クロスリンク・プロブレム ミクの試練! 第3話 侮蔑の悪魔・前編 |
(舗装劇場・ホール客席)
ギューーーーン! スタッ!
ハク:到着しました。今回は客席にワープみたいですね
ミク:間違いなく、リンレンは芸人やっているんだね。なんか想像できないけど
ネル:今は誰かの本番コントをやっているみたいだね。とりあえず様子を見ようか
ミク達が到着した客席から見える“ステージ”では、ラメ入りでピカピカ光っている、でっかい蝶ネクタイをしめて、黄色と黒を基調とした漫才衣装を着た、“リンとレン”が、必死に漫才をやっていた。
ミク:えっと、コンビ名は・・・“ロードローラーズ”??? 随分変わった名前をつけたんだね?
ネル:名前の紙の残りを見る限りで、この二人は“トリ”じゃないみたいだね。この二人の次が“トリ”だ
(ステージ)
リン:ところで、隣の家に、空き巣が入ったみたいなんだけどさ
レン:ブローーーーック!
リン:そのボケはまだ早いっての!
ガス!
リンはレンのボケに、片手でお約束のツッコミを入れた。
客:ははははは!!
リン:私が、“それでその家の人が警戒してね、隣の家にしっかりした塀ができたみたいなのよ”、って言ったら、
レン:ブローーーーック!
リン:だから、まだ早いっつーの!
ボス!
またリンがレンにつっこみを入れた。
客:ハハハハハ!!
リン:じゃあ、行くよ! 隣の家にしっかりした塀ができたみたいなのよ
レン:へぇ〜
リン:・・・
レン:・・・
リン:それで返されたら、つっこみ入れられないじゃないの!
レン:ブローーーーック!
リン:遅いっての!
ガス!
客:わはははは!
そんな漫才をしているうちに、演目は終わったようだ。
リン、レン:そんなアホな! どうも失礼しました〜!
客からは大きな拍手が巻きおこり、二人はお辞儀の後、楽屋に戻っていった。
(ホール客席)
ミク:なんだ、結構巧いじゃないの! リンレンの違う一面を発見できたわ!
ネル:あ、こっちの世界限定だと思った方がいいと思うけど、とりあえず二人はこれで食べているみたいだね
ハク:で、どうします? 特に問題は起こってないみたいだけど
テト:o(^Д^*)(*^Д^)o
ネル:テト? え? 次のトリのコンビが出てきたって?
ミク:せっかくだし、見てからリンレンの所に行きましょう
こうしてミク達は、トリを勤めているコンビの漫才を見てみる事にした。
(ステージ)
ジャジャジャジャーン!
派手な登場曲と共に、コンビがステージに現れた。
バル、ゼル:どうも〜 お笑いコンビの
バル:バルでございます〜
ゼル:こら! わいを忘れるな!
バシ!
背の低いゼルは少し“つま先立ち”して、バルの頭をハリセンで叩いた。
バル:あれ? 何か頭に当たったようですね〜 お客様知りません?
ゼル:だから、わいを忘れるなっての!
バシ!
ゼルは今度はバルの胸元にハリセンを叩き込んだ。
バル:あれぇ? 今度は胸が苦しいわぁ〜 これが恋なのかしら?
ゼル:誰に恋しているっちゅーねん!
バシ!
今度はゼルが叩く前に、バルがハリセンでゼルの頭を叩いた。
バル:何度も叩くな! 豆造!
ゼル:豆造ちゃうわ! ゼルやがな! ってか、最初から見えたったのか!?
バル:豆造、からかうと面白いからな〜♪
ゼル:だから、豆造ちゃうわ!
客:わははははっははははははっはっっはははっっは!
(ホール客席)
ミク:うーん、さすがトリを勤める漫才師、笑いのレベルが違うわね
ネル:客の心をガッチリ掴んでいるなぁ
ミク:でも、こっちもコンビで同じ劇場でやっているってことは、リンレンの先輩って考えた方がいいのかな?
