リリカルHS 63話 |
2月…それは男子も女子も妙にそわそわする月。
男子はこの時期になると女子の目を気にし、身だしなみを整えたりする。
女子は男子に隠れてコソコソと何かを用意したりする。
それはひとえに、2月14日にあるイベントの為である
士希「なんか男子から殺意の篭った目で睨まれたんだけど、俺何かしたかな」
はやて「………」
あぁうん、そんな気はしてた。
士希は多分このイベントに気づいてないやろなぁとは思ってた
はやて「問題です。今週末、何があるでしょう?」
士希「はぁ?それくらいはわかるよ。バレンタインだろ?でも、それが何か関係あるのか?」
わかってて、気付いてへんのかいな
はやて「士希の中でバレンタインってどんな日なん?」
士希「あぁ?詳しくは知らねぇけど、男が世話になった人とかにクッキーとかケーキとかあげる日だよな?」
なんか、微妙に合ってるような合ってないような…
なのは「あぁそっか。確か士希君、ここ来る前はアメリカに居たんだっけ?
アメリカでは確かにそういう文化だよね」
そういえば、そんな事言ってたなぁ。
活かされてへんけど、士希ってマルチリンガルなんよな。
アリサちゃんやすずかちゃんと言語の勉強してるらしいし
士希「日本は違うのか?」
士希が聞くと、なのはちゃんが苦笑いで説明を始めた
なのは「アメリカでは男性が女性にお花やお菓子を贈るんだけど、
日本は真逆で、女性が男性にチョコレートを贈るんだよ」
士希「へぇ、そうなのか?」
なのは「うん。そのチョコレートにも義理チョコ、友チョコ、本命チョコって分かれてたりすんだよ」
士希「なんだぁ?その、義理とか友とか本命ってのは?」
なのは「友チョコは、さっき士希君が言ったように同性の親しい人に贈る感謝の気持ちが籠ったチョコかな?これからも友達として仲良くいようねって意味。義理チョコは、異性に贈るものなんだけど、恋人としてではなく、あくまで友人として仲良くしようねって意味のチョコ。そして本命は、愛する人に愛を伝える為のチョコ。愛を伝えるってだけあって、気持ちが籠ったチョコだから、女の子は気合い入れるんだよね。恋人同士ならこれからも好きだよって意味。まだ恋人じゃないなら、愛の告白と同等の意味を持ってる、いわゆるラブレターみたいなチョコかな」
流石、喫茶店の娘だけあって、こういう話題は饒舌やな。
まぁでも、これで士希も理解したらしく、少しゲンナリしていた
士希「あー…なんとなく、あいつらの殺気の意味がわかった…」
はやて「ふふん!恋人持ちの宿命みたいなもんやな」
つまりは嫉妬なんよね
士希「それにしても、そうか…ならどうしような…」
士希は顎に手を当て、少し悩んでいるようやった
はやて「なんかあったん?」
士希「いや、クラスの奴らに、バレンタインのケーキをやんなきゃって思って、
昨日から準備しててさ。でも、日本がそういう文化だったなんて全く知らなかったから、
どうしたもんかなと」
うん、そういうのも士希らしいな
フェイト「別にいいんじゃないかな?最近は日本でも、男性から贈るっていうのも増えてきたみたいだし」
アリサ「そうね、持ってきなさいよ。どんな形であれ、貰って困るものでもないんだし」
すずか「そうそう。士希さんのケーキなら、きっと皆喜ぶよ!」
フェイトちゃん、アリサちゃん、すずかちゃんが言うと、士希は少し顔を赤らめ、嬉しそうにしていた
士希「そ、そうか?なら持ってこようかな。
バレンタイン当日は休日だし、明日にでも持ってくるよ!」
士希がそう言うと、三人は小さくガッツポーズしていた。
やっぱり、ただ食べたかっただけやったんやな
なのは「(はやてちゃん、士希君作ってくるみたいだけど、はやてちゃんはどうするの?)」
なのはちゃんが念話を使って聞いてきた。
念話ってこういう時、相手が目の前におっても話せるで便利やな
はやて「(もちろん作るで。せっかく私も準備してたんやからさ。
士希ほどじゃないけど、私かて作れるし)」
なのは「(そっか。じゃあ頑張ってね!私もフェイトちゃんに作らなくちゃ!)」
ふふん!愛の籠ったチョコ、作ったるで!
