義輝記 星霜の章 その十参
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【 意外な裁量 の件 】

 

? 徐州 下? 曹操軍陣営 にて ?

 

晋兵は一瞬───何が起こったのか……分からなかった!

 

晋兵「はっ?」

 

晋兵「えっ? えぇっ!?」

 

晋兵「閔純様─────!!」

 

自分達の将が………殺された! 

 

韓馥に付けられていた『若衆』の一人に……………!

 

ーーーーー

 

念者衆「あんた! なにをしとるのよ!」

 

若衆「早う! 取り押さえて!!」

 

口々に叫ぶ中、閔純の背後に居た『茶色の髪を結い上げた美少女』が、血が滴る短剣を持ち、顔に付着した血を拭いもせず、ニヤリと笑う。

 

若衆達は、仲間の名前を思い出そうとしても、名前が浮かばず。 年長者の念者衆達にも、見たことが無い『娘』だと今頃になり気付く!! 

 

その思考の一瞬の隙を突き……少女は、その場より離脱を図る! 

 

念者衆「逃がさないわぁ! オラァオラァオラァーッ!」

 

??「────フッ!」スッスッスッ!

 

念者衆「あ、あたしの攻撃を……軽々避けるなんて!?」

 

ごつい体躯に似合わない速さと圧倒的な力を持って、殺害犯を攻撃する念者衆。 されど……少女は難なく避け、義久に向かい走り込む!!

 

??「儁乂様の主命、ご覧の通り果たしました………」

 

義久「………貴女ね! ご苦労様! ここは任せて後方へ!!」

 

??「はっ…………!」

 

敵将を討ち果たした少女は、義久に一瞥して通り抜けた!

 

義久「───さて、今度はこっちの番ね〜! 皆ぁ〜! お願いー!!!」

 

定めていた標的が、無事に排除できたため口調が戻る義久。 そして、合図の声と同時に右手を頭上高く上げた!!

 

ーーーーー

 

歳久「……なかなかの役者振りですよ……よしねぇ!」

 

華琳「さて、次はどうするの? 三十万で包囲殲滅? それとも、黄河に敵全員を落として、寒中で泳ぎでも楽しんで貰う? それとも、両方がいい?」

 

ーーー

 

家久「動いちゃ駄目だよぉ? 許可なく動いちゃうと、強制的に弓矢の的だからねぇ!!!」

 

秋蘭「弓の名手が三人もいるのだ! 大人しくして貰った方が利口だぞ!」

 

ーーー

 

一刀「流石………義久『やだぁ! お姉ちゃんと呼んで!!』 ………義久お姉ちゃんの策だ………うん………」

 

義久「わぁ〜い! 一刀君に褒められちゃったー!!」

 

星「………この御仁も、一筋縄ではいかない方のようですな………」

 

ーーー

 

春蘭「よおぉしぃ!! やっと───戦える!!」

 

義弘「ちょ! ちょっと! 何なの──あの敵!? 私よりオナゴらしいって、どういう事よ!?」

 

春蘭「何をほざいている!? 戦に男も女も無い! 殺すか殺されるかのどちらかに過ぎん! あんな物、些細な事で、気にする事も無いではないか!!」

 

義弘「春蘭は……胸も大きいし……美人だから良いけど……私はどうなるのよ!? 胸も姉妹で下から二番目出し……。 いえちゃん、まだ成長期で将来あるし…………!」

 

春蘭「こんなモノ……ただの脂肪だ! 動く度に揺れて痛いわ、戦では邪魔になるわ、華琳様には時折羨ましがられるわ、ロクな事にならん……はっ!?」

 

華琳「春蘭! ───後で覚えておきなさい!!」

 

春蘭「も、申し訳ありません! 華琳様〜!!」

 

 

ーーーーー

 

義久の天幕の後ろから、七星餓狼を構えた春蘭と愛槍を振り回す島津義弘、そして後方に曹兵数千! 

 

横の林から島津歳久、家久の弓兵隊、秋蘭率いる弓兵隊数千!

 

林の中に、華琳率いる曹操軍が一万が控えている!

 

桃香達が、残りの軍勢を纏めあげ、補充や応援の準備をしていた!!

 

そして、義久の前にも……一刀や星が守りを固めつつ、攻撃の機会を窺う。

 

晋軍は五万。 しかも……将を打ち取らた状態。 烏合の衆と化した晋軍には、曹操軍の攻撃など、とても耐えられない!

