、卑怯だぞ! 一人に対して五人で掛かってくるなんて!」
「少なくとも、人質を取るお前にだけは言われたくないセリフだな」
シンヤは下っ端の発言に呆れながら歩を進める。その直後
「ロムちゃんを、返せえーーー!」
上空から、声が聞こえた。声色からして、幼い少女の様な。
「あ? 上から、声…?」
下っ端が上を向いた瞬間、黒い影が天井を突き破り、その真下に居た下っ端に直撃しそうになるが
「ぎゃああああああ!!」
下っ端は悲鳴を上げながらそれを回避するが、黒い影―――――いや、少女は地面に着地する。
その少女は、ネプギアやユニの女神の時に着用しているレオタードのような衣装に、ピンク色の髪に水色の目。背中には妖精の羽の様な浮遊物が付いていて、手には巨大な杖の様な物が握られている。
「ロムちゃん、大丈夫だった?」
「ラムちゃん……私は大丈夫」
シンヤの後ろに隠れていた少女―――――ロムはラムと呼ばれた少女の元に向かう。
「な…女神、だとぉ!?」
下っ端が驚いているが、それは二人の少女を除く全員が同じように驚いている。
(この子が、ルウィ―の女神候補生……しかも、まだ小さい子供じゃないか……って、そういえばケイさんが言っていたな、ユニ以上に手を焼くと。確かに幼い子供ほど手を焼く物は無いからな……あれ、確か女神候補生たちと言っていたよな……まさか)
そんな事を考えていると、ラムが怒り心頭と言った様子で言葉を発する。
「ロムちゃんをゆーかいするなんて絶対許せない! 泣いてはいないみたいだけど……きっと泣けないくらい酷い事したに決まってるわ!」
と言って手に持った巨大な杖を―――――シンヤに向ける。
「…………え? 俺?」
「そうよ! ロムちゃんはアンタの後ろから出てきたんだから、アンタがゆーかいしたに決まってるじゃない! ロムちゃんも変身して! こいつ、コテンパンにしちゃおう!」
ラムがロムに変身するように促すが、ロムは変身しようとせず、逆にラムに真実を教える。
「ラムちゃん、私はあのおにーちゃんに助けられたの。悪いのは、こっち……」
と指差したのは下っ端
「……本当?」
「うん…(こくり)」
少しの沈黙の後、杖をシンヤから下っ端に向け直し先程と同じセリフを言い放つ。
「ロムちゃんも変身して! こいつ、コテンパンにしちゃおう!」
「うん…(こくり)」
ロムは先程と同じように頷く中、シンヤは
(……俺の事は、スルーか……)
スルーされ、少し落ち込んだそうだ。
そんな事を考えていると、ロムが光に包まれる。光が収まると、そこには水色の髪にピンク色の瞳を持ち、ラムと同じ浮遊物と巨大な杖を持ったロムが佇んでいた。
「ま、また女神が二人ィ!? ちょ、意味分かんネェんですけど!」
下っ端他、ネプギア達が驚いているが、シンヤはやはりと言った様子で二人を見ている。
「あれが、ルウィ―の女神候補生、達…」
「行くよ、ロムちゃん!」
「うん…!」
二人が杖をクロス状にすると、クロスした個所に魔法陣が現れ、さらにそこへ風と冷気が集まってくる。
「な、何だ!? 一体何が始まるってんだ!?」
下っ端はこれから起こる事に対し身構えているが、初めてこの光景を見たシンヤはとても興奮していた。
(これが……魔法か……!)
やがて風と冷気が魔法陣に十分集まったのを確認したロムとラムが同時に技名を放つ。
「「アイスストーム!」」
魔法陣から風と冷気が混じった物が一斉に放出され、辺りを凍らせながら下っ端を包み、そのまま外へと吹き飛ばしてゆく。
「覚えてろぉぉぉぉ…」
吹き飛ばされながらも捨て台詞を吐いていく下っ端を見て少し苦笑を浮かべていると、ラムがとても喜んでいた。
「大勝利ー! わたし達ってばさいきょー!」
「さいきょう…」
どうやら下っ端を……自分を誘拐した犯人を倒した事を喜んでいるらしい。
「わー! カッコいいなー! 二人の女神様! ダブルヒロインだよー!」
「ん? 誰、この人達?」
「俺の仲間だ。今重要な目的で国を回っていてな。今回はルウィ―に来たという訳だ」
「ふーん……それよりあなた、ロムちゃんを助けてくれてありがとう。一応感謝してあげる」
「感謝されるようなことじゃないさ。元々は俺達の不注意で誘拐された形だからな……」
シンヤの説明をあまり興味なさそうに流すと、今度はシンヤに一応の形で感謝してきたが、感謝されるようなことではないと返した。と、ここでネプギアが口を開く。
「あのっ、あなた達がルウィ―の女神候補生なの?」
「うん。ルウィ―が誇る双子の女神。ロムちゃんラムちゃんとはわたし達の事よ!」
「(こくこく)」
ネプギアの質問に胸を張って答えたのはラムで、控えめに頷いたのはロムの方だ。
「よかった、いきなり会えるなんて…あのね、私も女神候補生なんだよ。お姉ちゃん…じゃなくて、ネプテューヌの妹で…」
「ねぷてゅーぬ? ってことは、えっと…」
「プラネテューヌ…」
「そう、それそれ。あなた、プラネテューヌの女神なんだ」
「うん、それでね。お姉ちゃん達を助ける為に、私と…」
そこまで言った時、二人は顔を見合わせ
「…てことは、私達の敵ね!」
「…敵(びしっ)」