はやて「(ところで、なのはちゃんはどんなチョコ作る予定なん?)」
なのは「(ふっふっふ!今年は凄いよ!なんと、私自身がチョ)」
私はどんなチョコにしよかなー
士希視点
士希「よし!完成だな!」
レーゲン「ふへー、頑張りましたー」
俺とレーゲンは台所にて、大量のケーキと数個のチョコを作り終え、達成感に浸っていた
レーゲン「いやぁ、これだけの量作りますと、流石に壮観ですねー」
士希「つか、家ん中が甘い匂いでいっぱい。さっさとラッピングするか」
こういう類のお菓子作りは馴れてないないせいか、少し胸焼けしてしまうな。
なんかもう、しばらくチョコはいいや
士希「そういや、レーゲンはこのチョコ、誰にあげるんだ?やっぱりリインちゃんか?」
レーゲン「はい!なのでこの後、リインちゃんのところに行きますけど、よろしかったですか?」
最近のレーゲンは、俺が教えた護身術や魔法も使えるようになって来ているし、
何かあってもすぐやられることはないだろう。それに、リインちゃんの所に行くなら、
他の八神家の人達もいるだろう。この地球で、一番安全な所なんじゃないか?
士希「わかった。なら、このケーキも八神家の皆に持ってってくれるか?」
レーゲン「わかりました!」
俺は作ったケーキの一つを箱に詰め、それをレーゲンに手渡した。
レーゲンはそれを受け取ると、そそくさと出掛けて行った
士希「ん?そういえば…」
レーゲンはいつから、魔法が使えるようになったんだ?
いや、出会った頃から変身や探知なんかは使えてたが、いわゆる攻撃系の魔法は使えなかったと思ったんだが…
士希「あいつはあいつなりに、成長してるって事なのかなぁ」
俺はそう結論付け、ケーキの箱詰め作業に没頭する事にした。
最近、レーゲンはリインちゃんと遊ぶ事が多いから、その時にでも習っているのだろう
士希さんのチョコケーキ
昼休みにて、俺がクラス全員にケーキを振る舞うと、皆が皆ケーキに食いつき始めた
山田「クッソー!何でこんな美味ぇんだよ!士希の馬鹿野郎!」
武田「野郎からのチョコなんて嬉しかねぇんだよ!おかわり!」
一馬「お前ら、文句言いつつも食うんだよな。だが、美味いよ士希。わざわざすまねぇな」
黒田「うーん…こんなに美味しいとは。士希君にチョコ作り教えてもらおうかな」
先生「先生チョコ作らなかったんだけど、やっぱり女子として作った方がよかったのかな?」
夏目「いやいや、キョウコ先生社会人なんだから、付き合いでチョコ渡さなきゃだめでしょ」
すずか「相変わらず好評だねー」
なのは「男の子の反応が分かり辛いけど、褒めてるんだよね」
フェイト「ふふ!流石士希だね。あ、エリオとキャロの分もありがとうね。
きっとあの二人も喜ぶよ」
アリサ「控えめな甘さとフルーツの酸味が絶妙ね。
滑らかなクリームとフワフワの生地もいい感じだわ。
とうとうこれは、私も10点を出さざるを得ないのかしら?」
はやて「とうとうアリサちゃんから10点頂きましたー!よかったやん、士希!」
皆の笑顔を見てると、頑張って作った甲斐があったって思えるな
はやて視点
放課後、私は士希と一緒に家の近くの公園へとやって来た。
士希の両手には、大きめの紙袋が握られている。その中のどれもがチョコレートやった
はやて「ずいぶん貰ったな」
士希「あぁ。女性からっていうのは、本当なんだな。おかげで男子の目が怖かった…」
多くは義理やろうけど、中には本命も混じってたりするんやろうなぁ
士希「こんなに貰っちまうと、しばらくチョコはいいな」
何てことを、士希は苦笑いで呟いていた
はやて「へぇ、そんな事言うんやぁ。なら、私からのチョコはいらんかなぁ?」
ちょっと意地悪したろ
士希「え!?あんの!?」
士希はとても慌てた様子で、ダラっと座っていた姿勢をピシッと正した
はやて「当たり前やろ。恋人なんやから当然やん。
まぁでも、そんなにチョコあったら、いらんよなぁ。
残念やなぁ。めっちゃ頑張って作ったのに」
士希「い、いる!いります!ください、はやてさん!」
なんかめっちゃ必死にお願いされた
はやて「そ、そんな欲しいん?」
士希「当たり前だろ!はやてからのチョコだぞ!冷凍保存して一生大事に保管するぞ!」
はやて「いや、そこは食べてよ」
でも、そんな欲しがられると、悪い気はせんな
はやて「あはは!ちゃんと味わって食べるんやで」
なんや気分も良くなったので、私は持ってきたチョコを士希にあげる。
士希は目を輝かせて受け取った
士希「ありがとう、はやて!大事に食べるよ!」
はやて「ありがと。なら、ホワイトデーは期待しとくで」
私が言うと、士希は途端に「ん?」と言った表情になった。
あぁそっか、ホワイトデーも日本独自の文化か
はやて「日本にはな、1ヶ月後の3月14日にバレンタインのお返しをする文化があるんさ。
それがホワイトデー。ちなみにホワイトデーのお返しは、3倍返しって相場が決まってんねんで」
士希「へぇ、なるほどな。なら、そのホワイトデーとやらは期待しててくれ!