 

死を覚悟して、剣や槍、弓を構える晋軍達!

 

義久は、その姿を見ると、ニッコリと笑い────命じた!

 

義久「全軍! 晋軍への攻撃は中止ー! 攻撃されないように構えだけはしておいてねぇー! 晋軍の皆さんは、帰陣していいですよー? 私達は何もしませんから〜!!」

 

『はぁ────────────っ!?』

 

この時だけは、ほぼ全軍、敵味方を越え……心が一緒になったそうだ。

 

◇◆◇

 

【 更なる策謀 の件 】

 

? 西涼 西涼城付近 異民族陣営 にて ?

 

劉宣「ぐぐぐぅぅ!! た、頼む! 明日は我々と………共に戦ってくれ!」

 

鮮卑将「やっ〜と、俺達の力を必要とするようになったか?」ニヤニヤ

 

羌将「自分達の非力が分からないとは……なんと、愚かで嘆かわしい奴だ」

 

──────

────

 

結局………散々嫌みを言われ挙げ句、力を貸す謝礼にと、西涼での略奪品……三分の一ずつ渡す事を条件に飲まされて、非常に立腹していた!

 

ーーーーーー

ーーーー★

 

劉宣「おのれぇ! これで戦って勝利しても……南匈奴の名が広まるどころか、弱小勢力と侮られ、利益も取られて戦をした意味が無いではないか!! しかも、このまま引けば……我々の名が地に堕ちる!! 糞虫共がぁ!!」

 

グイグイグィ───ッ! ダンッ!

 

劉宣は……自分のゲルに戻り、自棄酒を呑んでいた!

 

匈奴兵「た、大変です! 一大事です!!」

 

劉宣「どうしたぁ! 大声を出さなくても聞こえるわぃ! ……ヒック! 不味い酒が……余計不味い酒になっちまうぜぇ…………!!」

 

匈奴兵「他の陣営のゲルに炎が上がり、鮮卑や羌の将達が───火を放ったのは俺達だと…………!?」

 

劉宣「な、何ぃ────っ!?!?」

 

★☆☆

 

鮮卑将「おおぅ!? てめぇ! 何ぃふざけた命令を出していやがる!!」

 

羌将「………我らの助けが欲しく無かったのか? ゲスが!!」

 

劉宣「し、知らん!! 儂は知らん!! そのような命など───!!」

 

鮮卑兵「大将! 仲間の報告に寄れば………やはりコイツ等と同じ服装の奴らが、放火していたようだぁぜぇ!!!」

 

羌兵「…………こちらも……同じく………」

 

羌将「…………うむっ!」

 

鮮卑将「どうやら………証拠は挙がったようだぜぇ! 劉宣!!」

 

羌将「裏切り者め!?」

 

劉宣「濡れ衣だぁ!! そんな事は────!!」

 

鮮卑兵「報告───ぅ! 正面、砦より『真紅の鎧を着用した騎馬隊』が進軍!! 牙門旗は『 董 』! その数二万!!」

 

羌兵「右側より敵襲来! 牙門旗は『 馬 』! 敵数は五万!!!」

 

『ーーーーーーーーー!』

 

★★☆

 

白菊「おぉおぅ! 綺麗に焼けてるねぇ!! 丁度、煙管の火が切れてたんだよ! 早く行って火を貰おうかぁ────!!」

 

翠「錦馬超の名を、この戦で轟かせてやる!! 行くぞぉ! 皆──!!」

 

蒲公英「叔母様! お姉さま! 待ってよぉ!!!」

 

ーーーーー

 

月「皆さん!! 近付きましたら火矢の準備を! 狙いはゲルに!!」

 

西涼兵「準備完了しました!」

 

月「放てえぇ──────!!」

 

弓から離れた矢が……赤き放物線を描き……ゲルに刺さり炎に包まれる!!

 

月「敵に備えて弓を準備! 一度放った後、突っ込むます!!」

 

ーーーーー

 

鮮卑将「くっそぉぉ───! 俺は撃って出るぞぉ!!」ダッ!

 

羌将「俺も続く!!」ダッ!

 

劉宣「何故だ!! 何故こうなるのだぁ────!?」

 

★★★

 

鮮卑将、羌将共に自軍の兵を集め、迎撃する予定だった!