ネル:リンレンが前座を勤めて、バル&ゼルがトリだから、そう考えてもいいみたいだね
ハク:あ、終わったみたいですよ
客:パチパチパチパチ!!!!
バルとゼルの二人も、楽屋に戻っていった。今日のここでの興業はこれで終わりのようだった。
ミク:じゃあ、まずリンレンの楽屋に行ってみようか
こうして4人は、客が帰っていくのと逆行して、ステージを抜けてリンレンの楽屋に移動した。
(ロードローラーズの楽屋)
リンレンの楽屋にミク達が到着した。衣装から普段着に着替えたリンレンは、何故か帰らずに楽屋の椅子に座っていた。
ミク:あれ? もう本番終わったのに、なんで帰らないんだろう?
ネル:ミクさん、こういう世界では、“先輩より先に後輩が帰っちゃダメ”ってしきたりがある所もあるんだよ。先輩だと思うバル&ゼルがリンレンの後に終わったから、多分、この二人が帰るまで、待っているんだと思うよ?
ミク:厳しい世界だね
ガチャ
そうこうしているうちに、着替え終わったバル&ゼルが、部屋に入ってきた。リンレンはサッと立って、一礼した。
リン、レン:先輩、お疲れさまでした!
バル:さーて、もうわかっていると思うが、これからダメ出しタイムだ。心構えはいいな?
ゼル:今日は厳しいぜ?
リン、レン:はい!
バル:んじゃ、レン、ちょっとこっちこい
レン:? はい!
レンはバルの目の前に歩いてきた。すると、バルは平手にした右手を斜め上に振り上げると、思いっきり振り下ろした!
バチン!
レン:う!
バルはレンに問答無用でビンタしたのだった!
リン:!
バル:なんだ!! お前らの今日の漫才は!!!! あんな塀ネタなんぞにしおって!
レン:で、ですが、このネタを使えって言うのは、先輩のご指示で
バチン!
再び、バルはレンにビンタをかました!
バル:俺らが言ったのは、“この塀ネタをアレンジして、巧い漫才やってみろ”、だ! それをあんな漫才にしやがって!
ゼル:俺らはそれに腹が立っているんだよ!
レン:す、すみません。未熟でした
リン:二人で心から謝りますから、お許し下さい
バル:ふん! 基本の塀ネタですら、こんな出来じゃあ、トリ前は無理だな。一番最初の前座からやり直しだ
ゼル:それから・・・
ゼルはリンが持っていた“日当袋”を取り上げ、中身の9割を取り出し、ポケットにしまってしまった。
ゼル:この残りの分が、今日のお前らの漫才への給金だ
バル:頂いた分は、今日の俺達のドリンク代だ、いいな?
レン:は・・・・・・・はい・・・・・・・・
バル:今日はパァっと飲みたい気分だから、ダメ出しは許してやる。オレ達もこれから帰るから、お前らも帰って良いぞ
リン:わ・・・わかりました・・・
バタン!
こうして、やりたい放題やって、バル&ゼルは楽屋から帰っていった。リンとレンは寄り添ってガクガクしていた。
リン:レン、どうしよう・・・ 残りじゃ、今日の夕飯、カップラーメンくらいだよ・・・
レン:仕方ないよ、いつもの先輩の事じゃないか・・・
リン:今日の日当、少ない方なのに、それでもムシっていっちゃうなんて・・・
レン:・・・震え・・・止まった?
リン:う・・うん。大丈夫、帰ろうか?
レン:うん、そうしよう。銭湯で暖まろうよ
バタン
二人は荷物を持って、楽屋の電気を消して、退室した。
(リンレンの後ろ)
ミク達はリンレンの後を付いていきながら、話し合っていた。
ミク:・・・リンレンが・・・いじめとカツアゲにあっていたなんて・・・知らなかった・・・
ミクは半泣き状態だった。
ネル:この状況と元の世界の事を考えると、リンレンの悩みはそう言うことになるね。コッチの世界のアレは、いくら何でもやりすぎだ!