二人揃って杖を構えたのだ。
「…え? えええ? ち、違うよ! 何で敵になっちゃうの!?」
「だって、他の国の女神でしょ。きっとルウィ―のシェアを横取りに来たんだわ!」
「そういう女神がいたって…本に書いてあった…」
「そんなことしないよ。とにかく話を聞いて…」
「もんどーむよー! かくごー!」
そういうとラムとロムは杖を掲げ、魔法陣を展開し、冷気と水分を集め合成し、氷の塊になったそれを発射する。構えてもいないネプギアに当たるかと思われたそれはシンヤが振るった神機によって粉々に粉砕される。まさか邪魔されるとは思っていなかった二人だが、すぐに気を取り直しシンヤに問いかける。
「なっ……何で邪魔するの!?」
「……頼む、武器を下して話を聞いてくれ。こちらに対話の意思はあるが交戦の意思は無い。それとも、無抵抗の相手に対し一方的に攻撃するのが君達のやり方なのか?」
ラムの問いに少し怒ったような表情で答えるシンヤ。それに加え若干の煽りを加えてくるので、二人はムッとした表情で答える。
「そ、そんなことしないわよ!」
「(むすっ)」
「だったら武器を下して話だけでも聞いてくれ。それが終わったら攻撃でも何でも好きにしていい。まあ防御くらいはさせてもらうが」
その言葉に二人は少しのヒソヒソ話の後、武器を下して近づいてきた。
「良いわ。わたし達は話が分かるからね。聞いてあげる事するわ」
「…聞く」
どうやら対話に応じてくれるようだ。それに微笑みで返すと此方からも口を開く。
「感謝する。で、内容だが二つある。まず一つ目だが……単刀直入に言うと、君達に協力してもらいたい」
「き、協力!? 何でそんな事しないといけないのよ!?」
「順を追って説明すると、三年前に君達の姉がギョウカイ墓場に向かいマジェコンヌ討伐に乗り出したが失敗、結果ギョウカイ墓場に捕らえられてしまう。だが数ヶ月前にギョウカイ墓場に向かった俺の仲間のアイエフとコンパが同じく捕らわれていたネプギアを救出した。そこでギョウカイ墓場の現状を知ったイストワール司書が女神救出の為に各国の女神候補生の協力を仰いだのだ。そこで君たちにも白羽の矢が立ったという訳だ。ここまで理解はできているか?」
「えぇと……つまり、お姉ちゃんを助ける為に協力して欲しいって事よね?」
「一言で言うとそういう事だ」
「で、でも! そんなこと言って、各国のシェアを奪うつもりでしょ!?」
「……横取り、駄目」
「そこで二つ目だ。まずこのグラフを見てくれ」
そう言って懐からNギアを取りだし画面に映っている各国のシェア一覧表を見せる。
「見て分かる通り、マジェコンヌのシェアが半数以上を占めている状態だ。プラネテューヌとラステイションのシェアは少し上がっている状態だが、それでもまだまだと言った状況だ。さらに言うとルウィーとリーンボックスは約8パーセントしかない状況だ。そこで二つ目の目的だが各国のシェアの回復及びマジェコンヌの討伐だ。これを見た状態で、まだシェアを奪いにきたなんて言えるかい?」
「む、むむむ……」
「(おろおろ……)」
二人が悩んでいる所に更に追い打ちをかける。
「どうする? 俺達としても今君達と戦いたくは無い。だから出来れば協力して欲しいのだ。君達にはデメリットは無いむしろメリットしかないと思うのだが?」
淡々と交渉を続けていると、二人がまたこそこそ話を始めた。そして、少したった後
「……わかったわ。わたし達もおねーちゃんを助けたいし、協力してあげる」
「(こくこく)」
どうやら最初の姉を助けるが効いたらしく、二人は協力してくれるらしいのだが……。
「でも、ミナちゃんが何て言うか……」
「ミナちゃん?」
「ルウィ―の……教祖」
ロムが教えてくれた。
「……なるほど、分かった。なら後で俺達も教会に向かうよ。そこでまた交渉する事にしよう」
「え? 教会に来るの?」
「あぁ。元々それが目的だったからな。だから先に戻って説明してくれ。余計な説明は省きたい」
「分かった。その代わり、ちゃんと来なさいよね!」
「勿論だ。じゃ、頼むぞ」
そう言って二人はルウィ―国際展示場から出て行った。
「……ハァ、疲れた」
二人が出て言ったのを確認すると、大きくため息をつく。そんなシンヤを見てネプギアがポーチから水を取りだす。
「シンヤさん、お疲れ様です」
「あぁ、本当に疲れた。でもまぁ、本人に協力しようという意思は確認できた。それは大きかったかな」
「確認したというか、無理やりこじつけたと言った方がいいんじゃないの?」
「そうか? 俺も初めてだったからかなり緊張したんだ。大目に見てくれ」
「……ま、良いわ。さて、教会に向かいましょう」
「そうだな。あの二人も待っていることだし、早く行こう」
と言って、一行はルウィ―国際展示場を後にし、教会へ向かって行った。
再開の時は、近い。
説明 | ||
今回初の6000字越え。そして今回は超駄文。批判もあるかもしれませんが、よろしかったら見てください。 E−2で瑞鳳改を沈めてしまった私を許して下さい。 |
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