 

しかし………詠の仕掛けた策は、まだ進行していた!

 

ーーー

 

先の戦で逃げる匈奴兵の付いてきた、姜伯約率いる忍び達。

 

匈奴兵と同じ服装で、放火を仕掛けて同士討ちを目論見、そして、この後も敵の混乱させる為、馬を管理している牧場に侵入している!

 

伯約「出入りを開けて、馬を解放せよ!! 鮮卑兵達に馬を使わすな!!」

 

忍び「はっ!!」

 

次々に──牧場より馬が逃げ出して、馬を連れにきた兵達と合わさり、混乱に拍車を掛ける! しかも、忍び達は……ゲルの中に……ある物を置いていた。

 

パアァン! パアァンパアァン!! 

 

パパアァーン! ボボォン! パアァン!

 

匈奴兵「な、なんだぁ! あの音は!? う、馬が暴れてぇ──うわぁ!!」

 

鮮卑兵「音かぁ!? この音がぁ!!!」

 

羌兵「鎮まれ! 大人しく………しやがれぇ!!」

 

朝方に使用した竹槍が纏めてあったので、ゲル内に入れて置いたのである。

 

火災により竹が爆ぜて、音が響き渡る! 

 

馬は、驚き狂乱しつつ、内乱で割れた異民族の陣営内を走り廻る!

 

混乱状態は、更に拍車を掛ける事になった!!!

 

◆◇◆

 

【 久々の出番 の件 】

 

? 洛陽 宮廷内 渡り廊下付近 にて ?

 

華雄「───────」

 

私は、宮殿内にある大木の下で、ボォ──としていた。

 

この木は、宮殿の中でも特に由緒ある木で、皇帝陛下の母上が日陰を願われて植えられた木の一つ。 しかも、三本植えられた内、陛下、妹君、何進大将軍の昼寝用の木としても知られている。

 

本来、ここは皇帝陛下の私室に繋がる場所で有るので、関係者以外立ち入り禁止。 しかし、何度も挨拶に伺う私の為に、皇帝陛下が特別に許可して下さり、偶に休憩させて貰っているのだが……。 ハァ〜〜暇なのだ。

 

私の最近のやる事は、皇帝陛下方のご機嫌伺い事ぐらい。 日に三度訪れて体調の異変が無いか、ご要望は無いかとか尋ねるのである。 

 

政務など私に出来る訳は無く、兵の鍛錬も恋達中心で扱いているため、ぶっちゃけ仕事が限定になってしまうのだ。 

 

勿論、恋や忠勝との鍛錬を毎日欠かさず行う事は忘れてはいないし、自分の配下の兵の鍛錬も行っている! それでも、体力には限界はあるし、汗臭い身体で、皇帝陛下にご機嫌伺いは、出来ないからと……自粛もしている。

 

そんな、何時もの日常の中………変わった事が起きた。

 

★☆★  ★☆★  ★☆★

 

《 回想 》

 

金糸『………………』フルフルフルフル

 

銀糸『陛下には、異変はありません!』

 

華雄『そうですか、この華雄、安心致しました。 引き続きご要望があれば、お申し付け……』

 

銀糸『──ならば問います! 今の戦局はどのようになっているのですか?』

 

華雄『…………それは…………』

 

銀糸『……やはり、軍師達に口止めされているのですね。 無駄な心配を掛けたく無いと、私達を慮る(おもんぱかる)のは有り難いのですが。 陛下や私は……虚しく思うのですよ! そうは思いませんか………華雄?』

 

華雄『私のような武を振るうだけの者が、皇帝陛下や準ずる方の御心を図る事など………到底許されませんので………』

 

銀糸『華雄……陛下や私は思うのです。 私達には、国の頂点に立った以上……国を豊かにし、民を見守る使命というものがあるという事が! 

 

それなのに……何進叔父様、月、そして天城達にも、大陸平和の為に腐心しているのに───宮殿内で何不自由無い生活をする! これが許される事でしょうか!!』

 

華雄『お言葉を挟む事、お許し下さい! 武人である私には、武を振るうのが本分! 陛下には、この宮殿内で政務を励んでいただきつつ、見守り頂くのが……本分かと………愚考致します!』

 

銀糸『皆が皆、心配してくれるのは有り難いのです! 