すげぇの作ってやるよ!」
士希ならホンマに凄いの作りそうやな
はやて「ん?あれ…」
士希「どうした?」
私はふと、公園の奥の方にいた二つ人影に目線を向ける。
一つは、最近は馴染み深いあの少年がいた
士希「あれは…レーゲン?それとガイアか?」
もう一つの影はガイアやった。あの二人、何してんのやろ
はやて「士希、あの二人の様子、見える?」
士希「んー?そうだな、何か貰っているな。あの包みの中は…クッキーか」
はやて「聞いといてあれやけど、ホンマに見えたんかいな」
士希「ふふん!目の良さには自信あるからな!」
せやからって、包みの中まで見えるんは異常やけどな。
こっからレーゲンのおるとこまで100m以上はあるのに
士希「あそこも、しっかりバレンタインしてるって事か。平和だなぁ」
士希の言う通りや。最近は争いごともないし、ほんまに穏やかや
はやて「ホンマになぁ。ところで、せっかくあげたチョコ、ホンマに冷凍保存する気なん?
作った側としては、味とかの感想が気になんねんけど」
私は意識を士希にあげたチョコに向ける。士希も視線をチョコに落とし、かなり悩み始めた
士希「いや、食べたいけど、もったいなくて…」
はやて「来年も作ったるで、早よ食べてよ」
そんなに大事にされるんは嬉しいけど
士希「じゃ、じゃあ、頂きます」
そう言って、士希は包みを解いていく。中から出てきたんは…
士希「うわぁ…ハート型…」
はやて「ちょ!なに引いとんねん!」
士希「いや、なんか恥ずかしくて…」
オーソドックスに、ハート型のチョコを作ったつもりなんやけど、
士希にはかなり気恥ずかしかったみたいや
はやて「か、形は関係ないねん!大事なんは味やろ!」
いや、形も大事やけどさ!
士希「そ、そうだな。じゃあ、頂きます」
そう言って、士希は一口パキリとチョコを食べる。
うわぁ、急かしたんこっちやけど、目の前で食べられると緊張すんな…
はやて「ど、どうかな?」
私は恐る恐る聞いてみる。お菓子作りも慣れてる方やけど、
男の子、しかも恋人にあげるなんて初めての事やで、かなり不安や
士希「うまい…美味いよはやて!こんなに美味いチョコ、初めて食ったよ!」
士希はパァっと表情を明るくして言ってくれた
はやて「よ、よかったぁ…」
私は途端に脱力する。なんや、美味いって言ってもらえるだけで、こんなにも安心するんやな
士希「なんつーか、気持ちが籠ってるチョコだな。甘さを控えめにしたのも、
俺への配慮だろ?すっげぇ食べやすいし、なんか嬉しかった。ありがとうな、はやて」
士希は柔らかい笑みを浮かべて言った。
あかんなぁ…私、士希の笑ってる顔、好きやなぁ…
士希「ん?どうした、はやて?そんなうつむいんっ!」
私は顔を上げ、士希にキスしたった。
ちょっとした照れ隠しのつもりと、どうしようもなく士希が愛おしくなったから
はやて「ん……えへへ、甘いな」
士希の唇は、ほんのりチョコの味がした
士希「……最近、少し積極的過ぎやしませんか?はやてさん」
士希の顔は真っ赤やった。
実はこいつ、普段は攻め手側やのに、攻められることにはめっちゃ弱かったりする。
こっちが主導権を握るとタジタジになることもしばしばってとこや
はやて「ふふ!嬉しかったやろ?」
士希「チッ、最近彼女がSっぽくて辛い」
はやて「幸せ、の間違いやろ?」
チョコと一緒に、忘れられない程甘いひと時を、士希と過ごした
説明 | ||
こんにちは 今回はバレンタイン小話。 前半は、私が感じたカルチャーショックなお話(笑) |
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コメント | ||
士希さん、飴をホワイトデーに渡すと良いらしいよ、何故か(肉豆腐太郎) おかしいな、口から砂糖がドバドバ出てくるよ…(daitetu) げろ甘ー∧(_ _)∧ ゲロゲロ~(黒鉄 刃) |
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