ハク:私、腹が立ちました! 芸人の世界が厳しい事はわかるけど、それとアレは別種です!
テト:ヽ(`Д´)ノ
ミク:あの二人・・・私たちの世界では、多分、悪い先輩とかから“やられていた”んだと思う。家では明るい笑顔を作っていたけど、それは家族を気遣っていたからで・・・ごめん、気づかなくて・・・
ネル:・・・しかし、あのバル&ゼルとかいう二人、ちょっとひどすぎるな。厳しいを通り越して、悪魔的だとも思える・・・
ハク:あの・・・それなんだけどね・・・
ミク:何?
ハク:あの楽屋で、あのバル&ゼルをスキャンしたんだけど・・・どうもおかしいんです。なんというか、人間のフラグがないっていうか・・・
ミク:! もしかしてアイツら、もう悪魔と契約したんじゃ!
ネル:・・・いや、契約したからといって、その人間から“人間のフラグ“が消滅することはないよ
ミク:じゃあ、あの二人は?
ネル:まだ解らない。でも、“普通ではない存在”と思った方がいいみたいだね
そうこうしていると、廊下の突き当たりで、リンレンの前に、スーツ姿のおじさんが現れ、リンレンにお辞儀した後、名刺を差し出した。
『バル&ゼル マネージャー 鈴背』
リン:おじさんは、先輩のマネージャーなんですか?
鈴背:そうです。さっきの楽屋、ちょっと用があって立ち寄ったんですが、中が修羅場だったから、盗み聞きしてたんだけど、うちの二人が申し訳ないことをしました
レン:いえ・・・そんなことは・・・
鈴背:いえ、隠さなくても良いです。あいつら、ここの所、売れてきたのをいいことに、後輩をいじめてカツアゲしまくっているらしいのですが、先ほど聞いた事で、確信しました。もう私も我慢できません
リン:・・・
鈴背:そこで、取引というか契約したいのですが、あ、勿論、拒否でも結構です
レン:いえ、言って下さい
鈴背:わかりました。私もあいつらのマネージャーをやっているのですが、裏社会にも顔が利きます。私の名前を通して、あいつらを葬るってのはどうでしょうか?
リン:え!? 葬るって・・・殺しちゃうの?
鈴背:いえいえ、この世界で喰っていけなくすることです。私も職を失う事になりますが、その時はプロダクションに希望を出して、あなた達のマネージャーとして雇っていただければいいのです。どうです? これもこの世界で生きていく知恵だと思いますけど?
リン、レン:・・・・
ミク:そうだそうだ! 良いぞ! マネージャー! もっとやれ!
ネル:・・・そう簡単な事じゃないと思うよ
ハク:はい
ミク:え!? だって、協力してくれるって言っているよ?
ハク:あの“鈴背“ってヤツ、『悪魔』だよ。人間のフラグが1つもない
ミク:え!!!???
ネル:まさに“悪魔の知恵”。私たちが倒す相手は、どうやらあのマネージャーらしいよ。そして、リンレンが、もしここでヤツと契約してしまうと、僕たちがあの悪魔を倒した後、存在が消滅するのは、バル&ゼルじゃなくて、“リンレン“、って事になるんだ
ハク:悪魔と契約した、って事だからね
ミク:ええええ!!!! だめよ! 助けに来たのに! すぐに止めないと!
ネル:大丈夫、テトが準備しているよ
テト:(-_-)
しかし、リンレンは内なる心を開放し始めていた。
リン:・・・わ・・・私たち・・・もう・・・我慢・・・できない・・・
レン:こんな・・・地獄な生活が続くのなら・・・
ミク:だめ!!!!!!!
リン、レン:貴方と契約し
テト:ストップ!!!!
ピタッ!