 

しかし、陛下も、私も──ただ守護される飾りでは、前の十常待の頃と一緒! それでは、漢王朝は変わらないままなのですよ!!』

 

華雄『…………………………』

 

銀糸『───お願いです! 華雄!! 私達を手伝わせて下さい!! 私達をただの飾りではなく、人として援助を行いたいのです!! 大陸の平和に導く為に駆けつけてくれた天城達へ、恩を返したいのですよ!!!』

 

★☆★  ★☆★  ★☆★

 

 

華雄「皇帝陛下にか…………何とも恐れ多い………!」 

 

颯馬から頼まれたのは──『洛陽の守護』! 無論、皇帝陛下の守護も含んでいるのは、間違いないだろう! 名誉な事だ……と思う、思うが。

 

……本心では、私を頼らない颯馬に苛ついていた。  

 

あの時、月様が松永に襲われた際に、私は無様に見ているしか無かった。 

 

『道士の術が強力だったから……』 『華雄は良くやってくれた!』と颯馬達に見舞われたが、そんなものは言い訳に過ぎん!!

 

だから、私は自分を何時も以上に鍛えた! 恋と忠勝に頼み、何度も挑んだ!

 

今まで負け続きだったため、頭を下げたく無かった貂蝉にも願い、稽古を付けて貰った! もう二度と不甲斐ない戦いをしないようにと───!!

 

だが、最後の戦いを始める戦列に、私は加われなかった。 あの道士に挑む事も、鍛えてきた武を披露する場面も、月様や颯馬を守る立場も………。

 

華雄「私は、何の為に……武を鍛えてきたのであろうな…………」

 

私が呟くと、普段足音がしない廊下より、近付く足音が響く。

 

ーーーーー

 

稟「…………探しましたよ、華雄殿」

 

華雄「───稟か? 今回の報告は、全部終えている筈だが……何か用か?」

 

稟は、辺りを素早く見渡し………人が居ない事を確認すると、私に話掛けた。

 

それは─────私が望んでいたモノ!!

 

稟「………華雄殿。 天城颯馬殿よりの極秘命令……を伝えます!」

 

華雄「そ、颯馬から───か!」

 

稟「────声が大きいですよ!? これは秘密裏で行って頂きたいのですから! 天城殿達の勝敗、大陸の命運が掛かっているのです!!」

 

華雄「…………して、何をやるんだ!」

 

稟「それは、後で風と一緒に話しますので。 もしかすると、陛下の御出陣が必要になるかもしれません! その事も踏まえていて下さい!」

 

華雄「─────────!!」

 

 

◆◇◆

 

【 風雲告げる の件 】

 

? 徐州 下? 韓馥軍陣営 にて ?

 

韓馥「…………で、おまんら……のこのこと戻ってきやしたかぁ!?」

 

念者衆「そやけども……閔純様……殺されて、あたし達じゃどうにも!」

 

若衆「韓馥様! 姉様達は悪くない! 悪いのはあたし達や!! 仲間だと思い、信用しとったあたし達が!」

 

韓馥「………ふん! まぁ、よかっ! おんしらが無事だったのは、もっけの幸い! 早よう、配置場所に戻らんかい!!」

 

念者衆「あっ! お、おおきに! おおきにどした!!」

 

若衆「あ、姉様………」

 

念者衆「おおきに……ね。 そないなら、行きましょうか?」

 

若衆「はいっ!」

 

念者衆と若衆達は、互いを気遣いながら退室して行く。

 

ーーー

 

韓馥「ちっ! 思惑が外れたか。 だか、兵力も子飼いの兵も全員無事。 まだまだ勝ち目はある!! それに─────」

 

??「………あらあら、老師に折角強化して貰ったのに……生かす事も無く殺されるなんて……閔純も役に立ちませんわね………」

 

韓馥「これは───順慶様! お早い御到着で恐悦至極に!!」

 

順慶「戦線を保って居られるのも、貴方のお陰と言いたいですが……敵に情けを掛けられるとは、情けないですわね?」

 

韓馥「しかし! まだ戦力差は、これ、この通り───」

 

順慶「黙りなさい!! 私達に黙って十万の兵を持ってきたのですから、当然ですわ! しかも、迂回の軍勢が全員討ち取られていたら、数の有利も無くなっていたでしょう!! 恥を知りなさい!!!」

 

韓馥「──────────グゥ!!」

 

順慶「ですが、今回は私も戦いたい相手がいますの。 だから、本陣は貴方に任せますわ! 私は別働隊を率いて挑み参ります! 良いですね!?」

 

韓馥「────はっ!!」

 

順慶「それと、于吉より改めて詰問が来るでしょう? かなり立腹していたようですよ! せめて、この戦いで武功を立てて、印象を良くしなければ……殺される事も……覚悟しなさい!!」

 

韓馥「ぎょ、御意!!」

 

順慶「………それから、『北郷一刀は、必ず生かして捕獲』するようにと、厳命が出ていますわ! 殺害する事は無いように!」

 

韓馥「や、奴は……殺すのでは……?」

 

順慶「私にも分かりません! あの于吉ですから、何か考えているのでしょう!! ────それでは、少し休ませてもらいますよ!!」

 

韓馥「─────はっ!!」

 

韓馥は、自分の身体が急に重くなった感じがした。 自分の軽く考えていた行為が………自分の首を絞める事になるとは………思いもしなかったのだ。

 

★☆☆

 

? 徐州 下? 曹操軍陣営 にて ?

 

春蘭「華琳様ぁ───納得出来ません! 何故、奴らを全員生かして返すのですか!! ここで倒せば、相手の人数が減り、私達が有利になる! この春蘭でも数の計算ぐらい出来ますよ!!」

 

秋蘭「姉者……今の戦いの裁量は、華琳様では無く……『島津義久』殿だ。 私も、薄々は分かるのだが……確証は無い」

 

華琳「それじゃ聞いてみましょう? 私と秋蘭の見解が正しいのか、別の意味を持ち合わせるのか?」

 

『か、華琳様───!』

 

華琳「私も……当初は春蘭と同じように、殲滅させるつもりだったのよ。 だけど……義久殿の言葉を聞いて……ふと思ったの。 捕虜にした場合の監視者の設置、場所、糧食、その後の扱い! 余計な仕事が増えるわ!」

 

秋蘭「それに、晋兵の大部分が鳥丸の者、あの漢女や女装した男共。 扱いが我らと違う事は、間違いないでしょう。 

 

また、下手に全滅させれば、我らも手酷い反撃を食らい兵数が減ります。 尚且つ、負傷者達の看護等で人が取られ、陣形に手薄が生じてしまう事も! これでは、不覚を取る確率を、自ら高める愚を選択する事になるでしょう!!」

 

春蘭「??? よく分かりませんが……私達の不利が大きい……と」

 

華琳「そうね! それで大丈夫よ!!」 

 

春蘭「成る程…………」

 

ーーーーー

 

華琳「……鈴々に説明するには、これくらい略せば分かるのでしょうね?」

 

秋蘭「姉者が理解すれば、問題は無いかと………」

 

★★☆

 

? 徐州 下? 曹操軍陣営 にて ?

 

義久「うん! その通りー!!」

 

義久は、屈託の無い笑顔で、華琳達の質問に応える。 

 

  『敵を何故、生かして戻したのか?』

 

華琳の質問の応えは、華琳達が考えた応えと、寸分変わりない応えだった。

 

ーーーーー

 

華琳「はぁ〜! 桃香に似ているのに、中身は私や秋蘭のような冷静沈着な性格が隠されているなんて……。 すっかり騙されたわ……」

 

他の皆が、義久に質問している中、華琳と桂花は、二人で石に座っている。

 

桂花「華琳様……もしも孫呉が、この四姉妹になり、天下争奪戦に参入されていたら、私達だけでは、かなり苦戦したかもしれません……」

 

華琳「………どういう事?」

 

桂花「はい……孫呉は、長江という『天然の要害』に守られた守勢寄りの領土! また、将も諜報、軍師を比重に置いた人材となっております。 

 

そのため、卓越した正面突破を好む武人が育たず、居たとしても、王である雪蓮のみ!」

 

華琳「私達は春蘭、愛紗、鈴々、星。 洛陽軍は無双の呂奉先、神速の張文遠、綺羅星に輝く御遣い達……ね」

 

桂花「……はい。 しかし、王である者が必然的に先頭へ飛び込む! これは士気が上がる反面、指導者としての立場を放棄しているのも当然! それに、万一指導者に重傷以上の怪我を負った時、替わりがいません。

 

これでは、指揮に時間差が生まれて、万一の負傷が重なれば、最悪、軍の崩壊も考えられます!」

 

華琳「雪蓮の天賦の才、卓越した勘があるからこそ出来る働き! 並みの王では死に行くも同然。 だからこそ、この曹孟徳が英傑と認めたのよ! 