前と同じように、その周りが全て止まって凍てつき、あの鈴背とミク達だけが、動ける状態になった。
ミク:あ・・危なかった・・・危機一髪・・・
動ける鈴背は、中指で眼鏡をクイッと上げて、ミク達を睨み付けた。
鈴背:・・・もう少しで目的が達成できたものを・・・連絡を受けた通り、またもやお前らが邪魔に入るわけだな・・・
ネル:こいつ自体が悪魔本体で、“鈴背“、は人間に擬態したときの偽名だな?
鈴背:・・・クックックッ・・・もう一つ、いや、2つ、偽名があるがな
鈴背の姿が瞬時に消えて、二人の人間型の生き物がその場所に現れた。
バル:バルでーす!
ゼル:ゼルでーす!
バル、ゼル:二人合わせて、バル&ゼルでーす!
ミク達:!!!!!!!
バル:リンレンの先輩という立場で接触し、いじめ抜いて、カツアゲしまくり・・・
ゼル:くたびれぬいた所で、優しいマネージャーとして接触して、悪魔との契約をかわさせることで、お前らの救出劇を完全失敗に追い込む計画だったが・・・
バルとゼルの二人が消えて、そこに再び、鈴背が現れた。
鈴背:寸前で計画が潰されてしまったか・・・
ミク:お・・・・・おまえら全員・・・同一存在・・・
鈴背:その通り。バル&ゼルであり、鈴背である・・・。名前も、バルゼル・・・鈴、ベル、背、ゼ・・・
そういうと、鈴背は思いっきり両手を胸の前でクロスさせ、かがみ込んで、全身に力を入れると、巨大な何かに変身したのだった!
ベルゼブブ:我こそは、侮蔑(ぶべつ)の悪魔、ベルゼブブ!!!
そこに現れた巨大な何かは、恐ろしくでかい、蠅のバケモノだった。王冠を被り、右手にはねじ曲がった杖を持っており、口から床に消化液を垂らしていたため、床がジューーーと音を立てて溶けていた。
ミク:う!!! げほ!
ミクはそのあまりの醜さに、思わずかがみ込んで、せき込んでしまった。
ベルゼブブ:おや? お前は我らを倒して家族を救い、帰還する命を受けているのではないのか? それともここで命果てるつもりか?
ネル:ミク・・・
しかし、ミクと悪魔との戦いは2回目、ミクにもそれなりの根性は座っていた。それに、なにより、こっちの世界とはいえ、家族がこんなヤツに振り回されていた事が、正直、許せなかったのだ。
スチャ
ミク:・・・ふぅ。ネル、神威の力を頂戴
ネル:大丈夫なのか? 少しやす
ミク:頂戴!
ネル:・・・わかった、でも無理するなよ
ネルは、紫のクリスタルを輝かせて、光をミクに当てることで、ミクに神威の力を与えた。
チャキ!
ミクは前とは違っていた。ひるまず、刀をしっかり構えて、ベルゼブブを睨み付けた!
ミク:絶対に・・・許さない!
ベルゼブブ:来るがいい! 人の子よ!
こうして、ミクと蠅の王との、対決が始まったのだった!
(続く)
CAST
ミク:初音ミク
リン(鏡音リン):鏡音リン
レン(鏡音レン):鏡音レン
妖精ネル:亞北ネル
妖精ハク:弱音ハク
妖精テト:重音テト
その他:エキストラの皆さん
説明 | ||
☆投稿、また間があいて申し訳ありませんでした。ローペースですが、投稿していこうと思います。 ○ボーカロイド小説シリーズ第13作目の” クロスリンク・プロブレム ミクの試練!“シリーズの第3話です。 ○ちょっと現実にありそうな問題と、それとリンクするファンタジーの世界、それらをクロスリンクさせたお話です。 ○ちとオカルトも入りますが、そこら辺は今の流行って事で…。 ☆今回はリンレン編の前編です。シナリオ編、戦闘編が共に長くなるため、前後編にしました。 ☆リアルなシチュエーションであったため、出来るだけ過激にならないような表現にしました。 ☆次回は戦闘編になります。 |
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