 

しかし、時の運命は分からない……。 いつ、中途半ばで倒れるかは、誰にも分からないわ……」

 

桂花「はい……しかし、島津四姉妹は全員が傑物! 軍師の動きも発揮する二人の姉妹、春蘭に劣らない武人、大局を見渡す王。 そして、配下に孫姉妹を外した者達が着けば………かなり巨大な大国として君臨したと」

 

華琳「………運命の采配に感謝しなくては。 だけど、もし……そうなっていたとしても、私達に勝利を齎してくれたのでしょう? 桂花!」

 

桂花「当然です! 私の才を持って華琳様を!!」

 

華琳と桂花の会話に、口を挟む者が現れた。

 

歳久「………話の途中で悪いですが、思い違いをされていますよ?」

 

華琳「な、何を?」

 

家久「あたし達はー、天の国では敗者だったの! 颯馬お兄ちゃんが、義輝様の軍師として采配を振るって……負けちゃたんだ! えへっ!」

 

華琳「颯馬と共に居る御遣いの将は、最初から仲間じゃないの知っているわ。でも、貴女達も颯馬に敗れた将なの? それでは……結局、颯馬の元から味方の将は……何人居るのよ?」

 

義弘「え〜とぉ、義輝様と光秀、そして颯馬。 ここに来て居ない将を含めて六人かな。 残りの二人も強かったけど……私程じゃなかったわよ?」

 

桂花「そ、孫呉の人数より……少ないじゃない! じゃあ、領国が大きかったとか!? 兵力差が圧倒的に多かったとか、有利な条件が多かったんじゃ!」

 

義久「ぜんぜ〜ん! 最初は城一つと領地だけ〜だったわよ? 例えば付近の豪族並みの領地と兵力で、始まったとか?」

 

華琳「………………はぁ? 天下争奪を舐めているような勢力ね! それで、よく統一しようと考えたものだわ! まぁ、あの颯馬だから、策を使い早々に統一したのでしょうが………!!」

 

歳久「……そうですね。 颯馬は、その勢力で勝ち抜いたのは事実ですよ!」

 

華琳の言葉に、苛立ちを覚え反論する歳久。 

 

歳久「颯馬は、弱小勢力でありながら、私達を破り、大友、上杉、武田、伊達、織田……最大勢力だった三好まで打ち破り、天下を統一した軍師ですよ! 洛陽攻めや晋軍に負けた貴女が、言える言葉では到底ありません!!」

 

華琳「─────────!」

 

桂花「ちょっと! 今、ここの主は華琳様よ!? 無礼な言葉は控えなさい!!」

 

歳久「控えるのは其方です! 貴女達は、颯馬の何を見ていたのですか!? 自分が傷付き、倒れそうになるながらも、この大陸の平和を望んで八面六臂の活躍しているのですよ!? 

 

当時も……どうすれば勝てるか、人の犠牲を少なくできるか? 早く統一して戦を無くすにはどうすれば? 散々悩んで悩み抜いて戦ってきたのに! それが……そのような言い方────あんまりじゃないですかぁ!!!」

 

ーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーー

 

この後、珍しく荒れた歳久を、姉妹で止めて口論を終わらせた。 そして、次の戦いへと準備を急がせる。 

 

まだ、韓馥率いる本営が四十万が残り、此方は三十万!

 

韓馥軍には、援軍『筒井順慶』が! 

 

曹操軍に秘密兵器が!

 

果たして、どうなるかは………次回の話になります。

 

ーーーーーーーーー

ーーーーーー

 

あとがき

 

最後も近いから………オリキャラ出すのを、止めようとしたんですが、出しちゃう事に。 初投稿の作品に登場人物が百人近くって、無茶ぶりですが…よろしくお願いします。

 

また、仕事が忙しくなりそうな気配もあり、早めに投稿しましたが、次回は来週上がるかわかりません。 気長にお待ち下さい。

 

それと、気にしている人も、多分いらっしゃるのではと思い、オリキャラの紹介兼ねて、オマケを。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

◆◇◆

 

【 天然、口数少なし…… の件 】

 

? 徐州 下? 曹操軍陣営 にて ?

 

皆が集まり、義久に質問している頃…………

 

??「儁乂様、任務完了……しました」

 

儁乂「無理を言って悪かった! 『 紫 』……無事で良かったよ」

 

儁乂はそう言って紫の頭を撫でる。 

 

紫の無表情の顔が、ちょっぴり……にこやかになった。

 

会った時は、茶色の髪を結い上げて、綺麗な着物を着ていたが……今は、流琉の服を借りて着用している。 

 

身長も季衣や流琉と変わりない大きさ。 目が大きくて、少し目尻がたれ目に近い。 『美少女』と言う事に異論は無い! ただ、気に掛かるのは………!

 

一刀「……あの子は……女の子?」

 

流琉「………兄様? そんな事を聞いて、どうするのですか?」

 

一刀「だって、あの集団に入っていたんだ! 男の娘である可能性が高いじゃないか? この話を読んでる人達も、絶対そう思うんだよ!! うん!!」

 

流琉「───? 何を力説するのか分かりませんが……あの子は……」

 

季衣「うん! お………」

 

紫「紫は女の子………正真正銘。 …………見る?」

 

紫は、履いているスパッツを脱ごうと試みた! 

 

一刀「なっ──────!?!?」

 

流琉「兄様!! 不潔です!!」

 

季衣「兄ちゃん!! 見損なったよぉ!!!」

 

一刀「ギャアアアアア─────!!」

 

ーーーーー

 

儁乂「誠に! 誠に──申し訳ありません! 北郷様! 紫には、よくよく言い聞かせますので────!!!」

 

儁乂は絶賛土下座中………。 

 

一刀「いいよ、悪いのコッチなんだから──叱るの駄目! 絶対駄目!!」

 

身体中傷だらけになった一刀が、儁乂に土下座を止めるように必死に懇願! 

 

しかし、儁乂も応じてくれず、青州兵の忠義を垣間見せている! 

 

早い話が、二人とも『自分が悪い!』と意固地になっているのである。

 

ーーーーー

 

流琉「………ごめんなさい」

 

季衣「反省してます……」

 

紫「??」

 

元凶?の三人の二人は一刀を傷つけたため、謝罪中。

 

もう一人は……よく分からないようで、儁乂の様子を心配そうに見ていた。

 

ーーーーー

 

《 大騒ぎから少し後………… 》

 

 

紫「ねぇ、ねぇ………」

 

流琉「………えっ? ど、どうかしたの?」

 

紫「………胸がきゅーくつ。 大きい服が欲しい」

 

流琉「──────!!!!」

 

更なる波乱が、生まれてしまったようだ…………。

 

 

説明
義輝記の続編です。 よろしければ読んで下さい。
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コメント
無印は一回クリアしましたが、果たして何年前かな……と遠い目をして語れる程……やっていません。 漫画とかで登場人物は知ってますが。 この外史では、女の子好きです。 男の娘は……今のところ居ません。 漢女は沢山いるんですけど………。 (いた)
naku様 コメントありがとうございます! 大陸と島国との価値観、複数民族による様々な軋轢、単一民族間での争い……それにより価値観も、また変わってくるもので……。 華琳達は折々話し合いする予定です。 仲が悪いのでは、敵につけ込まれますので。 (いた)
禁玉⇒金球様 コメントありがとうございます! 最後も近いので……それなりの理由を出しています。 最後の戦いは……なるべく全員参加を目指したいので。 勿論、風も出ます! 結構重要な位置で。 春蘭は……北○の拳の台詞入れたりしたら……賢くなりました。 ↓の最後を読んで某漢女が浮かぶとは……。(いた)
華雄さんと金さん銀さんに久々にスポットライトが当たるのでしょうか楽しみです、稟も出てましたね風は……心の傷は大丈夫ですか?辛い目に遭っていませんか?私の試練を乗り越えましたか?。春蘭、君は考えてはいけない感じるんだ!でも確か反董卓編とその後では結構賢い印象だったのに。↓野郎なら雄っぱいor大胸筋、でも男の強さは憧憬の対象です。(禁玉⇒金球)
mokiti1976-2010様 コメントありがとうございます! 背丈が同じだから、着せてみた。 だけど、どっか窮屈。 野郎だと泣ける話ですが、女の子だと萌ですね。(いた)
色々あったが、最後の紫の一言が全てを持っていってしまったーーーーー!(mokiti1976-2010)
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